簿記の難易度・真の合格率とは?他資格と徹底比較!

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簿記検定の受験を検討している、あるいは簿記に興味のある皆様の初めの関心事と言えば、簿記ってどのくらい難しいの?といった難易度に関するものではないでしょうか?

実は簿記は、一般的に公表されている合格率を鵜呑みにするのではなく、真の合格率を見極めて受験を検討する必要があります。

そこで今回は、簿記検定の難易度・合格率について紹介していきます。

他の資格との比較も行っておりますので、お気軽に読んでみてください。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 簿記の難易度・合格率とは?

1) 簿記検定の合格率

主催者である日本商工会議所が公表している簿記検定の合格率は、以下となります。

 

簿記3級
(回)
合格率
165回 34%
164回 34%
163回 37%
162回 30%
161回 46%
160回 51%
159回 27%
158回 29%
157回 67%
156回 47%
155回 中止
154回 49%
153回 43%
152回 56%

 

簿記2級
(回)
合格率
165回 12%
164回 21%
163回 25%
162回 21%
161回 27%
160回 18%
159回 31%
158回 24%
157回 9%
156回 18%
155回 中止
154回 29%
153回 27%
152回 25%

 

簿記1級
(回)
合格率
165回 17%
164回 13%
162回 10%
161回 10%
159回 10%
158回 10%
157回 8%
156回 14%
155回 中止
153回 10%
152回 9%

 

おおよそですが、公式で公表されている合格率は3級「40%」2級「20%」1級「10%」となります。

 

2) 申込者のうち2割が離脱

各年度の受験者(申込者)数と実受験者数(実際に試験を受けた人数)をまとめると以下のようになります。

離脱率(申し込みはしたが受験しなかった人の割合)に注目して確認してみてください。

 

簿記3級
(回)
受験者 受験者
(実)
離脱率
165回 30,387 25,727 15%
164回 31,818 26,757 16%
163回 37,493 31,556 16%
162回 39,055 32,422 17%
161回 43,723 36,654 16%
160回 52,649 44,218 16%
159回 58,025 49,095 15%
158回 58,070 49,313 15%
157回 70,748 59,747 16%
156回 77,064 64,655 16%
155回 中止
154回 100,690 76,896 24%
153回 99,820 80,130 20%
152回 91,662 72,435 21%

 

簿記2級
(回)
受験者 受験者
(実)
離脱率
165回 11,572 9,511 18%
164回 10,618 8,454 20%
163回 15,103 12,033 20%
162回 19,141 15,570 19%
161回 16,856 13,118 22%
160回 21,974 17,448 21%
159回 27,854 22,626 19%
158回 28,572 22,711 21%
157回 45,173 35,898 21%
156回 51,727 39,830 23%
155回 中止
154回 63,981 46,939 27%
153回 62,206 48,744 22%
152回 55,702 41,995 25%

 

簿記1級
(回)
受験者 受験者
(実)
離脱率
165回 12,886 10,251 20%
164回 11,468 9,295 19%
162回 12,286 9,828 20%
161回 11,002 8,918 19%
159回 11,389 9,194 19%
158回 9,310 7,594 18%
157回 7,785 6,351 18%
156回 10,078 8,553 15%
155回 中止
153回 9,481 7,520 21%
152回 8,438 6,788 20%

 

離脱率からわかるように、実は簿記検定は申込者のうち約2割が受験しない試験となっております。

簿記検定は資格として非常にメジャーであり、とりあえず申し込む人が多いのが原因と考えられます。

 

3) 真の合格率は?

このとりあえず申し込んだ層の中には、

① 勉強が間に合わなかったから受験するのをやめた。(離脱率約2割の人達)
② 勉強は間に合わなかったが、申し込んだからとりあえず受験した。

の2パターンがあります。

合格率は実際に受験した人達(実受験者数)を分母として計算されているため、①の層は合格率から除外されています。

一方で、真の合格率を計算しようと考えた場合、②の層も合格率から除外する必要があります。

②の層がどの程度の割合か正確な数値はわかりませんが、①の層と同程度だと仮定すると、②を加味した真の合格率は以下のようになります。(合格率算定の分母を「受験者数 ×(1-離脱率×2)」で計算する。)

 

簿記3級
(回)
合格率 真の合格率
165回 34% 41%
164回 34% 42%
163回 37% 45%
162回 30% 38%
161回 46% 57%
160回 51% 63%
159回 27% 33%
158回 29% 35%
157回 67% 82%
156回 47% 59%
155回 中止
154回 49% 71%
153回 43% 57%
152回 56% 76%

 

簿記2級
(回)
合格率 真の合格率
165回 12% 15%
164回 21% 28%
163回 25% 33%
162回 21% 27%
161回 27% 38%
160回 18% 24%
159回 31% 40%
158回 24% 32%
157回 9% 12%
156回 18% 26%
155回 中止
154回 29% 45%
153回 27% 37%
152回 25% 38%

 

簿記1級
(回)
合格率 真の合格率
165回 17% 23%
164回 13% 16%
162回 10% 14%
161回 10% 13%
159回 10% 13%
158回 10% 13%
157回 8% 10%
156回 14% 17%
155回 中止
153回 10% 13%
152回 9% 11%

 

いかがでしょうか?

