経理に必要な知識8選をご紹介!

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企業を陰から支える経理のお仕事は、どんな知識が必要となるのでしょうか?

財務や会計はもちろん、経理を行う中で必要となる知識は本当に多くあるものです。

幅広い役割を求められ、更なる組織への貢献を期待される経理のお仕事。

今回の記事では、経理に必要な知識8つをお伝えしてまいります。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 経理が行う業務概要の知識

経理が行う業務概要の知識

経理担当が行う業務は、細かく分類すると非常に多いものです。

まずは、自分が行うべき仕事を理解するために、大きな分類を知識として整理することがお勧めです。

では、具体的に経理が行う業務を見ていきましょう。

 

1) 日次業務

毎日の業務として行う経理業務のことです。

具体的な業務内容としては、以下のようなものがあります。

・伝票の起票や整理
・受発注の集計、管理
・現金の出納、残高管理
・経費精算 など

通常の業務で上記のような内容を管理し、その後月や年毎に整理をしていきます。

 

2) 月次業務

毎月の業務として行う経理業務のことです。

具体的な内容としては、以下のようなものがあります。

・支払いや入金確認
・給与計算や支払い
・所得税や社会保険など税金納付

日々の業務での整理をしっかり進めておくと、比較的業務負担が減るのが月次業務です。

日次業務の整理方法や、月次業務のスケジュールを工夫する知識を養うと、余裕を持ってミスのない経理業務が行えるでしょう。

 

3)年次業務

毎年の業務として行う経理業務のことです。

会社の総決算ともいえる業務が多く、負担も大きくなりがちです。

事前の整理とスケジューリングが大切であることも、意識しておくと安心です。

具体的な内容としては、以下のようなものがあります。

・決算、報告書の作成
・税務申告や必要書類の作成
・経営方針に基づく予算計画など

企業としての経営状況の洗い出しはもちろん、社員や企業の税金等に関する手続きも多くあります。

間違えられない内容も多いですので、知識や事前計画がとても大切と言えます。

そのためにも日常の業務で行う、日次業務、月ごとの月次業務を丁寧に行って、年次業務を進めやすいよう整えておくと、業務負担を大幅に減らすことができます。

大まかに把握したスケジュールを基に、日々の細かい業務を丁寧に進めると良いでしょう。

 

2. 経理以外の事務仕事の知識

経理以外の事務仕事の知識

経理担当と言っても、企業の規模によっては総務や人事と一緒になっていることも少なくありません。

また、経理だけをやっていればいいだけでなく、社内の一般事務を行うこともあるでしょう。

総務や人事と一緒になっている場合は、覚える必要のある業務は多くなりますが、基本的な業務はどの部署もさほど変わりません。

どういった組織編成であっても、一般事務の基礎的な知識は、業務を円滑にするためにも覚えておいた方が安心です。

電話対応、書類整理、来客対応、顧客対応、営業アシスタントなど、組織によって必要な業務や知識はさまざま。

まずは自分のできることから、少しずつ始めればよいでしょう。

場面によっては「どうして経理の私がこんなことまで」と思うことがあるかもしれません。

しかし、組織の中では頑張りをしっかり見てくれている方もいます。

少しの気遣いや思いやりが、経理としての仕事を円滑に進められる要因になることも、少なくはないでしょう。

また、経理以外の仕事を進めることによって、最終的に経理の知識を深めることもあります。

例えば、人事部と一緒に仕事をすることで、経費の必要性や無駄が見えてくることもあります。

また、無駄だと感じていた経費の使い道や、効果を知ることによって、数字の奥に事実が見える様になり、経理としての知見も大きく伸ばすことに繋がるはずです。

一見不要に思える経理以外の一般事務業務ですが、無駄どころか学べることも多く存在します。

無理のない範囲で、是非身につけて欲しい知識といえます。

 

3. 経理が勉強したい様々な知識と資格

経理が勉強したい様々な知識と資格

経理業務は企業運営に関わる大切な業務。

通常の業務に必要となる資格もありますが、知識やスキルを表す指標として、資格を取得するのが一般的です。

転職する際のキャリアアップにも有効になるのが、経理が取得している資格です。

日常の業務を行いながら取得できる資格も多いので、コツコツ取得すると良いでしょう。

 

