ITエンジニアと簿記・会計は一見何の関係もないように思われます。
そのため、ITエンジニアが簿記・会計を学ぶのは時間の無駄と考える人も多いかもしれません。
しかし、実はITエンジニアこそ簿記を学ぶメリットが大きいです。
そこで今回は、ITエンジニアが簿記・会計を学ぶべき理由をお伝えしていきます。
ぜひ簿記・会計の勉強を始めるきっかけにしてみてください。
1. システムエンジニアとITエンジニアは違う?
2. 簿記とは?
3. ITエンジニアが簿記を学んでも意味がない?
4. 何級まで勉強するのがベスト?
5. どのくらいの勉強期間が必要?
6. 会計のおすすめ勉強方法とは?
7. 終わりに
8. まとめ
1. システムエンジニアとITエンジニアは違う?
1) ITエンジニアとは?
ITエンジニアのITとはInformation Technology(情報技術)のことであり、いわゆるエンジニアの総称のことをITエンジニアといいます。
システムエンジニアやプログラマーなどはITエンジニアの中の具体的な職業の名称となります。
次項以降で各職業の概要を説明していきます。
2) システムエンジニア
システムエンジニア(SE)とは、顧客のヒアリングを通じてシステムの要件を定義して、基本設計やテストなどを行う職業となります。
人員や予算、進捗などを管理するマネジメント的な業務も担っており、コミュニケーション能力やマネジメント能力が求められます。
3) プログラマー
プログラマーはシステムエンジニアが定義した要件に基づいて、実際にプログラミングをする職業となります。
システムエンジニアと比較すると給料が比較的安くなることが多いです。
4) サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、サーバーの構築・運営・保守を行う職業となります。
サーバーの通信速度・利用電源容量・コストバランスなどが適切かを判断しながら、運用しやすいサーバーを構築します。
5) ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアとはコンピューターネットワークの設計・構築・運用を行う職業を言います。
専門知識のないお客さんのネットワークトラブルに対応する必要もあり、難解な用語を初心者でもわかるように説明するといったコミュニケーション能力が求められます。
2. 簿記とは?
簿記とは何か?と聞かれて皆様即答できますでしょうか?
エンジニアの方でなくとも、簿記の意味を答えられる人は少ないかと思います。
「簿記」とは、「会計」という自社の状況を関係者に説明する分野において、日々の取引を帳簿に記録する「経理」が、自社の資産・負債や売上・利益などが記載された「財務諸表」を作成するための技術のことを言います。
各用語の詳細については「簿記とは何かを簡単に初心者にわかりやすく解説します!」で説明しておりますので、合わせてご確認ください。
3. ITエンジニアが簿記を学んでも意味がない?
それでは本題ですが、ITエンジニアが簿記を学んでも意味がないのでしょうか?
冒頭でお伝えした通り、ITエンジニアこそ簿記を学ぶメリットが大きいです。
その理由を5つ紹介していきます。
1) ビジネスを理解しないと求められているものは作れない:理由①
システムにしろ、サーバーにしろ、ネットワークにしろ、全てはビジネスを成功させるため、つまりは利益をあげるために必要となります。
そのため、背景にあるビジネスを理解しないと、本当に必要とされているシステム・サーバー・ネットワークを作成することはできず、的外れなものとなってしまいます。
クライアントや社内の他部署とのコミュニケーションで、エンジニアの場合どうしてもシステムよりの意見となってしまい、その先にあるビジネスを理解できてないと思われてしまいます。
ここで、ビジネスを理解すると一言でいっても、どのようにすれば良いのでしょうか?
