「そもそも簿記に合格して何か意味あるの?」
「簿記はいらない資格なのかな。。」
簿記検定に興味を持った人ならば、一度はこのように考えたことがあるのではないでしょうか?
簿記は本当に学習しても、意味のないものなのでしょうか?
そこで今回は、簿記がいらないと言われる理由について解説していきます。
本記事の内容をもとに、簿記に関して理解を深めてください。
1. いらないと言われる5つの理由
1) 実務の中で学べば良い
2) 経験で仕事はできる
3) 転職に役に立たない
4) AIに取って代わる
5) 専門家を利用すれば問題ない
2. まずは簿記2級まで取得しよう!
3. 終わりに
4. まとめ
1. いらないと言われる5つの理由
1) 実務の中で学べば良い
簿記がいらないと言われる1つ目の理由としては、「実務の中で学べば良い」ことが挙げられます。
仮に実務で簿記の知識が必要だとしても、普段の業務の中で身に付ければよく、わざわざ検定試験を受験する必要はないと考える方もいます。
例えば経理であれば、普段の業務の中で仕訳を切り、帳簿を作成して、決算書を作り上げるという作業を行っているため、確かに簿記について学ぶ機会は実務の中にたくさん転がっています。
しかし、普段の作業というのはマニュアル化されているものが多く、理屈がわからなくてもとりあえず作業は完了できてしまい、かつ、作業スピードも求められるため、簿記の理屈を学ぶ機会というのはなかなかないです。
また、経理であれば、よほど小さい企業でない限り、自分が担当するのは一部の勘定科目・作業であり、簿記で学ぶことのできる経理の全体的な流れを把握していないと、木を見て森を見ずとなってしまいます。
そのため、体系的に簿記に関して学ぶことができる簿記検定試験を利用した方が、効率的かつ効果的に簿記を身に付けることができます。
もちろん実務の中で学んでいくことも重要ですが、あくまで基礎的な土台となる知識があることが前提となります。
以上より、「実務の中で学べば良い」ことは、簿記がいらない理由とは言えません。
単に「簿記」といった場合に、実は3つの種類があるのをご存じでしょうか?
日本商工会議所が主催している「日商簿記」、全国商業高等学校協会が主催している「全商簿記」、全国経理教育協会が主催している「全経簿記」の3つとなります。
3つの簿記検定の間に優劣が存在するわけではなく、対象とする受験者層が以下のように異なります。
・日商簿記:社会人・学生
・全商簿記:商業高校の学生
・全経簿記:経理専門学校の学生
詳細につきましては、「簿記の種類とは?日商vs全商vs全経」をご参照ください。
2) 経験で仕事はできる
簿記がいらないと言われる2つ目の理由としては、「経験で仕事はできる」ことが挙げられます。
何の職種でもそうですが、簿記の知識がなくても、普段の業務に何も支障はないかと思います。
つまり、仕事というのはたいてい実務の中で培った「経験」があれば、普通にこなすことは可能です。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、確かに簿記の知識がなくて不利に働くことが少なかったとしても、有利に働く機会を逃している可能性があるということです。
例えば、簿記の資格を持っていると、各職種ごとに以下のようなメリットがあります。
① 経理の場合
経理の場合は、普段行っている業務の背景を理解することができ、上司や経営層に対する報告を苦なく行うことが可能となります。
報告の際に「利益が増加しているんだけどなんで?」「なんでこの会計処理を採用したの?」など、聞き返されることに怯えている人も多いかと思います。
本来1つ1つの質問内容は基本的なもののはずなのですが、自分に簿記に関する基礎的知識がないと、回答に自信が持てず、結果として不安になってしまいます。
また、質問する側に立ってみればわかるのですが、背景知識を理解している人間とただ機械的に作業をこなしている人間の2人いた場合に、どちらを頼りたいかというと、当然前者となります。
自分の発言に自信を持つためにも、また、上司や経営層に信頼されるためにも、経理にとって簿記は必要な知識となります。
② 営業の場合
営業、特に法人営業の場合は、これから取引を行う企業の財務状況について、簿記の知識があれば理解することができます。
・営業キャッシュフローが毎年マイナスであり、取引しても本当に代金を回収できるのだろうか?
