建設業経理事務士3級の受験は不要?勉強は3級からすべき?

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建設業の財務や経理に就職・転職する際に、あると有利になる資格である、建設業経理士。

建設業界の経理を目指す人ならば、持っていて損はない資格です。

また、上位級の資格を取得している人がいると、企業としても公共工事の入札に有利となり、取得者も企業から高く評価されるなど、お互いにとってとても良い資格だと言えます。

しかし、日商簿記は広く知られていますが、建設業経理士はまだ知らない人も多くいると思います。

そこで本記事では、建設業経理士とは何か?何級から受験するのが良いのか?や勉強法について解説していきます。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 建設業経理事務士3級とは?

建設業経理事務士3級とは?

1) 3級の概要

建設業経理士とは、建設業において必要な経理業務を遂行するにあたり、必要な知識・技術を習得した人に与えられる資格です。

一般財団法人建設業振興基金が毎年上期の9月と下期の3月に行っており、難易度が低い順に4・3級は「建設業経理事務士」と呼ばれ、2・1級になると「建設業経理士」と呼ばれています。

2・1級は、国土交通大臣登録経理試験となります。

内容については、日商簿記2級の原価計算とあまり変わりはありません。

建設業経理士の勉強をすることで、ダブルライセンスを取得することもできます。

上期と下期の申込期間については、以下の通りとなります。

申込期間 試験日
上期 5月中旬~6月中旬 9月
下期 11月中旬~12月中旬 3月

申込の期限と受験までの期間が空いてしまうので、申込期限や試験日にご注意ください。

正確な申込期日、受験日程は毎年異なるので、必ずホームページを確認して申し込み、試験を受けてください。

また、後述しますが建設業経理事務士と呼ばれる4・3級は、下期の3月にしか受験機会がありません。

3級は毎年1,200人から1,600人ほどが受験しています。

3級 受検者数
35回 1,497人
36回 1,331人
37回 1,315人
38回 1,219人
39回 1,604人

 

2) 3級と2級の違い

① 出題内容

3級では建設業の簿記や、原価計算の基礎的な知識に関する問題が中心です。

簡易的な処理ができることを目標としています。

また、2級ではより実践に近い建設業の簿記や原価計算に加えて、決算等の部分も出題範囲に含まれています。

建設業界の決算の実務処理ができることが目標となります。

そのため、建設業界の会社で経理をしていきたいという方は、2級取得を目標に勉強をすると良いでしょう。

 

② 出題形式

級によって出題される内容に違いがあるものの、形式は以下のようになっています。

【大問1】
⇒2級、3級ともに仕訳から始まります。
【大問2】
⇒3級が表の穴埋め、2級が文章の穴埋めが出題されることが多いです。
【大問3】
⇒3級が合計試算表、2級が完成工事原価報告書が出題されています。
【大問4】
⇒3級が理論問題、2級が費用別計算もしくは部門別振替表が出題されます。
【大問5】
3級、2級ともに決算書の作成です。

こうして比べてみると、出題される形式は似ています。

特に大問1、大問5に関しては、難易度は違えど同じような問題が出題されています。

(建設業経理士2級については、「建設業経理士2級の難易度は?独学でも合格できる?」をご参照ください。)

 

3) 日商簿記との違い

基本となる知識は日商簿記と同じですが、以下のような建設業が持つ特殊の勘定科目や処理方法までを含めたのが、建設業経理士といえます。

簿記 建設業簿記
売上高 完成工事高
売上原価 完成工事原価
売掛金 完成工事未収入金
買掛金 工事未払金
仕掛品 未成工事支出金
前受金 未成工事受入金

また、日商簿記は毎年約50万人程度が受験しており、日商簿記のほうが一般的に有名で規模が段違いに大きいです。

ですが、建設業経理士を取得していることは、建設業界の経理への就職・転職において有利になります。

さらに、共通する分野からの出題も多いため、日商簿記2級と建設業経理士のダブルライセンス取得を目指すのもおすすめです。

その場合は日商簿記2級で原価計算が出てくるため、日商簿記から勉強を始め、その次に建設業経理士2級の順番で取得することにより、効率よく勉強が進められます。

 

2. 3級の受験が不要な4つの理由

建設業経理士3級の受験が不要な4つの理由

それでは建設業経理士の取得を考えた場合に、3級から受験すべきでしょうか?