営業やマーケティング担当であれば、普段の業務の中でビジネスを理解する機会は多々ありますが、エンジニアの場合はそうはいきません。
エンジニアの場合はまずは基礎的な知識を理解しておく必要があり、その際に必要最低限の内容が資格試験として整理されている簿記検定がおすすめとなります。
売上・費用・利益といった基本的な項目から勉強できますので、非常におすすめです。
ビジネスを理解するという点ではビジネス会計検定もおすすめです。
ビジネス会計検定の詳細については「ビジネス会計検定の難易度・合格率は??」をご参照ください。
2) 会計システムの作成に役立つ:理由②
ITエンジニアが簿記を学ぶ2つ目のメリットは、会計周りのシステムを構築する際に役に立つという点です。
経理の仕事である日々の仕訳から決算書作成までの一通りの基礎知識を簿記検定で学ぶことで、経理部やクライアントとのコミュニケーションを円滑に行うことができます。
逆に、「仕訳って何?決算って何するの?」といった程度の知識では、要件定義に時間がかかり、また、要求された内容と異なるシステムを作ってしまう可能性が高いです。
3) IT人材として差別化を図れる:理由③
システムの自動化やRPA・AIの発達により、エンジニアの注目度はますます高まっておりますが、逆に言えば差別化が難しくなっております。
そこで、簿記検定を通じて会計周りの知識を深めていけば、エンジニアの中でも会計分野に特化したエンジニアとして差別化を図ることができます。
会計システムの開発・運用・保守の際に重宝されることはもちろんのこと、簿記をもっていることで、最低限ビジネスの基礎知識はあり話が通じるエンジニアと思われ、重宝される可能性も高いです。
ベンチャーにいた際に、営業やマーケティングなどを経験したエンジニアがいたのですが、非常にコミュニケーションがとりやすかったです。
私が意図していることの意味をくみ取ってくれて、効率的かつ効果的に業務を進めることができました。
エンジニア一本でやってきた人達の場合は、どうしてもビジネス内容を詳しく説明する段階から始まり、かつ、理解してもらうにも限界があり、大変でした。
他の職種を経験する必要は必ずしもないですが、最低限の共通言語として簿記検定で学ぶ内容は、エンジニアの方でも身に付けておいて損はないと思います。
4) コスト意識が強まる:理由④
エンジニアの方は時間の許す限り開発や点検を行いたいと思われるかもしれませんが、当然に配分された予算があり、予算以内に終わらせなければ会社にとって追加のコストが発生することとなります。
自分達が開発・運用・保守したシステムからいくらの売上があがっているか?どの程度他のコストがかかっているのか?といった点はエンジニアの方はなかなか意識する機会が少ないかと思います。
ただ、このあたりのコスト意識は、特にマネジメントやチームの進捗管理が必要となるシステムエンジニアには必須となります。
このコスト意識を磨くのに簿記検定はおすすめです。
簿記を勉強することで、会社全体の費用(コスト)にどのようなものがあるかを理解することができ、自分たちがやっている作業にもコストが発生していると正しく認識することができます。
5) 副業として投資をする際に役立つ:理由⑤
エンジニアでも手軽に始められる副業として、株式投資があります。
株式投資で投資対象企業を選定する際に、対象先企業の財務数値の分析が必要となります。
この際に、財務数値を作成するために必要となる簿記の知識が役に立ちます。
売上や各種利益に関する知識、また、資産や負債・純資産に関する知識がなければ、そもそも財務諸表を読むことすらできません。
この点でも簿記はおすすめとなります。
株式投資についてはさらに、安全性・収益性・成長性の観点から決算書分析力を養うことができる「ビジネス会計検定」もおすすめです。
詳細については「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご参照ください。
4. 何級まで勉強するのがベスト?
それでは、ITエンジニアが簿記検定の勉強をする際は、何級までの知識が必要となるのでしょうか?
結論としては2級までの受験をおすすめします。
先ほどお伝えしたITエンジニアに簿記をおすすめする理由にもあった、「ビジネスを理解できる」「会計システムの理解に役立つ」「コスト意識を養える」といった点は、2級の試験範囲である工業簿記の原価計算などの内容を学ばないと身につきません。
そのため簿記2級までの受験がおすすめとなります。
また、ITエンジニアに限らず簿記は2級までの受験をおすすめしております。
簿記1級の詳細につきましては「簿記1級は無駄?勉強時間や合格率を踏まえて徹底解説!」も合わせてご確認ください。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
5. どのくらいの勉強期間が必要?
それでは簿記3級と2級合格のための勉強期間・勉強時間はどの程度必要となるのでしょうか?
あくまで1つの目安ですが、簿記3級は100時間、簿記2級は200時間の勉強時間が必要と考えられます。
本業のITエンジニアとしての仕事の合間を縫って勉強することとなるため、通常は2級まで合格するのに半年以上は必要となります。
簿記検定合格に必要な勉強時間・勉強期間については「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご参照ください。
また、最短で勉強を終わらせたい場合は3級と2級のダブル受験もおすすめです。
詳細につきましては「簿記の併願(同時受験)はやめた方がいい??」をご確認ください。
6. 会計のおすすめ勉強方法とは?
ITエンジニアとして会計を学ぶために簿記検定をおすすめしてきましたが、簿記検定以外に会計を学ぶ方法はないのでしょうか?
実はその他にも以下のような方法があります。
② 会計の入門本を読む
③ 株式投資をしてみる
④ 株主総会に出席する
⑤ 100社の売上高を見る
⑥ 家計簿をつける
⑦ 経理について調べる
詳細につきましては「会計の入門者におすすめの勉強法7選!」をご確認ください。
7. 終わりに
ITエンジニアにとって簿記・会計の勉強は大きなメリットがあることを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
皆が手に職をつけるためにしのぎを削っていますので、ただのITエンジニアに留まらず、会計知識を身に付けて他者との差別化を図るための挑戦をぜひしてみてください。
8. まとめ
◆会計システムの作成に役立つ知識を習得できる。
◆ITエンジニアとして他者と差別化を図れる。
◆コストについて意識が高まる。
◆副業として株式投資をやる際に役に立つ。