1) 日商簿記

日商簿記は、簿記の資格として最もポピュラーな資格と言えます。

日商簿記以外に全商簿記と全経簿記という資格もありますが、日商簿記が一般的で、幅広く認知されている資格です。

難易度も日商簿記が一番高いといわれており、そのため信頼性がある資格となっています。

難易度に合わせ、1級から4級までに分かれており、履歴書等に記載できるのは3級以上からとなります。

また、基準は企業によっても異なりますが、ビジネスレベルとしては2級以上が求められる場合がほとんど。

小さい規模の企業や役割によっては、3級取得以上を条件とし、入社後就業しながらの取得をするケースもみられます。

経理職種としては知っておきたい資格と言えるでしょう。

簿記については「簿記の必要性とは?3級、2級、1級それぞれに分けて解説!」も合わせてご確認ください。

 

2) ビジネス会計検定

ビジネス会計検定では、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成するだけでなく、理解し、ビジネスに活用する知識や能力をみる検定です。

損益計算書や貸借対照表などの財務諸表は、会社の健康状態を把握するための、大切な情報です。

間違いなく作成し、蓄積したデータを活用して、ビジネスに活用していきます。

単純な経理作業だけでなく、決算書などを理解できる経理が求められている背景もあり、受験者数も増えている検定です。

検定は1級から3級まで用意されており、3級では財務諸表などから企業の経営状態を把握する能力を習得します。

1級では事業方針をマネジメントしていくところまでを基準としているため、経理の場合は2級程度でもかなり活用できる能力です。

2級ではキャッシュフローなども学び、経営や事業戦略の把握ができる基礎を習得できます。

事業を理解し、客観的にアドバイスできるようになれば、企業にとって替えの効かない人材となり得ます。

転職にも活用できる知識ですので、経理でキャリアを積んでいく方も、取得しておくと有利になるでしょう。

ビジネス会計検定については「ビジネス会計検定は意味ない?役に立つ?」も合わせてご確認ください。

 

3) 給与計算実務能力検定

給与計算実務能力検定は、給与計算だけではなく、社会保険や労務に関わる法令についても習得できる検定です。

2年ごとの更新が必要な検定で、必要な能力や知識によって1級と2級が用意されています。

2級は月次計算ができる程度の能力であるのに対し、1級は年末調整を含む年次計算ができるレベルとなります。

出題の基準となるのは、給与計算の基礎知識や実際の給与計算、雇用に関する法的知識を問う内容になります。

更新を忘れると失効してしまうため注意も必要ですが、給与計算の基礎知識としては知っておきたい検定と言えます。

 

4. 経理でキャリアップのための知識と資格

経理でキャリアップのための知識と資格

基礎の経理を覚え、さらにキャリアアップを目指す方には、より高度な資格もあります。

就きたい業界や企業特性によって、適切な資格を取得すると良いでしょう。

 

1) ファイナンシャルプランナー

経理職種に関する内容だけでなく、お金に関する幅広い知識が身に付く資格です。

投資や住宅ローン、税金や相続まで、企業のみならず個人の資産やお金の管理ができる様になります。

ファイナンシャルプランナーの資格は、「CFP資格」「AFP資格」「FP技能士」の3つに分類されます。

民間資格と国家資格にも分かれていますので、キャリアに必要な資格を取得すると良いでしょう。

ファイナンシャルプランナー資格は、特に不動産系や金融系、保険会社などへの就職にも有利となる知識です。

個人の資金管理を行うための知識として、取得しても良いかもしれません。

FPについては「ファイナンシャルプランナーのメリットとは?日常生活にも役立つ!?」も合わせてご確認ください。

 

2) FASS検定

会計や経理の実務や知識に関する検定が、FASS検定です。

日商簿記など一般の検定との違いは、より実務レベルでの知識や能力が問われる検定であることです。

資産、決算、税務、資金から構成され、決算業務までが出題範囲となっています。

判定は合否ではなく、5段階評価で行われるのも特徴。

最高判定のAまたはB程度であれば、転職の際にも有利に活用できる資格となります。

日本の大手企業でも採用基準として採り入れるケースも増えてきており、取得すればキャリアアップにも繋がります。

また、受験しておくと、現在の自身のスキルや知識レベルを認識することもできるでしょう。

また、外資系企業へのキャリアアップを望む場合は、英語版のFASS検定もあります。

英語をベースとした海外系の企業であれば、就職の足がかりとなる資格となるでしょう。

 

