財務分析指標の目安とは?一覧でご紹介!

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財務分析を行う上で、非常に多くの指標があり戸惑っている方も多いかと思います。

そこで今回は、財務分析を行うにあたってこれだけは押さえておいてほしい、最重要指標についてご紹介させていただきます。

少し数が多くなっていますが、全て重要な指標ですので、頭に入れておいてください。

また、本記事で扱う指標は全て「ビジネス会計検定」で学べる指標ですので、基礎知識がまだ身に付いていない方は、ぜひビジネス会計検定の受験を検討してみてください。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 収益性分析

収益性分析

収益性分析の詳細については「収益性分析とは?ビジネス会計検定で学べる各指標をご紹介!」をご参照ください。

【指標一覧】
1) 総資本経常利益率・事業利益率
2) 経営資本営業利益率
3) 自己資本当期純利益率

 

1) 総資本経常利益率・事業利益率

① 計算式

経常利益/総資本 × 100(%)
事業利益/総資本 × 100(%)
*事業利益 = 営業利益+受取利息・有価証券利息+受取配当金+持分法による投資利益

② 目安

・高ければ高いほど収益性の観点からは望ましい。

・業種により異なるが、「5%」程度が目安。

③ ポイント

・ROI(Return on Investment)と呼ばれる。

・分母を総資産にすると、全資産の収益性を表すROA(Return On Assets)となる。

 

2) 経営資本営業利益率

① 計算式

営業利益/経営資本 × 100(%)
*経営資本 = 総資本 -(投資その他の資産+建設仮勘定+繰延資産)

② 目安

・高ければ高いほど収益性の観点からは望ましい。

・ROA同様に「5%」程度が目安。

③ ポイント

・純粋に営業利益による資本利益率を測定するため、営業利益に対応した経営資本が使用されている。

 

3) 自己資本当期純利益率

① 計算式

当期純利益/自己資本 × 100(%)

② 目安

・高ければ高いほど収益性の観点からは 望ましい。

・目安は「10%」。

③ ポイント

・ROE(Return on Equity)と呼ばれる。

・株主の出資に対する収益性を表している。

 

2. 安全性分析

安全性分析

安全性分析の詳細については「安全性分析とは?各指標を学ぶにはビジネス会計検定がおすすめ!」をご参照ください。

【指標一覧】
1) 流動比率
2) 正味運転資本
3) 当座比率
4) 手元流動性
5) 手元流動性比率
6) ネットキャッシュ
7) 固定比率
8) 固定長期適合率
9) 負債比率
10) 自己資本比率
11) インタレスト・カバレッジ・レシオ

 

1) 流動比率

① 計算式

流動資産/流動負債 × 100(%)

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「200%」。

③ ポイント

・短期で決済が必要な流動負債を決済するのに十分な流動資産があるかどうかを測定する指標。

 

2) 正味運転資本

① 計算式

流動資産 - 流動負債

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・比率ではなく絶対額なので、値は企業ごとに大きく異なり、共通の目安はない。

③ ポイント

・流動比率を差額で表した指標。

 

3) 当座比率

① 計算式

当座資産/流動負債 × 100(%)
*当座資産 = 流動資産 - 棚卸資産 - 繰延税金資産 - その他流動資産

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「100%」。

③ ポイント

・流動比率の分母を当座資産に換えた指標。

・より換金性の高い資産で測定する短期の安全性。

・不良在庫が多いと流動比率は高く、当座比率は低くなる。

 

4) 手元流動性

① 計算式

手元流動性(手元資金)= 現金及び預金 + 有価証券

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・絶対額なので業界、企業ごとに共通の目安はない。

③ ポイント

・正味運転資本よりさらに端的に短期の流動性を表した指標。

・手元資金とも呼ばれる。

 

5) 手元流動性比率

① 計算式

手許流動性/(売上高÷12) (月)

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「1ヶ月」(中小企業であれば「1.5ヶ月」)。

③ ポイント

・取引先の支払能力に依存する売掛金は除外した指標。

 

6) ネットキャッシュ

① 計算式

手元流動性 - 有利子負債
*有利子負債 = 短期借入金 + 長期借入金 + リース債務(流動・固定)+ 社債

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・絶対額なので共通の目安はない。

③ ポイント

・手元流動性よりも、より直接的に手元に残るキャッシュを見る指標。

 

