企業が営利活動を行う上で、お金や利益の計算は、必要不可欠です。
つまり、会計や数字に強い事が証明出来れば、それだけで個人としての価値が、高まるとも言えます。
今回は、そんな個人の強みとなる「経理・会計・財務資格」について、順に紹介していきます。
1. ビジネス会計検定
2. 日商簿記検定
3. 建設業経理士
4. MOS(Excel)
5. ファイナンシャルプランナー
6. 中小企業診断士
7. 公認会計士
8. 税理士
9. 終わりに
10. まとめ
1. ビジネス会計検定
1) 試験概要
・勉強時間:100~300時間
・試験時期:毎年10月、3月
・受験資格:制限なし
・合格率:3級約60%、2級約40%
最初に紹介するのは、大阪商工会議所主催の『ビジネス会計検定』です。
ビジネス会計検定とは、会計のなかでも財務諸表に関する知識や分析力を問う資格試験であり、あらゆるビジネスパーソンにとって、スキルアップのきっかけとなる検定試験となります。
会計分野で最も知名度が高い資格と言えば、『簿記検定』
簿記検定は、『日々の取引を記録し、仕訳などを通じて貸借対照表や損益計算書という財務諸表を作成する事』を主な目的としております。
これに対してビジネス会計検定は、『作成時に用いられた会計基準や法令を理解し、財務諸表を分析して企業の経営状況を把握する事』を目的としているため、財務分析を通じた経営判断力を、試験勉強を通じて磨くことができます。
・新しい取引先や投資案件の評価
・自社や取引先の財務諸表の理解
・財務分析を用いた株式投資
・経済、金融ニュースの理解
などに役立ち、スキルアップとしては非常に有用な、会計資格であると言えます。
ここで、合格者の方の声を、いくつか紹介させていただきます。
『ビジネス会計検定を取得して、さっそく競合他社の財務分析や海外工場の損益分岐点分析を行い実務に活かしました。
取得をきっかけに上司に提案し自分から主体的に動いたことで、今後の会社戦略を考える際に参加させて頂けるようになりました。
この資格は、経営者や幹部の業績に関する会話を理解したい方、自分の業務は会社の業績にどう繋がっているのか、数値的に理解したい経理以外の方にもおすすめします。』
*公式ホームページ「企業・合格者の声」より抜粋
『学習することにより、会計に関する興味が以前にも増して強くなり、学習意欲が刺激されました。
会計処理の知識に加え、ディスクロージャーに関する知識、会社法・金融商品取引法などの法制度から見た財務諸表の位置づけを学習でき、多面的に会計を学習することで知識に深みが出ました。
試験では全産業の平均と比較して自社の数字の優劣を考えたり、過去の数期間分の推移を追って経営状況を把握したりという出題もあり、実践的な分析の視点を学ぶことが出来ました。』
*公式ホームページ「企業・合格者の声」より抜粋
ビジネス会計検定の試験範囲には、会計のみでなく会社法なども含まれており、法律的な観点からも会計について学ぶことが可能です。
また、財務分析を通じた具体的な経営状況の把握については、ほかの資格試験では勉強する機会がなかなかないため、その点でも魅力的な資格と言えます。
ビジネス会計検定の詳細については、「ビジネス会計検定とは?試験の内容をご紹介!」をご参照ください。
2) どんな人に向いているか
【財務諸表を読めるようになりたい人】
財務分析スキルは、ビジネスにおいて幅広い場面で、役に立ちます。
例えば、得意先との取引の際、財務分析を行うことにより与信管理の精度を上げ、貸し倒れのリスクを回避することが可能となります。
また、株式投資の際の投資対象企業の選定において、対象企業の財務情報を分析する際にも、役に立ちます。
特に、財務諸表を『作る』よりも『読む』ことに特化したいと考えるなら、おすすめの資格と言えるでしょう。
【マネジメント能力を身につけたい人】
企業の経営判断を行う、いわゆる『管理職』の方にも、ビジネス会計検定はおすすめです。
自社の分析を行うことにより、内部統制の改善や、設備投資などの将来の経営において重要な判断を下すことも、可能となります。
経営において必要不可欠な数字に対する感覚を磨くにも、ビジネス会計検定はおすすめと言えます。
(その他のビジネス会計検定の役立て方については、「ビジネス会計検定は意味ない?役に立つ?」をご確認ください。)
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。
頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
2. 日商簿記検定
1) 試験概要
・勉強時間:100~300時間
・試験時期:毎年6月、11月、2月
・受験資格:制限なし
・合格率:3級約40%、2級約20%
経理・会計資格で最も知名度が高い、『日商簿記検定』。
総務省統計局が公表している経済センサスによると、日本には会社が約385万社あります。
そしてその多くは、いくら使ってどのぐらい儲けたのか?どのぐらい財産が残っているのか?といった会社の経営成績や財産状況を、簿記により把握しています。
まさしく簿記は、企業が経済活動を続けていく上で、必要不可欠な能力と言えます。
先程紹介した通り、簿記検定は『日々の取引を記録し、仕訳などを通じて貸借対照表や損益計算書という財務諸表を作成する事』を主な目的としており、会計の基本的な知識を身につけることができます。
2) どんな人に向いているか
【会計の基礎知識を身につけたい人】
簿記はビジネスパーソンにとって、必須のスキルと言えます。
ビジネスでは、様々な取引によってお金のやり取りを行い、収益費用を計算した後に、最終的に利益を生み出す事を目的としております。
そのため、その仕組みを理解出来ている人材は、非常に重宝されます。
会計の基礎知識を身につけることで数字が読めるようになり、売上だけでなくコスト面などの全体の数値管理も考慮に入れた仕事ができるため、これまで以上の仕事が出来るようになるでしょう。
より大きな視点で仕事をしたい人には、簿記検定は魅力的な資格と言えます。
【就職、転職を考えている人】
日商簿記検定は、あらゆる資格ランキングで1位に選ばれるほど、人気の資格です。
毎年約50万人が受験する検定試験であり、会計系資格で圧倒的な人気を誇っています。
その主な理由の1つが、就職・転職で評価される点です。
前述の通り、簿記はビジネスパーソンにとって必須のスキルです。
また、会社には、毎年いくら儲かって、いくら税金を払うのかを計算して、申告する義務があります。
そのため、簿記のスキルは企業からのニーズが高く、履歴書に書かれているだけで高評価に繋がりやすいです。
特に、経理や会計の仕事に就きたい人は、希望通りの職種に就ける可能性が、高まることでしょう。
(簿記検定については、「簿記の必要性とは?3級、2級、1級それぞれに分けて解説!」も合わせてご確認ください。)
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
3. 建設業経理士
1) 試験概要
・勉強時間:100時間
・試験時期:9月・3月
・受験資格:制限なし
・合格率:2級約35%
簿記は、経理全般で活かすことのできる資格です。
これに対して、建設業に特化した経理の能力を問う資格が、『建設業経理士』です。
経営審査事項という公共工事受注の際に要求される審査において、建設業経理士(2級以上)の人数が評価項目として挙げられており、社会的必要性の高い資格となります。
建設会社は全国にあり、働く場所を柔軟に選択できるのも、魅力の1つです。
2) どんな人に向いているか
【経理として専門性を高めたい人】
経理の中でも、より高い専門性を身につけたい方に、おすすめの資格となります。
簿記で会計の基礎知識、つまりは経理としての「広く浅い」知識を身につけ、建設業経理士で会計の専門知識、つまりは経理としての「狭く深い」知識を身に付けることができます。
簿記であれば持っている人も多数いますが、「簿記×建設業経理士」ともなると人数がだいぶ減り、他者との差別化要素にもなりやすいです。
4. MOS(Excel)
1) 試験概要
・勉強時間:50~100時間
・試験時期:
(全国一斉試験)毎月1~2回
(随時試験)各試験会場の指定日
・受験資格:制限なし
・合格率:非公開
『MOS(Excel)』とは、「マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト」の略であり、マイクロソフトの中でもExcelに特化した資格のことを指します。
マイクロソフトが公式に発表している資格のため、取得によりExcelの利用スキルを、客観的に証明することが可能となります。
Excelの能力は計算や集計作業も含め、仕事の効率化や生産性を上げるのに必要不可欠なスキルのため、資格取得により活躍の場が大きく広がることが期待される資格となります。
