建設業経理士2級の難易度は?独学でも合格できる?

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「建設業経理士2級の難易度は?」

「建設業経理士2級は独学でも合格できる?」

これから建設業経理士2級を受験しようと考えている方は、このような疑問を持つのではないでしょうか?

日商簿記と違って、建設業経理士は特殊だからなんとなく難しそう..と考えてしまうのも無理はありません。

この記事では建設業経理士2級について、日商簿記2級やビジネス会計検定2級と比較しながら、試験の難易度や独学でも合格が可能かどうかについて、解説していきます。

ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 建設業経理士とは?

建設業経理士とは?

1) 建設業経理士資格

建設業経理士とはその名のとおり、建設業に特有な会計処理能力を身につけている、と認定された人に与えられる資格です。

「一般財団法人建設業振興基金」が級ごとにわけて「建設業経理検定試験」を実施しており、合格すると資格を取得できます。

一言でいえば「建設業に特化した簿記の検定試験」です。

建設業は、製造業のように物品を作って完成品を販売するような業種と違い、「受注」をしてから工事が始まる受注産業です。

建設業界だけでしか使用されない専門用語も存在するため、特殊な会計処理も多く経理の担当者は高い専門性が求められます。

日商簿記試験の資格取得者は、幅広い業種において評価を得ることができますが、建設業経理士は建設業界のみで評価される資格です。

そのため、建設業界への就職や転職を検討している人にとっては、有利となるでしょう。

 

2) 建設業経理士試験の種類

建設業経理士の資格は、難易度によって1級から4級に分かれています(3級と4級は建設業経理事務士)。

・4級:簿記の基本的な仕組みの習得。
・3級:初歩的な建設業の簿記や原価計算に関する知識の習得。
・2級:実践的な建設業簿記や原価計算、決算等に関する知識の習得。
・1級:建設業原価計算、財務諸表、財務分析などのほか、会計学や会社法に関する専門的知識の習得(1級は3科目の合格が必要)。

 

3) 建設業経理士と日商簿記の違いとは?

一般的な企業は利益や資産を生み出すために、物品の仕入れや販売、経費の支払いなどで日常的に多くのお金を動かします。

経理部門での仕事は、お金の流れを記録するのはもちろん、物品の出入りを棚卸しなどで数量や価値を把握し計上することです。

そのため日商簿記2級では、購買活動や販売活動などの「商業簿記」、部門管理や製品管理などの「工業簿記」という2種類の分野を学びます。

これに対して建設業経理検定試験は前述したように、建設業に特化した知識の習得を確認するための試験です。

建設業経理士と日商簿記の違いについては、基本となるベースの部分ではほとんど変わりはありません。

簿記の基本ルールをベースにして、建設業に特有な勘定科目や会計処理の違いを加えた仕組みをもっているのが、建設業経理士といえるでしょう。

たとえば、勘定科目の一つに「未成工事支出金」があります。

これは、日商簿記における工業簿記では「仕掛品」に該当するものですが、仕掛品が製品になるまでの期間と、建設中の建物が完成するまでの期間は大きく異なります。

種類にもよりますが、多くの工業製品は1個あたり当日~数日で完成するのに対して、建設工事は完了までに数年かかるのが一般的です。

建設業経理士試験は、建設業独自の特殊性を考慮し、より専門性を加味した内容となっています。

 

4) 建設業経理士2級の解答方法

建設業経理士2級の試験は、マークシート方式です。

択一問題と、複数選択問題があります。

記述形式の問題はないので、難易度は決して高くないです。

※1級は記述形式の問題があり、難易度が一段と上がります。

 

