経理への就職・転職・転属を考えている人や現在経理部に所属している人の中には、自分は経理に向いているのかなあ…と不安に思われている方もいるかと思います。
人によって経理に対するイメージは異なり、
・真面目な人達?
・細かい人達?
・暗い人達?
など、イメージが先行して、余計に自分に向いているのかわからなくなっているのではないでしょうか?
そこで今回は、経理に向いている人、向いていない人の特徴を10個紹介していきます。
自身の性格と照らし合わせて考えることで、経理の適性があるかどうかの1つの参考にしてください。
1. 経理に向いている人の特徴
1) 自分で自分をほめることができる
経理に向いている人の1つ目の特徴は、「自分で自分を褒めることができる」という点です。
経理の客観的な評価はかなり難しく、周りの人から褒められることが少ないです。
そのため、モチベーションの管理が非常に難しい職種となります。
誰にも評価されずとも淡々と作業をこなしていけるので、自分には関係ないと思われた人もいるかもしれません。
ただ、1ヶ月や2ヶ月ならまだしも、数年単位で誰にも評価されないのは想像以上につらいです。
しかも、他の部署の同期などが評価されるのを見ると、余計につらくなるかもしれません。
営業であればノルマがある分大変な面もありますが、契約獲得や販売といった誰が見ても明確な客観的な評価ポイントがあるため、褒められやすいです。
また、営業やマーケティングなどは直接会社の売上に結びついているため、その点でも評価されやすいですが、経理が頑張っても通常は売上に結びつくことはありません。
もちろん本来的には経理が財務数値を作成して経営層に提供することが次の売上獲得のスタートになっており、売上に貢献しているのですが、そのような視点で経理部を見てくれる人はごくわずかです。
そのため、自分で自分のちょっとした成果を褒めることができる人は、経理に向いていると言えます。
・担当が変更してもわかるように帳簿のわかりにくい点に注釈をつけておいた。
・仕訳のミスを発見した
・自分の担当業務をいつでも引継ぎできるようにマニュアル化しておいた。
など、自分で小さいことでもいいので褒めるクセをつけることが、経理部で長くやっていくためのコツです。
2) 数字に苦手意識がない
当たり前ですが経理では、会社全体や日頃の取引に関する「数字」を扱います。
そのため、数字に苦手意識がないことは、経理に向いている人の特徴と言えます。
あくまで苦手意識がなければ良く、得意である必要はありません。(もちろん得意であることに越したことはありません。)
基本はExcelや電卓などを使用するので、何か高度な数学的知識が要求されるわけではなく、数字に対してアレルギーがなければ問題ないです。
3) 割と大雑把
3つ目の経理に向いている人の特徴としては、意外かもしれませんが、「割と大雑把」という特徴です。
経理には細かいことを気にする人の方が向いているのでは?と思われるかもしれません。
確かにそれも一理あるのですが、経理の仕事は細かくやろうとするときりがなく、あまり細部までこだわってしまうと自分のキャパシティを超えてしまい、精神的につらくなります。
私の周りでも、成果をだしているできる経理の人達の多くが「経理なのに性格は割と大雑把ですよw」と自分からおっしゃっています。
普段の業務を雑にやった方がいいと言っているのではないです。
元からの性格が大雑把な人が、経理という仕事をこなす時にできるだけ丁寧にやろうとすると、バランス良くうまくいきやすいということです。
プライベートで細かいことをあまり気にしないから経理に向かないかも…と思われた人達こそ、実は経理に向いております。
4) 勉強が苦ではない
経理が順守すべき会計基準や各種法令には多くのものがあり、また改正も適宜行われており、勉強し続けて知識をアップデートしていく必要があります。
そのため、勉強することが苦手ではないということは、経理に必要な特徴と言えます。
勉強せずに与えられた業務をこなしていくだけでも最低限はやっていけますが、経理としてキャリアアップしていくことは難しいです。
勉強が必要なのか…と思われるかもしれませんが、逆に考えれば、勉強した内容が直接実務に活かせてキャリアアップできる職業と言うこともできます。
そう考えると、かなりお得な気がしませんか?
