成長性分析とは?各指標をご紹介!

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安全性分析や収益性分析と同様に、決算書分析において重要となるのが成長性分析です。

ただ、意外に皆さん見落としがちな分析でもあります。

そこで今回は、成長性分析について各指標をお伝えしていきます。

成長性を分析するメリットや注意点についてもご紹介しますので、本記事でぜひ成長性分析の基礎を押さえてください。

筆者の情報
・公認会計士
・監査法人➡経理に出向➡ベンチャー➡自営業
・紹介記事「公認会計士が語る体験談!

 

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1. 成長性分析の3つの手法

成長性分析の3つの手法

まず初めに成長性分析の3つの分析手法から見ていきましょう。

 

1) 対前年度比率

1つ目の分析手法の「対前年度比率」は、売上を例にすると以下の式で表されます。

当年度売上 ÷ 前年度売上 × 100(%)

分析対象の数値を前年度の数値で割って%で表したものとなります。

例えば、前年度の売上が100億円、当年度の売上が120億円の場合、対前年度比率は「120%」となります。

 

2) 伸び率

2つ目の分析手法の「伸び率」は、売上を例にすると以下の式で表されます。

(当年度売上-前年度売上)÷ 前年度売上 × 100(%)

対前年度比率のうち増加した部分又は減少した部分の数値のみを計算した値となります。

伸び率は増減率とも呼ばれます。

例えば、前年度の売上が100億円、当年度の売上が120億円の場合、伸び率は「20%」となります。

 

3) 対基準年度比率

3つ目の分析手法の「対基準年度比率」は、売上を例にすると以下の式で表されます。

当年度売上 ÷ 基準年度売上 × 100(%)

対前年度比率では前年と比較して各年の割合を計算していましたが、対基準年度比率では前年ではなく特定の基準年度と比較して各年の割合を計算しています。

例えば、当年度の売上が120億円で、基準年度の売上が150億円の場合、対前年度比率は「80%」となります。

どの年を基準年度にするかについては、全体の数値に影響があるので注意が必要です。

分析対象の初年度を基準年度とするのが一般的ですが、初年度が異常な数値の場合は、他の年度を選択するなどを検討した方がよいでしょう。

 

2. 成長性分析の具体的指標

成長性分析の具体的指標

次に、成長性分析の具体的な指標を7つ見ていきましょう。

ここで挙げているのはあくまで主な指標であり、財務諸表に掲載されているあらゆる指標が成長性分析の対象となります。

 

1) 売上高伸び率

(当年度売上-前年度売上)÷ 前年度売上 × 100(%)

売上高は基本的に「単価」×「数量」で表され、売上高伸び率がプラスということは、販売数量を落とさずに単価アップに成功したか、単価を落とさずに販売数量を増やしたことになります。

売上高伸び率がプラスの場合、市場のシェアが拡大したと思われる方も多いですが、市場シェアは上述の数量の増加を指すことが一般的であり、単価を単に上げただけの可能性がある点は注意が必要です。

売上高はトップラインとも呼ばれ、売上高が伸びていないと会社としては利益率を維持するために費用を抑制する方向となり、福利厚生や賞与などの低下、あるいはリストラの実施なども可能性としてはありえます。

売上高伸び率は成長性の中でも非常に重要な指標となります。

 

2) 営業利益伸び率

(当年度営業利益-前年度営業利益)÷ 前年度営業利益 × 100(%)

本業からのもうけである営業利益の伸び率を見る指標となります。

本業でのもうけが企業経営の基本であり、売上高の伸び率と一緒に分析するのが望ましいです。

売上高伸び率がプラスなのに営業利益伸び率がマイナスの場合は、原価や販売費及び一般管理費に問題がある可能性が高く、費用面の見直しが必要となります。

このあたりを見逃さないためにも、売上高営業利益率などの収益性の指標と合わせて分析する必要があります。

収益性分析については「収益性分析とは?ビジネス会計検定で学べる各指標をご紹介!」をご参照ください。

また、特に営業利益周りはキャッシュフローの指標についても合わせて分析する必要があります。

売上高営業利益率の伸び率がプラスなのにキャッシュフローマージンの伸び率がマイナスの場合、利益の質が下がっている可能性があります。

キャッシュフローの指標については「キャッシュフロー比率の指標一覧!」をご確認ください。

 

3) 経常利益伸び率

(当年度経常利益-前年度経常利益)÷ 前年度経常利益 × 100(%)

