簿記1級は難易度が高いため、苦労に見合うメリットがあるか心配する人が多いです。
しかし、簿記1級の有用性は、多くの理由から実証されています。
この記事では、簿記1級が食いっぱぐれないと言われる理由や、資格をさらに活用する方法について解説します。
簿記1級を受験するか検討する際の参考になるため、悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
1. 簿記1級があれば食いっぱぐれない理由
1) 経理への就職・転職が有利になる
2) 有名人が発言したから
3) 経理以外の職種でも役立つ
4) 昇進する可能性が上がる
5) 他の資格取得も狙える
2. 簿記1級の資格以外に必要なもの
1) 実務経験
2) キャリアプラン
3) 人脈
3. 食いっぱぐれない資格は他にある?
1) 公認会計士
2) 税理士
3) 難易度には注意!
4. 終わりに
5. まとめ
1. 簿記1級があれば食いっぱぐれない理由
簿記1級を取得すると転職が有利になり、会社で昇進する可能性も上がります。
ここでは、簿記1級が食いっぱぐれないと言われる理由について解説します。
1) 経理への就職・転職が有利になる
簿記1級の取得者は、就職や転職が有利になります。
簿記1級の合格者は毎回1,000人ほどで、希少性が高いためです。
例えば、同じく就職や転職に有利とされている簿記2級は、1回の合格者が1万人を超えることもあり、毎年多くの合格者が誕生します。
そのため、経理や会計事務所などへ就職する場合、簿記1級を取得していると、ライバルが少なく大幅に有利になるでしょう。
近年、経理業務のアウトソーシング化が進んでいますが、どの企業においても会計の知識を持った人材は必要です。
何らかの理由で会社を失業しても、簿記1級を取得していればスムーズに再就職先を見つけられます。
(簿記と転職については「簿記2級・3級は転職に有利?履歴書の書き方もご紹介!」も合わせてご確認ください。)
2) 有名人が発言したから
若者に大きな影響力を持つ2チャンネルの開設者である「ひろゆき氏」は、簿記1級を持っていれば食いっぱぐれることはないと発言しました。
論理的で客観的な発言をするひろゆき氏が言うのであれば、説得力が高いのではないでしょうか。
ひろゆき氏が発言した、TOEICと簿記1級の比較を要約すると、以下の通りです。
ひろゆき氏は会計の専門家ではありませんが、会社の経営経験が豊富にあるため、発言の内容に一定の信憑性はあるかと思います。
第一線で活躍する経営者が「簿記1級は食いっぱぐれない」と言うのであれば、学習する際の大きな支えになるのではないでしょうか。
3) 経理以外の職種でも役立つ
簿記1級は会計のエキスパートですが、経理以外の職種でも役に立ちます。
簿記1級では幅広い内容を学習して、経理以外の職種でも応用できるためです。
例えば、予算管理や銀行との交渉などを担当する財務部では、自社の決算書を深く理解する能力が役立ちます。
その他にも、M&Aのコンサルティングにも役立ちます。
M&Aとは、ある会社が他の会社を買収することです。
M&Aを検討する際は、必ずデューデリジェンスと呼ばれる、買収先の価値やリスクを判断するための調査が実施されます。
デューデリジェンスでは、財務諸表や事業計画書・予算計画書などから、企業の財務状況を詳細に調査します。
簿記1級を取得していれば、企業の価値を正確に判断でき、買収を成功に導く可能性が上がります。
このように簿記1級は、経理部だけではなくさまざまな部署で活躍できるため、食いっぱぐれる可能性は低くなります。
4) 昇進する可能性が上がる
食いっぱぐれないためには転職に有利になるだけでなく、現在の会社で生き抜くことも大切です。
簿記1級を学習すると自分が所属する部署や、会社の経営に関われるくらいの知識が身に付きます。
例えば、簿記1級の工業簿記で学習する意思決定会計では、新規工場の開設や海外への進出・設備投資などの重要な判断の方法を覚えられます。
現役の経営者であっても、会社の重要な決定を経験や感覚でおこなう人は多いです。
しかし、簿記1級を取得していれば、数字に裏打ちされた根拠のある判断が可能です。
また、簿記1級では割賦販売の取戻し品の処理やCVP分析の感度分析など、マニアックな論点も出題されます。
実際に経理の仕事をしている人でも、初見の論点が多く、一生使わないような知識もあります。
そのため、イレギュラーな処理が発生しても難なく対応でき、管理職のポジションに就いて活躍できるでしょう。
