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監査法人に勤めている公認会計士の多くは、転職経験がないかと思います。
私もそうでした。
そのため、一部の非凡な会計士の輝かしいキャリアを見て、「自分も頑張ればうまくいくはず..」と期待を抱くかもしれません。
ただし、私のような凡人会計士の場合は、堅実に転職先を検討しないと、痛い目にあいます。
そこで今回は、監査法人からの転職を経験した私の経験も踏まえ、
2. もし監査法人時代に戻れたら、ここに転職する!おすすめ転職先3選
3. 転職先の探し方
について、順に解説していきます。
繰り返しになりますが、本記事で扱うのは「凡人」会計士の転職についてです。
1. 本当に転職するべき?
1) 将来性(転職しなくてOK)
2) 年収(転職しなくてOK)
3) 人間関係(転職するべき)
4) 働き方(転職するべき)
2. おすすめ転職先3選
1) 監査経験ある業界の上場企業経理
2) 法人税に強い税理士事務所
3) 知見ある業界の中小企業Webマーケ
3. 転職先の探し方
4. 公認会計士の転職FAQ
1) 転職するなら何年目?
2) 30代、40代でも大丈夫?
3) 転職に失敗しないコツは?
4) 英語やプログラミングは必要?
5) 会計士の転職は最強って本当?
6) 監査法人内の同僚に相談すべき?
5. 終わりに
6. まとめ
1. 本当に転職するべき?
監査法人からの転職理由としては、主に以下の4つが考えられます。
・年収
・人間関係
・働き方
本当にその理由で転職すべきなのか?について、それぞれ解説していきます。
1) 将来性(転職しなくてOK)
公認会計士の将来性について不安な情報を目にして、転職を考えた人もいるかと思います。
例えば、野村総研と英オックスフォード大学の共同研究結果によると、各士業がAIに代替される可能性は以下の通りとなっており、公認会計士は非常に高いです。
資格名 | AIによる代替可能性 |
行政書士 | 93.1% |
税理士 | 92.5% |
弁理士 | 92.1% |
公認会計士 | 85.9% |
社会保険労務士 | 79.7% |
司法書士 | 78.0% |
弁護士 | 1.4% |
中小企業診断士 | 0.2% |
しかし、将来性については監査法人にいたままでも問題なく、転職する必要はないと考えられます。
確かに、今後はAI監査ツールの利用スキルなど、求められるスキルは変化するかもしれません。
一方で、AIで単純作業が自動化されることで、仕事がなくなるどころかむしろ、クライアントとの「人対人」のコミュニケーションを通じた、本来の公認会計士の業務に集中できるようになります。
また、国内の大手監査法人は世界の4大会計事務所に属しており、かつ公認会計士協会は金融庁の傘下であるため、既得権益が強く公認会計士の仕事をなくすことは、あまり現実的ではありません。
2) 年収(転職しなくてOK)
監査法人の年収が思ったほど高くないため、転職して年収アップを狙う人も多いです。
確かに公認会計士の転職事例を見てみると、年収を大きく上げている人がいるのは事実です。
しかし、凡人の場合は監査法人にいた方が、生涯年収が高くなる可能性があるため、転職する必要はないと言えます。
チーム状況や個人の実力にもよりますが、凡人でも監査法人で10年くらい働けばマネージャーに昇格することができ、年収も1,000万円程度はもらえます。
一方で、一般の転職市場で凡人会計士が1,000万円を超えるのは、かなり大変です。
将来的に1,000万円を超えそうな求人ならともかく、転職段階で1,000万円を超えている求人はかなり少なく、仮に見つけても凡人が内定を勝ち取るのは難しいです。
3) 人間関係(転職するべき)
監査チーム内の人間関係に疲れて、転職を検討している人もいるかと思います。
結論からお伝えすると、この場合は転職を検討するべきです。
1年目など、まだ配属先が固定されていない段階ならまだしも、一度配属先の監査チームが決まると、そこから移動するのは楽ではありません。
また、基本的に人間関係の良いチームは空きがなく、仮に移動できても、より人間関係の悪いチームに配属される可能性があります。
