ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?

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ビジネスパーソンとして基本的な会計の知識を持つことは、必要不可欠なものとなっています。

そこで、会計の知識をチェックできる資格の定番である「簿記検定」の合格を目指している人も、いることでしょう。

特に日商簿記3級試験は簿記の登竜門ともいえる試験であり、公式サイトによると、2021年11月の第157回の試験では、約5万人もが受験をし、その中で1万3千人が合格しています。

しかし、会計の知識を学べる試験は、日商簿記検定だけではありません。

最近話題になってきているのが、大阪商工会議所が主催している「ビジネス会計検定」です。

ビジネス会計検定は2007年に新設されたばかりの検定で、日商簿記検定と比べると歴史は浅いのですが、ここ数年で受験者数が3倍以上に増加している、注目の資格です。

それでは、日商簿記検定とビジネス会計検定のどちらを勉強したら、会計の知識が身につくのでしょうか?

気になりますよね。

日商簿記検定とビジネス会計検定の両資格の内容について解説し、共通点と相違点について紹介します。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. ビジネス会計検定試験とは?

ビジネス会計検定とは?

ビジネス会計検定は、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書といった「財務諸表」を分析する能力を測る試験です。

財務諸表の基本的な構造を学ぶ3級から、会計情報を総合して詳細に分析し、企業評価ができるレベルまで学ぶ1級まで、試験が実施されています。

ビジネス会計検定で要求される知識は、経理部門の人間だけでなく、営業や経営企画、さらには総務や人事など、所属する部署を問わず必要とされる知識です。

新入社員からベテランまで幅広い層の社会人に対して、必要な会計知識を所有しているかどうかが問われるのがビジネス会計検定です。

ビジネス会計検定の各級の詳細については、以下をご参照ください。

・3級:「ビジネス会計検定3級が必要ない人とは?受験要項や難易度は?

・2級:「ビジネス会計検定2級とは?3級との違いは?挑戦すべき5つの理由

・1級:「ビジネス会計検定は1級まで取得する必要がある??

 

2. 簿記検定とは?

簿記検定とは?

簿記は「帳簿記録」の略語で、企業や店舗におけるお金の流れを帳簿に記録するためのルールです。

すべての企業は簿記を行っており、簿記のルールは社会人としての、必須の知識であるとされています。

簿記の知識を測る試験が、簿記検定です。

簿記検定には、試験を実施している団体によって、次の3つの試験が存在します。

◆日本商工会議所が実施している「日商簿記」
◆公益社団法人全国経理教育協会が実施している「全経簿記」
◆ 財団法人全国商業高等学校協会が実施している「全商簿記」

一般的に簿記と言えば、日商簿記のことを指します。

日商簿記もビジネス会計検定と同様に、3級から1級まで試験が実施されています。

大まかに説明すると、3級は「小規模会社の簿記」、2級は「中小・大企業の簿記」、1級は「大企業の簿記」のように分類されます。(近年は試験範囲の改訂により、2級に連結会計など主に大企業を対象とした内容が盛り込まれております。)

簿記検定に合格することで、大学受験の推薦入試で評価されたり、日商簿記1級の合格は税理士試験の受験資格として認められたりします。

簿記を学ぶことで、基本的な経理の知識を得て、企業の経営成績と財政状態を明らかにする技能が身につくため、このように優遇されているのでしょう。

 

3. ビジネス会計検定と簿記検定の共通点とは?

ビジネス会計検定と簿記検定の共通点は?

1) 社会人として必要な会計の知識が身につく

ビジネス会計検定と簿記検定の共通点は、どちらも貸借対照表や損益計算書といった、いわゆる財務諸表に関する知識が身についているか確認するための試験であるという点です。

社会人にとって会計の知識は重要ですが、日々の仕事をこなすだけでは身に付けられません。

試験勉強を通じて、集中的に勉強することで、効率良く知識を身につけられます。

 

2) ビジネスで役に立つ会計の知識が得られる

ビジネスの現場において、会計の知識は、自社の経営状態を把握したり、取引先の財政状況などをチェックしたりするための大きな武器となります。

例えば営業職の方にとって、取引先の企業の安定性は、今後取引を開始・継続しても問題ないのか?といった点を考える上で、重要な情報となります。

このように会計の知識を持つことで、自らの専門分野に経営者的な視点がプラスされ、ビジネスの遂行に役立てられるのです。

★会計はビジネスの共通言語
会計知識のある人とない人との間には、大きな差がある」と実務の中で、たびたび感じることがありました。

財務状況を伝える際に、会計知識がある人であれば、要点だけを伝えれば理解してもらえました。

一方で、会計知識がない人に対して説明する際は、

・利益にはどんな種類があるのか?
・純資産とは何か?
・費用の期間配分とは?