5) 建設業経理士2級の出題範囲

建設業経理士2級の出題範囲は、下記の18項目です。

1. 簿記・会計の基礎
2. 建設業簿記・会計の基礎
3. 完成工事高の計算
4. 原価計算の基礎
5. 建設工事の原価計算
6. 材料費の計算
7. 労務費の計算
8. 外注費の計算
9. 経費の計算
10. 工事間接費(現場共通費)の意義と配賦
11. 工事原価の部門別計算
12. 工事別原価計算
13. 取引の処理
14. 決算
15. 個人の会計
16. 会社の会計
17. 計算書類と財務諸表
18. 本支店会計

 

2. 合格率からみる難易度

建設業経理士2級の難易度

ここでは、建設業経理士2級試験の合格率からみる難易度について、日商簿記2級やビジネス会計検定2級と比較しながらふれてみます。

 

1) 各種会計試験の合格率

① 建設業経理士2級の合格率

試験回 受験者 合格者 合格率
34回 8,920 4,255 48%
33回 8,985 3,796 42%
32回 9,636 3,411 35%
31回 8,847 2,993 34%
30回 9,288 4,163 45%
29回 9,318 3,678 40%

 

② 日商簿記2級の合格率

試験回 受験者 合格者 合格率
167回 6,310 1,442 23%
166回 8,728 1,356 16%
165回 9,511 1,133 12%
164回 8,454 1,788 21%
163回 12,033 2,983 25%
162回 15,570 3,257 21%

 

③ ビジネス会計2級の合格率

試験回 受験者 合格者 合格率
34回 1,862 831 45%
33回 1,617 755 47%
32回 1,927 1,138 59%
31回 1,798 959 53%
30回 1,910 1,035 54%
29回 1,948 1,014 52%

 

2) 難易度の比較

① 建設業経理士2級と日商簿記2級の比較

建設業経理士2級の合格率は40%前後であるのに対し、日商簿記2級の合格率は25%前後です。

また出題形式の観点からも、記述式である日商簿記2級の方が難しいといえるでしょう。

 

② 建設業経理士2級とビジネス会計検定2級の比較

ビジネス会計検定2級の合格率は50%前後であり、建設業経理士2級の方が合格率が低いです。

一方で出題形式の観点からは、共にマークシート方式であるため、同程度の難易度、あるいは若干建設業経理士2級の方が難しいといえるでしょう。

 

3. 独学でも合格できる?

独学でも合格できる?

結論から言うと、独学でも十分に合格できます。

その方法についてみていきましょう。

 

1)独学のアプローチの仕方

建設業経理士2級の独学での受験は、簿記の知識がない人と簿記の知識がある人によって、勉強のアプローチの仕方が変わってきます。

 

① 簿記の知識がない人

簿記の知識がない人は、はじめに簿記の基礎から勉強を始めた方が良いです。

おすすめとしては、日商簿記3級の勉強をしてみましょう。

建設業経理士2級の試験は、簿記のベースとなっている日商簿記3級の知識が前提となってきます。

日商簿記3級の知識は建設業経理士だけでなく、ビジネス会計検定やFPなどの資格にも必要な基礎内容です。

簿記の基礎となるベースをしっかりと身につければ、建設業経理士2級合格は一段と近くなりますので、まずは地固めをしていきましょう。

【使用教材】
日商簿記3級のテキスト、建設業経理士2級のテキスト、問題集、過去問

 

② 簿記の知識がある人 

簿記の知識がある人にとっては、はじめに建設業特有の勘定科目や仕訳を覚える必要があります。

最初は戸惑うかもしれませんが、簿記の知識がある人にとっては、慣れればスムーズに理解できるでしょう。

以下は、簿記と建設業簿記の勘定科目の違いの例です。

簿記 建設業簿記
売上高 完成工事高
売上原価 完成工事原価
売掛金 完成工事未収入金
買掛金 工事未払金
仕掛品 未成工事支出金
前受金 未成工事受入金
【使用教材】
建設業経理士2級のテキスト、問題集、過去問

 

2) 独学の勉強方法

簿記だけではなく、多くの資格勉強に共通することは、以下のとおりです。

・全体像を把握する
・1冊のテキストを何回も繰り返す
・アウトプットを重視する

 

① 全体像を把握する

簿記の全体像は、以下のような流れになります。

1. 取引発生
2. 仕訳帳に記録
3. 総勘定元帳に転記
4. 試算表作成
5. 決算整理仕訳
6. 精算表作成
7. 損益計算書、貸借対照表作成

簿記の勉強では「処理の流れ」を強く意識することがとても大切です。

一連の手続の中で、自分が今どこを勉強しているのか?