結論としては、3級の受験は不要です。

その理由を順に4つ解説していきます。

 

1) 経営事項審査の対象ではない

経営事項審査とは、国や自治体が公共工事を発注する際に、請負を希望する企業の信用度を点数化して、事前にチェックすることを指します。

経営事項審査の対象となるのは建設業経理士2級以上であり、3級は審査の対象とならず、評点が加算されません。

企業に建設業経理士2級取得者がいることにより評点が加算され、受注できる公共工事の幅が広がるため、2級取得者がいることは企業としてもメリットがあります。

そのため、3級を受験するより、2級を受験するほうが企業にとっても有利になるのです。

上記の理由で会社から2級を取得するよう言われた方もいると思います。

 

2) 受験チャンスが年1回しかない

建設業経理事務士3級を受験できるのは、下期にあたる3月の年1回しかありません。

そのため万が一不合格だった場合、次回の試験まで1年間空いてしまうことになります。

1年間モチベーションを維持しなければならないのです。

一方で2級は年2回チャンスがあり、モチベーションの維持がしやすいと言えます。

また、経営事項審査の対象となる2級へのチャレンジが、最低半年は遅れてしまいます。

どうしても2級へのチャレンジが心配な場合は、3級との併願を考えてもいいかもしれません。

その場合は過去問題や模擬問題で3級の合格点まで取れるようになったら、2級の勉強を始めるというやり方では間に合わない可能性もあるので、後述のようにある程度の基礎ができたら2級の勉強に進みましょう。

 

3) 登録経理講習を受けられない

1・2級の建設業経理士の会計、経理知識の維持、向上のための継続的な教育を目的とした、建設業法に規定されている登録経理講習という講習があります。

1・2級取得者が対象のため、3級を取得した場合は継続的な講習が受けられません。

そのため、最新の税財務情報を自分で学ばなければならない他、セミナーへの参加の際、割引が適用されないなどのデメリットがあります。

実際に企業で経理業務を行うときに、最新の情報を自ら勉強する必要があります。

 

4) 難易度が高くない

3級 合格率
35回 67.2%
36回 61.7%
37回 63.7%
38回 64.3%
39回 70.4%
2級 合格率
25回 30.8%
26回 41.4%
27回 62.5%
28回 41.1%
29回 39.5%

3級の合格率は約60%から70%と、検定や資格の中では難易度が低い方です。

また、2級の合格率も約30%から60%と、会計資格のなかでは比較的難易度が低いと言えます。

つまり、いきなり2級からのチャレンジでもしっかり勉強と対策をすれば、合格できる可能性は十分にあるのです。

そのため、わざわざ時間とお金をかけて、より難易度の低い3級を受験する必要はないと言えます。

★勉強は2級からがおすすめ
1・2級は上期の9月と下期の3月の、2回の受験チャンスがあります。

また受験機会以外にも、前述したとおり2級には継続的な教育を受講できたり、経営事項審査の対象となり企業から優遇されるなど、メリットが多くあります。

簿記を学んだことがない人でも、しっかりと勉強すれば合格できるので、2級からの受験をおすすめします。

 

3. 2級の勉強方法

建設業経理士2級の勉強方法

1) 独学?予備校や通信講座?

独学での勉強でも、テキストや過去問を利用してしっかりと対策をすれば、合格できる可能性は十分あります。

ですが予備校や通信講座などを活用すれば、簿記の勉強が初めての方でも安心して試験に挑めるでしょう。

また予備校や通信講座を利用することで、分からない部分を質問して解決できるなど、効率よく学習することができます。

講師によってはわかりやすい覚え方やコツを教えてくれるなど、独学にはないメリットがあります。

しかし、予備校や通信講座はお金がどうしてもかかってしまいます。

勉強において大切なのは、どちらの方法を選択するかよりも、繰り返し問題を解きパターンを頭に入れることです。

そのため、自分との相性や仕事の都合などを考慮して、勉強しやすいと感じる方法で勉強してください。

★おすすめ講座
建設業経理士の講座を選ぶ際は、以下の3つが基準となります。

①「通学講座」or「通信講座」
②「2級まで」or「1級まで」
③「実績」or「コスパ」

そしてこの判断基準をもとに、以下の2つのおすすめ予備校の講座について、解説してみました。

・資格の大原(実績重視)
・ネットスクール(コスパ重視)

