「ビジネス会計検定」という検定があります。
知名度はまだ高くないため、名前は聞いたことがあるけれど詳細は知らない、そんな方も多いのではないでしょうか?
会計に関わる資格となると、「自分は経理部門じゃないから関係ない」、「勉強して役に立たなければ時間の無駄」、そんな声も聞こえてきそうです。
取得して有利になる資格ならぜひ欲しい、実際のところが知りたい…。
本記事は、そんなあなたに応えます!
実際のところビジネス会計検定は、日頃のビジネスシーンや日常生活の、どんな場面で活かせる資格なのでしょうか?
あるいは、意味のない資格なのでしょうか?
1. ビジネス会計検定試験とは
そもそも、ビジネス会計検定試験とは、何なのでしょうか?
まずは検定そのものについて、少しお話しさせてください。
既にビジネス会計検定についてご存知の方は、次の項目「2. 意味のない資格?」へお進みください。
1) ビジネス会計検定とは?
検定公式HPでは、ビジネス会計検定について、以下のように説明されています。
「財務諸表に関する知識や分析力を問うもので、財務諸表が表す数値を理解し、ビジネスに役立てていくことに重点を置いています。」
損益計算書、貸借対照表、株主資本等計算書、キャッシュフロー計算書などは、ビジネスパーソンなら1度は聞いたことのある単語かと思います。
財務諸表というのは、これらで構成される書類のことを言います。
企業が利害関係者に向けて情報開示をするために作成する書類、いわゆる「決算書」のことを指します。
つまり、ビジネス会計検定は受験者の「財務諸表を読み、企業の財務状況や経営成績等を分析する能力」を測る検定なのです。
2) ビジネス会計検定と簿記検定の違い
「会計の知識を要し、財務諸表を読むスキルを測る検定」と聞くと、もう一つの検定試験を思い出す方も多いかと思います。
そう、簿記検定試験です。
簿記検定試験も、「簿記」や「日商簿記」と呼ばれ、昔から有名ですね。
就職やスキルアップに有利な資格として、知られています。
しかし、ビジネス会計検定と簿記検定試験の間には、決定的な違いがあります。
どちらも財務諸表に関する検定ですが、検定に合格するのに必要な知識、ひいては検定に合格することでアピールできる能力に違いがあるのです。
それは、2つの検定試験で問われるスキルです。
ビジネス会計検定試験では財務諸表を分析し「読み解く」スキル、簿記検定試験では財務諸表をルールに従って「作成する」スキルを測るための問題が出題されます。
簿記検定との比較につきましては、「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」も合わせてご確認ください。
2. 意味のない資格?
ここまで、ビジネス会計検定試験は、財務諸表を分析し「読み解く」スキルを測る検定であることを、お話ししてきました。
ここで、こんな疑問をお持ちになる方も、多いのではないかと思います。
「経理部門の業務に従事しない私には、関係がないのでは?」
確かに、会計関連のスキルが必須の分野として最初に思いつくのは、経理部門ですね。
では、ビジネス会計検定試験は、経理部門の人間以外、取得する意味のない資格なのでしょうか?
そんなことはありません。
本記事は、ビジネス会計検定試験を、実践的で非常に役に立つ資格としてオススメします。
財務諸表を分析し「読み解く」能力は、日常生活や様々な部門の日々の業務で実際に役立てられるからです。
そうは言っても、ビジネス会計検定試験を知り始めたばかりの方には、この検定で学べる知識の活かし方がすぐには思い浮かばない方も多いでしょう。
次の項目では早速、ビジネス会計検定試験の知識を活かす、具体的な日常の場面を見ていきましょう!
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。
頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
3. こんな場面で役に立つ!
1) 経理部門の方
まずはやはり、会計に日々触れている経理部門です。
経理は、れっきとした財務諸表の「作成部門」ですので、簿記検定試験等に合格し、日々その知識を業務に活かしている方が沢山いらっしゃいます。
一方で、ビジネス会計検定は比較的新しい資格ですが、その知識を手に入れることで、自社や他社の財務諸表を作る側・読む側の両視点から理解することができます。
例えば、当年度の売上債権のデータを営業部門からもらって、ただ売上債権の残高を記帳するだけでなく、売上債権の回転期間を計算して、前年から改善したのか?悪化したのか?といった経営課題について、情報を提供することができるようになります。
具体的には、以下のような問いに答えられるようになり、財務諸表を読むことができる経理として、活躍できるようになるでしょう。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定2級の「収益性分析」で学ぶ内容となります。
2) 営業部門の方
今、あなたが担当している顧客は、どんな課題を抱えているのでしょうか?