また、経理を目指す人の多くは簿記を勉強しますが、自分に勉強が向いているのか、向いていないのかを試す意味でも簿記を勉強してみることをおすすめします。
簿記3級と2級の合格に必要な勉強時間・勉強期間については「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご参照ください。
5) コミュニケーションが苦ではない
経理は一人黙々と作業をやっているイメージがあり、コミュニケーション能力は必要ないと思われるかもしれません。
しかし経理は営業などの他部署から上がってきた数字をまとめあげて数値を作る必要があり、他部署とのコミュニケーションは必須となります。
また、現金や売掛金、人件費など各科目ごとに担当が割り振られますが、これらの科目は独立しているわけではなく相互に関連しており、最終的には全てをまとめて財務諸表を作成する必要があるので、経理チーム内でのコミュニケーションも必須となります。
さらに、取引先に請求書の中身を確認したり、借入のために銀行とやりとりしたり、企業外部者とのやりとりも必要です。
そのため、最低限のコミュニケーションを苦にしない人の方が、経理に向いていると言えます。
6) 自走できる
会社によっても異なりますが、経理の場合OJTが丁寧に行われるということは、意外に少ないです。
というのも、過去の資料やExcelなどのデータは残っており、後任はそれを自分で読んで解読して作業を進めていくという文化があります。
また、周りの人に助けを求めても、自分が担当したことがない科目については知識がないため教えることができず、結果誰からも助けられないケースもあります。
そのため、勝手に学んで勝手に成長してという、自走できる人の方が経理に向いています。
日々少しずつ作業を効率化していき、自分のスキルをブラッシュアップしていくことに喜びを感じることができるか?と自問自答してみてください。
上司からすれば自走できる人は勝手に育ってくれるので、良くも悪くも都合のいい部下と思われるかもしれません。
逆に常に周りに頼っていたいという人には、経理は向かないです。
7) 説明が好き
先ほどのコミュニケーションと少し内容がかぶりますが、経理にとって内部・外部の利害関係者に対する財務数値の説明は必須となります。
コミュニケーションだけであれば聞き手にまわって円滑に行うことも可能ですが、経理の場合はそれだけではなく相手に説明する力も求められます。
例えば、自分が担当している科目の異常な増減がないように毎日チェックしていた際に、異常な増減を発見した場合、原因究明するだけでなく上司にその内容を説明する必要があります。
忙しい上司にあまり時間をとらせないために、端的に要点を説明することが大切です。
そのため、説明が得意な人は経理に向いていると言えます。
また、経理が作成する各種帳簿は最終的には、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表となります。
この財務諸表は外部の投資家や債権者、あるいは経営者や取締役などの経営層などに提供され、それぞれの立場で財務数値は利用されます。
つまり、実際に説明するかどうかは別として、経理は誰かに説明する前提で、日々の作業を行う必要があります。
この点でも説明好きの人の方が、経理に向いていると言えます。
わかりやすく相手に伝える技術は書籍やネットでたくさん解説されておりますので、この機会に学んでみるのも良いかもしれません。
例えば、以下のような点に気を付けると良いと言われております。
⇒悪い例:相手はエラーがあったのかどうかを単に知りたいだけなのに、その原因を必要以上に話してしまう。
・結論を先に伝える。
⇒経験を積んだ相手であればあるほど、結論や要点だけでおおよその内容を把握できるため、①結論②要点③詳細の順に話せば③を省略できるケースが多く、短時間で終えることができる。
・相手のレベルによって話す内容を変える。
⇒悪い例:ベテラン経理マンに対して新人が採用した会計基準の詳細などまで説明。
学生時代に塾の講師などをされていた人や営業の経験者は、自然にこのあたりを学んでいることが多いです。
8) 事なかれ主義
コミュニケーションが苦ではなく説明好きな人と聞くと、自己主張が強く活発な人を想像するかもしれません。
ただ、経理に向いている性格としては上記に加えて「事なかれ主義」も挙げることができます。
経理はチームで多くのことを成し遂げる職種です。
決して個人戦でありません。
そのため、自己主張が激しい人が1人いるだけで、チームがぎくしゃくする可能性があります。
オリジナリティが求められる職種であれば各人の自己主張が大事ですが、経理が日々行う判断は会計基準や各種法令などに基づいており、オリジナリティが要求されるものではありません。
そのため、自身の担当や頼まれたことに対して荒波を立てず、粛々と作業をこなしていく人の方が経理に向いていると言えます。
9) デスクでコツコツ作業ができる
デスクでコツコツ作業ができる人は、経理に向いていると言えます。
逆にアクティブに外に出たい人は、向いていないかもしれません。
経理の場合、基本的にデスクに座っての長時間作業となり、また取引先との飲み会なども営業などと比べると格段に少ないです。
1日中会社の中での作業でも大丈夫!という人に、経理はおすすめと言えます。
10) 口の堅い人
意外に忘れがちですが、経理は口の堅い人でないと務まりません。
というのも、経理が扱うのはビジネスにおいて最も大事な「お金」に関する内部情報であり、これが企業外部に漏れると信用問題になります。
また、ライバル企業にもし情報がわたったら、自社を窮地に陥れることになるかもしれません。
エレベーターの中やランチの際に、同僚と自社のことについて話していることはないでしょうか?
