公務員の人で公認会計士や中小企業診断士に興味を持ち、受験を検討している人も一定数いるかと思います。
ただ、財務会計の専門家である公認会計士と、経営コンサルタントである中小企業診断士、いったいどっちが公務員の自分におすすめなのか、迷われているのではないでしょうか?
そこで今回は、公務員が公認会計士・中小企業診断士を目指すメリット・デメリットをそれぞれ紹介した上で、公務員であればどちらを目指した方がいいのか?といった点について解説していきます。
1. 公務員⇒会計士のメリット
1) 将来的に独立開業できる
2) 専門性を磨ける
3) 年収が上がる
2. 公務員⇒会計士のデメリット
1) 合格できない可能性がある
2) 年下の上司ができる
3) 子育て環境が公務員ほど整ってない
3. 公務員⇒診断士のメリット
1) 公務員に活かせる知識が身に付く
2) 人脈を作ることができる
4. 公務員⇒診断士のデメリット
1) 全く評価されない可能性がある
2) 独占業務があるわけではない
3) 1年以上の勉強期間が必要
5. どっちを目指した方がいい?
1) 公務員を辞める覚悟があるなら
2) 公務員として働き続けたいなら
6. 終わりに
7. まとめ
1. 公務員⇒会計士のメリット
1) 将来的に独立開業できる
公務員が公認会計士を目指す1つ目のメリットとしては、「将来的に独立開業できる」ことが考えられます。
独立開業には、以下のような良い点があります。
・柔軟に働くことができる。
・ビジネスのオーナーになれる。
・働いた分だけ収入がアップする。
もちろん悪い点もありますが、将来の選択肢として独立開業できる状態を作っておくことは、大切と言えます。
この点、公務員の場合、公務員としてキャリアを積んでいっても、どこかで独立開業できるわけではありません。
一方で、公認会計士の場合、少なくとも試験合格後から公認会計士登録をするまでは、監査法人で働くのが一般的ですが、その後は独立開業することが可能となります。
また、公務員の場合定年後の不安がありますが、公認会計士として独立開業すれば定年がなくなり、その不安からも解放されるのです。
以上より、「将来的に独立開業できる」ことは、公務員が公認会計士を目指すメリットと言えます。
2) 専門性を磨ける
公務員が公認会計士を目指す2つ目のメリットとしては、「専門性を磨ける」ことが考えられます。
公務員には、幅広くどの業務もこなせるような、ゼネラリストとしての能力が求められます。
定期的に部署異動が行われるのも、ゼネラリストが育ちやすい環境と言えます。
これに対して公認会計士には、財務会計のスペシャリストとしての能力が求められます。
また、独占業務である監査業務も、スペシャリストの業務となります。
つまり、公務員は「他の人でもできる業務」を数多くこなすためのスキルを磨く職業であるのに対して、公認会計士は「自分にしかできない業務」、つまりは専門性を高める職業と言えます。
公認会計士として働く上でも、ゼネラリストとしての能力は求められるため、公認会計士として専門性を磨きながら、公務員時代の能力を活かすことができるのです。
以上より、「専門性を磨ける」ことは、公務員が公認会計士を目指すメリットと言えます。
3) 年収が上がる
公務員が公認会計士を目指す3つ目のメリットとしては、「年収が上がる」ことが考えられます。
公務員の平均年収は600万円台であり、民間企業の平均年収400万円台よりは高く、悪くないようにも思えます。
一方で、公務員で1,000万円以上の給料を貰えるのは、出世競争に勝ち残った限られた一部の人となります。
これに対して公認会計士の場合は、大手監査法人1年目で公務員の平均年収を超える人もいます。
また、真面目に仕事を続けていれば、マネージャーまでは昇格でき、1,000万円近くの給料を手にすることができます。
公認会計士の年収については、私の実体験を記事にした「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は・・・万円でした!」をご確認ください。
以上より、「年収が上がる」ことは、公務員が公認会計士を目指すメリットと言えます。
2. 公務員⇒会計士のデメリット
1) 合格できない可能性がある
公務員が公認会計士を目指す1つ目のデメリットとしては、「合格できない可能性がある」ことが考えられます。
当たり前のことですが、いくら公認会計士になるメリットがあったとしても、試験に合格できなければ意味がありません。
もちろん試験勉強で学んだ知識は、合否に関係なく現職で活かすことができますが、公務員の業務との関わりで言えば、後述の中小企業診断士の勉強内容の方が、関りが深いです。
