簿記の併願(同時受験)はやめた方がいい??

posted in: 簿記検定 | 0

始めて簿記検定を受験されるとき、あるいは3級を受けて惜しくも不合格だったときに、皆様一度は3級と2級の併願(同時受験)について考えたことがあるのではないでしょうか?

そこで今回は併願のメリットとデメリットをお伝えしたうえで、どんな人に併願がおすすめなのか?について、また、同時受験する場合の具体的な勉強時間・ポイントについて解説していきます。

併願の良いところ悪いところをしっかり押さえたうえで、自身の簿記検定合格に向けた戦略を立てることで、より効果的かつ効率的な時間の使い方ができるようになります。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 簿記検定は3級と2級の併願が可能

簿記検定は3級と2級の併願が可能

簿記検定は他の検定同様に、3級と2級の併願(同時受験)が可能です。

申し込みの際は併願として申し込まないと、受験会場が別々になるリスクがありますので、3級と2級それぞれ単独で申し込むことは避けてください。

また、3級をとばしていきなり2級への挑戦も可能ですが、2級合格のためには3級の知識が前提となり、いずれにしろ3級の勉強をする必要がありますので、まずは3級は受験することをおすすめいたします。

ちなみに、1級(9時開始)と3級(11時開始)の同時受験はできません。

他の会計資格では、ビジネス会計検定も3級と2級の併願が可能な資格となります。

ビジネス会計検定の3級・2級のダブル受験については「ビジネス会計検定は併願(ダブル受験)がおすすめ?」をご参照ください。

 

2. 同時受験のメリット

同時受験のメリット

それでは、3級と2級の同時受験のメリットについて、見ていきましょう。

 

1) 勉強期間を短縮できる

同時受験の一番のメリットと言えば、やはり勉強期間を短縮できることです。

通常は3級と2級を取得しようとすると、最短でも2回試験を受験しないといけません。

しかし、同時受験を選択した場合は1回の試験で終わるので、その分勉強期間も短縮できます。

簿記試験は6月・11月・2月の3回に分けて行われるため、2回受験しようと思うと、勉強時間も考えると通常は半年以上必要となります。

しかし、併願の場合は自身の頑張り次第では、半年よりも短い期間の勉強で済む可能性があります。

(最短で合格したい場合は、随時受験できるネット試験がおすすめです。)

 

2) モチベーションを維持しやすい

3級をまず取得してその後2級を取得しようと思った場合、3級と2級の間に良くも悪くも一区切りあるため、ここで緊張の糸が切れてモチベーションが低下することがあります。

同時受験であれば、3級の勉強が終わればすぐに2級の勉強に取り掛からざる負えないので、モチベーションが低下する暇がなく試験まで走り抜けることができます。

 

3) よい高い目標を設定することで勉強スピードが上がる

3級と2級の同時合格を狙う場合、2級の勉強が後に控えているので3級を早く仕上げようと思い、結果として全体的に勉強のスピードが上がります。

また、2級の勉強をすることで、3級の試験を楽に感じることができるのもメリットとなります。

 

4) 試験範囲の多くがかぶっており効率的に勉強できる

3級の内容の多くは2級の内容とかぶっており、逆に言うと2級は3級の内容が前提となっているため、同時に勉強することで重複する部分の勉強を効率的に行うことができます。

併願ではなく単願で片方ずつ受験する場合、2級の勉強を開始する際にまず3級の内容を思い出す必要があり、再度勉強し直すこととなるのに対して、併願の場合は重なっている範囲を2度勉強する必要がないので効率的な学習となります。

 

3. 同時受験のデメリット

同時受験のデメリット

次に、3級と2級の同時受験のデメリットについてお伝えしていきます。

 

1) お金が無駄になる可能性がある

同時受験をする場合は3級2,850円、2級4,720円の受験料が必要となりますが、2級まで勉強する時間がなく2級は記念受験になった場合、2級の受験費用は無駄になります。

また、同様に予備校に対して2級の講座代金まで払っていたけど3級の勉強で挫折した場合、2級の講座代金が無駄になってしまいます。

同時受験をする際は、2級までやり切る覚悟が必要です。

 

2) 体力的・精神的にきつい

併願の場合3級と2級を短期間で仕上げないといけないため、体力的・精神的なつらさがあります。

自身の過去の経験から、ある程度の負荷があった場合に体力的・精神的に耐えられるか?途中で逃げ出さないか?といった点は冷静に見る必要があります。

一方で、適度な負荷であるため単願と比べて良い意味での緊張感を持つことができ、勉強に集中することができるとも言えます。

 

3) 試験当日の負担が重い

意外に忘れがちなデメリットとして挙げられるのが、当日の負担が重い点です。

3級と2級を同時受験する場合の当日の日程は、以下となります。

・11時~12時:3級試験
・12時~13時30分:休憩
・13時30分~15時:2級試験

お昼の休憩として1時間30分程度あるので、十分余裕があると思われた方もいるかもしれません。

しかし、練習とは異なり本番の試験は相当疲れるものであり、午前の3級試験でかなり脳や精神を疲弊させることとなります。

その回復のために休む時間、昼ご飯の時間、2級の最後のチェックなどを考えると、1時間30分の休憩というのは決して十分とは言えません。

同時受験の場合は当日の、特に2級試験の負担が重くなるといった点は、しっかり頭に入れておいてください。

 

4) 3級・2級共に中途半端になってしまう可能性がある

4つ目のデメリットは、2級の内容が気になってまだ3級の基礎ができてないうちに2級の内容に手を出してしまい、2級も3級も中途半端な学習で終わってしまう可能性がある点です。

同時受験とはいってもあくまで3級⇒2級の順に進めていくものであるため、先走らずに着実に3級から学習を進めていく必要があります。

 

4. 必要な勉強時間は?

