起業するなら簿記の知識は必須?何級まで勉強した方がいい?

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起業をする際は、簿記の知識を持っていると多くの場面で役立ちます。

しかし、どのように役立つのか分からず、勉強するのを迷っている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、起業時に簿記を学習するメリットや、何級を取得するべきか解説します。

これから起業を考えている人は、簿記を勉強すべきかの判断ができるため、ぜひ最後までご覧ください。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 起業するなら簿記の知識は必須?

起業するなら簿記の知識は必須?

簿記の知識を持っていると、利益の把握やお金の流れに強くなり、起業に役立ちます。

ここでは、起業するなら簿記の知識は必須かについて解説します。

 

1) 既に起業しているなら事業に集中

簿記の知識は起業や、起業後の事業運営に役立ちます。

しかし、すでに事業を運営しているのであれば、すぐに簿記の学習をする必要はありません。

まずは、運営している事業が安定的に利益を出せるまで、事業に集中してください。

起業したばかりの小規模な事業であれば、簿記の知識がなくても会計ソフトを駆使して申告が可能です。

不安であれば、税理士に依頼しましょう。

法人であれば10万円~、個人事業主であれば3万円~が相場となっていて、スポットで申告に対応してくれます。

事業が安定して、時間的にも余裕ができたら、簿記の学習を開始してください。

 

2) 起業前なら簿記の勉強はおすすめ

起業前に簿記の勉強をすると、専門家への費用を抑えられ、利益を正確に把握できるようになります。

以下では、起業前に簿記を勉強した方がいい理由について、順に解説していきます。

 

① 起業初期は専門家を雇えない

起業して間もない頃は、税理士や会計士などの専門家に依頼できないケースが多いです。

事業の運営をするための資金調達で手一杯で、専門家に支払う資金を用意できないためです。

実際に、起業したばかりの多くの経営者は、自分で経理作業をおこなっています。

本業が忙しい中での経理作業になりますが、簿記の知識がない人は、多くの時間を取られてしまうでしょう。

 

② 専門家に丸投げはできない

資金に余裕があり、経理作業を税理士や会計士に委託したとしても、丸投げできるわけではありません。

専門家に提出する資料は、自分で整理する必要があります。

また、経理業務が完了した後は、専門家から事業内容について報告を受けます。

簿記の知識を持っていれば、帳簿と専門家の報告を照らし合わせながら、経営状態を把握することが可能です。

簿記の勉強をすると決算書を分析する基礎も身に付くため、事業の改善点も見つけられます。

会計業務を専門家に依頼したとしても、経営者自身も簿記の知識を駆使して、事業内容の把握に努めることが大切です。

 

③ 利益を正確に把握できる

簿記の知識を持っていると、損益計算書から事業の利益を正確に把握できます。

また、損益計算書に並んで重要な決算書類である、貸借対照表の内容も把握可能です。

事業を継続して運営するには、最終的な利益だけでなく、流れを把握することが大切です。

例えば、今期の利益が増えていたとしても、売上が増えたからなのか、費用が減ったからなのか、理由はさまざまです。

利益には、以下のようにいくつかの種類があり、それぞれが経営にとって重要な指標になります。

【営業利益】
⇒事業の本業による利益
【経常利益】
⇒本業の利益に加えて配当金や利息など経常的に発生している利益
【当期純利益】
⇒臨時的な利益や損失、法人税を加味した最終的な利益

上記のような細かい項目を把握することで、事業の経営状態を理解できます。

利益を正確に把握して分析することで、事業をさらに伸ばせるでしょう。

★分析ならビジネス会計検定
決算情報の分析力を磨きたいのであれば、ビジネス会計検定もおすすめです。

安全性分析・成長性分析・収益性分析・1株当たり分析など、主要な分析指標について学べます。

参考:ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?