人間関係くらいで転職なんて..と思うかもしれませんが、一般的にも人間関係は転職の一番の理由となっているので、転職を検討するべきです。
4) 働き方(転職するべき)
長時間労働や時間的拘束から解放されたい、FIREしたい、結婚や出産を機に働き方を変えたいと考え、転職を検討している人も多いかと思います。
この場合も、転職を検討するべきです。
今の監査チームに居続けた場合、基本的には今の働き方の延長です。
そのため、監査チームを移動する必要がありますが、前述の人間関係と同様に、より働きやすい監査チームに移動すること自体が、実は難しいです。
また監査法人という組織に居続ける以上は、今の働き方から劇的に変わることは難しいので、やはり転職を検討した方が良いでしょう。
2. おすすめ転職先3選
転職のポイントは、以下の2つを明確にすることです。
・得たいスキル(take)
この点を明確にしながら、もし私が監査法人時代に戻れたらここに転職する!という、おすすめの転職先を3つ紹介していきます。
ここで紹介する転職先は、以下の前提のもとで選んでいます。
【前提】
・凡人公認会計士が対象
・転職時の年収はダウン
・人間関係や働き方を変えたい人で、かつ一定の年収やスキルを得るための転職
1) 監査経験がある業界の上場企業
経理
take:経理の知識
① 上場企業の経理
公認会計士の転職先の職種の代表例は、やはり経理です。
一方で、監査の知識はあっても経理は未経験であり、いざやってみてと言われたら、公認会計士といえども戸惑う人が大半かと思います。
この点、上場企業なら業務が細分化されており、一つずつキャッチアップすることができ、マニュアルやOJTも整っております。
また、公認会計士という肩書も、中小企業よりは評価されやすいです。
一度上場企業の経理を経験すれば、あとは他の上場企業の経理を渡り歩くこともできるため、監査法人からの最初の転職先としては、おすすめと言えます。
② 提示できる自分の強み
前述の通り、監査法人内にいる公認会計士は、必ずしも経理スキルが高いわけではありません。
そのため、経理だからといって、公認会計士の肩書が強みになるとは限りません。
この点、監査経験のある業界であれば、業界知識が一定以上あるはずなので、単に公認会計士の肩書だけで勝負するのではなく、業界知識を強みにできます。
経理には数字の背景にあるビジネスを理解するスキルも求められ、この際に業界知識は不可欠となるため、十分アピールポイントとなります。
2) 法人税に強い税理士事務所
take:法人税の知識
① 法人税に強い税理士事務所
税務に強い公認会計士は非常にニーズが高いため、税理士事務所で税務スキルを身につけるのもおすすめです。
特に、将来的に企業内税理士として働く可能性も考えると、法人税を学ぶのがベターです。
法人税の知識をしっかりと身につけておけば、一般企業の財務部門の責任者として活躍することも可能です。
② 提示できる自分の強み
税理士の平均年齢は60歳以上と言われており、若手の税理士は非常に重宝されます。
そのため、税理士資格そのものが、強いアピールポイントとなります。
公認会計士の場合は別途税理士登録をする必要がありますが、転職活動の段階では内定後に登録する旨を伝えて、後は入所後に所長と話し合って、登録のタイミングを決めればよいかと思います。
また、所得税や相続税と比べて、転職時に少しでも公認会計士が強みを発揮できるのも、法人税となります。
単に経理を代行している会計事務所であれば、前述の「1) 監査経験がある業界の上場企業の経理」に転職した方が、将来的なキャリアが見込めます。
コンサルを提供している会計事務所ないしコンサルティング会社の場合は、財務・会計、M&A、IPO、資金調達、事業再生など多様な知識が必要となり、かつ一定以上の年次になると顧客を自分でとってくる必要があるため、凡人にはハードルが高いです。
そのため、凡人会計士の転職先として会計事務所やコンサルは、優先順位が低いと言えます。
3) 知見がある業界の中小企業Web
マーケ
take:Webマーケの知識
① 中小企業のWebマーケター
