「経理になるにはどうすればいいのでしょうか?」
時々このようなお話をいただきます。
確かに経理になりたいと思っても、具体的にどうすればいいかわからない方が多いのかもしれません。
そこで今回は、公認会計士として数々の経理の人達を見てきた筆者が、経理になる方法についてお伝えしていきます。
後半では、経理になるために押さえるべきポイントについても7つ紹介しますので、ぜひご一読ください。
1. 経理になるにはどうすればいい?
1) 転職エージェントに相談する
2) Wantedlyなどの媒体の利用
3) 派遣会社に登録する
2. 押さえるべきポイント7選!
1) 目的を明確にしておく
2) 経理に向いているか考える
3) まず就職・転職活動をしてみる
4) 簿記の勉強
5) MOSの勉強
6) キャリアの棚卸
7) 大手or中小を考えておく
3. 終わりに
4. まとめ
1. 経理になるにはどうすればいい?
1) 転職エージェントに相談する
経理になる1つ目の方法としては、「転職エージェントに相談する」ことが考えられます。
経理の転職案件を探そうと思っても、何から初めていいのかわからないという人は、とりあえず転職エージェントに登録して、エージェントの話を聞いてみるのがおすすめです。
多くの求職者を見てきた転職のプロであれば、あなたのスキルや向き・不向きを踏まえながら、客観的にアドバイスしてくれる可能性があります。
人に相談しながら物事を決めたい人におすすめの方法となります。
一点注意点として、転職エージェント側もビジネスでやっているので、必ずしもあなたに寄り添って対応してくれるとは限らないということです。
一般的に転職者の年収の30%程度が転職エージェントの売上となります。
つまり、転職エージェントの側に立って考えれば、より年収の高い案件、またはより早く決まりそうな案件を優先的に対応する可能性も十分あります。
そのため、以下の2点は事前に頭に入れておいてください。
・あまり過度な期待はしない。
基本的に初回から邪見に扱われるということはないため、初回に聞きたいことは全て聞いておくくらいの意気込みで臨んだ方がいいです。
以上より、「転職エージェントに相談する」ことは、経理になる方法と言えます。
転職エージェントを利用するなら、管理部門特化型の中規模エージェントである、以下の3つがおすすめです。
・MS-Japan
・Hupro(ヒュープロ)
・WARCエージェント
ただし、地方求人がないため、地方での転職の場合は大手エージェントのdoda(デューダ)がおすすめです。
詳細は「経理の転職エージェントの選び方とおすすめ4選!」をご確認ください。
2) Wantedlyなどの媒体の利用
経理になる2つ目の方法としては、「Wantedlyなどの媒体の利用」が考えられます。
従来の転職エージェントや人材紹介会社に登録する方法とは異なり、近年台頭してきているのが、ダイレクトリクルーティングという方法です。
企業側と求職側双方が情報を載せ合うプラットフォームをWeb上に設けて、求職者側が気になった企業と直接やりとりをする、あるいは企業側が気になった人に対してスカウトメールを送ることで、面接などその後のステップに進んでいきます。
この際に、プラットフォーム運営者はあくまでプラットフォームを提供しているだけであり、エージェントのように間に入って何か相談にのるといったことはしません。
そのため、人に相談するのではなく、自分で物事を決めたい人におすすめの方法となります。
Wantedlyなどが代表例として挙げられます。
実際に確認してみるとわかるのですが、企業側が実に様々な情報を開示しています。
社員の紹介や社内の取り組み・雰囲気などを、写真や記事にして公開しており、求職者側としても、事前に多くの情報を収集できるため、一度は使ってみることをおすすめします。
以上より、「Wantedlyなどの媒体の利用」は、経理になる方法と言えます。
3) 派遣会社に登録する
経理になる3つ目の方法としては、「派遣会社に登録する」ことが考えられます。
派遣の場合は企業側も比較的気軽に採用しやすいため、派遣会社に登録しておけば、一定程度の経理の求人を紹介してもらえます。
企業側と派遣会社の契約であり、直接企業に雇われるわけではないため、事前の契約以上に働かされるということもありません。
ただ、あくまで派遣ですので、直接雇用の正社員と比べると、どこかのタイミングで契約終了になる可能性があるため、長期的に安定して働きたい方には、向いていないかもしれません。
一方で、経理の実務経験がないので、とりあえず派遣で経理としての経験を積んで、その後経理の正社員の転職活動を開始したいという人にはおすすめの方法となります。
以上より、「派遣会社に登録する」ことは、経理になる方法と言えます。
一般的に、派遣社員は正社員と比較して、以下のデメリットがあると言われております。
・雇用が安定しない。
・時給計算であり休日が多いと収入が減るなど、収入が安定しない。
・責任ある重要な業務を任されにくい。
・賞与や退職金がない。
・昇格がない。
・福利厚生が充実していない。
2. 押さえるべきポイント7選!