・収益性がここ何年か低い状況が続いているので、コスト削減の点から営業すればうまくいくかもしれない。
このように、簿記の知識を利用して、取引の可否の判断だけでなく、効果的なプレゼンまで行えるようになるため、営業にとって簿記は必要な知識となります。
③ エンジニアの場合
エンジニアの場合は、簿記を学ぶことで、経理の利便性を意識したシステム開発が可能となります。
会社のお金周りの情報は、最終的に全て経理に集まります。
つまり、営業やマーティングなど、どの部署のシステム開発を行うにせよ、最終的には経理が決算書を作成するために必要なデータを収集しやすいように、設計する必要があります。
また、経理周りのシステム開発・保守などを行う際にも、当然に簿記の知識を持っているエンジニアは重宝されます。
さらに、簿記の知識を利用して自社の決算書を理解することで、エンジニアの置かれている状況を正しく理解することも可能となります。
一昔前であれば、エンジニアはただシステムの開発のみに専念していればよかったのですが、今ではそれだけでは差別化が難しくなっており、会社の売上や予算を加味したプロジェクトマネジメントができるエンジニアが求められております。
会社から必要とされる人材になるためにも、エンジニアに簿記の知識は必要となります。
④ 人事の場合
人事の場合は、面接や採用説明会の際に、簿記の知識を利用して自社や競合の状況を数字をもとに説明することで、より優秀な人材を獲得できるようになります。
優秀な人材であればあるほど、事前に会社や競合の状況をリサーチしております。
面接や説明会で事前に自分が調べてきた情報について採用担当者が知らなかった場合、一気に信頼を失うこととなります。
「私は人事なので、この点については経理に聞いてみないとわかりませんね。。。」
では済まされません。
応募者からしたら、今目の前にいる人事担当が会社を代表して来ているのであり、それ以上でも以下でもありません。
より優秀な人材を獲得するためにも、人事に簿記の知識は必要となります。
このように、いずれの職種においても簿記を学ぶことはメリットがあり、経験にプラスアルファの付加価値が生まれます。
以上より、「経験で仕事はできる」ことは、簿記がいらない理由とは言えません。
決算書を「理解」するために簿記の知識は非常に役に立ちますが、もう一歩進んで決算書を「分析」するために必要なスキルを身に付けるためには、ビジネス会計検定がおすすめとなります。
決算書を分析するために必要となる最低限の財務諸表に関する知識をまず学び、その後、収益性・安全性・成長性といったいろいろな切り口からの分析手法について学習していきます。
ビジネス会計検定の詳細については「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご確認ください。
3) 転職に役に立たない
簿記がいらないと言われる3つ目の理由としては、「転職に役に立たない」ことが挙げられます。
簿記を持っていたからといって、経理に転職できるわけではありません。
経理以外の職種であれば、言わずもがなです。
資格や検定を取得してスキルアップを目指す人の中には、その先に就職・転職を考えている方も多くいます。
そのため、転職に役に立つか否かといった判断基準で簿記の価値を判断すること自体は、1つの考え方として問題ないかと思います。
ここで注意していただきたいのは、確かに簿記を持っていたからといって必ずしも転職に有利に働くとは限りませんが、多くの場合、有利に働く可能性が高いということです。
まず、意外に見落としがちで最も重要なのが、転職先企業選定の際の簿記の利用についてです。
多くの方が書類選考や面接で簿記が活きるかどうかをまず考えがちですが、そもそも自分が入るに値する企業なのかを検討する必要があり、お先真っ暗な企業を転職先に選ぶくらいなら、転職しない方が良いです。
・売上が減少している場合は利益も減少しているのか?
・利益が変わらない場合はコストカットを実施しているはずだが、カットされているのは人件費ではないか?