将来的に独立を考えているなら、Webマーケティングの知識(SEO、広告、SNSなど)は必須です。
私自身も独立後に、前職で得たWebマーケティングの知識に、非常に助けられました。
未経験者のWebマーケターへの転職は、年齢が高くなるほど著しく難しくなります。
そのため、できるだけ若い段階での転職を検討する必要があります。
また、大手企業だとそもそも未経験でのWebマーケターへの転職は難しいため、中堅以下を狙うのがおすすめです。
一時的に年収はかなり下がりますが、将来独立して稼ぐための先行投資と考えれば、決して悪い投資ではないと言えます。
② 提示できる自分の強み
自分に知見のある業界であれば、業界知識を強みとして提示できます。
優良な記事や消費者にささる広告、SNSの投稿などを作成するために、Webマーケチームは業界知識を必要としています。
そのため、業界知識を一定以上持っていれば、Webマーケ未経験でも十分可能性はあります。
ここでいう知見のある業界とは、「監査経験のある業界」だけでなく、「会計業界」や「勉強業界」といったものが考えられます。
勉強業界についてピンとこない人もいるかもしれませんが、資格の学校や学習塾、勉強アプリを提供している会社などが想定されます。
非常に難易度の高い公認会計士試験に合格した経験があるため、勉強に関しても知見が豊富なはずです。
実は私の前職も勉強業界に属しており、転職の面接時に公認会計士試験に合格している点が一定以上評価されたため、未経験の職種でも内定を獲得することができました。
3. 転職先の探し方
転職経験のない人が下手に自分で探すよりも、転職サイトに登録してエージェントに条件を伝えて探してもらう方が、圧倒的に効率的です。
ただし、漠然と相談すると(悪意なく)エージェントに都合のいい会社を、勧められる可能性があります。
前述の3つの候補を参考にしながら、業界や職種などを具体的に伝えれば、こちらのニーズに合致した転職先を探してくれます。
特に最後に紹介した中小企業のWebマーケターの場合は、明確にこちらの意図を伝えないと、公認会計士だからと経理の求人を勧められる可能性が高いので、注意が必要です。
おすすめの転職サイト&エージェントについては、以下をご参照ください。
4. 公認会計士の転職FAQ
1) 転職するなら何年目?
監査法人からの転職を考えた際に、転職のタイミングについて、以下のような疑問を持つかもしれません。
・何年目がいいの?
・シニアスタッフになってから?
・マネージャーになってから?
たしかに、年次や役職が上がるほど、関わることのできる監査業務の幅も広がり、会計知識や業界知識が増えて、転職に有利な要素が増えます。
一方で、一般企業に転職する場合、監査法人時代の役職はあまり認知されておらず、役職がなんであれ「公認会計士」として評価されるため、年次や役職にこだわる必要はありません。
つまり、一定の会計知識や業界知識が得られれば、何年目でも問題ないです。
ただし、修了考査に合格して公認会計士登録するまでは、監査法人に在籍していたほうが賢明です。
監査法人であれば、修了考査のための試験休みがあり、公認会計士の登録手続きで困った際も周りに聞けば即解決できますし、登録の入会費も監査法人が負担してくれます。
以上より、一定の会計知識や業界知識を身につけることができ、かつ公認会計士登録が完了する4年目以降が、転職の一つの目安となります。
2) 30代、40代でも大丈夫?
上場企業の経理への転職を考えた場合、公認会計士に期待されるのは会計の専門家としての知識であり、年齢は必ずしも関係ないので、少なくとも40代前半くらいまでであれば、気にする必要はありません。
ただし、転職後の役職によっては、マネジメント経験などが求められます。
また、税理士事務所の場合、税理士の平均年齢を考えれば、30代、40代でも十分若いので、まったく問題ないです。
一方で、中小企業のWebマーケターの場合は、未経験であることも考えると、40代は難しいです。
30代でもかなり苦戦することが想定されますが、年齢を重ねるほどさらに難しくなるので、興味がある場合はすぐに転職活動を始めることをおすすめします。
3) 転職に失敗しないコツは?