1) 目的を明確にしておく
経理になるために押さえるべき1つ目のポイントとしては、「目的を明確にしておく」ことが挙げられます。
そもそもあなたは、なぜ経理を目指しているのでしょうか?
一般的には、以下のような理由が考えられます。
・ワークライフバランスを安定させたい。
・数字に強く簿記も持っており、自分の強みを活かしたい。
・営業など売上を追うのに疲れた。
(その他の経理のやりがいについては、「経理のやりがいとは?実は楽しい魅力のある仕事!?」も合わせてご確認ください。)
ここで注意していただきたいのは、経理になることはあくまで「手段」であって、「目的」ではないということです。
そのため、目的を明確にしておかないと、経理になっても現状と何も変わらない、あるいはより悪い環境で働くことになるかもしれません。
あくまで、目的に沿った就職・転職活動を行うことで、臨んだ環境を手にすることができるのであって、ただ闇雲に経理を目指しても、あまり意味がありません。
以上より、「目的を明確にしておく」ことは、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
2) 経理に向いているか考える
経理になるために押さえるべき2つ目のポイントとしては、「経理に向いているか考える」ことが挙げられます。
そもそも経理に向いていないのに無理して経理になる道を選んでしまうと、あとあと後悔することとなります。
それでは、経理の向き・不向きはどうやって判断すればいいのでしょうか?
あくまで私の経験に基づいたものですが、以下の経理に向いている人の特徴に多く当てはまれば、経理に向いていると考えて問題ないかと思います。
・数字に苦手意識がない人。
・細かいことをあまり気にしない人。
・勉強するのが苦手でない人。
・コミュニケーションが苦でない人。
・自走できる人。
・説明するのが苦手でない人。
・他人の意見を尊重できる人。
・デスクワークが好きな人。
・口が軽くない人。
詳細については、「経理に向いていない人、向いている人の特徴10選!」をご確認ください。
ポイントしては、各項目とも基本的にはプラスである(e.g. 「得意」「好き」)必要はなく、マイナスでなければ(e.g. 「苦手でない」「嫌いではない」)経理に向いていると考えられる点です。
向き・不向きはその人その人の個性なので、仮に向いていなかったとしてもあまり思い込まずに、他の道を検討してみることが大切です。
以上より、「経理に向いているか考える」ことは、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
3) まず就職・転職活動をしてみる
経理になるために押さえるべき3つ目のポイントとしては、「まず就職・転職活動をしてみる」ことが挙げられます。
「実力を付けてから転職活動に臨みたいので、優良な求人は残しておきたい」という人もいますが、経理になりたいと思った場合、まずは実際に就職・転職活動をしてみた方が、得られるものは大きいと思います。
その主な理由としては、以下が挙げられます。
・求人はタイミングも大事ので、とりあえず活動を始めた方がいい。
・就職、転職活動をしてみないと、自分に何が足りないのかわからない。
・履歴書作成や面接の場数を踏むことで、経験値を積むことができる。
・未経験、スキルなしでも受かる可能性はゼロではない。
特に経理への転職を今まで経験したことがない人は、考えたところで大したことはわからないので、まずは動いて経験してみるのがおすすめです。
以上より、「まず就職・転職活動をしてみる」ことは、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
4) 簿記の勉強
経理になるために押さえるべき4つ目のポイントとしては、「簿記の勉強」が挙げられます。
「経理初心者がまずやるべき10のこと」でお伝えしている通り、経理にとって必須となる会計知識を体系的に学ぶために、簿記の勉強はやっておくべきです。
実務の中で身に付けていくという人もいますが、それができるのは土台となる簿記の基礎知識が身に付いている人です。
また、特に未経験者が経理に転職する際は、過去の経理経験をアピールすることができませんので、経理としての最低限の基礎知識を持っていることを証明するためにも、簿記は取得しておいた方が良いです。
具体的には、簿記2級までの勉強は、必須と考えておいてください。
簿記2級合格には200時間程度は必要と考えられ、普通に勉強すれば3か月程度はかかるかと思います。
詳細につきましては、「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご参照ください。
以上より、「簿記の勉強」は、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
どうせ経理になるのであれば、簿記だけでなくプラスアルファのスキルを身に付けるために、ビジネス会計検定もおすすめです。