ほかの資格と違い毎月試験が実施されており、気軽に受験を考えることが出来るのも、魅力の1つと言えるでしょう。
2) どんな人に向いているか
【より実用的な能力を身につけたい人】
当たり前ではありますが、社会人として働くにあたり、PCは必ず使用することとなります。
特にExcelについては、表や資料の作成、集計作業、社内でのデータ管理など、使用できる場面は多岐にわたります。
よって、企業で働くにあたって勉強した内容を必ず使うことになるので、実用性が非常に高い資格と言えます。
【PCのスキルアップを図りたい人】
社会人としてある程度経験を積んだ人が、ステップアップを図る上でも、MOSはおすすめです。
会社によっては、Excelの関数を1つ使えば終わる作業を、手入力で何時間もかけて行っている、という事もあります。
そうした中でExcelの知識を身につけることで、業務の効率化を図ることが出来れば、周りから一目置かれる存在になれるかもしれません。
MOSはそんな可能性を持った、資格であると言えるでしょう。
5. ファイナンシャルプランナー
1) 試験概要
・勉強時間:250~400時間
・試験時期:毎年5月、9月、1月
・受験資格:
(3級)FP業務に従事している者または従事しようとしている者
(2級)3級技能検定の合格者、業務に関し2年以上の実務経験を有する者など
・合格率:3級 70%、2級 40%
前述のビジネス会計検定や簿記検定は、「企業」のお金周りに関する知識を学習する資格でしたが、『FP:ファイナンシャルプランナー』は「個人のお金」に関する知識を学習する資格となります。
人生の目標などを叶えるために相談者と一緒に資金計画を立てて、経済的な面からサポートする専門家である、FP。
勉強範囲に、
・社会保険
・健康保険
・年金
・生命保険
・損害保険
・税金
・不動産
・資産運用
などが含まれているため、個人のお金に関する基本的な知識について、試験勉強を通じて学ぶことができます。
お金の流れを理解するには、うってつけの資格試験と言えるでしょう。
2) どんな人に向いているか
【お金周りの苦手意識をなくしたい人】
金融に関する制度や法律、専門用語は難しい表現が多いので、言葉だけでとっつきにくさを感じる方も、いらっしゃるかと思います。
対策方法の1つとして、お金に関する基礎知識をつけることが考えられます。
FPの勉強をすることで、基本的な言葉の意味を知る事ができ、お金に関する苦手意識がなくなります。
その結果として、経済や金融のニュースについて、内容を深く理解出来るようになるでしょう。
【ライフプランをしっかり立てたい人】
FP技能検定は、家計管理から老後の生活設計や住宅資金に関する知識まで、幅広い試験範囲となっております。
具体的には、子供の入学や進学、家や車の購入、何かあった時の生命保険の設計金額など、将来のライフプランに伴ってかかる資金計画の立て方を、学ぶことができます。
色々な人の意見を聞くことも可能ですが、自分でライフプランを設計し収支状況や財産の管理をしたいという方には、FPの資格はおすすめと言えます。
その他のFPを取得するメリットについては、「ファイナンシャルプランナーのメリットとは?日常生活にも役立つ!?」も合わせてご確認ください。
6. 中小企業診断士
1) 試験概要
・勉強時間:1,000時間~
・試験時期:
(一次試験)8月上旬
(二次試験)10月上旬~下旬
・受験資格:制限はなし
・合格率:一次約20%、二次約20%
『中小企業診断士』とは、経営コンサルタントの技能を証明する唯一の国家資格です。
勉強範囲は多岐に渡り、マーケティング論から、生産管理や販売管理、知的財産権や会社法まで、経営に関する幅広い分野の知識が身に付きます。
資格としては難関資格に該当するため、必要な勉強時間は多くなります。
ただ、持っていれば一目置かれたり、会社によっては資格手当が支給されたりなど優遇されることもあるので、スキルアップ・キャリアアップにとても有用な資格であると言えます。
2) どんな人に向いているか
【経営全般の知識を身につけたい人】
『中小企業診断士』は会計のほか、マーケティングから法律の知識など「経営全般の高度な知識を有している」能力を証明する資格であり、『日本版MBA』と言われるぐらい難易度の高い資格です。