本人は昇進に興味がなかったとしても、上層部は簿記1級の知識を持っている人を放ってはおきません。
将来的には経理部だけでなく、経営全般を任される人材になるはずです。
5) 他の資格取得も狙える
簿記1級の知識は、他の資格を取得する際にも役に立ちます。
ビジネス系の資格の学習内容は、簿記の知識が必要なケースが多いためです。
例えば、経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士は、簿記の知識が必須です。
簿記1級の知識があれば、1次試験の科目の一つである「財務会計」は、ほとんど勉強をしないで合格できるでしょう。
また、税理士試験の必須科目である簿記論と財務諸表論は、簿記1級と学習範囲が大きく被っています。
簿記1級を取得しているからといって、勉強しないで科目合格できるわけではありませんが、大幅に学習時間を短縮可能です。
その他にも、国際会計検定や建設業経理士など、簿記1級の知識が役立つ資格は多くあります。
簿記1級だけでなく、さまざまな資格を取得すれば、さらに食いっぱぐれないでしょう。
(簿記1級のメリットについては「簿記1級のメリット7選!どれくらいすごい?何ができる?」も合わせてご確認ください。)
2. 簿記1級の資格以外に必要なもの
簿記1級を取得するだけでも、食いっぱぐれる可能性は低くなります。
しかし、その他の要素を取り入れることで、社会人としてより強い武器を手に入れられるでしょう。
ここでは、食いっぱぐれないために、資格以外に必要なものを解説します。
1) 実務経験
簿記1級は実務でも使える知識が身に付きますが、実際に実務経験があれば、さらに資格を活用できるでしょう。
経理業務が未経験の人でも、簿記1級を取得していれば問題なく、就職・転職で採用される確率が高くなります。
しかし、実務経験がない人に高い給与を設定するのは難しく、他の社員と同程度の水準からのスタートとなります。
実務経験と簿記1級があれば、企業側は経験者として高水準の給与を設定できます。
経理業務は知識と経験が重要になるため、実務経験が多い人ほど重宝されるでしょう。
実務経験が3年を超えると、ステップアップのために大企業へ転職する人も多いです。
大企業の募集要項には「簿記1級取得者」と条件が記載されているケースがあり、実務経験と資格を上手にアピールできれば、採用される確率が上がります。
2) キャリアプラン
簿記1級を活かすには、どのような職に就くか・何の仕事をしたいかなどを考えて、最適なキャリアプランを作ることが大切です。
簿記1級を取得すると、さまざまな道が開けますが、何も考えずに働くと簿記1級を活かせなくなるためです。
例えば、会計業界とまったく関係のない仕事をしている人が、簿記1級を取得後に同じ仕事を続けても、宝の持ち腐れになってしまうでしょう。
簿記1級を活かせる代表的なキャリアプランは、以下のようなものがあります。
簿記1級は知識の幅が広く、その他にも資格を活かせるキャリアプランは無数にあります。
さまざまな選択肢があるからこそ、未来の理想像を具体的に考えて、簿記1級を活かせる最適なキャリアプランを築いてください。
3) 人脈
食いっぱぐれないためには、人脈も必要です。
人脈が広いと昇進や転職で有利になり、物事を円滑に進められるためです。
社内でキャリアを積み昇進を目指すのであれば、自社の経営者や管理職との関係を深めましょう。
今後、転職を考えているのであれば、社外の人脈を増やすことが大切です。
ただし、人脈は一朝一夕で築けるものではありません。
周囲の人とコミュニケーションを取りつつ、いろいろな人と関係を深めてください。
簿記1級の学習しているときに勉強仲間ができた場合は、将来的に有力な人脈になる可能性があります。
簿記1級を取得するポテンシャルを持っている人は、会社でも能力を発揮して昇進するためです。
簿記1級の学習が終わった後も、情報交換をするなど積極的に交流を続けるといいでしょう。
簿記講座の元運営責任者が、「実績(合格者数)」と「コストパフォーマンス」の観点から、簿記1級のおすすめ通信講座を以下の3つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・大原
・スタディング
・CPAラーニング
詳細は「簿記1級の通信講座おすすめ3選!会計士が実績とコスパを比較」をご確認ください。
3. 食いっぱぐれない資格は他にある?