7) 固定比率

① 計算式

固定資産/純資産 × 100 (%)

② 目安

・低ければ低いほど長期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「100%」。

③ ポイント

・長期的な資金の調達と運用のバランスを測定する指標。

 

8) 固定長期適合率

① 計算式

固定資産/(純資産+固定負債) × 100 (%)

② 目安

・低ければ低いほど長期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「100%」。

③ ポイント

・固定比率の調達源泉に固定負債を追加した指標。

・固定負債も加味して、固定資産に投下した資金を賄えれば問題ないという考え方。

 

9) 負債比率

① 計算式

負債/純資産 × 100(%)

② 目安

・低ければ低いほど長期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「100%」。

③ ポイント

・他人資本である負債と自己資本である純資産のバランスを見る指標。

 

10) 自己資本比率

① 計算式

純資産(自己資本)/ 負債純資産合計 × 100(%)

② 目安

・高ければ高いほど長期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「50%」。

③ ポイント

・負債比率と表裏一体の関係にある指標。

 

11) インタレスト・カバレッジ・レシオ

① 計算式

事業利益/支払利息・社債利息等 (倍)
*事業利益 = 営業利益 + 受取利息・有価証券利息 + 受取配当金 + 持分法による投資利益

② 目安

・高ければ高いほど短期の安全性の観点からは望ましい。

・目安は「1倍」。

③ ポイント

・利息の支払い能力を測る指標。

・安全性の他の指標がBS(貸借対照表)を基にした指標であるのに対して、PL(損益計算書)を基にした指標。

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3. 成長性分析

成長性分析

成長性分析の詳細については「成長性分析とは?各指標をご紹介!」をご確認ください。

【指標一覧】
1) 売上高伸び率
2) 営業利益伸び率
3) 経常利益伸び率
4) 総資本伸び率
5) 純資産伸び率

 

1) 売上高伸び率

① 計算式

(当年度売上-前年度売上)÷ 前年度売上 × 100(%)

② 目安

・目安は「10%」。

③ ポイント

・トップラインである売上高の成長性が低ければ、利益率を維持するために費用を圧縮する方向に経営の舵を切ることになる。

 

2) 営業利益伸び率

① 計算式

(当年度営業利益-前年度営業利益)÷ 前年度営業利益 × 100(%)

② 目安

・目安は「10%」。

③ ポイント

・売上に対する比率も重要であるため、収益性分析の指標と合わせて検討する。

 

3) 経常利益伸び率

① 計算式

(当年度経常利益-前年度経常利益)÷ 前年度経常利益 × 100(%)

② 目安

・目安は「10%」。

③ ポイント

・経常的な収支の伸び率であるため、長期的にはこの指標を堅調に伸ばす必要がある。

 

4) 総資本伸び率

① 計算式

(当年度総資本-前年度総資本)÷ 前年度総資本 × 100(%)

② 目安

・目安は「5%」。

③ ポイント

・負債の増加による総資本の増加は安全性の観点から望ましくないため、安全性の指標と合わせて検討する。

 

5) 純資産伸び率

① 計算式

(当年度純資産-前年度純資産)÷ 前年度純資産 × 100(%)

② 目安

・目安は「8%」。

③ ポイント

・利益をあげるか、出資をしてもらえば純資産は増加する。

 

4. 株式投資指標

株式投資指標

株式投資指標の詳細については、「株式投資の指標(PER・PBR 等)を学ぶならビジネス会計検定!」も合わせてご確認ください。

【指標一覧】
1) EPS(1株当たり当期純利益)
2) PER(株価収益率)
3) BPS(1株当たり純資産)
4) PBR(株価純資産倍率)
5) 一株当たり配当額
6) 配当性向
7) 配当利回り
8) 株式益回り
9) 時価総額
10) 一人当たり分析

 

1) EPS(1株当たり当期純利益)

① 計算式

当期純利益/発行済株式数(円)

② 目安

・分母の発行済株式数は会社により大きく異なるため、企業間を比較する共通の目安はない。

③ ポイント

・同一企業の期間推移を見て、良し悪しを判断する指標。

 

2) PER(株価収益率)

① 計算式

1株当たり株価 /1株当たり当期純利益(倍)

② 目安

・目安は「15倍

・高ければ割高、低ければ割安。

③ ポイント

・現在の利益水準であれば、何年で投資額を回収できるか?についても表している指標。

 