あるいは、匿名だからとSNSを利用して、自社の情報を流していませんか?
壁に耳あり障子に目あり。
誰がいつどこで聞いたり、見たりしているかわかりません。
会社の情報について社外では一切話さないという覚悟が持てる人は、経理でもうまくやっていけるでしょう。
2. 経理に向いていない人の特徴
経理に向いていない人の特徴としては、上記の反対となります。
つまり、まとめると以下のようになります。
・数字アレルギー。
・細かいことが気になる性格。
・勉強することが苦痛。
・人と関わるのがキライ。
・誰かに頼って仕事をしたい。
・人に説明するのが苦手。
・自己主張が強い。
・外に出て仕事をしたい。
・仕事の話をペラペラと社外で話す。
3. 経理に向いていると思ったら次は何をする?
以上を踏まえて自分は経理に向いている!と思った人が、次に取るべき行動は何でしょうか?
転職エージェントへの登録でしょうか?
その前にぜひ一度試していただきたいのが、会計資格の勉強です。
上記はあくまで性格的な特徴であり、実際に会計に触れてみないと、本当の向き不向きはわからないためです。
以下おすすめの会計資格を紹介しますので、ぜひ学習してみてください。
ちなみに、向き不向きを判断するだけであれば3級までで問題ございません。
1) 簿記検定
1つ目は経理と言えばこの資格、「簿記検定」です。
経理の実務では、簿記で学習する仕訳を切る作業や、各種帳簿を作成する作業がメインとなります。
向き不向きの判断ができて、かつ、実務で必要な力もつくため、一石二鳥の資格と言えます。
6月・11月・2月の年3回あり、また、簿記3級であれば手頃な難易度なので、自分が経理に向ているか向いていないかを判断するにはおすすめです。
簿記検定については「簿記の必要性とは?3級、2級、1級それぞれに分けて解説!」も合わせてご確認ください。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
2) ビジネス会計検定
簿記と合わせて、会計系の入門資格としておすすめしたいのが、「ビジネス会計検定」です。
簿記が財務諸表などの会計書類を「作成」する技術を学ぶのに対して、ビジネス会計検定では財務諸表に掲載されている数値を「分析」する技術を学びます。
コツコツと書類を作成するのも経理ですが、その醍醐味は出来上がった数値を分析して、自分なりの解釈を加え上長や経営層、あるいは銀行や投資家に対して説明することにあります。
この点ビジネス会計検定は、数値分析の入門的な知識を学べる、非常におすすめの資格と言えます。
ビジネス会計検定については「ビジネス会計検定とは?試験の内容をご紹介!」も合わせてご確認ください。
その他にもMOS(Excel)やFP(ファイナンシャルプランナー)などの経理におすすめの資格がありますので、「経理・会計系資格の難易度&おすすめ7選!」も合わせてご参照ください。
4. 経理の仕事はここがいい!