 

④ お金の流れを理解できる

お金が不足すると事業活動を継続できないため、お金の流れを把握することが大切です。

一般的な企業のお金の流れは、以下の通りです。

資金調達:自己資金や借入・出資など

費用の支払い:仕入代金や備品の購入費用

代金の回収:売掛金や受取手形

繰り返し

上記のサイクルを繰り返すことで、企業の売上や利益が伸びていきます。

また、資産や負債などの増減も、お金の流れに関係します。

お金の流れを把握していない経営者は、売上や支払いなどがどんぶり勘定になり、繊細な事業運営はできません。

 

⑤ 創業融資の申し込みで有利になる

起業時は資金が不足する人が多いため、金融機関が提供している創業融資で資金調達する人が多いです。

創業融資を申し込む際は、創業計画書を提出して、面談を受ける必要があります。

多くの人が利用する日本政策金融公庫の創業計画書には、以下のような項目があります。

・事業の見通し
⇒「売上高-費用」で予想利益を求める
・必要な資金の内訳
⇒仕入や経費にかかる費用
・販売先や仕入先ごとの掛仕入の割合

これらの項目は、簿記の知識を持っていれば、説得力のある数字に裏打ちされた記載が可能です。

創業計画書に説得力が出て、融資審査に対して有利に働くでしょう。

また、融資の際の面談は、申込者に対してさまざまな質問をします。

簿記の知識を活用して回答すれば、堅実に事業を伸ばしていけると判断されて、有利になります。

創業時の資金調達を金融機関に頼ろうと考えている場合は、簿記の勉強をした方がいいでしょう。

 

2. 起業のためには簿記何級まで必要?

起業のためには簿記何級まで必要?

簿記は級ごとに得られる知識が異なります。

ここでは、起業のためには簿記何級が必要か解説します。

 

1) とりあえず3級

起業が迫っていて、十分な学習時間を確保できないのであれば、比較的手軽に取得できる簿記3級がおすすめです。

簿記をまったく学習したことのない人が、通信講座などを利用して3級を取得するには、100時間ほど必要だとされています。

平日1時間、休日3時間の勉強をすれば、2~3カ月で取得できる計算です。

また、過去の合格率は35~40%ほどで、それほど難しい試験ではありません。

ただし、簡単だからといって、簿記3級が役に立たないわけではありません。

簿記3級の知識があれば、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を読む力は、十分に身に付きます。

起業当初の簡単な取引の会計処理は、問題なくこなせるレベルになるでしょう。

簿記の基礎となる重要な知識が詰まっているため、もっとも費用対効果が高い級だといえます。

(参考:簿記3級・2級の勉強時間は?1ヶ月・2ヶ月での合格は可能?

 

2) できれば2級まで

起業までに時間の余裕があれば、簿記2級まで取得するのがおすすめです。

簿記3級よりも深く学ぶため、高い分析力が身に付き、経営に活かせるためです。

例えば、取引先の財務諸表を分析して、取引を続けても問題ないか判断できます。

また、簿記2級から出題される工業簿記は、自社で商品を製造する際の原価計算に役立ちます。

簿記2級の知識は、すぐに実践で使えるものばかりです。

簿記2級を取得していれば、経営のレベルが1段上がり、事業を軌道に乗せやすくなるでしょう。

ただし、簿記2級の知識は、すべてが役立つとは限りません。

中規模以上の企業でしか使用しない内容が含まれているためです。

例えば、親会社と子会社に関する連結会計は、起業当初には不要な知識です。

また、外貨建取引や税効果会計の知識も使用しない可能性が高いでしょう。

起業のためと割り切るのであれば、上記のような知識は不要です。

しかし、2級の範囲をまんべんなく学習することで、3級をより完璧に理解できます。

基礎知識がしっかりしていれば、経営のさまざまなシーンで役立つでしょう。

 

3) 1級までは不要

起業するための知識を身に付けたいのであれば、簿記1級の知識は不要です。

簿記1級の学習範囲は専門的すぎて、起業には役立たないためです。

また、簿記1級を取得するには、2級を取得済みの人でも500~1,000時間かかります。

500~1,000時間を簿記の勉強に使用するなら、自身の事業についての知識を深めた方がいいでしょう。

税理士や会計士は、簿記1級と同等レベルの知識を持っています。

会計処理で不明な点があっても、専門家に確認すればいいだけなので、起業時に簿記1級の知識がなくても問題ありません。

 

3. 起業時に簿記を勉強する方法

起業時に簿記を勉強する方法

簿記は、独学や資格学校・通信教育で学べます。

ここでは、起業時に簿記を勉強する方法を解説します。

 

1) 独学で学ぶ

教科書と問題集を購入して、自分で学習を進める方法です。

簿記検定の3級と2級は、独学で合格する人も多くいます。

しかし、難解な論点で苦労する可能性が高く、長期戦を覚悟する必要があるでしょう。

いきなり2級の学習を始めると、基礎的な論点を理解していないため、挫折する可能性があります。

独学で簿記を勉強する人は、まずは3級から始めて基礎を固めてください。

独学のメリットは、勉強に必要な費用を抑えられることです。

教科書と問題集・過去問を買うだけであれば、数千円の費用だけで簿記を勉強できます。

しかし、学習効率が悪く、時間的な費用は掛かると理解しておきましょう。

(参考:簿記3級は独学で合格可能?