3) 公認会計士

経営に関わる会計から、決算や監査まで幅広い知識を必要とするのが、公認会計士です。

会計学や会社法・監査論・租税法などの受験科目があります。

合格基準は非常に厳しく、2年間の実務経験も必要となります。

取得した場合は国家資格ですので、信頼性も非常に高く、幅広い仕事で活用できることはいうまでもありません。

監査法人に従事する事ができる他、独立して公認会計士として生計を立てる、あるいは事業会社で社内会計士として活躍することも可能です。

自分の事務所を構えることもできる公認会計士は、経理会計のトップとも言える資格です。

経理に従事し、今後も経理職を務める方は、知識として覚えておくと良いでしょう。

★筆者の体験談
公認会計士になったら監査法人でずっとキャリアを積むのかというと、そんなことはありません。
私も試験合格後はまず監査法人で働きましたが、その後は20名程度のベンチャー企業で働き、今は独立しています。

一つの参考として「公認会計士のキャリア:監査法人⇒ベンチャー⇒自営業の私の経験談!」もぜひご確認ください。

 

5. 税金の種類

税金の種類

経理担当としては当然ですが、基礎的な税金の種類を把握しておくことも大切です。

企業の経理では、組織が支払う税金から、社員個人が支払う税金まで幅広く関わることになります。

ご存知の方も多いかもしれませんが、おさらいの意味も込めて確認しましょう。

 

1) 消費税

取引先との商品やサービスのやり取りがあった場合も、消費税は発生しています。

消費税の納付も、企業にとって必要な手続です。

 

2) 法人税

企業の所得に対して掛かる税金を、法人税といいます。

個人の所得に税金が発生するのと、同じ仕組みといっても良いでしょう。

 

3) 法人住民税

こちらも個人と同じ形式で、企業の所在している市区町村へ法人住民税を納付します。

 

4) 法人事業税

企業の所得に対して必要となる税金を、都道府県に支払うのが法人事業税です。

 

5) 地方法人特別税

法人の多い地域の事業税が一部地域に偏らないよう、一部国税として法人事業税を納める仕組みです。

 

6. 企業規模による経理の役割

企業規模による経理の役割

会社の中枢を担う経理のお仕事ですが、企業規模によってその役割も違ったものになることがあります。

キャリアアップや転職の際に、自分が思い描く経理担当像でないのを避けるためにも、規模ごとの役割を目安として知識にしておくと良いでしょう。

 

1) 上場企業など大企業

売上高や従業員数も多いため、基本的には部署や拠点ごとの経理を担当することになります。

扱う金額は大きい場合もありますが、経理と人事、総務などが独立して部署となっている場合が多いため、業務負担は比較的少ないです。

経理担当自体も数人、またはチーム制で運営する場合も多いため、分業しながら仲間と協調することも求められます。

 

2) 中小企業

人事や総務の部署と垣根がない場合も多く、一般事務をする場合も多くあるでしょう。

企業によっては、全ての経理を1人または2人で担当する場合もあり、業務負担としてはかなり大きくなる場合もあります

また、財務や会計業務などを通して、経営方針の策定に関わる場合があるのも中小企業ならでは。

企業を支える業務負担が重い分、大きな企業よりは責任も重く、やりがいを感じられる場合が多いといえます。

 

3) 外資系企業

外資系企業の経理業務は、海外の親会社へ報告連携しながら業務を進める必要があります。

また、場合によっては英語など外国語が必要となるケースも多く、親会社の国が行う経理の仕組みも学ぶ必要もあります。

親会社が海外にある場合は、親会社への決算報告も必要です。

また、国内拠点での税務申告を国内納付する必要があるのも、外資系企業の特徴。

グローバルな事業ですが、細かい連携が経理には必要となることが多いといえます。

 

経理のキャリアプランについては「経理のキャリアプラン5選!働き方から見えるメリット・デメリット」もご確認ください。

 

7. コミュニケーションの重要性

コミュニケーションの重要性

経理職を務めていると、疎かにしがちなのが、コミュニケーションではないでしょうか。

人数か少ない企業や、隔離された環境での経理作業の場合は仕方ないですが、経理にとってのコミュニケーションは、業務をスムーズにするツールともなりえます。

コミュニケーションの具体例を確認しながら、会話の知識も認識しておくと便利でしょう。

 