本業以外の経常的な収益・費用も加味した経営努力の成果である経常利益の伸び率を表す指標となります。

特別利益や特別損失を除いた毎期経常的に発生する利益であるため、営業利益伸び率がプラスでも経常利益伸び率がマイナスであれば、長期的にみると経営に支障がでる可能性がありますので、営業外収益・費用の見直しが必要となります。

 

4) 総資本伸び率

(当年度総資本-前年度総資本)÷ 前年度総資本 × 100(%)

利益を出し続ければ会社の総資本は基本的に増加していきます。

その意味で総資本増減率は高いほど望ましいと言えます。

ただ、総資本の中には返済が必要な負債と返済が不要な純資産が含まれており、安全性分析の観点からすると、借入金などの負債の増加による総資本の増加は望ましくありません。

そのため、負債比率などの安全性分析の指標と合わせて確認する必要があります。

安全性分析の指標については「安全性分析とは?各指標を学ぶにはビジネス会計検定がおすすめ!」も合わせてご確認ください。

 

5) 純資産伸び率

(当年度純資産-前年度純資産)÷ 前年度純資産 × 100(%)

資産から負債を引いた差額である純資産の伸び率を表す指標となります。

基本的に利益を出し続ければ、つまり黒字であれば、あるいは増資を行えば純資産は増加するため、純資産の伸び率がプラスであることは望ましいことです。

内部留保をためて純資産が増加している企業は健全な状態ということができます。

 

6) 有形固定資産伸び率

(当年度有形固定資産-前年度有形固定資産)÷ 前年度有形固定資産 × 100(%)

サービス業などの設備投資を必要としない企業には当てはまりませんが、その他の企業、特に製造業であれば有形固定資産などの設備投資は将来に対する投資であり、有形固定資産伸び率がプラスであるということは、企業規模拡大のために先行投資をしていることとなります。

設備投資は多額の先行投資となりますが、他社との差別化要素となるため、非常に重要です。

合わせて確認していただきたいのが、キャッシュフロー計算書の投資活動によるキャッシュフローの「有形固定資産の取得による支出」と「有形固定資産の売却による収入」です。

この2つの合計がキャッシュフロー面からみた設備投資額となりますので、このあたりの指標の伸び率もチェックが必要です。

 

7) 従業員伸び率

(当年度従業員数-前年度従業員数)÷ 前年度従業員数 × 100(%)

製造業などが売上高を上げるために設備投資に力を入れるのに対して、IT企業などは売上高を上げるために人、つまり従業員に投資をします。

そのため、従業員数の伸び率も成長性をはかる上で重要な指標となります。

★筆者の体験談
IT企業などで従業員伸び率がマイナスの場合、必ずしも売上高が下がるとは限りません。
私も20名程度のIT企業に勤めていた時に、一時期従業員数が半分程度まで落ち込んだのですが、売上高は倍になりました。
(筆者の経歴については「ビジネス会計検定と出会うまで:公認会計士が語る体験談!」をご参照ください。)

企業文化に合わない社員が去っていったのですが、結果的に残った少数精鋭のメンバーで足を引っ張り合わずに進んだ方が、組織も事業もうまく回っていきました。
そのため、従業員伸び率はあくまで1つの指標であり、他の指標と合わせて検討する必要があります。

 

3. 成長性分析のメリット・注意点

成長性分析のメリット・注意点

ここまでは成長性分析の具体的な指標について見てきました。

それでは、成長性分析のメリットや注意点はあるのでしょうか?

以下で順に解説していきます。

 

1) メリット

① 過去の成長率から将来の事業の見通しが立てられる。

成長性分析のメリットの1つ目は、過去の成長性を分析することで、今後の事業計画に必要な見通しを立てることができる点が挙げられます。

例えばトップラインと言われる売上高の伸び率が毎期20%増だった場合、必ずしも来期も20%増になるとは言えませんが、少なくとも悲観的なシナリオを立てる必要はないかもしれません。

特に、銀行などの金融機関は過去の売上高の推移を気にしますので、過去の伸び率が良ければある程度前向きな見通しを理解してくれて、融資などがおりやすいです。

 

② 直感的にわかりやすい

収益性分析や安全性分析の場合、数値を計算したはいいものの、それが良いのか悪いのかの判断に迷います。

一方で成長性分析の場合は、成長していればひとまずは問題なさそうだと判断することができます。

もちろんそんな単純な話ではないですが、少なくとも収益性分析や安全性分析などと比べると、直感的に理解しやすいのが成長性分析と言うことができます。

 

