営業損失・営業赤字と聞いて、皆様状況をイメージできますでしょうか?
何となくイメージはできても、実際に経験していないと、なかなか具体的にはイメージしにくいかと思います。
そこで今回は、営業損失・営業赤字とはそもそも何なのか?を解説した上で、営業損失・営業赤字の状態になった際の注意点を4点ご紹介します。
また、営業赤字を立て直すために必要となる、財務分析力の基礎をつける方法として、ビジネス会計検定についても解説していきます。
1. 営業損失・営業赤字とは?
2. 本業で稼げていない!?
3. キャッシュフローは大丈夫?
4. 銀行の融資は大丈夫??
5. 安易な費用削減は先細りに
6. 財務分析と言えばビジネス会計検定
7. 終わりに
8. まとめ
1. 営業損失・営業赤字とは?
1) 利益には複数種類がある
「利益」と聞いて皆様何を思い浮かべますでしょうか?
利益には分け方によりいくつか種類があるのですが、ここでは4つの利益を紹介させていただきます。
「売上-売上原価」で計算され、粗利とも呼ばれる利益。
・営業利益
「売上総利益-販売費及び一般管理費」で計算され、本業の儲けを表す。
・経常利益
「営業利益+営業外利益-営業外損失」で計算され、経営努力の成果を表す。
・当期純利益
「経常利益+特別利益-特別損失-法人税等」で計算され、最終的な利益を表す。
2) 営業利益がマイナス
営業損失・営業赤字と言った場合、営業利益がマイナスとなることを意味します。
逆に言えば、他の利益はプラスの可能性もあります。
それでは、営業損失になった場合の注意点について、次項以降で順に4点紹介していきます。
2. 本業で稼げていない!?:注意点①
1) 本業の儲けがない
営業利益がマイナスということは、本業でのもうけがないことを意味します。
ビジネスを行う上で、本業でもうけが出ていないことは、非常にまずい状態と言え、すぐにでも対応する必要があります。
新規事業や関連事業などは、あくまで本業がうまくっている前提で力をいれるべきものであり、本業がうまくいっていないのであれば、本業に全力を注ぐべきです。
営業利益がマイナスになる理由については、次項以降で説明する3つの可能性があります。
2) 売上が低い
営業利益がマイナスになる1つ目の理由に、売上が低いことが挙げられます。
売上が十分にあがっていれば、事業面や組織面など、大抵のことはうまくいきます。
それほどに売上というのは大事です。
簡単にあげられるものではありませんが、まずは原因を分析してみてください。
売上は基本的に「単価×販売数」で計算されます。
そのため、大きく分けると
②:販売数を増やす。
のいずれか、あるいは両方が手段としては考えられます。
また、②については、
②-2:リピーターを増やす。(既存顧客のフォロー)
の2つに分解できます。
さらに、商品数を増やせば、売上はその分上がる可能性があります。
(既存商品と食い合わないのが条件となります。)
まとめると、売上アップのためには、以下の手段のうち、今自社がとるべき選択はどれかを冷静に見極める必要があります。
②-1:新規顧客を増やす。
②-2:リピーターを増やす。
③:商品数を増やす。
選択した方法について、
・施策は打っているがうまくいかないのか?
をまず判断してください。
前者であれば施策を考えればよいですし、後者であれば現状のデータを集めて、問題点を分析する必要があります。
3) 原価が高い
営業利益がマイナスになる2つ目の理由に、原価が高いことが挙げられます。
業態によって何が原価に含まれるかは一概に言えないのですが、方法論としては、例えば以下に区分できます。
・原材料をより低価格のものに交換する。
・原材料の購入量を増やして、規模の経済で費用を抑える。
ただ、一般的に原価の低減はすぐにできるものではないので、長期的に取り組む必要があります。
4) 販管費が高い
営業利益がマイナスになる3つ目の理由に、販売費及び一般管理費が高いことが挙げられます。
販売費及び一般管理費には、人件費や広告宣伝費、外注費など、売上をあげるために必要な様々な費用があります。
販売費及び一般管理費を下げる方法としては、
・新規採用の圧縮。
・広告宣伝費の圧縮。
あたりが考えられます。
注意点として、売上につながる費用を圧縮することは、将来の売上を圧縮することにつながりかねないという点です。
詳細については「5. 安易な費用削減は先細りに。。」をご参照ください。
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3. キャッシュフローは大丈夫?
1) キャッシュがなければ倒産
営業損失になった場合の2つ目の注意点として、キャッシュの残高は問題ないのか?といった点が挙げられます。
会社は赤字になっても倒産しません。
会社が倒産するのは、キャッシュがなくなり、仕入先や取引先に対してお金を支払えなくなった時です。
つまり、仮に黒字であっても、キャッシュがなければ倒産します。
(これを黒字倒産と言います。黒字倒産については「会計とファイナンスの違いは?関連資格もご紹介!」をご参照ください。)
2) 必ずしもキャッシュがないとは言えない?
それでは、営業損失がでている場合、キャッシュも枯渇しているのでしょうか?
