税理士の勉強をされている方の中には、他の資格・検定に興味を持たれている方もいるかと思います。
候補として簿記検定などは有名ですが、ビジネス会計検定について皆様ご存知でしょうか?
実は毎年着実に受験者数を伸ばして、認知度を高めている人気上昇中の資格です。
そこで今回は、ビジネス会計検定と税理士試験の関係について解説していきます。
ビジネス会計検定は、税理士試験のために受けても無駄になるのか?といった点について後半で解説しておりますので、ぜひ読んでみてください。
1. ビジネス会計検定とは?
1) 試験概要
① ビジネス会計検定とは?
大阪商工会議所が主催する、財務諸表を読み解くための分析力が問われる検定試験となります。
② 受験申込者数
実施回 | 3級 | 2級 |
34回 | 4,163 | 2,496 |
33回 | 4,158 | 2,113 |
32回 | 4,373 | 2,568 |
31回 | 4,588 | 2,271 |
30回 | 4,376 | 2,587 |
29回 | 4,920 | 2,156 |
28回 | 5,216 | 2,860 |
27回 | 4,606 | 2,340 |
26回 | 6,075 | 2,836 |
~ | ||
10回 | 1,988 | 1,799 |
多くの国家資格が受験者数を毎年減少させている中で、ビジネス会計検定は毎年受験者数を伸ばしおり、注目の資格と言えます。
詳細につきましては「国家資格並みに評価・評判が高い?!ビジネス会計検定」をご参照ください。
③ 合格率
実施回 | 3級 | 2級 |
34回 | 71% | 45% |
33回 | 70% | 47% |
32回 | 62% | 59% |
31回 | 67% | 53% |
30回 | 64% | 54% |
29回 | 69% | 52% |
28回 | 68% | 52% |
27回 | 71% | 46% |
26回 | 63% | 54% |
毎回おおよそですが、3級は70%、2級は50%の合格率となっております。
④ 受験日程
年2回(10月・3月)
⑤ 試験形式
5肢択一(全50問)
2) AIに負けない分析力を身に付ける
経理という職業は、AIに代替される職業として一般的に考えられています。
しかし正しくは、AIが得意とする「定型業務」「チェック業務」「分析数値の抽出」はAIに任せて、AIが苦手とする本来経理がやるべき業務に経理人員を集中させることができると言えます。
本来経理がやるべき業務の1つに新たな経営課題を発見する業務があり、その基礎となる財務諸表を分析する能力を身に付けられるのがビジネス会計検定となります。
詳細につきましては「経理はAIでなくなる!?人工知能に負けないためには??」をご参照ください。
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。
頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
2. 税理士試験とは?
1) 試験概要
① 税理士試験とは?
税理士とは、企業や個人事業主に対して、節税対策・会計処理代行・税務申告書作成などを行う、税金を扱う専門家となります。
いかに顧客のために資金を残していくか?金融機関から融資を獲得するか?といった観点から、顧客のパートナーとして活躍する士業となります。
そして、税理士たる資格があるかどうかを見極める試験が税理士試験となります。
② 試験科目
全11科目中5科目合格。
科目合格制度あり。
・簿記論
・財務諸表論
【選択必須科目】*どちらか必ず選択
・所得税法
・法人税法
【選択科目】*2科目まで
・相続税法
・消費税法又は酒税法 *いずれか
・国税徴収法
・住民税又は事業税 *いずれか
・固定資産税
③ 受験資格
受験資格あり。
・大学、短大、または高等専門学校を卒業した者で、法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修している者。
・日商簿記1級合格者。
・公認会計士試験短答式試験に合格している者。
・士業の事務所や会計に関する業務で2年以上働いている者。
2023年度の税理士試験より、簿記論・財務諸表論の受験資格が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
簿記論・財務諸表論は、税理士試験で多くの受験生がまず受験を考える科目であるため、非常に受験しやすくなったと言えます。
④ 受験者数
実施年度 | 受験者数 |
R5(73回) | 32,893 |
R4(72回) | 28,853 |
R3(71回) | 27,299 |
R2(70回) | 26,673 |
R1(69回) | 29,779 |
H30(68回) | 30,850 |
H29(67回) | 32,974 |
⑤ 合格率(科目別の延人員をもとに算出)
実施年度 | 合格率 |
R5(73回) | 18.8% |
R4(72回) | 16.7% |
R3(71回) | 16.5% |
R2(70回) | 17.3% |
R1(69回) | 15.5% |
H30(68回) | 12.8% |
H29(67回) | 17.0% |
⑥ 受験日程
8月最初の火曜日~木曜日(3日間)
⑦ 試験形式
記述式試験
2) 簿記論・財務諸表論
会計科目としては、「簿記論」と「財務諸表論」があります。
簿記論と財務諸表論は税法科目の前提となる会計の知識であるため、税理士試験受験者が初めに受験を検討する科目となります。
また、簿記論と財務諸表論は扱う内容がほとんど一緒であるため、最初に同時受験するケースが多いです。
簿記論と財務諸表論の違いとしては、簿記論は計算問題でありスピード勝負であるのに対して、財務諸表論は計算半分・理論半分であるため、計算と理論の時間配分がポイントとなります。
3) ビジネス会計検定との共通点
税理士試験の必須科目である「簿記論」「財務諸表論」がビジネス会計検定との共通点となります。
簿記論と財務諸表論では財務諸表を作成するためのルールを学ぶのに対して、ビジネス会計検定では財務諸表を分析する手法を学びます。
作成手順を知らなければ詳細に分析することはできませんので、どちらとも大事な知識と言えます。
4) 難易度は圧倒的に税理士試験の方が高い
難易度につきましては、圧倒的に税理士試験の方が難しいです。
ビジネス会計検定1級と税理士試験の合格率を単純に比較すると大差はありませんが、受験者数や受けている層を考えると、税理士試験の方が難易度が高い試験と言えます。
ビジネス会計検定の難易度については「ビジネス会計検定の難易度・合格率は??」をご参照ください。
3. 税理士志望の人がビジネス会計検定を受ける意味はない?