安全性や収益性・成長性などの切り口から、財務諸表を分析するスキルを養うことができる資格となります。
決算情報を分析することで、事業戦略立案に必要な財務情報を経営層に提供することができ、経理としての評価を高めることができます。
また、プライベートでも株式投資などに役立てることができ、副業による年収アップにも貢献するかもしれません。
ビジネス会計検定の詳細については、「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご確認ください。
5) MOSの勉強
経理になるために押さえるべき5つ目のポイントとしては、「MOSの勉強」が挙げられます。
経理の求人を確認すると、よく「基本的なパソコン操作ができる人」という項目があります。
これだけではどの程度を指しているのかわからず、自分のパソコンスキルで問題ないのか不安になる方も多いです。
もしパソコンスキルの部分に不安を感じているのであれば、基本的なパソコンスキルがあることを証明することができる、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)がおすすめです。
MOSはExcelやWordといった、マイクロソフト社が提供する基礎的なパソコンソフトが使えることを証明する資格となります。
試験分野としては、以下の5つがあります。
・Excel
・PowerPoint
・Access
・Outlook
このうち経理の場合は特に、Excelのスキルは不可欠ですので、Excelは勉強しておいた方が良いです。
ただ、過去のキャリアで一定のExcelスキルがあることを証明できるのであれば、MOSは取得しなくても問題ありません。
以上より、「MOSの勉強」は、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
(その他経理に求められるITスキルについては、「経理に必要なIT・パソコンスキルとは?」も合わせてご確認ください。)
6) キャリアの棚卸
経理になるために押さえるべき6つ目のポイントとしては、「キャリアの棚卸」が挙げられます。
昔に経理を経験していた人が、間を空けて再度経理として働きたいという場合は、転職の際に過去の経理経験をアピールすれば問題ありません。
一方で、経理未経験者が経理になろうと思った場合、アピールできるものがなく、不安になることも多いです。
そんな時は、とりあえず今までのキャリアを棚卸して、経理としてアピールできる要素がないか再検討する必要があります。
例えば、経理に直接的に関係がないキャリアでも、以下のような点をアピールすることが考えられます。
・コミュニケーション能力(e.g. 接客業経験)
・マネージメント能力(e.g. 管理職の経験)
・時間管理能力(e.g. 家事と育児の経験)
・マネーリテラシー(e.g. 副業経験)
・自走できる人材(e.g. 自営業経験)
究極的には、経理のオペレーションは会社ごとに異なり、会社に入ってみないとその会社で必要な経理を学ぶことができません。
そのため、他者での経理経験がなくても、経理としてでも十分にやっていける可能性をその他の点で示すことができれば、経理になることができるかもしれません。
以上より、「キャリアの棚卸」は、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
7) 大手or中小を考えておく
経理になるために押さえるべき7つ目のポイントとしては、「大手or中小を考えておく」ことが挙げられます。
同じ経理と言う職種と言えども、大手の経理で働くのか、中小の経理で働くのかで、向き・不向きや環境が当然に異なります。
あくまで一例ですが、大手経理と中小経理のメリットについては、以下を参考にしてみてください。
・経理業務全般を経験できる。
・経理以外も経験できる。
・出世のライバルが少ない。
・機動的に動ける。
・人脈を増やしやすい。
参考:「中小企業の経理をおすすめする5つの理由」
それぞれメリットがありますので、どちらの経理に就職・転職したいのか、事前に考えておく必要があります。
以上より、「大手or中小を考えておく」ことは、経理になるために押さえるべきポイントと言えます。
3. 終わりに
経理になるにはどうすればいいのか、その場合のポイントとは何なのかについてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
経理は安定した魅力のある仕事です。
もし少しでも興味を持ったのであれば、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか?
4. まとめ
◆目標は明確にしておく。
◆向き・不向きを考える。
◆とりあえず転職活動をして肌感を確かめる。
◆簿記・Excelを勉強しておく。
◆キャリアを棚卸しておく。
◆大手or中小どちらか考えておく。