といった、基本的な内容から説明する必要がありました。

会計知識を持っていない場合、「○○さんは会計については何を言ってもわからないからな。。」と思われて、会社のビジネスの根幹である会計面の話について、あなたに一切話がおりてこない可能性があります。

また、相手が丁寧に基礎から話してくれる場合でも、相手の貴重な時間を奪うことになります。

そうならないためにも、ビジネスの共通言語である「会計」について、ビジネス会計検定や簿記検定を通じて体系的に学ぶ必要あるのです。

 

3) どちらも就転職活動の際にアピールできる

ビジネス会計検定と簿記検定は、どちらも会計の知識を所有していることをアピールできる資格です。

とくに企業の経理職への就職や転職において、日商簿記2級の資格を所有していることは高く評価されます。

また、ビジネス会計検定の場合は資格そのものが評価されるというよりは、学習過程で得られる知識を駆使して、効果的にアピールすることがきます。

例えば、就職・転職希望の会社の「1人当たり売上高」を事前に計算しておき、志望動機の理由の1つとして、「1人当たりが生み出している付加価値が高い」点を記載することで、会計的な視点で物事を考えられることをアピールできます。

これらの資格を取得していることは、新卒での採用試験や、異業種から経理職への転職などでも有利に働くでしょう。

★ビジネス会計検定講座
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。

頻出論点短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。

・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×19回
・確認テスト、予想問題つき

 

4. ビジネス会計検定と簿記検定の相違点とは?

ビジネス会計検定と簿記検定の相違点は?

1) ビジネス会計は財務諸表を「分析」、簿記は財務諸表を「作成」する

ビジネス会計検定と簿記検定では、財務諸表の扱い方に大きな違いがあります。

ビジネス会計検定は財務諸表を分析する問題が出題され、簿記検定は財務諸表を作成する問題が出題される試験であるという点です。

財務諸表には貸借対照表や損益計算書などが含まれ、これらは主に経理部門の人間が作成する書類となっています。

そのため経理部門で働きたいのなら、まずは簿記検定を受験した方がよいでしょう。

一方、経理以外の場合は、ビジネス会計検定の資格を取得する方が、効果的にスキルアップすることが可能となります。

例えば、ビジネス会計検定の勉強をすることで、

・CF計算書を使った財務分析
・安全性/収益性の分析
・株価の割高/割安の把握

などが可能となります。

具体的には、ビジネス会計検定2級まで勉強することで、以下のような問いに答えることができるようになります。

 

 ① キャッシュフローの分析

 【問題】

CF分析(2級):CFの循環パターン②ー問題

 【解答】

CF分析(2級):CFの循環パターン②ー解答

 

 ② 安全性の分析

 【問題】

安全性分析(2級):短期債務の返済資金が不足しているのはー問題

 【解答】

安全性分析(2級):短期債務の返済資金が不足しているのはー解答

 

 ③ 収益性の分析

 【問題】

収益性分析(2級):総資本経常利益率ー問題

 【解答】

収益性分析(2級):総資本経常利益率ー解答

 

 ④ 1株当たり分析

 【問題】

1株当たり分析(2級):PBR割高割安ー問題

 【解答】

1株当たり分析(2級):PBR割高割安ー解答

 

2) ビジネス会計検定は受験者が少なく希少価値が高い

冒頭でも解説したように、ビジネス会計検定は2007年からスタートした、歴史の浅い検定です。

日商簿記検定の受験者数が年間約50万人に対して、ビジネス会計検定の受験者数は年間約1.5万人です。

ビジネス会計検定は受験者が少ないため、合格者も少ないのが現状です。

現在、ビジネス会計検定の受験者は毎年増えつつありますが、合格者からするとまだまだ希少価値の高い資格だといえるでしょう。

 

3) ビジネス会計検定と簿記検定では主催者が違う

ビジネス会計検定は大阪商工会議所が実施し、日商簿記検定は日本商工会議所が実施している検定です。

どちらも同じ商工会議所が実施していますが、拠点が異なっています。

日本商工会議所では他にも販売士の試験が実施されており、大阪商工会議所では他にもメンタルヘルスマネジメント検定が実施されています。

 

4) 難易度の違い

各検定の合格率は、以下の通りとなります。

 

3級 2級
簿記 40% 20%
ビジネス会計 70% 50%

 

一概に比べることはできませんが、同じ級で合格率だけを単純に比べると、簿記検定の方が難易度が高いと言えます。

各検定の難易度の違いの詳細については、「ビジネス会計検定の難易度・合格率は??」をご参照ください。

ただ、受験者数や受験者層がビジネス会計検定と簿記検定では異なるため、単純に合格率だけを比べて簿記検定の方が難しいというのは早計です。

いずれにしろ、難易度の高低に応じてどちらを受験するか判断するのではなく、財務諸表を「作成」する力がほしいのか?財務諸表を「分析」する力がほしいのか?といった目的を明確にして、どちらを受験するか判断してください。

 

5) 日程の違い

ビジネス会計検定と簿記検定の5つ目の相違点としては、日程が挙げられます。

ビジネス会計検定が10月と3月の年2回開催されるのに対して、簿記検定は会場受験であれば6月・11月・2月の年3回、ネット試験であれば毎月複数回開催されています。

各検定試験の具体的な日程につきましては、「ビジネス会計検定の日程・試験日は?」も合わせてご確認ください。

 

5. 終わりに

ビジネス会計検定と簿記検定について紹介してきました。

どちらもビジネスに必須の会計知識が試される試験ですが、両者には明確な共通点と相違点があることがお分かりいただけたかと思います。

どちらも3級程度の知識は、すべての社会人にとっての一般教養と言っても良いほど、重要な知識です。

ぜひ皆様もビジネス会計検定や簿記検定に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

6. まとめ

Point! ◆会計知識はすべての社会人にとって必須の知識。
◆両検定ともに1級から3級まで試験が実施。
◆ビジネス会計検定は財務諸表を「分析する」能力を測る試験。
◆簿記検定は財務諸表を「作成する」能力を測る試験。
◆目的を明確にしていずれを受験するか決定する。

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