詳細は「建設業経理士の通信講座おすすめ2選!実績重視?コスパ重視?」をご確認ください。

 

2) おすすめ勉強方法

ここからは簿記の知識がある人、簿記が初めての人に合わせた、それぞれおすすめの独学方法をご紹介します。

 

① 簿記の知識がある人(日商簿記3級や2級、全商簿記1級を取得している人)

まずは、建設業経理士2級の過去問題や模擬問題集を、何回分か解きます。

間違いがあったところを、テキストの解説やインターネットの解説で復習し、できればノートにメモします。

繰り返すことによって、苦手な部分がわかってくると思います。

苦手な部分がなくなるように、集中的に勉強をしましょう。

また凡ミスが無くなるよう、何回も繰り返し勉強することが重要です。

問題形式に慣れてきたら、時間を気にしながら解けるようにしましょう。

日商簿記と比べて勘定科目が違い、特殊な科目もある点も注意が必要です。

大問1の仕訳問題では勘定科目の選択肢があるので、選択肢にない勘定科目を使用しないように気を付けてください。

 

② 簿記があまりわからない人、初めて簿記を学ぶ人

3級の内容を一通り学び、基礎を身につけてから2級を目指しましょう。

ただし、3級の内容を完璧にしようとすると時間がかかってしまうので、ある程度基礎ができるようになったら2級へと進みましょう。

例えば、3級の仕訳がだいたい理解できたら2級の仕訳に挑戦してみる、など段階的に学んでいくと、基礎を忘れないうちに2級の問題にチャレンジすることができます。

前述したとおり、出題形式が3級と2級で大きく変わらない部分もあります。

その場合は3級の内容に2級の内容を追加する感覚で勉強すると、覚えやすいかもしれません。

また日商簿記3級や2級から勉強することも、簿記の基礎を学ぶことができ、かつ一般的に有名な資格を取得できるのでおすすめです。

★具体的な勉強の進め方
① 最初に購入したテキストをパラパラと読み流します。理解ができなくてもなんとなく用語が分かれば大丈夫です。

② 2回目はじっくり読み、少しずつでも理解します。もし章ごとにまとめ問題などがある場合は、解いてみることをおすすめします。

③ その後は、過去問をテキストを見ながら解きます。テキストの数字を置き換えるだけで解ける問題が多いと思います。解けなかった問題は、問題の解説を見てしまっても構いません。理解できたという感覚が重要です。

④ 繰り返していくと、テキストを見ずに解ける問題が出てきます。全てテキストがなくても解けるようになるまで、過去問や模擬問題を解いていきましょう。

⑤ その後は前述したとおり、繰り返し問題を解くことが大切です。テキストを見ずに解けるようになったら、時間を計り問題のペース配分を考えましょう。

 

4. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

3級と2級の間には、継続的な講習を受けられたり、経営事項審査の対象になるかなど、大きな差があります。

勉強方法を工夫すれば簿記が初めての人や慣れていない人でも、2級の合格は目指せます。

おすすめの勉強方法をもとに、ぜひ上位級の2級取得を目指してみてください。

 

5. まとめ

Point! ◆建設業経理士とは、建設業界の簿記検定。
◆日商簿記のほうが規模が大きいが、建設業の経理を目指すなら建設業経理士のほうがおすすめ。
◆経営事項審査の対象は2級からなので、3級は点数にならない。
◆3級は年1回しか受験機会がないのに対し、2級は年2回のチャンスがある。(併願することは可能)
◆2級の合格率は30%から60%と比較的簡単に取得できる。
◆勉強方法を工夫すれば、簿記初心者でも2級の合格を目指すことができる。
◆3級と2級の出題形式はほとんど変わらない。
◆独学でも合格することは可能だが、通信講座などの予備校に頼ることもおすすめ。

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