最もポピュラーで、かつ最も手軽に取れる会計資格の1つである、簿記3級。
「簿記3級であれば誰でも受かるよ。」
簿記を勉強している人であれば、一度はこのようなことを、聞いたことがあるかと思います。
しかし、簿記3級に落ちてしまう可能性は、誰にでもあります。
特に、本記事を見ている人の中には、一度は簿記3級に落ちてしまった経験がある人が、多いのではないでしょうか?
そんな人にまずお伝えしたいのが、簿記3級に落ちてしまったこと自体は、何も恥ずかしいことではないです。
ただし、次回に向けて何も対策をとらず、再度簿記3級に落ちてしまうのは、残念ながら進歩がなく、恥ずかしいことかもしれません。
そこで今回は、簿記3級に落ちた人向けに、前回の簿記3級本番の点数別に、次回に向けてやるべきことについて、お伝えしていきます。
前半部分では、簿記3級の難易度についても解説しておりますので、合わせてご確認ください。
1. 簿記3級の難易度
まずは、簿記3級の難易度について、見ていきましょう。
「簿記の難易度・真の合格率とは?他資格と徹底比較!」でお伝えしている通り、簿記3級の合格率は40%程度ですが、しっかりと勉強すれば、6割以上の人が合格できる試験と言えます。
合格率だけを見ると、簡単そうに見えるかもしれません。
確かに、他の資格試験と比べると、比較的高めの合格率となります。
ただし、一般的な合格率が40%程度ということは、60%の人は落ちているということであり、しっかりと対策をとらないと、合格することはできません。
また、近年試験範囲が改定されており、株式会社を前提とした内容、かつ、より実務に即した内容が3級に追加されたため、3級の難易度が上がっております。
具体的には、以下の内容が追加されました。
・電子記録債権、電子記録債務
・クレジット売掛金
・差入保証金
・株式の発行、剰余金の配当、準備金の積立
・純損益の繰越利益剰余金勘定への振替
・法人税、住民税、事業税
・消費税 など
簿記3級はそれなりの難易度であり、簿記3級に合格できなかった、あるいは苦戦したとしても、何ら不思議なことではありません。
次項で説明している、各点数ごとにやるべきことを実践して、次回試験で合格を勝ち取れば、何ら問題ありません。
簿記3級を勉強している人の中には、「そもそも簿記3級を勉強して意味あるのかな?」と思っている人も、多いかと思います。
実は、人によっては簿記3級が直接的に役に立つ場面は、意外と少ないかもしれない。
ただ、会計に関する情報について、「何かこれ知ってるかも?」というアンテナをはることができ、間接的な効果は非常に大きいです。
簿記3級を学ぶことで、会計情報に興味を持つきっかけが増え、より深く調べてみることに対するハードルが下がります。
2. 簿記3級に落ちた人がやるべきこと
それでは具体的に、前回の簿記3級本番での点数別に、やるべきことを見ていきましょう。
点数は、以下の3つに区分しております。
・40~60点
・40点以下
*参考までに、簿記検定3級の合格ラインは、70点となります。
1) 60点以上
① 同じことを繰り返す
1つ目の簿記3級に60点以上で落ちた人がやるべきこととしては、「同じことを繰り返す」ことが考えられます。
「あれだけ勉強したのにダメだった。。」
60点以上の点数で不合格となった人の中には、このように感じている人も多いはずです。
確かに、60点以上得点できているということは、一定の勉強量をこなした証拠でもあります。
そんな60点以上とれた人がやるべきことは、今までと同じことをただ繰り返すことです。
「それだけ?」と思われたかもしれませんが、それだけです。
60点以上とれたのであれば、大きな方向性は間違っていません。
単純に努力の量が、あと少し足りなかっただけです。
そのため、同じ予備校・同じ教材・同じ勉強方法で今後も勉強を進めて、何ら問題ありません。
落ちたのだから心機一転何か新しいことを始めたい気持ちもわかりますが、少なくとも簿記3級に関しては、今まで通り勉強することをおすすめいたします。
以上より、「同じことを繰り返す」ことは、簿記3級に60点以上で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
② 簿記2級の勉強を始める
2つ目の簿記3級に60点以上で落ちた人がやるべきこととしては、「簿記2級の勉強を始める」ことが考えられます。
簿記3級に関しては、今までと同じことを繰り返した方が良いと、お伝えしました。
しかし、現時点で60点以上取れる人にとって、同じことを繰り返すだけでは、次回試験まで間が持ちません。
その結果として、勉強に対するモチベーションが低下してしまいます。
また、「簿記は2級から評価される?3級は評価されない?元面接官が語ります」でお伝えしている通り、簿記2級まで取得した方が、評価される幅が広がります。
そのため、既に60点以上の点数を取っている人であれば、次回は簿記3級だけでなく、簿記2級も視野に入れて勉強を開始すべきと言えます。
上記の内容も含め、簿記2級を目指すことには、以下のメリットがあります。
・キャリアの選択肢の拡大。
・相対的に3級が簡単に思える。
・より実践的な内容が学べる。
工業簿記、連結会計、税効果会計など、3級にはない論点を学ぶ必要がありますが、最終的に簿記2級までを視野に入れているのであれば、できるだけ早い時期に勉強を開始しておいて損はないです。
以上より、「簿記2級の勉強を始める」ことは、簿記3級に60点以上で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
③ 他資格の勉強をしてみる
3つ目の簿記3級に60点以上で落ちた人がやるべきこととしては、「他資格の勉強をしてみる」ことが考えられます。
前回60点以上の得点をとった人の中には、「簿記に少し飽きてきたな。。」という人も、いるのではないでしょうか?