ビジネス会計検定で財務状況や経営成績の分析手法を学ぶことで、相手の強みや弱みを数字から知ることができるようになります。
取引先の強み・弱みは、相手の関心が集まるポイントです。
商談の際に、何を軸に話を進めるべきか知っている、ポイントを押さえた営業になれるのです。
例えば、いくつかの取引先のキャッシュフロー計算書をチェックして、今積極的に投資を行っているのか?それとも投資を控えているのか?といった情報を事前に把握しておくことで、どの取引先に対して積極的に営業をかけに行くか、判断することができます。
具体的には、毎回事前に以下のような検討を、繰り返すこととなります。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定3級の「キャッシュフロー分析」で学ぶ内容となります。
3) 法務・経営企画 その他バックオフィスの方
法務や経営企画、その他バックオフィスでは、社内から、特定企業との契約を進めて良いか、判断を頼まれることがありますね。
この際、先方の将来性やリスクを分析するために、ビジネス会計検定での学びを活かすことができます。
相手先の財務諸表を分析することで、その経営の健康状態を把握し、適切な判断に役立てることができるのです。
例えば、契約先企業の貸借対照表を確認することで、長期的な観点から安全な財務体質であるか否か、事前に判断することができます。
具体的には、以下のような2つの貸借対照表があった場合に、どちらの方が長期的な安全性が高いのか分析して、財務面からのリスクを評価することが可能となります。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定2級の「安全性分析」で学ぶ内容となります。
4) 人事の方
自分が企業に応募する側になって考えた時に、例えば以下のような質問をして、面接官が答えに戸惑ったら、どう思いますか?
「増収増益ですが、その要因は何でしょうか?」
「株価がここ1年で急激に伸びていますが、なぜでしょうか?」
「借入を増やしていますが、安全性に問題はないのでしょうか?」
経理に聞いてみないとわからない、、、なんて回答されたら、応募者としては少し不安になるかと思います。
優秀な人材ほど、応募先企業を吟味するために、鋭い質問を投げかけてくるものです。
人事担当者として最低限の財務分析力を身に付けて、少なくとも自社の財務状況については答えられるようにしておく必要があります。
例えば、以下のように売上高の伸び率を把握しておくことで、成長性のある会社であると、数値面から客観的にアピールすることができます。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定3級の「成長性分析」で学ぶ内容となります。
5) 学生の方
意外かもしれませんが、ビジネス会計検定は、学生さんにぜひ役立ててほしい資格の一つでもあります。
就職活動の際、キーとなってくるポイントの一つに、企業分析があります。
どこの企業に入っても確実な「安定」は得られない、と言われる昨今、入社を検討する企業を数字面から分析できるということは、大変な強みとなります。
また、検定で学んだ分析手法で志望先の課題を導き出せれば、面接で他の候補者に大きくリードできるかもしれません。
例えば、以下のように志望先の企業の1人当たり売上高を算出して、競合と比べて1人当たりの生産性が非常に高い点に魅力を感じたと面接で伝えれば、他の候補者にはない視点で企業側にアピールすることが可能となります。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定2級の「1人当たり分析」で学ぶ内容となります。
6) 投資をされる方
企業分析は、投資をされる方にとっても、大変重要なスキルとなります。
現在投資を検討している企業のビジネスは、儲かるものなのか?将来性があるのか?
その企業の経営に、大きなリスクはないのか?
現在の株価は割高なのか?割安なのか?
このような点についてしっかりと根拠を持って、適切に投資先を選ぶことができます。
例えば、投資を検討している企業のPER(株価収益率)を以下のように計算することで、現在の株価は同業他社と比較して割高なのか?割安なのか?といった点について、把握することが可能となります。
【問題】
【解答】
*ビジネス会計検定2級の「1株当たり分析」で学ぶ内容となります。
経営企画・営業・経理・人事・マーケティングなど、多くの業務を経験してきましたが、どの職種でも共通しているのは、活躍するためには「数値を分析する力」が必要だということです。
発生している事象を抽象的に捉えるのではなく、具体的な数字に落とし込んで考えるクセをつけることで、再現性のある対策を練ることができます。
例えば、「売上が減少している」と抽象的に捉えるのではなく、「客単価に変更はないが、先月は販売数が〇〇千人と前の月より○○%も減少している。その原因は、、、」といった具合に、具体的な数字に落とし込むことで、具体的な対策を打つことが可能となります。
財務諸表分析を通して、物事を数字に落とし込み分析する「数値を分析する力」を身に付けることができるのが、ビジネス会計検定となります。
4. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
ビジネス会計検定の知識がどんな場面で役に立つのか、イメージは少し具体的になりましたか?
この記事をきっかけに、ビジネス会計検定に少しでも興味を持っていただいたのなら、嬉しく思います。
どの職種にも役に立つ、非常に有益な検定ですので、この機会にぜひ勉強を開始してみましょう。
5. まとめ
◆営業:取引先の財務状況に応じた商談。
◆法務:契約先の財務リスクの把握。
◆人事:自社の財務状況を適切に候補者に説明。
◆学生:志望企業の企業分析。
◆投資家:投資対象企業の財務状況や株価の分析。