これを意識しておくと、全体の理解がぐっと深まるでしょう。

 

② 1冊のテキストを何回も繰り返す

1冊のテキストを何回も繰り返すことは、勉強の定番です。

1回目はすべて理解しようとはせずに、まずは全体像とボリューム感を意識してサッと完読しましょう

2回目、3回目と繰り返していくうちに、重要ポイントが分かってくればマーキングします。

4回目、5回目にはマーキングした重要ポイントだけを復習します。

 

③ アウトプットを重視する

インプットは時間をかけずに効率的に終わらせ、アウトプットを重視します。

アウトプットは過去問が一番効果的です。

ひたすら解いて答え合わせをし、理解するまで復習しましょう。

数年分の過去問が完璧に理解できるようになれば、合格はほぼ間違いないでしょう。

 

3)通信講座

以上のように、建設業経理士2級は独学でも十分に合格を狙えます。

ただし、勉強時間がなかなか取れない人などは、通信講座がおすすめです。

以下に独学と通信講座の勉強のやり方の違いについてまとめます。

独学 通信講座
勉強計画 自分で決める カリキュラムが決まっている
教材の選び方 自分で調べて買う 教材が決まっている
勉強の進め方 自分で進める 講義を聞きながら進める
教材の使い方 自分で決める アドバイスがもらえる
わからない問題 自分で調べる 質問ができる
モチベーション 自分で維持する 勉強のサイクルが掴める
コスト 安い 高い

独学ではコストが安いという大きなメリットがありますが、数多くのデメリットがあります。

実際に多くの人が独学で合格しているのも事実ですが、通信講座では勉強時間を最小限にとどめ、最短距離で正しい知識を習得することが出来るでしょう。

★おすすめ講座
建設業経理士の講座を選ぶ際は、以下の3つが基準となります。

①「通学講座」or「通信講座」
②「2級まで」or「1級まで」
③「実績」or「コスパ」

そしてこの判断基準をもとに、以下の2つのおすすめ予備校の講座について、解説してみました。

・資格の大原(実績重視)
・ネットスクール(コスパ重視)

詳細は「建設業経理士の通信講座おすすめ2選!実績重視?コスパ重視?」をご確認ください。

 

4. 建設業経理士2級試験の例題と対策

建設業経理士2級の例題

ここでは2級の具体的な例題と対策を掲載しますので、実際にどの程度の問題が出題されるのか、そのための対策について確認してみましょう。

 

1)問題構成

出題 出題項目 配点
第1問 仕訳問題 20点
第2問 個別計算問題 12点
第3問 完成工事原価報告書作成 14点
第4問 原価計算問題 24点
第5問 精算表の作成 30点

 

2)例題と対策

① 第1問:仕訳問題

工事未払金¥8,000,000を決済日よりも早く小切手を振り出して支払い、¥15,000の割引を受けた。

【対策】
発生した取引に対して、適切な勘定科目を選ぶ必要があります。語句をよく確認しましょう。

 

② 第2問:個別計算問題

次の(   )に入る正しい金額を計算しなさい。

当期首において、建設機械(取得原価¥3,000,000、耐用年数6年、残存価額ゼロ、見積総生産量15,000単位)を取得した。当年度における実際生産量は4,000単位である。生産高比例法による場合と定額法による場合の、当年度における減価償却費の差額は¥(   )である。

【対策】
計算ルールを覚える必要があります。
同じような問題が繰り返し出題されているので、ルール(減価償却費など)をマスターしましょう。

 