この点、「公認会計士試験の難易度・合格率とは?難しいと言われる5つの理由」でお伝えしている通り、公認会計士試験は非常に難易度の高い試験です。
約10%という合格率だけを見ると、「案外いけるかも?」と思うかもしれませんが、そもそも受験者層のレベルが高く、その中で10%に入るためには相当な勉強量が必要となります。
公務員試験である程度勉強に対する耐性はあるかもしれませんが、それだけで合格できるほど公認会計士試験はあまいものではありません。
以上より、「合格できない可能性がある」ことは、公務員が公認会計士を目指すデメリットと言えます。
2) 年下の上司ができる
公務員が公認会計士を目指す2つ目のデメリットとしては、「年下の上司ができる」ことが考えられます。
公務員の場合でも、年下の上司ができることはあるかと思います。
一方で、公務員で数年働いた後に公認会計士の勉強を開始して、合格後に監査法人に就職した場合、かなり高い確率で上司は年下となります。
以下は2019年度試験の合格者の年齢分布ですが、「25歳未満」が半数以上を占めております。
また、公認会計士の場合は前職があろうが・なかろうが、監査法人で働き始めた年が、公認会計士としてのキャリアの1年目となります。
つまり、公務員として数年間働いているということは、公認会計士となった後に年下の上司ができることを意味しているのです。
年齢を気にしない人であれば大した問題ではありませんが、年功序列に慣れている人にとっては、精神的に疲れてしまうかもしれません。
以上より、「年下の上司ができる」ことは、公務員が公認会計士を目指すデメリットと言えます。
3) 子育て環境が公務員ほど整ってない
公務員が公認会計士を目指す3つ目のデメリットとしては、「子育て環境が公務員ほど整ってない」ことが考えられます。
産休・育休や復帰後の育児とキャリア形成に関しては、公務員の方が環境が整っていると言えます。
前提として、産休・育休や時短勤務などの制度自体は、どちらも大差ありません。(そもそも産休・育休に関しては国の制度であり、差はありません。)
ただ、公認会計士が勤務する監査法人はまだまだ男性社会であり、産休・育休や育児と仕事のバランスなどに対する理解が乏しいのが実情です。
また、公認会計士は繁忙期が非常に激務であり、育児と両立しながら働くのに苦労しやすい環境となります。(一方で、独立開業している人、あるいは経理に転職している人は、資格を活かしながらワークライフバランスを充実させているケースが多いです。)
以上より、「子育て環境が公務員ほど整ってない」ことは、公務員が公認会計士を目指すデメリットと言えます。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
3. 公務員⇒診断士のメリット
1) 公務員に活かせる知識が身に付く
公務員が中小企業診断士を目指す1つ目のメリットとしては、「公務員に活かせる知識が身に付く」ことが考えられます。
中小企業診断士試験では読んで字のごとく、「中小企業」の経営コンサルに必要な知識を学ぶこととなります。
また、2次試験は論述試験であり、事例をもとに論理的に問題を解決していく能力が求められます。
そのため、中小企業診断士としての知識は、以下の点から公務員の実務にも活きてくる知識となるのです。
以上より、「公務員に活かせる知識が身に付く」ことは、公務員が中小企業診断士を目指すメリットと言えます。
2) 人脈を作ることができる
公務員が中小企業診断士を目指す2つ目のメリットとしては、「人脈を作ることができる」ことが考えられます。
プライベートな人脈とは別に、ビジネス上の人脈を作っておくことは、何の仕事をする上でも大切なことです。
公務員も例外ではありませんが、公務員という立場で作れる人脈には、限りがあるのも事実です。
この点、中小企業診断士は数ある国家資格の中でも、横のつながりが非常に強い資格であり、人脈を作る上では非常に有益な資格となります。
中小企業診断士同士の人脈も当然にできますが、他の中小企業診断士や中小企業診断士協会を通じて、士業の先生方や中小企業の経営層、あるいは公的機関などを紹介してもらうことができます。
新しい人脈を開拓できていない人には、良いきっかけとなることでしょう。
以上より、「人脈を作ることができる」ことは、公務員が中小企業診断士を目指すメリットと言えます。
(人脈以外の診断士の魅力については、「中小企業診断士の5つの魅力」をご参照ください。)
4. 公務員⇒診断士のデメリット
1) 全く評価されない可能性がある
公務員が中小企業診断士を目指す1つ目のデメリットとしては、「全く評価されない可能性がある」ことが考えられます。