それゆえ、広く深く経営に役立つ知識を学べるため、「もっと俯瞰的な視点を持ちたい」、 「自社の経営判断の際に役立ちたい」という方にはおすすめの資格となります。
(中小企業診断士については、「中小企業診断士の5つの魅力」も合わせてご確認ください。)
7. 公認会計士
1) 試験概要
・勉強時間:3,000時間~
・試験時期:
(短答式)毎年5月、12月
(論文式)毎年8月
・受験資格:制限はなし
・最終合格率:約10%
会計系資格の最高峰であり、「日本三大国家資格」の1つと呼ばれている、『公認会計士』。
主な業務としては、独占業務である「財務諸表監査」が挙げられます。
他にも、経営戦略の立案、上場案件やM&A、組織再編などについて支援するコンサルティングも、業務の一部となっております。
(公認会計士の詳細については、「公認会計士とは?わかりやすく簡単に解説します!」をご参照ください。)
2) どんな人に向いているか
【会社経営に興味がある人】
公認会計士であれば、若い年次から企業の役職者と接することができます。
また、基本的に複数の企業を担当することとなり、多くの企業の内部数値を見ることができます。
つまり、会社経営のノウハウを、財務会計面から覗き見ることができるのです。
そのため、会社経営に興味がある人には、公認会計士はおすすめの資格と言えます。
【大規模案件でやりがいを感じたい人】
「財務諸表監査」は大規模法人にのみ行われるため、必然的に仕事1件ごとの規模が大きく、責任も重くなります。
その中で高度な専門知識と定められたルールに従って、正確に業務を遂行する必要があるため、他の仕事では味わう事のない充実感とやりがいを感じることができます。
勉強時間から年単位の膨大な努力は必要ですが、専門職として安定した職種につき、なおかつ大きな仕事も行いたい方は、公認会計士を選択肢の1つとして考えてみても、良いのではないでしょうか。
★筆者の体験談
筆者も公認会計士なのですが、会計系で手に職を付けたいなら公認会計士はおすすめの資格となります。
一方で、私自身も4年程度勉強期間を要しており、気軽に受験できる試験でないのも事実です。
公認会計士という資格の活かし方も人それぞれですので、その1つとしてぜひ以下の筆者の体験談にも目を通してみてください。
「公認会計士のキャリア:監査法人⇒ベンチャー⇒自営業の私の経験談!」
8. 税理士
1) 試験概要
・難易度:★★★★★
・勉強時間:3,000時間~
・試験時期:毎年8月
・受験資格:いずれか1つに該当する者
(学識)大学、短大、高等専門学校で法律学又は経済学を1科目以上履修 etc.
(資格)日商簿記検定1級又は全経簿記上級合格 etc.
(職歴)経理又は税理士業務等に2年以上従事した者 etc.
・合格率:約15%
公認会計士と同じく、会計系の最難関資格として知名度が高い、『税理士』。
税理士とは、その名の通り税務に関する専門家であり、税務代理や税務書類の作成、税務相談などを独占業務として行う者を言います。
公認会計士が企業の「監査業務」を主体としているのに対し、 税理士は申告書の作成や税務相談など「税金」に特化した業務を行う事が主な違いとなっています。
2) どんな人に向いているか
【独立開業したい人】
最新の税理士実態調査報告書によると、税理士のうち「開業税理士」が約7割を占めており、平均年収も744万円と高い水準となっております。
独占業務が多くほかの士業に比べ独立が容易であり、クライアントの確保は課題となりますが、相続などの大型案件により年収数千万も狙えるため、専門職で自分の力を試したいという方にはおすすめの資格です。
税理士については、「ビジネス会計検定は税理士試験のために受けても無駄!?」も合わせてご確認ください。
9. 終わりに
経理・会計・財務資格について紹介しましたが、いずれの資格についてもまずは、自分自身の成長したい、ステップアップしたいという気持ちが、そのスタートとなります。
この記事が読んでくださった方にとって、チャレンジのきっかけの1つとなれば、とても嬉しく思います。
10. まとめ
◆『日商簿記検定』➡会計の基本的な知識をつけたい人
◆『建設業経理士』➡経理としてより専門性を身につけたい人
◆『MOS(Excel)』➡PCのスキルアップを図りたい人
◆『FP』➡個人のライフプランをしっかり立てたい人
◆『中小企業診断士』➡経営全般の高度な知識を身につけたい人
◆『公認会計士』➡専門職として大きな案件に関わりたい人
◆『税理士』➡独立開業がしたい人