3) BPS(1株当たり純資産)

① 計算式

純資産/発行済株式数(円)

② 目安

・発行済株式数は会社により大きく異なるため、企業間を比較する目安はない。

③ ポイント

・最低株価の目安としての意味を持っている指標。

 

4) PBR(株価純資産倍率)

① 計算式

1株当たり株価 /1株当たり純資産(倍)

② 目安

・目安は「1倍

・高ければ割高、低ければ割安。

③ ポイント

・1倍より低く割安と判断できる場合でも、単に経営が上手くいっていないだけの可能性もあるので、慎重な判断が必要となる。

 

5) 一株当たり配当額

① 計算式

配当金総額/発行済株式数(円)

② 目安

・発行済株式数により変動するため、共通の目安はない。

③ ポイント

・配当性向の基礎指標として利用するものであり、一株当たり配当額だけで何か判断できるものではない。

 

6) 配当性向

① 計算式

1株当たり配当額/1株当たり当期純利益 × 100(%)

② 目安

・目安は「30%」。

③ ポイント

・配当性向が高いほど株主が貰える配当金は増えるが、将来に対する投資の原資である内部留保が減るため、成長性の面からは配当性向が高い方が望ましいとは言えない。

 

7) 配当利回り

① 計算式

1株当たり配当額/1株当たり株価 × 100(%)

② 目安

・目安は「3%」。

③ ポイント

・配当性向と同様に、配当利回りが高いということは将来に対する投資に十分なお金を回しておらず、急成長している企業ではないと言うことができる。

 

8) 株式益回り

① 計算式

1株当たり当期純利益 /1株当たり株価 × 100(%)

② 目安

・目安は「6.7%」。

・高ければ割安、低ければ割高。

③ ポイント

・PER(株価収益率)の逆数。

 

9) 時価総額

① 計算式

1株当たり株価 × 発行済株式数(円)

② 目安

・企業により大きく異なるため、共通の目安はない。

③ ポイント

・同業界内で比較することで、対象企業に対する将来の市場の期待値を比べることができる。

・売上や利益などから描いていたイメージと、時価総額は異なることがある。


【セブン&アイHD】
・売上高:約6兆円
・時価総額:約4兆円

【イオン】
・売上高:約8兆円
・時価総額:約2兆円

 

10) 1人当たり売上高

① 計算式

売上高÷従業員数

② 目安

・「3,000万円~4,000万円」が1つの目安。(設備が売上の源泉である製造業と人が売上の源泉であるサービス業やIT企業で値に大きな開きがある。)

③ ポイント

・一人当たり分析はその他にも「労働集約率(1人当たり総資産)」「労働装備率(1人当たり有形固定資産)」などがある。

 

5. 1つの指標だけで分析するのはNG

1つの指標だけで分析するのはNG

収益性・安全性・成長性・株式投資の4つの視点から、各指標について紹介してきましたが、どの指標が一番大事なのでしょうか?

結論としては、1つの指標だけで判断するのは危ないということです。

各指標はトレードオフの関係になっていることが多いです。

例えば、成長性は高ければ高いほど良いと思われるかもしれませんが、急激な成長は資金面や組織面にリスクを抱えることが多く、安全性の観点からは望ましくないとも言えます。

また、安全性を高めようと負債を減らして自己資本比率を高めた場合、負債によるレバレッジ効果(てこ)がなくなり、ROE(自己資本当期純利益率)が低下して収益性が悪化します。

このように、1つの指標だけを高めようとするとリスクが大きいため、複数の指標のバランスをとりながら、経営を行っていく必要があります。

投資家目線で言えば、複数の指標のバランスがいい企業が、健全な経営をしており投資対象として適切と言えます。

 

6. 終わりに

財務分析の各指標について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

分析手法を知っているのと、実際に分析できるのとでは大きな差があります。

ぜひ実際の企業を題材にして、財務分析を行ってみてください。

また、財務分析の基礎的な知識に不安がある方は、ビジネス会計検定の勉強をして、基礎を固めてください。

 

7. まとめ

Point! ◆財務分析には収益性指標・安全性指標・成長性指標・株式投資指標などの切り口がある。
◆1つの指標だけを高めようとすると、他の指標が低下する可能性があるので、総合的な経営判断が必要になる。
◆株式投資の目線で考えた場合は、各指標のバランスが重要になる。

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