実は必ずしもそうとは言い切れません。
確かに本業で利益がでていないのはまずいのですが、借入や株主からの出資状況、あるいはビジネスモデル次第では、営業赤字でもキャッシュが十分残っている状況はありえます。
特に、スタートアップ企業などでは、初めは営業利益がでないのが普通ですが、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などからの出資で、キャッシュが潤沢にあることは多々あります。
前職のベンチャー企業では、お客様に先にお金を満額いただいて、役務提供はそこから数か月~数年間に渡って行うというビジネスモデルでした。
例えば24万円で2年間のサービスがあったとして、先に24万円を支払ってもらい、それから2年間にわたりサービスを提供していくといったビジネスモデルです。
この場合、広告宣伝費などは24万円の売上をあげるために必要な分、例えば15万円満額が費用計上されるのですが、売上はサービスが続く2年間(24ヶ月)で按分されるので、1年間では12万円しか売上があがりません。
そうすると、初めの1年間でみれば、売上12万円に対して広告宣伝費15万円ですので、赤字となります。
ただ、キャッシュベースでは売上24万円に対して広告宣伝費15万円ですので、9万円の利益がでます。
このように、前受ビジネスの場合、会計上は赤字ですが、キャッシュフロー上は問題ないケースがあります。
3) 営業キャッシュフローをチェック!
それでは具多的にキャッシュを見るとすれば、どこを見ればいいのでしょうか?
まず大事なのはキャッシュの残高ですが、キャッシュフロー、つまりキャッシュの流れを把握しておくことも大切です。
その中でもキャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローは、特に注意が必要です。
(キャッシュフローの3区分(営業・投資・財務)については「キャッシュフローの種類とは?」をご参照ください。)
営業損失が出ていて営業キャッシュフローも赤字の場合は、本業で会計ベースの利益もキャッシュベースの利益もでていない状況ですので、この状態が続くと会社は倒産すると言えるほどまずい状況です。
このように、営業損失が出た場合は必ず営業キャッシュフローも一緒に確認する必要があります。
4. 銀行の融資は大丈夫??:注意点③
1) 営業赤字では融資が下りない?
営業赤字になった場合の3つ目の注意点は、銀行の融資が下りない可能性が高い点です。
本業で赤字が発生した場合、新規の銀行から借入を行うのは至難の技です。
また、既存の取引銀行からの追加融資も、かなりハードルが高いです。
営業赤字でキャッシュが不足しそうな場合、銀行の融資に過剰な期待を寄せるのは注意が必要です。
2) 営業赤字が一過性であることを説明する
そうは言っても、営業赤字の際に銀行からの融資を引き出す必要がある場面は多いかと思います。
ではどうすれば良いのでしょうか?
簡単ではありませんが、営業赤字が一時的なものであり、今後融資を受ければ黒字になる道筋を、銀行側に示す必要があります。
この際に重要となるのが、トップラインである売上の過去からの推移です。
売上が堅調に伸びている中での営業赤字であれば、将来的には先行投資の費用により売上がさらに拡大する、あるいは費用を圧縮していく道筋を示すことで、融資が下りるの可能性はあります。
5. 安易な費用削減は先細りに。。:注意点④
1) 売上を上げるか?費用を下げるか?の二択
4つの目の営業損失の場合に気を付ける点としては、安易な費用削減は身を亡ぼす可能性があるという点です。
先に説明しましたが、営業損失を解消する方法としては、売上を上げるか、費用を下げるかの二択となります。
売上を上げるのは簡単なことではないので、短期に成果が出やすいのは費用の削減となります。
2) 費用は将来に対する投資
しかし、営業損失の原因となる販売費及び一般管理費のうち、例えば人件費や広告宣伝費は将来に対する投資でもあります。
来期を乗り切るために、人件費や広告宣伝費を削減しても、さらに次の期において売上が著しく減少して、さらなる営業赤字になる可能性もあります。
そのため、安易に費用を削るのは注意が必要です。
例えば広告宣伝費であれば、効果測定をしっかりとして、費用対効果が高い費用はそのまま継続して支出して、費用対効果が低い費用を削減していくなど、売上との関連をしっかり見極める必要があります。
リスティング広告などのWeb上の広告であれば、効果測定は比較的やりやすいです。
前職の時には、実際にリスティング広告にかけた費用から逆算して、決済1件あたりに何万円の広告費をかけていたかを計算し、利益がどの程度でているかを把握しながら、広告を運用していました。
費用対効果を考えた費用の支出というのは、一見当たり前のことですが、実際に全ての費用を管理しようとすると、かなり大変です。
そのため、初めから全ての費用を管理しようとせずに、主要な費用から取り掛かるのがコツとなります。
6. 財務分析と言えばビジネス会計検定
1) 財務分析の力をつける
営業赤字を防ぐためにも、日ごろから財務分析を行い、会社の状況を把握することが、経営者だけでなく従業員にも求められます。
また、株式投資をする人にとっても、財務分析により営業赤字になりそうな企業とそうでない企業を見極めることは重要です。
ここで、財務分析の基礎的な力をつけるのにおすすめなのが「ビジネス会計検定」となります。
ビジネス会計検定では、財務諸表を「作成するスキル」ではなく、「分析するスキル」を身に付けることができます。
ビジネス会計検定の詳細については、「ビジネス会計検定3級が必要ない人とは?受験要項や難易度は?」をご参照ください。
2) ビジネス会計検定で学べること
ビジネス会計検定で学ぶことができる内容は、他の記事で紹介しておりますので、以下をぜひ参考にしてみてください。
・「収益性分析とは?」
・「安全性分析とは?」
・「成長性分析とは?」
・「株式投資の指標(PER・PBR 等)を学ぶならビジネス会計検定!」
・「損益分岐点分析とは?」
・「連結の範囲の決め方は?」
7. 終わりに
営業損失・営業赤字について、注意点を4点紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
自社がこのような状況に陥らないためにも、また、投資家として営業損失・営業赤字になりそうな企業に投資をしないためにも、正しい知識を身に付けましょう。
8. まとめ
◆本業で儲けが出ていない点に注意する。
◆キャッシュフローがマイナスになっていないか注意する。
◆銀行の融資が下りるか注意する。
◆費用削減ばかりに目を向けないように注意する。