経理職は一般的に、転職しやすい職種と言われております。
しかし、その理由を知っている人は、意外に少ないのではないでしょうか?
手に職があるから?求人が多いから?
これらも1つの理由ですが、他にもいくつかございます。
そこで、今回は経理が転職しやすい理由について、7つ紹介していきます。
・公認会計士
・大手監査法人→経理部に出向
→教育×ITベンチャー→自営業
1. 東京だと600万円の求人!?
2. 年齢による差が少ない
3. 汎用性のあるスキル
4. 資格が評価されやすい
5. 同業の経理部に転職する慣行
6. 面接が比較的簡単
7. 実力を測りづらいので経験重視
8. 転職はちょっと待って!
9. 経理は営業と比較すると…
10. 終わりに
11. まとめ
1. 東京だと600万円の求人!?

1) 求人が多い
経理が転職しやすい1つ目の理由は、その「求人の多さ」です。
実際に求人を探してみればわかるのですが、かなりの数の求人があります。
会社を経営している以上、帳簿作成は必須となるため、経理の求人がなくなることはありません。
ただし、これからの経理には帳簿作成だけでなく、数値を分析して経営層に提案する力なども必要となる点には、注意が必要です。(詳細については「経理はAIでなくなる!?人工知能に負けないためには??」をご参照ください。)
いずれにしろ、現在経理は人手不足となっており、売り手市場で求人が多数でておりますので、転職がしやすいと言えます。
2) 特に東京であれば高額な求人も
経理は求人が多いとお伝えしましたが、特に東京であれば求人数も格段に増え、また、高額な求人もたくさんあります。
年収600万円程度の求人であれば、比較的簡単に見つけることが可能です。
転職エージェントを利用するなら、管理部門特化型の中規模エージェントである、以下の3つがおすすめです。
・MS-Japan
・Hupro(ヒュープロ)
・WARCエージェント
ただし、地方求人がないため、地方での転職の場合は大手エージェントのdoda(デューダ)がおすすめです。
詳細は「経理の転職エージェントの選び方とおすすめ4選!」をご確認ください。
3) 給料だけで判断してはダメ!
ただ、給料につられて求人を選ぶと痛い目に合う可能性がある点は、注意してください。
労働環境や職場環境などが過酷であれば、いくら高額の求人でも長続きしないです。
転職理由の多くは給料などの待遇ではなく、人間関係などの職場環境にあるため、しっかりとした見極めが必要です。
転職をあまり多く繰り返すとジョブホッパ-とみなされることもありますので、気を付けてください。
2. 30代・40代・50代など年齢による差が少ない

1) 年齢や産休・育休・子育てなどライフプランに合わせた働き方
経理が転職しやすい2つ目の理由は、年齢やライフプランに応じて働くことができる点が挙げられます。
① 年齢
年齢に応じてマネジメントなどの要素が求められることもありますが、他の職種と比べると比較的年齢による差は少ないです。
そのため、40代・50代でも高望みはせず謙虚な姿勢で臨めば、求人に困ることは少ないです。
② ライフプラン
産休・育休・子育てのタイミングで一時的に職場を離れる、あるいは、時短勤務をするといった選択肢は、目標予算を追う営業などの職種ではなかなか取りづらいです。
一方で経理であれば、業務が定型化されており、人の入れ替わりにも柔軟に対応できる職種であるため、一度現場を離れてからの復職も十分可能です。
また、残業も少なく、自分がやるべきタスクも明確であるため、時短勤務も行いやすい環境と言えます。
ライフプランに応じた働き方が用意されている点も、経理が転職しやすい理由となります。
2) 変なプライドを持たなければやっていける
年齢やライフプランの関係で、年下の上司ができる可能性もあります。
この際に変なプライドは持たずに、業界経験で言えば相手の方が上だからしょうがないと、ある程度受け入れる姿勢がとれれば、転職で困る機会も減るかもしれません。
公認会計士の集団である監査法人やベンチャーで働いてきたからかもしれませんが、私の過去の職場では年齢は関係ありませんでした。
年上の人が後輩になることもありましたし、年下の人が先輩になることもありました。
ただ、大事なのは年齢ではなく「今何ができるのか?」だと思っていたので、年齢は気になりませんでした。
年齢を意識するのはおそらく初めだけで、後は実力でその人を見ることになりますので、年齢によるプライドは早めに捨て去りましょう。
3. 汎用性のあるスキル