③ 第3問:完成工事原価報告書作成

20╳3年9月の工事原価に関する下記の<資料>により、次の問に解答しなさい。

<資料>当月の工事状況は次のとおりである。なお、収益の認識は工事完成基準を適用している。
No.201 着工20╳2年10月 竣工 20╳3年9月
No.202 着工20╳2年12月 竣工 20╳3年12月予定
No.212 着工20╳3年4月 竣工 20╳3年9月
No.213 着工20╳3年9月 竣工 20╳3年9月


問:当月の完成工事原価報告書を完成しなさい。

【対策】
完成工事原価報告書も計算ルールを覚える必要があります。
ルールを覚えて計算ミスさえしなければ、簡単に解ける問題です。

 

④ 第4問:原価計算問題

P建設株式会社は、各工事現場の管理のために、3台の車両(1号車、2号車、3号車)を使用している。これら車両に係る費用を各工事に配賦するために、車両走行距離を基準とした予定配賦法を採用している。次の<資料>に基づき、下記の問に解答しなさい。

<資料>当月の工事現場別車両利用実績
甲工事630km、乙工事420km、丙工事150km、その他の工事180km


問:当月の丙工事への予定配賦額を計算しなさい。

【対策】
配賦計算がポイントになります。
問題文から配賦計算を何に基づいて行えばいいか判断できれば解けるでしょう。

 

⑤ 第5問:精算表の作成

次の<決算整理事項等>に基づき、解答用紙の精算表を完成しなさい。なお、工事原価は未成工事支出金を経由して処理する方法によっている。会計期間は年である。また、決算整理の過程で新たに生じる勘定科目で、精算表上に指定されている科目はそこに記入すること。

問:材料貯蔵品の期末棚卸により棚卸減耗¥2,500が判明した。これを工事原価に算入する。

【対策】
精算表も計算ルールを覚える必要があります。
ルールを覚えて計算ミスさえしなければ、確実に解ける問題です。

 

5. 建設業経理士取得のメリット

建設業経理士取得のメリット

1)資格取得者のメリット

建設業界へ就職や転職をする際には、建設業経理士の資格は非常に評価されます。

応募先によっては有資格者かどうかで、採用の可能性が大きく変わる可能性があります。

建設業経理士は、一般的に経理部門の社員が、実務能力を向上させるために取得する資格です。

これまでの実務経験に加えて、建設業経理士を取得していることをアピールできれば、貴重な専門人材として重宝されるでしょう。

そのため、まず2級の取得に向けて勉強を始めることをおすすめします。

 

2)在籍する企業のメリット

国や自治体が公共工事を発注する際、「経営事項審査」といって、請け負った企業の信用度を点数化して事前にチェックします。

請け負った企業での建設業経理士1級、2級合格者数が、入札可否の判断基準となる「経営事項審査」の評価対象のひとつになっています。(3級・4級は対象外)

建設業経理士取得者のポイントは、以下の通りです。

建設業経理士1級:1ポイント
建設業経理士2級:0.4ポイント

なお、これまでは建設業経理士に一度合格しさえすれば、加点対象になっていました。

しかし、2021年4月に改正があり「合格後の登録経理講習の受講」が建設業経理士の加点対象の条件として、新たに追加されました。

 

6. 終わりに

この記事では、建設業経理士2級の難易度や、独学でも合格が可能かどうかについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

建設業経理士2級合格は、決して難しくはありません。

効率的に勉強すれば、短期間で合格できるでしょう。

建設業経理士2級に合格すれば、就職・転職に役立つほか、企業にとっても大きなメリットになります。

 

7. まとめ

Point! ◆建設業経理は、特殊な会計処理が多く高い専門性が求められる。
◆2級の合格率は40%前後、決して難しい試験ではない。
◆資格取得者と在籍する企業の双方にメリットがある。

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