財務レバレッジの計算方法とは?効果的に利用すればROEが上がる?

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財務レバレッジと聞いて、すぐに計算式が思い浮かぶでしょうか?

また、財務レバレッジの効果を3つ答えられますでしょうか?

財務レバレッジには、

① ROEを高める
② 節税効果
③ ビジネスリスクの低下

の3つの効果があります。

今回は財務レバレッジとは何なのかを解説した上で、3つの効果の詳細についてお伝えしていきます。

財務レバレッジについて正しく理解し、日々のビジネスや株式投資において、文字通りレバレッジ(てこ)を効かせて、より高いパフォーマンスを上げられるようになりましょう。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 財務レバレッジの計算方法

財務レバレッジの計算方法

1) 計算式

財務レバレッジの計算式は以下となります。

財務レバレッジ(倍)
=総資本÷自己資本

以下で計算される自己資本比率の逆数となります。

自己資本比率(%)
=自己資本÷総資本

 

2) 他人資本をどのくらい利用しているか

会社の財政状態を表す貸借対照表は、右側(貸方)に資金の調達源泉が表され、左側(借方)にその資金を運用した結果得られた資産の状況が表されております。

ここで、貸方の資金の調達源泉には、大きく分けて以下の2つの種類があります。

【他人資本】
・会社の外部者(他人)から提供された資本。
・返済が必要な資本。
・利息が発生する。
・具体例:銀行からの借入。
【自己資本】
・会社の所有者(自己)から提供された資本。
・返済が不要な資本。
・利息が発生しない。
・具体例:株主からの出資。

ここで、財務レバレッジの分子である総資本は、他人資本と自己資本の合計で計算されます。

これを財務レバレッジの計算式に置き換えると、以下のようになります。

財務レバレッジ(倍)
=(他人資本+自己資本)÷自己資本

つまり財務レバレッジとは、銀行からの借入などの他人資本を、どの程度利用しているのか?を表す指標といえます。

 

2. 財務レバレッジの3つの効果

財務レバレッジの3つの効果

それでは、具体的な財務レバレッジの効果について見ていきましょう。

 

1) ROEを高める

① ROEとは?

1つ目の効果としては、財務レバレッジを高めることで、ROE(自己資本利益率)を高めることができる点が挙げられます。

ROEは以下の式で計算されます。

ROE(%)
=当期純利益÷自己資本

当期純利益は最終的な利益であり、銀行などからの借入に係る利息が除かれた利益、つまり、他人資本の取り分を除いた利益となります。

すなわちROEは、株主(自己資本)からの出資に対する、株主に帰属する利益の割合を表した指標であり、株主・投資家にとっては非常に重要な指標となります。

 

② ROEの分解

ここで、「収益性分析とは?ビジネス会計検定で学べる各指標をご紹介!」で紹介している通り、ROEは「売上高当期純利益率」「総資本回転率」「財務レバレッジ」の3つに分解できます。

 

roe分解(財務レバレッジ)

 

式を見ていただければわかる通り、他人資本を増やして財務レバレッジを高めることで、ROEも高まります。

 

③ 具体例

具体的な例として、以下の2社のROEについて見ていきましょう。

両社ともROA(総資産利益率)は10%、売上高は同じ金額だと仮定します。

☆A社
【前提条件】
・売上高:10億円
・ROA:10%
・他人資本(銀行からの借入):5億円
・自己資本(株主からの出資):5億円

【計算結果】
・利益:1億円
・ROE:20%(=1億円÷5億円)
☆B社
【前提条件】
・売上高:10億円
・ROA:10%
・自己資本(株主からの出資):5億円

【計算結果】
・利益:0.5億円
・ROE:10%(=0.5億円÷5億円)

上記の計算結果からわかるように、他人資本があるA社の方がROEが高くなります。

つまり、他人資本を増やせば増やすほど(財務レバレッジが高まれば高まるほど)、ROEも高まると言うことができます。

ただし、財務レバレッジは必ずしも高ければ良いというわけでもございません。

こちらにつきましては「3. 高いほど望ましい??」で解説いたします。

 

2) 節税効果

2つ目の財務レバレッジの効果は、他人資本の利用による節税効果です。

自己資本は損益計算書に計上される利息が発生しないのに対して、他人資本の場合は利息が発生して費用計上されるため、その分税引前利益が減り、結果として法人税等の金額が減少します。

これを節税効果と言います。

具体的に以下の例題で見ていきましょう。

☆X社
【前提条件】
・借入(他人資本):5億円
・借入の利息:4%
・営業利益:1億円
・支払利息:0.2億円
・税引前利益:0.8億円
・法人税率:30%

【計算結果】
・法人税等:0.24億円
・税引後利益:0.56億円
☆Y社
【前提条件】
・借入(他人資本):0円
・営業利益:1億円
・税引前利益:1億円
・法人税率:30%

【計算結果】
・法人税等:0.3億円
・税引後利益:0.7億円

両社とも営業利益は1億円で同じですが、他人資本を利用している、つまり財務レバレッジが高いX社の方が、他人資本を利用していないY社よりも、法人税等の支払額が0.06億円(=0.3億円-0.24億円)少ないことがわかります。