市場価値が低ければ、たくさんの求人にあたる必要がありますが、公認会計士の転職の場合は、肩書だけで一定の市場価値があるので、数社に絞ってしっかりと対策するほうが現実的です。
一方で、就職・転職活動の経験が乏しい公認会計士は、企業のリサーチという基本的なことがおろそかになりがちです。
数社に絞るまでは転職エージェントにお願いできますが、その中からどこを選ぶか?面接対策はどうするか?といった点は、最終的に自分で企業をリサーチして、決断する必要があります。
私が転職活動をした際も、転職先候補の企業のホームページや書籍、X(旧Twitter)やYoutubeなど、徹底的にリサーチしました。
中途半端なリサーチでどこにも内定をもらえない、あるいは何十社も応募することになるくらいなら、始めから数社に絞って徹底的にリサーチするほうが、転職の失敗を減らせます。
4) 英語やプログラミングは必要?
公認会計士の肩書に加えて、英語やプログラミングもできれば、転職活動で有利になるのは間違いありません。
ただし、現時点で全くできないのに、転職活動用に習得を考えているなら、やめたほうがいいです。
(一部の非凡な人を除き)英語やプログラミングは数か月で習得できるものではなく、数年単位の学習が必要となります。
転職活動で付け焼刃のスキルをアピールしても、ほとんどの場合ぼろがでますし、仮に内定をもらえても、転職後に悲惨な目にあいます。
何年もかけてスキルを習得して転職することも考えられますが、それであれば若さを武器に1日でも早く転職活動をしたほうが、うまくいく可能性が高いです。
転職後に必要に応じて、英語やプログラミングを長期計画で学習していけば、問題ないかと思います。
5) 会計士の転職は最強って本当?
何と比較するかにもよりますが、一般的な転職と比べて公認会計士の転職が有利であることは、間違いありません。
主な理由としては、以下が挙げられます。
① 会計・財務という専門分野がある。
② 社会的な知名度や信頼性がある。
③ 会計士向けの求人数が多い。
④ 比較的高収入で転職しやすい。
⑤ 転職後にキャリアアップしやすい。
一方で、公認会計士はあくまで肩書に過ぎず、資格を持っているからといって、最強というほど転職で有利になるわけではありません。
期待値を高く設定しすぎないことも大切です。
6) 監査法人内の同僚に相談すべき?
自分が転職することで迷惑をかけるかもしれないため、あるいは公認会計士の転職について純粋に相談したいため、転職活動をする前に監査法人内の先輩、同期、後輩などに相談したいと思う人も多いです。
ただし、メリットが全くないため、相談すべきではないです。
先輩、特にマネージャーにとっては、チームメンバーの離職率が本人の評価に直結するため、引き止められる可能性が高いです。
将来的な昇進などを提示される可能性はありますが、一度やめる意思を見せてから思いとどまって監査法人内に残っても、良く扱われるはずがありません。
また、同期や後輩に相談した場合は必ずしも引き止められませんが、マネージャーに情報が洩れる可能性が高まります。
さらに、監査法人内にいる公認会計士はほとんど転職経験がないため、転職について有益な情報も得られません。
そもそも、転職活動がうまくいかず転職できなくて、監査法人にそのまま残らざるを得ない可能性も十分あり、この場合は事前に相談してしまうと、ただ居心地が悪くなるだけです。
ちなみに私の場合は、転職先から内定をもらった段階で、まずマネージャーに伝え引き止められ、そのあとはパートナーに呼び出されて「転職するなんてバカじゃないの?」と言われましたが、転職先が決まっていたこともあり、あまり気にしませんでした。
5. 終わりに
監査法人からのおすすめ転職先について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
とりあえず転職活動をすることで、自分にもいくつか転職先があることがわかります。
その結果、「いざとなったら転職すればいいや」と考えることができ、監査法人内でより自由に立ち回れるようになり、ストレスが減るはずです。
ぜひ今日から、転職活動を始めてみましょう!
6. まとめ
◆法人税に強い税理士事務所
◆知見ある業界の中小企業Webマーケ