必要な勉強時間は?

それでは3級と2級をまとめて勉強した場合に、どのくらいの勉強時間が必要になるのでしょうか?

こちらにつきましては「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」でお伝えした各級ごとの勉強時間を足し合わせたものが1つの参考となります。

・通信講座の場合:300時間
・通学講座の場合:300~400時間
・独学の場合:400~500時間

メリットのところでお伝えした通り、範囲の大部分がかぶっており効率的に勉強をすることで上記の勉強時間より短縮することは十分可能です。

 

5. こんな人には併願がおすすめ!

こんな人には併願がおすすめ!

以上の内容を踏まえ、併願がおすすめな人について順に解説していきます。

 

1) 次の試験までに300時間確保できる人

現在の知識や置かれている環境にもよりますが、同時受験の場合は300時間の勉強時間が1つの目安となります。

そのため、次の試験までに300時間確保できるのであれば同時受験を目指した方が得策です。

300時間を達成するための平日・休日の勉強時間の目安について、試験までの期間別に以下に記載しましたのでご参照ください。

・5か月≒平日1時間、休日4.5時間
・4か月≒平日1時間、休日6時間
・3か月≒平日2時間、休日6.5時間
・2か月≒平日4時間、休日7時間
・1か月≒毎日10時間

 

2) 現役の経理部で3年以上働いている方

現役の経理部の方にも併願はおすすめです。

簿記の学習で一番難しく時間がかかるのが、そもそも簿記とは何なのか?など簿記に慣れる作業です。

経理部に所属している方であれば普段から簿記に触れているため、この点は問題ないかと思います。

また、実務経験があると、簿記の学習スピードも上がります。

そのため、勉強期間にもよりますが、併願で合格する可能性は十分にあります。

ただ注意していただきたいのは、「現役」の経理部でない場合(昔経理をやっていた人の場合)は思い出すのに時間がかかるため、場合によっては単願の方が良いかもしれません。

また、現役で経理部に所属していても、実務経験が浅い人(3年未満程度)についても同様に、単願で少しずつ勉強していった方が良いかもしれません。

 

3) 起業のために簿記を勉強する方

起業を考えている人にとって、最低限の簿記の知識は必須です。

そのため、起業前に簿記の受験を検討している人も、一定数いるかと思います。

そんな人達にも、併願はおすすめです。

起業する人にとって簿記試験合格は必須条件ではなく(簿記の最低限の知識は必須)、いかに早くビジネスをスタートさせるかの方が重要です。

そのため、最短で簿記の知識を身につけ早くビジネスを開始するためには併願がおすすめであり、極端な話を言うと試験に受かる必要もありません。

2級までの知識を駆け足で身につけるためにも、同時受験を1つの目標として考えるのも1つの方法です。

★簿記のおすすめ通信講座
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。

・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング

詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。

 

6. 同綬受験のポイント!

同綬受験のポイント!

最後に、同時受験をする場合のポイントについて見ていきましょう。

 

1) 勉強時間をいかに確保するか

一番のポイントは、やはり「勉強時間の確保」です。

先ほどお伝えした通り、同時受験の場合「300時間」という勉強時間を、短期間でこなさなければなりません。

通勤・通学時間やトイレ・お風呂、会社・学校の休憩時間など、ありとあらゆるスキマ時間を利用する必要があります。

そんなスキマ時間にアプリを利用して勉強するのも1つの方法です。

アプリの詳細については「簿記2級のアプリおすすめ5選!」をご参照ください。

 

2) 3級の学習をしっかりやる

時間がないからといってすぐに2級の勉強を開始してしまうと、3級の基礎がない状態なので理解が進まず、結果的に多くの時間をとられてしまいます。

一見遠回りに見えても、3級の学習をしっかりとやることが、全体として勉強時間を短縮することにつながります。

何事も基礎が一番大事です。

 

3) 予備校を利用する

最短の勉強期間で合格するためには、予備校の利用も検討する必要があります。

先ほどお伝えした300時間は、あくまで通信型の予備校を受講した場合を想定しており、独学などの場合はより多くの時間を必要とします。

費用はかかりますが、時間をお金で買ったと思えば、費用対効果の良い買い物になるはずです。

 

4) 本番当日を想定した練習をする

試験当日と同じスケジュールで、1日を過ごしてみるのも大切です。

試験会場近くのカフェなどを会場に見立てて、模試や予想問題などを本番と同じ時間帯に解いてみることをおすすめします。

その際に、以下の点を確認しておいてください。

・試験会場までの電車の中で何をするか?
・昼ご飯に何を食べるか?
・昼の休憩の間に何をするか?
・3級、2級の試験直前のチェックは何をするか?
・午前中に3級を受験した後の2級はどの程度疲れている状態で受験することになるか?

いずれも些細な点ですが、特に初めての試験の場合、試験以外の部分で足を引っ張られやすいので、注意してください。

 

7. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

併願にはいい点・悪い点があり、置かれている状況次第で、おすすめできる場合とそうでない場合があります。

冷静に自身の状況を見極めて、併願をするかしないか検討してみてください。

 

8. まとめ

Point! ◆3級と2級は同時受験が可能。
◆勉強期間やモチベーションの観点で併願はメリットがある。
◆金銭面や学習時・試験本番の精神的・肉体的な負荷の観点でのデメリットもある。
◆勉強時間は300時間が同時受験の場合の1つの目安。
◆300時間確保できる人や現役経理部の人・起業を考えている人には併願がおすすめ。
◆予備校の利用やスキマ時間を利用した勉強時間の確保などが併願のポイント。

簿記の通信講座おすすめ5選 >>