反対に、自己資本の場合は費用が発生しないため、税引前利益を小さくする効果がなく、結果としてその分多くの法人税等を計上することとなります。

 

3) ビジネスリスク低下

3つ目の財務レバレッジの効果としては、ビジネス上のリスクを減らすことができるという点が挙げられます。

株主からの出資である自己資本は、返済の必要もなく利息の支払いもありません。

経営者からしてみれば、いいこと尽くめのように思われますが、実はそうではありません。

返済の必要がない代わりに、会社の所有権である「株式」を渡すこととなります。

会社は誰のものか?と聞かれたら、「経営者のもの」と答える人もいますが、株式会社においては会社は「株主」のものとなります。

経営者はあくまで会社経営を任された立場となり、会社のオーナー(所有者)は株主です。

これを所有と経営の分離と言います。

ここで、基本的には会社の方向性は経営者が決定するのですが、会社の機関設計上、重要な意思決定には株主総会の決議が必要となっており、オーナーである株主の意向を無視することはできません。

そのため、例えば同じ10億円を調達するとしても、自己資本で調達した場合は、会社経営に対して口をはさむ存在が増え、その分ビジネス上のリスクが増します。

一方で、他人資本の場合は、元本と利息の返済は必須となりますが、それ以上のことについて、相手方が会社経営に口を出すことはできません。

そのため、他人資本を利用して資金調達をして財務レバレッジを高めることで、自己資本で調達した場合と比較して、相対的にビジネスリスクを抑えることができます。

また、自己資本の場合は利息の負担がない分、株主は配当などでの還元を求めてきます。

そのため、キャッシュの動きを見た場合、結局のところ借入金の利息と同程度の金額を支払う、あるいはそれ以上の金額を支払うこととなる可能性もあります。

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3. 財務レバレッジは高いほど望ましい??

財務レバレッジ高いほど望ましい??

他人資本で資金調達をした場合、調達した資金を運用して1円でも利益が上がれば、ROEは上昇します。

極端なことをいえば、調達資金を全て広告宣伝費に充てれば、利息の金額以上の売上を稼ぐことができ、利益が上がるため、結果としてROEも上昇します。

それでは、財務レバレッジは高ければ高いほど望ましいのでしょうか?

実は必ずしもそうとはいえません。

以下に2つその理由を紹介していきます。

 

① 収益性がマイナス

当たり前の話ですが、他人資本で調達した資金を事業の拡大に使用した結果、その事業の利益がマイナスとなる場合は、他人資本を利用して財務レバレッジを高めても、ROEは低下します。

そのため、他人資本を利用する場合は、収益性や成長性がある程度見込まれる用途に使用する必要があります。

 

② 安全性の観点

2つ目の理由として、財務レバレッジが高いことは収益性の観点からは望ましいのですが、安全性の観点からは、他人資本を使うほど、リスクが増大していきます。

会社が倒産するのは赤字になった時ではなく、仕入先や取引先に対して代金を支払えなくなった際に倒産します。

借入などの他人資本が増加するということは、その分だけ返済にお金が必要となり、将来的にお金が枯渇する可能性があります。

そのため、財務レバレッジは安全性の観点からも、注意が必要な指標となります。

安全性については「安全性分析とは?各指標を学ぶにはビジネス会計検定がおすすめ!」も合わせてご確認ください。

 

4. 財務レバレッジの目安は?

財務レバレッジの目安は?

最後に財務レバレッジの目安について、数字を見ていきましょう。

「中小企業実態基本調査 / 令和5年速報(令和4年度決算実績) 速報」によると、ROEと財務レバレッジの平均は以下の通りとなります。

 

指標 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
ROE
(%)
7.35 7.40 8.29 11.50
財務レバレッジ
(倍)
2.28 2.55 2.49 2.40

 

財務レバレッジは令和元年度から上昇傾向にあり、他人資本への依存度が高まっておりますが、直近では横ばい、ないし低下傾向となっております。

また、ROEの平均はここ数年で上昇傾向にあるといえ、財務レバレッジ以外の他の要因の上昇が原因と考えられます。

ROEと財務レバレッジのおおよその目安としては、以下を頭に入れておいてください。

ROE:10%
財務レバレッジ:2.5倍

その他の財務分析指標については「財務分析指標の目安とは?一覧でご紹介!」をご確認ください。

 

5. 終わりに

財務レバレッジの計算式やROEとの関係性についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

財務レバレッジやROEなどの財務分析指標については、ビジネス会計検定で学ぶことができます。

検定試験であれば、専用の問題集もあり、単なるインプットだけでなく、アウトプットをすることで、より実践的な知識が身に付きますので、この機会にぜひ受験を検討してみてください。

 

6. まとめ

Point! ◆財務レバレッジ(倍)=総資本÷自己資本
◆財務レバレッジを高めると、ROEの上昇・節税効果・ビジネス上のリスク/コストの低下などのメリットがある。
◆財務レバレッジが高い場合のリスクもあるので総合的な判断が必要。

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