簿記1級の他に、公認会計士や税理士などの資格も、食いっぱぐれない資格として有名です。
ここでは、簿記1級以外の食いっぱぐれない資格を紹介します。
1) 公認会計士
公認会計士は大企業の監査を独占業務とする、会計資格の最高峰です。
公認会計士の主な就職先は監査法人ですが、活躍できる場所は無数にあります。
例えば、公認会計士資格を保有している人は、無条件で税理士への登録も認められています。
監査法人での会社勤めが苦手な人は、税理士登録をして独立するのもいいでしょう。
また、財務状況から企業の課題を発見する能力があるため、コンサルティング会社でも活躍可能です。
M&Aの際の調査である財務デューデリジェンスや企業価値の評価・内部統制など、公認会計士としての知識を活かせます。
公認会計士資格の保有者は、一般企業へ転職する人も多いです。
一般企業では専門知識を活かした決算業務や投資家への情報開示・内部監査などの業務を担当します。
経営コンサルティング能力を見込まれて、経営企画部で戦略の立案に携わるケースもあります。
公認会計士が一般企業に就職をすれば、早い段階でマネージャーや財務責任者に抜擢されることが多く、食いっぱぐれる心配はいらないでしょう。
(公認会計士については「公認会計士とは?わかりやすく簡単に解説します!」も合わせてご確認ください。)
2) 税理士
税理士は税務の知識だけでなく、会計の面からも中小企業を支える資格です。
税理士は、税金の申告や税務相談などが独占業務となっているため、安定した収入を見込めます。
また、税金に関する業務以外にも、以下のような業務をおこないます。
・会計指導
・M&Aに関するアドバイス
・資金調達のサポート
・記帳代行
上記の他にも、一般企業で経理業務や法人税の申告業務もできます。
最近では、経理業務のDXに関するアドバイスを専門とする税理士もいて、活躍の幅が広がっています。
常に新しい知識の学習を続ける必要はありますが、専門知識を上手に活かせば、食いっぱぐれることのない資格です。
3) 難易度には注意!
公認会計士か税理士を取得すれば、一生食いっぱぐれない可能性が高いです。
しかし、どちらの資格も難易度が高いため注意してください。
例えば、公認会計士に合格するには、少なくとも3,000時間程度の勉強が必要だといわれています。
単純比較はできませんが、簿記1級に必要な勉強時間は1,000時間なので、3倍の難易度があると考えていいでしょう。
また、公認会計士試験の合格率は約10%です。
予備校でしっかりと学習した受験生がほとんどの試験で、合格率10%はかなり低いです。
税理士試験は公認会計士試験よりも難易度が低く見られがちですが、合格までの勉強時間の目安は5,000時間程度です。
学習範囲が広く5科目に合格する必要があるため、途中で挫折してしまう人も多くいます。
合格率は科目により異なりますが、10~15%ほどです。
簿記1級の合格率は約10%のため、同レベルの試験に5回合格する必要があると考えれば、難易度の高さが理解できるのではないでしょうか。
公認会計士と税理士は食いっぱぐれない資格ですが、難易度が高いため安易に手を出すのは危険です。
どちらの資格も簿記の知識は必須のため、まずは簿記1級を取得するのもおすすめです。
自分のポテンシャルと資格の難易度を検討して、受験するかを慎重に決めてください。
ただし、合格できなかったとしても、勉強して得た知識は今後の生活に役立つでしょう。
専門学校などでしっかりと学習すれば、企業の経理や税理士事務所・コンサルティング会社などで即戦力になれます。
多くの時間を費やしたとしても決して無駄にはならないため、受験を迷っているのであれば、学習を始めてしまってもいいでしょう。
(公認会計士と税理士については「公認会計士と税理士の違い・共通点とは?どっちがおすすめ?」も合わせてご確認ください。)
4. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
簿記1級を取得すれば、経理への転職・就職が有利になるだけでなく、昇進する可能性が高まり、他の資格取得にも役立ちます。
簿記1級だけでなく、実務経験や人脈があり、自分のキャリアプランを考えて行動すれば、さらに食いっぱぐれない可能性が高まるでしょう。
簿記1級の他にも、公認会計士や税理士など食いっぱぐれない資格はあります。
しかし、難易度も上がるため、自分のポテンシャルややる気と相談して受験するかを決めてください。
簿記1級などの食いっぱぐれない資格を取得すれば、生活に余裕ができて、人生の選択肢が広がるはずです。
5. まとめ
◆簿記1級をさらに活用するには、実務経験や人脈が必要。
◆公認会計士や税理士は食いっぱぐれない資格だが、難易度が高いため慎重な検討が必要である。