 

2) 資格学校で学ぶ

資格学校に通い、教室で授業を受ける勉強方法です。

授業のスケジュールが決められているため、意志の弱い人でも勉強を続けられます。

また、教室には同じ簿記を学習する仲間がいて、モチベーションも上がりやすいです。

ただし、資格学校に通うには、授業料を支払う必要があります。

授業料の目安は、以下の通りです。

・簿記3級:30,000円前後
・簿記2級:70,000円前後

起業前は、何かと資金が必要な時期です。

数万円の出費だったとしても、控えたい人は多いのではないでしょうか。

出費をしてでも、効率よく最短ルートで簿記に合格したい人には、資格学校がおすすめです。

 

3) 通信教育で学ぶ

通信教育は、インターネット上で動画を活用して、簿記の授業を提供するサービスです。

資格学校に通うよりは、費用が安い傾向にあります。

また、自分の好きな時間に学習を進められるのも、メリットの一つです。

分かりやすい授業の動画で効率的に勉強できるため、独学と資格学校の良いとこ取りをした学習方法といえるでしょう。

★簿記のおすすめ通信講座
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。

・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング

詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。

 

4. 起業時に簿記以外に必要となる能力

起業時に簿記以外に必要となる能力

起業をすると、簿記以外にもマーケティング能力やコミュニケーション能力が必要です。

ここでは、起業時に簿記以外に必要となる能力について解説します。

 

1) マーケティング能力

マーケティングとは、市場調査に基づいて、新商品の開発や企画をすることです。

自分の販売したい商品やサービスだけ取り扱っても、市場動向とマッチしていなければ、売上は伸ばせません。

マーケティングにより顧客のニーズを把握して、顧客が欲しがる商品を作ることが大切です。

マーケティング能力を磨くには、論理的思考が必要です。

簿記を勉強すると論理的思考が養われるといわれているため、簿記が得意な人は、マーケティングも得意な可能性が高いです。

 

2) コミュニケーション能力

経営者に必要な能力として、頻繁に挙げられるのがコミュニケーション能力です。

起業したばかりの頃は、得意先と親密になっておらず、少しずつ関係を深める必要があります。

コミュニケーション能力を駆使して、得意先と仲良くなれば、売上も増えていくでしょう。

また、従業員を雇った際に、上手に指示を出すのもコミュニケーション能力の一つです。

経営において、人を扱うのがもっとも難しいと言う経営者もいます。

従業員のパフォーマンスを上げるために、自分の意思を分かりやすく伝えて、円滑に社内を回すことが大切です。

 

3) 情報収集能力

事業を長く続けていくには、社会の変化を知るための情報収集能力が大切です。

事業に関する分野の最新情報や、法律の改正に対応する必要があるためです。

例えば、税法や会計処理の変更を知らなかった場合、税務調査で追徴課税を受ける可能性があります。

常に新しい知識を頭に入れて、社会の変化に対応してください。

 

5. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

起業をする際は、とりあえず簿記3級の知識があれば問題ありません。

比較的容易に取得できるため、起業準備にも支障をきたさないでしょう。

時間的に余裕がある場合は、2級まで取得すると、より深く簿記について理解できます。

自分の事業を分析する能力も身に付き、改善を繰り返しながら業績を伸ばしていけます。

簿記を勉強して、起業後の事業運営にぜひ活かしてください。

 

6. まとめ

Point! ◆簿記は利益やお金の流れを把握でき、事業運営に役立つ知識。
◆起業前にはとりあえず3級を取得して、余裕があれば2級も取得する。
◆起業前は忙しいので、自由な時間に学習できる通信教育がおすすめ。

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