最後に、経理という仕事のおすすめポイントについて、3つお伝えしていきます。
1) メリハリのある働き方
経理は月次のルーティーン作業なので、月間のスケジュールが非常に組みやすいです。
月初は各部署や取引先から上がってきたデータをまとめ、仕訳を切り帳簿を作成し、月次決算を行う繁忙期です。
繁忙期は大変ですが、初めからこの時期と分かっているので対策も打ちやすく、また、プライベートの予定も調整しやすいです。
繁忙期以外はむしろ時間に余裕があり、この時期は定時帰りや有休などを使用して友人とどこかに遊びに行ったり、海外に旅行に行ったりと、割と自由に皆さん過ごされています。
他の職種であれば、なかなかこうはいきません。
エンジニアであれば予想外のバグが発生すれば急遽対応に追われることもありますし、営業であれば目標が達成できそうにない場合残業してでも取引先を回ったり取引先の人と飲みにいったりと、月間のスケジュールが安定している職種は意外に少ないです。
その点経理であればメリハリのある働き方ができるのでおすすめです。
2) 安定して働き口がある
会社という形態がある限り、経理職はなくなりません。
昨今はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で経理の業務がなくなるのでは?といった声も聞きます。
しかし厳密には、経理の雑務をAIやRPAが引き受けてくれて、本来経理がやるべき作業に人材を集中できるという意味であり、経理という仕事自体は依然として社会から必要とされる職業です。
ただ、今後経理としてキャリアアップしていくためには、AIやRPAなどの最低限の知識を学んでおき、それらを使う側にまわる必要はあるかもしれません。
AIやRPAと聞くと何か難しそうで自分には無理と思われるかもしれませんが、何も開発しろと言っているのではなく、ゼネラリスト向けの最低限の知識を持っておけば、後はスペシャリスト(専門家)を使えばいいという意味です。
経理とAIの関係については「経理はAIでなくなる!?人工知能に負けないためには??」をご参照ください。
また、経理はある程度実務経験を積んでいけば他社への転職も割と簡単にでき、その点でも安定した働き口があると言えます。
特に外資に多い傾向なのですが、同じ業界の経理を転々と皆さん回られており、その中でキャリアを積んでおられます。
今後も安定したニーズがあるという点も、経理のおすすめポイントとなります。
3) 会計基準や税法などの拠り所がある
経理の業務は、上司の気分やその時その時の市場環境などに左右されるものではなく、会計基準や税法といった絶対的な基準に基づいて行われます。
会計基準や税法と聞くとめんどくさいイメージを持つ人もいるかと思いますが、誰が見ても明らかな基準があるということは、実はすごくやりやすい環境でもあります。
他の職種であれば上司や部長が○○と言ったからそちらに決まったなど、上の人の鶴の一声で物事が決まってしまうことが多々あります。
一方で経理の業務においては、上司や部長が何を言おうが会計基準や税法で定まっていることが正しいため、自分が1年目だろうが10年目だろうが関係なく実力で勝負できます。
曖昧な基準ではなく明確な判断基準がある点も、経理のおすすめポイントです。
5. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
経理に向いている人、向いていない人はそれぞれ特徴があります。
自分がどちらに当てはまるのかを事前に知っておくことは非常に重要です。
ただ、もし本当に経理になってやりたいことがあるのであれば、自分の向き不向きは参考程度にして、実際に経理の道に進むための行動をとった方が良いです。
一番大事なのは後から後悔しないように実際に行動を起こすことです。
資格の勉強でも転職エージェントへの登録でも上司や友人への相談でも何でもいいので、とりあえず行動を起こしてください。
そして、しっかり情報収集をして悔いのない選択をしてください。
6. まとめ
◆数字に抵抗がない人は向いている。
◆小さいことをあまり気にしない人は向いている。
◆必要な勉強はできる人は向いている。
◆コミュニケーションが苦手でない人は向いている。
◆他人に頼らずとも自分一人で仕事ができる人は向いている。
◆人に説明するのが苦手でない人は向いている。
◆場を収めるために他人の意見を尊重できる人は向いている。
◆1日中会社内の作業でも問題ない人は向いている。
◆守秘義務を守れる人は向いている。
◆向き不向きを判断するために資格の勉強はおすすめ。
◆月間スケジュールが読みやすい(経理のおすすめポイント①)。
◆安定して社会から求められる職業(経理のおすすめポイント②)。