1) 社員や周囲とのコミュニケーション

経理作業は提出物を基に作業する場合も多いはずです。

営業や企画などを担当する社員にとっては、経理関連の業務は優先度の低い内容です。

スムーズに回収することが、仕事効率化にも繋がりますので、ここがコミュニケーションを活用する場面です。

事前にメールや口頭で周知し、数日後にリマインドを行います。

そして、数人に絞られたところで直接口頭で依頼すれば、回収もスムーズです。

会話を柔らかくする「忙しいところすみませんが~」「ご存知だと思いますが~」などのクッション言葉を使用すると、上手く交渉しやすいでしょう。

また、抱えきれない業務やイレギュラーな仕事を周囲に依頼することも大切です。

1人で抱えてしまうと負担も大きいだけでなく、ミスも出てきてしまいます。

先程ご紹介したクッション言葉などを活用しながら、率直に周囲に助けを求めることがお勧めです。

 

2) 社長、上司とのコミュニケーション

経理担当の場合は、社長や上長とのコミュニケーションの機会も多いものです。

大切な数字やデータのやり取りも多いため、一番は行き違いの無いコミュニケーションが大切と言えます。

コツとしては、相手が伝えたことを「~ということですね。」と復唱することです。

復唱の手順を1つ加えるだけで、大きく行き違いの確率を減らすことができます。

また、経営状態を基に上司や社長に進言する際も、コミュニケーションは重要です。

どんなにいい意見や、企業にとって採り入れるべき意見でも、言い方次第で軽く扱われることもあります。

伝えたい内容であればある程、丁寧に伝えることを意識すると良いでしょう。

ぶつかりにくいコミュニケーションのコツとしては、「私は~と考えます。」と、私を主語にして話すと良いと言われています。

自分の考え、提案をただ伝え、相手に判断を委ねるスタイルなので、ぶつかり合うことがありません。

数字に向き合うことも多い経理ですが、日常の業務の中で、コミュニケーションについても少し意識してみると、仕事が大きく改善されることもあるでしょう。

 

8. 経営についての判断をサポートする

経営についての判断をサポートする

財務状況や決算書などを基に、経営のサポートができる知識があれば、経理の役割を越えた、会社にとって大切な人材となります。

通常経営判断は社長または経営層が行いますが、基本的には社会情勢や景気と、経理から報告のある財務状況を照らし合わせ、最適な経営手法を選択していくものです。

そのため、財務状況や企業特性、業界の繁閑を把握している経理担当に、アドバイスを求める経営者も規模によっては多く存在します。

経理職は社長の資金の使い道も、随時把握しておく大切なお仕事。

間違いのないデータや財務状況を基に、堅実な視点でのアドバイスは、経営層にとっても貴重なものです。

社会や業界の情勢も把握し、自分が経営者ならばという視点で俯瞰する目を養えば、経営判断のサポートも少しずつできるようになるでしょう。

もちろん、この能力は経理に必須の能力ではありません。

しかし長く経理を務め、やりがいをもって仕事をしていく、あるいは昇進していくためには、必要となる知識と言えます。

経理の仕事にマンネリを感じた方や、通常の経理では感じられないやりがいを得たい方に、特にお勧めの知識です。

信頼の高い経理担当となれば、無駄な経費について、削減の提案をすることも可能です。

また、経営の傾向に合わせて新たな事業提案をすることもできるでしょう。

様々な知識を吸収しながら、組織運営にどんどんチャレンジできるのです。

会社を陰から支える、信頼の置ける経理担当を目指して知識を身に付けていってください。

 

9. 終わりに

今回の記事では、経理のお仕事に必要な知識をお伝えしましたが、参考になったでしょうか?

経理の仕事はコツコツ、真摯に向きあう仕事ですが、その分転職も有利でキャリアップの可能性も高い職種といえます。

経験や実績、信頼を得ることで、経営にも関わっていけるのも経理ならではの特権です。

今回の記事も参考にして頂いて、希望ある経理のお仕事を楽しみながら進めてください。

 

10. まとめ

Point! ◆日次・月次・年次業務の知識を養うと、ミスのない経理業務が行える。
◆経理以外の仕事を進めることによって、最終的に経理の知識を深めることもある。
◆資格は実務だけでなく、キャリアアップにも有効になる。
◆就きたい業界や企業特性によって、より高度な資格もキャリアアップに有効である。
◆経理担当としては、基礎的な税金の種類を把握しておくことも大切。
◆組織に合った経理の役割を全うするためにも、規模にあわせ目安の役割を覚えるとよい。
◆経理にとってのコミュニケーションは、業務をスムーズにするツールともなる。
◆データや財務を基にした、堅実な視点でのアドバイスは、経営層にとっても貴重なもの。

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