といった基本的な内容についても、簿記の知識がないと見落としがちです。
次に、書類選考の場面でも、簿記の知識は役に立ちます。
選考する側の立場になって考えればわかるかと思うのですが、書類で明確な優劣がつくことは少なく、まったく同じ経歴の2人のうちどちらかを選ぶ必要があった場合に、簿記などの資格・検定が最終的な優劣を判断するケースもあります。
そのため、書類選考においても簿記を取得しておいて損することはありません。
また、先述のようにどの職種においても、転職後の実務で簿記の知識は役に立ちます。
このように、転職の多くの場面において、簿記の知識は役に立ちます。
以上より、「転職に役に立たない」ことは、簿記がいらない理由とは言えません。
4) AIに取って代わる
簿記がいらないと言われる4つ目の理由としては、「AIに取って代わる」ことが挙げられます。
AIの技術が発展していくと、簿記などの定型作業はAIに代替されると言われております。
であれば、簿記を学ぶ意味はないのでは?と考える人も多いかと思います。
確かに一部の簿記関連作業は代替されることとなりますが、全ての業務が代替されるわけではありません。
また、代替された業務に関しても、作業が不要となるだけで理屈を理解しなくてよいわけではありません。
むしろAIの台頭により、会計的な論点とは関係のない単純作業から解放され、今後は簿記で学ぶような会計知識が必要となる作業に集中することができます。
そのため逆に言えば、特に経理においては、今後簿記の勉強を怠る人はついていけなくなり、仕事を奪われる可能性が高いです。
AIの台頭により簿記がいらなくなるのではなく、簿記をより勉強する必要があるという事実は忘れないでください。
(「経理はAIでなくなる!?人工知能に負けないためには??」も合わせてご確認ください。)
以上より、「AIに取って代わる」ことは、簿記がいらない理由とは言えません。
5) 専門家を利用すれば問題ない
簿記がいらないと言われる5つ目の理由としては、「専門家を利用すれば問題ない」ことが挙げられます。
「普段の業務で特に簿記がなくても困らないし、何かあれば公認会計士や税理士の先生に丸投げするから大丈夫」という人がいるかもしれません。
ただここにも大きな落とし穴があるのですが、そもそも会計の専門家に依頼するのに、自分が会計について基礎を理解していなければ、会話自体が成り立ちません。
つまり、質問内容を作成することができず、また、専門家からの回答を理解することもできません。
何の分野でも言えることですが、専門家を利用する場合は深い知識は必要ないですが、最低限の広く浅い基礎知識を自分自身が身に付けておく必要があります。
そして、会計分野の広く浅い基礎知識を身に付けるためには、簿記検定の勉強が効果的です。
(専門家の利用については「経理を税理士に任せない方がいい4つの理由」もご確認ください。)
以上より、「専門家を利用すれば問題ない」ことは、簿記がいらない理由とは言えません。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
2. まずは簿記2級まで取得しよう!
一般的に簿記がいらないと言われている理由と、実際は簿記は必要である理由について解説してきました。
ただ、「勉強が必要なのはわかったけど、どこまで学習すればいいの?」と思われたかもしれません。
結論としては、簿記2級までの取得をおすすめします。
詳細について、以下で解説していきます。
1) なぜ2級なの?
簿記2級までをおすすめする理由としては、より実践的な内容が盛り込まれていることが挙げられます。
連結会計や工業簿記など、2級から追加される論点を学ぶことで、実務に活かせる知識の幅が広がります。
1級までいくと、知識の幅というよりは知識の深さが試され、また、難易度も非常に高いため、経理でない限りは基本的に1級まで学ぶ必要はありません。
2) 2級合格までの道のり
簿記2級合格までの道のりについては、以下の「難易度・合格率」「勉強時間」「勉強方法」についてご確認ください。
・テキスト、問題集は1つを使う。
・いきなり勉強計画を立てない。
・インプット、アウトプットの繰り返し。
・当日、1週間後、1か月後の復習。
・とにかく手を動かす。
・自分に合った解き方を探す。
・必ず合格する!という強い気持ち。
*参考:簿記で合格点をとる勉強方法7選!」
3. 終わりに
簿記がいらないと言われる理由について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
本記事でお伝えした通り、簿記は多くの職種、多くの場面で活きてくる必要な知識であり、決して不要なものではありません。
もちろん向き・不向きはあるかと思いますが、とりあえず勉強してみてはいかがでしょうか?
4. まとめ
◆簿記よりも仕事で培われる経験の方が大事?
◆転職に使えない?
◆AIによりいらなくなる?
◆会計士などを利用すれば問題ない?