仮に簿記2級の勉強を開始したとしても、同じ簿記であることに変わりはなく、やはり飽きてしまうかもしれません。
そんな人におすすめしたいのが、他の資格の勉強をしてみることです。
ただ、闇雲に他資格の勉強をして時間を取られると、簿記に割く時間がなくなり、本末転倒となってしまうため、以下の2点を満たす資格がおすすめとなります。
・簿記3級程度のレベル。
そして、上記2点を満たすおすすめ資格としては、「ビジネス会計検定3級」があります。
簿記検定とビジネス会計検定の主な違いとしては、以下が挙げられます。
⇒財務諸表を「作る」スキル。
・ビジネス会計検定
⇒財務諸表を「分析する」スキル。
簿記3級の勉強に少し飽きてきたのであれば、ビジネス会計検定3級の勉強をして目線を変えてみることで、リフレッシュすることができるはずです。
「ビジネス会計検定の勉強時間・勉強期間はどのくらい??」でお伝えしている通り、ビジネス会計検定3級であれば、100時間程度の勉強時間で合格可能ですので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
以上より、「他資格の勉強をしてみる」ことは、簿記3級に60点以上で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
2) 40~60点
① 本番で間違えた論点を復習する
1つ目の簿記3級に40~60点で落ちた人がやるべきこととしては、「本番で間違えた論点を復習する」ことが考えられます。
40~60点というのは、合格点までまだやるべきことが多々ある一方で、ある程度勉強してきたと言える点数です。
そのため、次にやるべきこととして考えられるのは、苦手な論点を明らかにして、その論点を重点的に勉強することです。
では、どうやって苦手な論点を見つければよいのでしょうか?
おすすめは、試験本番の成績を利用する方法です。
つまり、前回の試験本番で間違えた箇所をピックアップして、間違えた箇所とその周辺論点を、まとめて復習する方法となります。
本番では、誰しも普段よりも真剣に、問題に取り組みます。
そんな本番の集中した環境下でも解けなかった問題というのは、理解できていない問題、つまりは苦手な問題と言えます。
40~60点の点数を70点まで引き上げるためには、得意な論点を伸ばすことよりも、苦手な論点をなくすことの方が大切となりますので、ぜひ前回の試験問題の復習をしてみてください。
以上より、「本番で間違えた論点を復習する」ことは、簿記3級に40~60点で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
② アウトプットを増やす
2つ目の簿記3級に40~60点で落ちた人がやるべきこととしては、「アウトプットを増やす」ことが考えられます。
簿記3級における40~60点というのは、インプットはある程度やったけど、アウトプットが不十分な状態と言えます。
「インプットと同じくらいは、アウトプットしたはずなんだけどな。。。」
このように思われている人も、いるかもしれません。
ただ、インプットと同程度のアウトプット量では、ぜんぜん足りないです。
「簿記はスポーツ」と言われる通り、アウトプット量が点数に直結する検定試験となります。
少なくとも、インプットの倍はアウトプットをこなす必要があるでしょう。
つまりは、最低限「Input:Output=1:2」の割合で、勉強する必要があります。
ここで、アウトプット量を増やすからといって、新たな問題集に手を出そうとする人がいますが、やめた方がよいです。
まずは今までやってきた問題集を、最初から最後までもれなく解き進めることをおすすめします。
中途半端に複数の問題集に手を出すよりは、1つの問題集をしっかりとやり込んだ方が、次回の合格可能性は高まります。
以上より、「アウトプットを増やす」ことは、簿記3級に40~60点で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
③ 余裕があれば2級の勉強を始める
3つ目の簿記3級に40~60点で落ちた人がやるべきこととしては、「余裕があれば2級の勉強を始める」ことが考えられます。
しっかりと苦手論点を勉強して、かつ、アウトプットを重点的に行えば、早い人なら1か月程度で、簿記3級の合格点レベルまで達するかと思います。
簿記3級の勉強に余裕が出てきたのであれば、簿記2級の勉強を始めることを、検討してみても良いかと思います。