1) どの業種でも基本的スキルは同じ
経理が転職しやすい3つ目の理由としては、手に職をつけられることが考えられます。
どの業種の経理であろうが、基本的な仕訳や決算業務に必要なスキルは共通しております。
そのため、一度基本的スキルを身に付ければ、後はどの業界でもやっていけます。
場合によっては、特定の会社に勤めずにフリーランス経理としてやっていくのも1つの方向性です。
(ただ、フリーランスでやっていく場合はリスクも高いので、ある程度実力をつけてからの方が望ましいです。)
フリーランス経理については「経理がフリーランスになるのは可能?押さえるべきポイントは?」をご参照ください。
2) 業種特有の論点はその都度覚える
基本的なスキルは共通しているとお伝えしましたが、当然に業界特有の論点も存在します。
それでは業界特有の知識は、いつ身に付ければよいのでしょうか?
転職前に身に付けて、転職時にアピールするのでしょうか?
本記事では、その会社の実務について働きながら覚えるのをおすすめします。
と言うのも、転職前に転職予定の業界の知識を身に付けても実際に転職がうまくいくとは限りませんし、また、通常転職候補は複数あり全ての業界の知識を身に付けるのも現実的ではありません。
そのため、基本的な経理スキルはしっかりと磨き上げたうえで、転職の都度その業界特有の論点を押さえていくのが効率的な方法と考えられます。
4. 資格が評価されやすい

1) 簿記を持っていることがそのまま評価される
経理が転職しやすい4つ目の理由は、資格の勉強がそのまま評価されやすい点です。
学生時代までは勉強したらその分テストで点数が取れて評価されましたが、社会人の場合は勉強した内容が必ずしも評価につながるとは限りません。
しかし経理の場合は、簿記検定の資格を有していることがそのまま評価につながります。
資格の勉強がそのまま本職の評価につながるのは珍しいケースです。
転職をする際に何をやればいいかわからないということは多いですが、経理の場合とりあえず簿記検定を取得しておくというプロセスが明確なのも、経理が転職しやすい理由となります。
ちなみに、簿記検定は2級までの取得をおすすめしております。
詳細については「簿記2級・3級は就職・転職に有利?履歴書の書き方もご紹介!」をご参照ください。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
2) ビジネス会計検定もおすすめ
簿記検定と合わせて転職を有利に進めるためにおすすめしたい資格がビジネス会計検定です。
簿記検定が財務数値を「作成」するスキルを得られるのに対して、ビジネス会計検定は財務数値を「分析」するスキルを得ることができます。
ビジネス会計検定の場合は、資格を持っていることそれ自体が評価されるというよりは、資格取得の過程で身に付けた知識が転職に活きてきます。
詳細につきましては「ビジネス会計検定は就職・転職に有利?関係ない?」をご確認ください。
5. 同業の経理部に転職する慣行

1) 転職が割と普通の環境
経理が転職しやすい5つ目の理由は、慣行として転職が割と普通だという点です。
特に外資系経理部の場合は、同じ業界の外資系経理部を転々とする場合が多いです。
転職が普通の環境であれば、逆に言えば入ってくる人に対しても寛容な環境と言えます。
監査法人時代は外資系金融機関の監査業務を担当していました。
クライアントの経理部員の過去の経歴で多かったのが、同じ外資系金融のライバル会社の経理から転職してきたというものでした。
転々と同業を渡り歩く中で、VP(Vice President)などにキャリアアップされている方もいました。
2) 同業の場合スキル面の心配がない
同業の場合は業界特有の論点にも既に精通しているため、その点でも転職しやすい環境となります。
ただその反面、同業の場合スキルアップを期待できないのでは?と思われるかもしれません。
この点、同じ業界でも会社ごとに会計処理の違いがあり、その会社特有の論点まで深堀して、知識を高めていくことは十分可能です。
6. 面接が比較的簡単