それでは、税理士試験を受験されている人、あるいは受験を検討している人が、ビジネス会計検定を受験するのは意味がないことなのでしょうか?
この点について、順に解説していきます。
1) ビジネス会計検定合格⇒税理士試験
まず始めに、ビジネス会計検定を先に受験して、その後税理士試験を目指す、いわゆるステップアップ資格としてビジネス会計検定を利用するのは意味がないのでしょうか?
結論としては、この方法はあまりおすすめできません。
確かに税理士試験とビジネス会計検定に共通点はあるのですが、税理士を目指しているのであれば、勉強の開始は税理士試験から始めるべきです。
そのため、税理士を目指すことは決めているが、まだ税理士試験の勉強を始めていない人には、ビジネス会計検定ではなく、税理士試験の勉強から開始することをおすすめします。
税理士を目指すか迷われている段階で、会計分野に対する適性が自分にあるのか知りたい場合は、ビジネス会計検定3級を受験して判断するのも1つの方法です。
他にも会計入門者の勉強方法を「会計の入門者におすすめの勉強法7選!」で紹介しておりますので、会計に対する適性が自分にあるかないかを判断する材料にしてみてください。
2) 税理士試験合格⇒ビジネス会計検定
次に、税理士試験合格後にビジネス会計検定を受験するパターンですが、こちらは受験をおすすめしたいパターンとなります。
税理士の仕事として節税や融資を銀行から引き出すこともありますが、顧客企業の財務数値を分析して、経営改善の提案をするのも主な業務の1つです。
その際に、ビジネス会計検定で財務諸表を分析する基礎を身に付けておくと、非常に役に立ちます。
税理士試験を合格された方であれば、ビジネス会計検定はテキストと問題集を購入されて独学で勉強しても十分に合格が可能です。
ビジネス会計検定のテキスト・問題集については「ビジネス会計検定の過去問・テキストは公式一択で決まり!」をご確認ください。
3) 税理士試験勉強中⇒ビジネス会計検定
最後に、税理士試験を勉強中の方が、途中でビジネス会計検定を受験する、あるいはダブル受験するのは意味がないことでしょうか?
基本的には税理士試験の勉強に集中した方が良いです。
ただ、税理士試験は長丁場であり不合格が続くと挫折しそうになることが多くあるため、ビジネス会計検定を成功体験を積む場として利用するのはおすすめです。
よりライトな資格を受験することで、知識の定着を確認することができ、かつ、合格すれば自信につながるため、挫折しそうな時はビジネス会計検定の受験を検討してみてください。
なお、ビジネス会計検定は、基本的に2級までの受験で問題ないと考えられます。
詳細につきましては「ビジネス会計検定は1級まで取得する必要がある?」をご参照ください。
4. 終わりに
税理士試験とビジネス会計検定の関係性について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
大事なのは最終的に自分がどうなりたいかを見極めて、その道に必要な方法を選択することです。
税理士試験にしろビジネス会計検定にしろ、資格や検定はあくまで手段なので、目的をしっかりと見定めて決断してください。
5. まとめ
◆難易度は圧倒的に税理士試験の方が高い。
◆税理士を志望しているのであれば、基本的にはビジネス会計検定を受ける必要はない。
◆勉強期間が長期間になり挫折しそうな際に、成功体験を積む場としてビジネス会計検定を利用するのはOK。