「いくら簿記3級に余裕が出てきたと言っても、残りの期間で簿記2級は無理だよ。。」
といった状態の人も、多いかもしれません。
この点、とりあえず簿記2級の勉強を始めることで、仮に次回試験で2級に合格できなかったとしても、さらに次の回で合格できる可能性はぐっと高まります。
また、「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」でお伝えしている通り、かなり大変ですが『平日2時間、休日7.5時間』の勉強をこなせば、簿記2級に2か月で合格できる可能性があります。
以上より、「余裕があれば2級の勉強を始める」ことは、簿記3級に40~60点で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
3) 40点以下
① 100時間勉強してみる
1つ目の簿記3級に40点以下で落ちた人がやるべきこととしては、「100時間勉強してみる」ことが考えられます。
簿記3級で40点以下の点数をとったということは、はっきり言って勉強不足です。
それ以上でも以下でもありません。
そのため、まず大切となるのは、一定の期間勉強し続けることです。
では、どのくらい勉強すればいいのか?というと、一般的に言われている簿記3級合格に必要な勉強時間である、「100時間」を目安にしてみてください。
40点以下の場合、落ちた原因を探るのは時間の無駄です。
まずは100時間、簿記3級と向き合ってください。
以上より、「100時間勉強してみる」ことは、簿記3級に40点以下で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
② 勉強記録をつける
2つ目の簿記3級に40点以下で落ちた人がやるべきこととしては、「勉強記録をつける」ことが考えられます。
「100時間勉強できるかな。。」
と不安になった方もいるかと思います。
確かに、勉強習慣のない人が100時間勉強することは、かなり大変なことであるのは事実です。
この点、100時間勉強するための1つのコツとしては、「勉強記録をつける」ことが挙げられます。
勉強記録をつけることで、今まで自分が積み上げてきた勉強時間を、目で確認することができます。
そして、今まで積み上げてきた時間と、100時間までの残りの時間を数値化することで、漠然とした不安は具体的な目標にかわり、モチベーションを保つことができます。
また、日々の勉強記録をつけることで、改善点が見えてきますので、少しずつ勉強効率を上げることも可能となります。
以上より、「勉強記録をつける」ことは、簿記3級に40点以下で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
③ 余計なものに手を出さない
3つ目の簿記3級に40点以下で落ちた人がやるべきこととしては、「余計なものに手を出さない」ことが考えられます。
40点以下の人は、やるべきことがたくさんあるため、余計な教材に手を出している暇はありません。
今まで使ってきた教材に絞って、しっかりとやり込む必要があります。
どうしても今までの教材が嫌な場合は、別の教材に変更することも考えられますが、教材をコロコロかえる癖がついてしまうので、あまりおすすめはできません。
ただ、予備校の講座を受講していた場合で、講師の声が聞き取りづらいなどどうしようもない場合は、予備校を変更することを検討してみて良いかと思います。
以上より、「余計なものに手を出さない」ことは、簿記3級に40点以下で落ちた人が取り組むべきことと言えます。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
3. 終わりに
簿記3級に落ちた人がやるべきことについて、点数別に紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
簿記3級はしっかりと対策をとれば、誰でも十分合格することが可能な資格です。
次回試験までに、しっかりと勉強を積み重ねていきましょう。
4. まとめ
・同じことを繰り返す。
・簿記2級の勉強開始。
・他のライトな会計資格の勉強。
◆40~60点
・本番の復習で苦手論点を見つける。
・アウトプット中心で勉強する。
・余裕が出てきたら2級を勉強する。
◆40点以下
・まずは100時間勉強する。
・勉強記録をつける。
・1つの教材だけをやり込む。