1) 営業は実績や実力が求められる
経理が転職しやすい6つ目の理由は、営業などに比べると面接において人柄重視で採用されやすいという点です。
営業であれば売上に直結するため、今現在の実力が求められます。
一方で経理の場合は、良くも悪くも売上に直結する仕事ではないため、どちらかというと組織に波風を立てないか?などの人柄重視で面接されるケースが多いです。
(最低限のスキルは求められます。)
ベンチャーにいた際に、CFO候補の面接を担当したことがありました。
さすがにCFOやマネージャークラスの面接となると、人柄だけではなく過去の経歴や事業を考える力など、他の要素もしっかりと見ました。
皆様が目指される役職によっては、面接の段階でかなりシビアな目で品定めされるといった点は、注意してください。
2) 経理はコストセンター
営業など売上に直結する部署はプロフィットセンターと呼ばれるのに対して、経理などの売上に直結しない部署はコストセンターと呼ばれます。
本来的にはコストセンターであろうがプロフィットセンターであろうが、会社としては大切な部署であるため、同等に評価する必要がありますが、多くの企業ではプロフィットセンターの方が高く評価されます。
ただその裏返しで、プロフィットセンターの面接の方がシビアになる傾向があるのも事実です。
この場合、転職しやすさと入ってからの評価はトレードオフの関係になっていますが、転職しやすい経理の方が働き初めに求められるハードルも低いので、働きやすい環境と言えるかもしれません。
7. 実力が測れないので経験重視

1) 経理の実力は測りづらい
経理が転職しやすい最後の理由は、実力よりも経験が重視されやすい点です。
そもそも経理の今の実力を面接の場で測るのは難しく、その分過去の経験が重視されます。
そのため、経理畑をある程度歩まれてきた方にとっては、過去の経験をアピールできるので転職しやすい環境となります。
(一方で、入社してからは過去の経験よりも、実力が求められる点は注意が必要です。)
2) 5年程度の経験があればOK!
一概には言えませんが、経理経験が5年程度あれば過去の経験を評価してもらいやすいです。
経理は3年目あたりに伸び悩みを感じることが多く、この3年目を超えてきた5年目というのが1つの目安となります。
(経理3年目の伸び悩みについては「経理3年目の伸び悩みを克服する8つの方法!」をご参照ください。)
企業によっては3年程度でも資格などその他の要素で高く評価してくれる企業もありますので、5年に達していないからといって必ずしもダメなわけではありません。
注意点としては、零細企業やベンチャー企業などのまだ企業規模が小さい企業の方が、経理に求められる能力が高い場合があるといった点です。
小さい企業の場合、自分一人で日々の仕訳から月次・年次の決算までを行う必要があり、経理年数というよりは、経理業務全般を一人でまわせる知識・行動力が求められます。
8. 転職はちょっと待って!

ここまで経理が転職しやすい理由を7つ述べてきましたが、もし今あなたが転職を考えているのなら、冷静になって以下の12項目をチェックしてみてください。
⇒距離を置く。
⇒スキルを磨いてアピールする。
⇒一度社風に染まってみる。
⇒適切に評価できる評価者がそもそも日本には少ない。
⇒とりあえず1週間有給を使ってみる。
⇒引っ越しを検討してみる。
⇒1つの答えが毎回用意されて恵まれている。
⇒むしろ大雑把な方が経理としてやっていける。
⇒ほとんど仕事はデスクワーク中心。
⇒単に仕事を任されていないだけ。
⇒本来やるべき作業に集中できる。
⇒単純作業の中にもやりがいはある。
こちらの詳細につきましては「経理を辞めたいと思ったら考えるべき12のこと」をご参照ください。
9. 経理は営業と比較すると…

最後に営業と比較することで、経理の特徴を確認していきましょう。
・評価基準が明確。
・成果次第でインセンティブがある。
・対人スキルが向上する。
・人脈を獲得できる。
・ビジネスの本質に触れられる。
・勉強した内容が仕事に直結しる。
・柔軟な働き方が可能。
・予算に追われることがない。
・転職しやすい。
・会社のお金の流れを把握できる。
こちらの詳細につきましては「経理と営業はどちらがおすすめ?」をご確認ください。
10. 終わりに

経理が転職しやすい理由についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
経理の特徴をしっかりと理解した上で、転職も1つの選択肢として、経理としてのキャリアを積んでいってください。
11. まとめ
◆年齢やライフイベントに合わせた働き方が可能。
◆潰しのきくスキル。
◆資格取得がそのまま評価につながる。
◆転職が多い業界慣行。
◆コストセンターなので比較的面接が楽。
◆実力より経験が重視されやすい。