2) 注意点

① 単に高ければ良いというものではない

例えば売上高伸び率について、高いほど望ましいのですが、一方で、あまりに高すぎると実は問題が発生する可能性があります。

売上高が急激に伸びるということは、その分過大な投資を行った可能性が高く、資金調達面で過大なリスクを負っている状態で安全性の面から必ずしも望ましいとは言えません。

さらに、売上高が急激に伸びるということは、新規の採用が増加している可能性も高く、組織面で組織文化が浸透しない、社内のコミュニケーションコストが過大になるなどの問題が発生します。

そのため、成長性分析において、あまりに急激な伸びであった場合は、注意が必要です。

 

② 率だけでなく絶対額の大小にも注意する

成長性分析をする際は、もととなる金額の大小についても注視する必要があります。

例えば同じ100億円の売上をあげているX社とY社があり、ともに営業利益の対前年度比率が130%だったとします。

成長性分析 率だけでなく絶対額にも気を付ける

130%増だったので両社とも順調であると判断したくなりますが、X社は前年5億円の営業利益をあげており、当年はその130%の6.5億円の営業利益をあげている一方で、Y社は前年苦戦して500万円の営業利益しかあげられず、当年もその130%の650万円の営業利益しかあげられていない場合、両社をともに対前年度比率が130%だからといって順調であると評価することは適切ではありません。

このように、成長性分析の際は比率だけでなく、金額の絶対額にも注意を払う必要があります。

この点は、安全性分析・収益性分析などの他の分析についても当てはまり、1つの分析だけで結論付けるのではなく、複数の分析を組み合わせて分析する必要があるといった点は頭に入れておいてください。

 

4. 成長性分析にはビジネス会計検定

成長性分析にはビジネス会計検定

成長性分析の基礎的な知識をつけるのであれば、以下の点からビジネス会計検定の受験がおすすめです。

 

1) 収益性分析・安全性分析などについても学べる

ビジネス会計検定では、成長性分析のみならず、収益性分析や安全性分析の各指標についても学ぶことができます。

また、2級になると、損益分岐点売上高の計算やセグメント情報の分析など、より実践的な知識を身に付けることができます。

損益分岐点売上高については「ビジネス会計検定2級の重要論点である損益分岐点分析とは?」をご参照ください。

 

2) 株式投資に必要な基礎知識が学べる

成長性分析について勉強されている皆様の中には、株式投資のために勉強されている方もいるかと思います。

ビジネス会計検定であれば、株式投資に役立つ以下の分析指標についても学ぶことができます。

・EPS(1株当たり当期純利益)
・PER(株価収益率)
・BPS(1株当たり純資産)
・PBR(株価純資産倍率)
・一株当たり配当額
・配当性向
・配当利回り
・株式益回り
・時価総額
・一人当たり分析

詳細につきましては「ビジネス会計検定で株式投資の指標(EPS・BPS 等)が学べる?」をご参照ください。

 

3) 実戦的な分析問題について問われる

ビジネス会計検定では、単に知識として成長性分析を勉強するだけでなく、具体的な貸借対照表や損益計算書などの数値が与えられ、それらを分析する実践的な問題が出題されます。

知識に留まらず、実践的な分析力を身に付けるためにもビジネス会計検定はおすすめです。

 

4) 経理のみならず営業などにも活きる資格

ビジネス会計検定は会計という言葉が入っているため、経理のための資格と思われる方も多いです。

しかし、実は経理以外の営業などの職業にも役立つ資格となります。

特に法人営業の方は、取引先の財務数値を読むために必須の知識となります。

詳細につきましては「営業におすすめの資格!?ビジネス会計検定&販売士」をご参照ください。

 

5. 終わりに

成長性分析についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

成長性分析は実務で使えてこそ意味のあるものですので、まずは今回学習した知識をもとに、どの会社でもかまいませんので実際の財務諸表を分析してみてください。

そして、体系的な知識を身に付けるためにビジネス会計検定などの勉強もぜひ検討してみてください。

 

6. まとめ

Point!

◆対前年度比率・伸び率・対基準年度比率の3つの手法がある。
◆具体的指標としては、売上高伸び率・営業利益伸び率・総資本伸び率などがある。
◆成長性を分析することで将来の事業予測が立てやすい。
◆成長性があまりに大きい場合は資金面や組織面で問題が起こっている可能性がある。

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