特に3級に関しては、しっかりと勉強すれば約4~5割の人が受かる試験と言えます。(*第158回から試験時間等の大幅な変更があり、3級の合格率が一時的に下がっております。)

まずは簿記3級から挑戦して、自身に適性があるかどうか判断されるのも良いかと思います。

ちなみに簿記は2級からの受験も可能ですが、3級からの受験がおすすめです。

詳細につきましては「簿記2級からいきなり受験?受験資格はないので可能?」をご参照ください。

★簿記のおすすめ通信講座
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。

・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング

詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。

 

2. 他資格との難易度比較

他資格との難易度比較

ここからは、他の資格と簿記検定の難易度の比較をしていきます。

級がある資格・検定については2級同士を比較しております。

 

1) 建設業経理士試験

① 建設業経理士試験の合格率

建設業経理士
2級
合格率
33回 42%
32回 35%
31回 34%
30回 45%
29回 40%

 

建設業経理士2級の合格率は、40%前後の合格率となります。

勉強時間としては100時間程度の勉強が必要となります。

詳細につきましては「建設業経理士とは?ビジネス会計検定・簿記検定との共通点は?」をご確認ください。

 

② 簿記検定との難易度比較

簿記検定2級の合格率と比較すると、建設業経理士2級の方が簡単な試験と言えます。

簿記検定2級は200時間程度の勉強時間を必要とするため、勉強時間の面から考えても簿記2級の方が難しい試験と言えます。

簿記2級の勉強時間については「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご確認ください。

 

2) ビジネス会計検定

① ビジネス会計検定の合格率

ビジネス会計検定
2級
合格率
33回 47%
32回 59%
31回 53%
30回 54%
29回 52%

 

ビジネス会計検定2級の合格率は50%となります。

(「ビジネス会計検定の難易度・合格率は??」をご参照ください。)

 

② 簿記検定との難易度比較

勉強時間は同程度ですが、合格率の観点からはビジネス会計検定の方が簡単な試験と言えます。

また、ビジネス会計検定は簿記検定に比べればまだ認知度が高くなく、受験者層も簿記検定の方がレベルが高いことが想定されるため、この点でも簿記検定の方が難易度が高いと言えます。

両資格は財務諸表を「作成する」側の資格と「分析する」側の資格として非常に相性がいいですので、同時取得も検討してみてください。

簿記検定とビジネス会計検定の関係性については「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」も合わせてご確認ください。

 

3) FP技能検定

① FP技能検定の合格率

【学科試験】

FP技能検定
2級
合格率
(FP協会)
2022/9 42%
2022/5 49%
2022/1 42%
2021/9 51%
2021/5 56%

 

【実技試験】

FP技能検定
2級
合格率
(FP協会)
2022/9 57%
2022/5 62%
2022/1 56%
2021/9 60%
2021/5 67%

 

FP技能検定2級の合格率は30%前後となります。

200時間程度の勉強時間で合格が可能な検定です。

 

② 簿記検定との難易度比較

勉強時間は同程度ですが、合格率から考えると簿記検定2級の方が難易度が高いと言えます。

簿記が「企業のお金の専門家」であるのに対して、FPは「個人のお金の専門家」であるため、両資格の特性を理解して、資格を取得する必要があります。

詳細については「簿記とFPとるなら両方?それとも片方?」をご参照ください。

 

4) 中小企業診断士試験

① 中小企業診断士試験の合格率

【1次試験】

中小企業診断士
1次試験
合格率
2023 30%
2022 29%
2021 36%
2020 43%
2019 30%

*2020年試験は新型コロナウイルスの影響で欠席者が多く、分母にあたる受験者が少なかったため、合格率が高くなっております。

 

【2次試験】

中小企業診断士
2次試験
合格率
2023 19%
2022 19%
2021 18%
2020 18%
2019 18%

 

1次試験は30%、2次試験は20%前後の合格率となっております。

単純計算ですが、30%×20%の6%が、最終的な合格率となります。

合格に必要な勉強時間は1,000時間程度となります。

 

② 簿記検定との難易度比較

合格率から考えると、圧倒的に中小企業診断士試験の方が難しい試験と言えます。

また、試験範囲も中小企業診断士試験の方が広いです。

簿記の知識は、中小企業診断士試験の財務会計に役立ちますので、簿記の勉強をすることは、中小企業診断士試験の勉強につながります。

 

5) 公認会計士試験

① 公認会計士試験の合格率

【短答】

公認会計士試験
短答式
合格率
2023 15%
2022 16%
2021 22%
2020 22%
2019 23%

 

【論文】

公認会計士試験
論文式
合格率
2023 37%
2022 36%
2021 34%
2020 36%
2019 35%

 

短答式が20%程度、論文式が35%程度となっており、最終的な合格率は20%×35%の7%程度となります。

試験範囲も広く、合格に必要な勉強時間は3,000時間程度となります。

 