先程中小企業診断士の知識は公務員の実務に活きるとお伝えしましたが、それが評価されるかどうかは別の話となります。
むしろ中小企業診断士の資格取得自体は、直接的には評価されない可能性の方がはるかに高いです。
もし肩書を手に入れて評価されることが目的なのであれば、事前に上司に相談して資格取得と評価が直接結びつているか、確認しておく必要があります。
以上より、「全く評価されない可能性がある」ことは、公務員が中小企業診断士を目指すデメリットと言えます。
2) 独占業務があるわけではない
公務員が中小企業診断士を目指す2つ目のデメリットとしては、「独占業務があるわけではない」ことが考えられます。
資格取得の一般的な目的の1つに、手に職をつけたいといったものがあります。
公認会計士であれば財務諸表監査業務という独占業務があり、公認会計士以外が行うことは禁止されています。
これに対して、中小企業診断士には独占業務がありません。
極端な話を言えば、中小企業診断士の資格を取得したからといって、新たに何か仕事が発生するわけではなく、資格取得後にできることは、実は無資格でもできることばかりなのです。
以上より、「独占業務があるわけではない」ことは、公務員が中小企業診断士を目指すデメリットと言えます。
3) 1年以上の勉強期間が必要
公務員が中小企業診断士を目指す3つ目のデメリットとしては、「1年以上の勉強期間が必要」なことが考えられます。
一般的に中小企業診断士試験に最終合格するためには、1,000時間程度の勉強時間が必要と言われております。
1,000時間というのは、「平日2時間、休日5時間」の勉強を、1年間継続すれば達成できる勉強時間となります。
ただ、仮に毎日定時帰りだったとしても、上記の勉強時間を1年間ずっと継続するのは難しいです。
また、1,000時間というのはあくまで合格のために最低限必要な時間であり、実際はより多くの時間が必要となることが想定されます。
さらに、試験は年1回しかないため、タイミング次第ではより多くの勉強期間が必要となってしまいます。
つまりは、中小企業診断士試験に合格するためには、実質的に1年以上の勉強期間が必要となるのです。
以上より、「1年以上の勉強期間が必要」なことは、公務員が中小企業診断士を目指すデメリットと言えます。
中小企業診断士講座の元運営者責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。
・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト
詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。
5. どっちを目指した方がいい?
ここまでは、公務員から公認会計士・中小企業診断士それぞれを目指すメリット・デメリットについて紹介してきました。
それでは結局のところ、公務員はどちらを目指した方がいいのでしょうか?
この点について、
・公務員として働き続けたい場合
の2つに分けて、順に解説していきます。
1) 公務員を辞める覚悟があるなら
公務員を辞めて新たな道を歩む覚悟があるならば、公認会計士の方がおすすめと言えます。
そもそも、中小企業診断士の場合は前述の通り、試験に合格したからといって急に仕事が発生するわけではないため、公務員を辞めるにはリスクが高すぎます。
一方で、公認会計士の場合は試験にさえ合格すれば、監査法人や会計事務所などの働き口が用意されています。
さらに、公認会計士の場合は税理士として登録することもできるため、将来的に独立開業して手に職を持って働く上でも、おすすめの資格と言えます。
2) 公務員として働き続けたいなら
公務員には公認会計士や中小企業診断士に負けない、以下のような多くのメリットがあります。
・充実した福利厚生
・社会的信用力の高さ
・ワークライフバランスの充実
そのため、あくまで公務員として働くことを前提として、プラスアルファで資格が欲しいという人も多いかと思います。
そんな人には、より短い期間で取得でき、公務員にも応用できる知識が身に付きやすい、中小企業診断士の方がおすすめと言えます。
6. 終わりに
公務員は公認会計士と中小企業診断士のどちらを目指した方がいいのか?といった点について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
どちらの資格も一長一短ありますが、取得できればキャリアに大きなプラスをもたらしてくれる資格と言えます。
興味を持った資格に、ぜひ挑戦してみてください。
7. まとめ
◆公務員を続ける前提⇒中小企業診断士