② 簿記検定との難易度比較

簿記検定1級の合格率と比較すると、公認会計士試験と同程度と言うこともできます。

ただ、簿記1級はあくまで公認会計士試験の会計学に相当するものであり、公認会計士試験ではその他に企業法・監査論・租税法・選択科目があるため、必要な勉強時間が非常に多く、簿記の方が難易度が低いと言えます。

★筆者の体験談
公認会計士試験の受験を検討される方の中には、簿記2級程度をまずとってから受験される方法を考えている方もいるかもしれません。

ただ、公認会計士を目指すことを決意されている方であれば、初めから公認会計士試験の勉強に取り掛かっても問題ないと思います。
何を隠そう、私自身は簿記3級の勉強もせずに、公認会計士試験の勉強から始めました。

それでも合格できましたので、簿記は必須ではないです。
もちろん、簿記の受験自体を否定するわけではなく、簿記から段階的勉強を進めていくのも1つの方法です。

 

6) 税理士試験

① 税理士試験の合格率

税理士試験 合格率
2023 19%
2022 17%
2021 17%
2020 17%
2019 16%

*科目別の受験者・合格者の延人員で算出。

 

15%前後の合格率となります。

税理士試験は1科目ずつ受験できる試験ですので、特定の科目に集中できるという利点はありますが、結果的に全科目に合格するまでの期間が非常に長くなります。

合格までに必要な勉強時間は、公認会計士試験以上の5,000時間程度と言われることもあります。

 

② 簿記検定との難易度比較

勉強時間の点からわかるように、難易度は圧倒的に税理士試験方が難しいです。

税理士試験の「簿記論」はその名前の通り、簿記と関連しておりますので、その意味で簿記の勉強は税理士試験の勉強にもつながります。

 

3. 簿記は楽しい!?

簿記は楽しい!?

皆様は簿記と聞いてどのようなイメージがありますでしょうか?

難易度を見て、何か難しそうで自分には向かないかも、、、と思われた方もいるかと思います。

しかし、簿記と言うのは本来「楽しい」ものです。

そこで最後に、簿記検定の「楽しさ・おもしろさ」について紹介していきます。

 

1) 貸借が必ず一致するパズル

簿記の基本と言えば「仕訳」です。

仕訳とは、ビジネス上の取引を資産・負債・純資産・収益・費用に分類して、その増減を借方(左側)と貸方(右側)に記載したものを言います。

例えば、商品10万円を掛け取引で販売した場合の仕訳は、

借方 貸方
売掛金 100,000 売上 100,000

となります。

仕訳は貸借の金額が一致するので、仕訳を全て合算しても当然に貸借は一致します。

、、、それが何か?と思われたかもしれませんが、冷静に考えると、これはかなりすごいことです。

あらゆるビジネス上の取引が仕訳で表され、その合計額は必ず貸借で一致します。

つまり、もし貸借が一致しない場合は、すぐに何かおかしいということがわかります。

そのため、簿記はある種のパズルのようなものと言えます。

貸借を一致させるパズルだと思えば、ゲーム感覚で簿記を楽しめるのではないでしょうか?

 

2) 売上?費用?利益?の知ったかをなくす!

よくテレビやネットのニュースで「○○社が過去最高益を更新。」「○○社が増収増益で好調。」など、売上・費用・利益といった各種会計用語が飛び交っています。

何となく意味をわかったつもりでいる方も多いかと思いますが、本当に理解していますでしょうか?

例えば、過去最高益と言っても、その利益とは一体何の利益でしょうか?

営業利益でしょうか?

経常利益でしょうか?

当期純利益でしょうか?

簿記を勉強することで、売上・費用・利益といった日常で目にする会計用語の、本当の意味を理解することができます。

普段何気なく見ているニュースが、違ったものに見えてくるかもしれません。

そんな力がつく簿記は、おもしろいと思いませんか?

 

3) 他人に教えられる

簿記は年間50万人程度が受験する、とても規模の大きい資格です。

また、経理以外の職種でも必須の知識であり、ビジネスパーソンの共通言語となりつつあります。

皆様の周りにも、簿記の受験を検討されている方が何人かいても、全く不思議ではありません。

そして、簿記を勉強することで、あなたに簿記を教わりたいという人がでてくるかもしれません。

リアルな場だけでなく、SNS上でも簿記について知識を欲している人はたくさんいます。

大人になってから人にものを教える機会というのは、非常に貴重な機会であり、楽しいものです。

このように、実は簿記は、コミュニケーションツールとしても機能する資格でもあります。

単なる資格の枠に収まらない簿記は、おもしろいと思いませんか?

 

4. 終わりに

簿記の難易度についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

簿記は非常に実用的な資格であり、取得しておいて損はありません。

今後の皆様のキャリアのためにも、このタイミングで受験を一度検討してみてください。

 

5. まとめ

Point! ◆合格率は3級:40%、2級:20%、1級:10%。
◆簿記はとりあえず受験する層も多いので、真の合格率はもっと高い。

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