経理の年間スケジュールごとのポイントを解説!

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経理として働く上で、おおよその年間スケジュールを把握しておくことは大切です。

スケジュールを事前に把握しておくことで、事前に対策を打つことができます。

そこで今回は、3月決算を前提に、経理の年間スケジュールについて解説していきます。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 経理の年間スケジュール

経理の年間スケジュール

経理の主要な年間スケジュールは、3月決算を前提とすると、以下の通りとなります。

4月
・年次決算業務。
・財務諸表作成。
・会計監査対応。

5月
・決算短信提出。
・法人税等、消費税の確定申告/納付。

6月
・有価証券報告書の提出。
・定時株主総会。

7月
・健康保険、厚生年金保険の定時決定。
・賞与(ボーナス)支払い。
・四半期決算業務。

10月
・四半期決算業務。

12月
・年末調整。
・賞与(ボーナス)支払い。

1月
・支払調書の作成/提出。
・四半期決算業務。

3月
・実施棚卸。
・経過勘定、仮勘定の処理。

各業務の詳細について、以下で順に解説していきます。

 

1) 年次決算業務&財務諸表作成(4月)

経理にとって一番の繁忙期である4月。

(繁忙期については「経理の繁忙期はいつ?事前にやっておくべき6つのこととは?」も合わせてご確認ください。)

4月が繁忙期になる一番の理由が、年次決算業務&財務諸表作成です。

1年間の企業活動の記録を集計して、売上・費用や商品・現金などの各勘定科目の残高を締める作業が、年次決算業務となります。

そして、各数字を締めて、最終的に損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を作成します。

(損益計算書や貸借対照表については「損益計算書と貸借対照表の違いは??」も合わせてご確認ください。)

財務諸表などの決算書は、会社法・税法や金融商品取引法などで提出期限が定められており、また、後述の監査対応なども加味したスケジュールを組む必要があるため、年次決算業務と財務諸表作成は非常にタイトな日程でこなす必要があります。

ポイントとしては、月次の決算業務をいかに手を抜かずにちゃんとやれるかといった点です。

年次の決算というのは基本的に月次決算の積み重ねであるため、月次をしっかりとやっていれば、年次決算は比較的楽になります。

 

2) 会計監査対応(4月)

財務諸表は作成したら終わりかというと、そうではありません。

あくまで経理が自社の業績について自己採点したに過ぎないため、監査法人による会計監査を受けなければいけません。

「ただでさえ忙しい4月に監査対応なんて無理だよ!」

と多くの経理の人が毎年言っていそうですが、法律で決まっているため監査対応を避けることはできません。

具体的には、監査人からの資料請求に応じたり、会計処理について指摘があった際は根拠の説明や、必要に応じて会計処理を修正するなどの対応をとります。

ポイントとしては、監査人との程よい距離を保つことです。

資料請求に全く応じないといった態度は問題ですが、言われた資料を無条件に提出するのも問題です。

特に、年次の低い監査法人のスタッフは、「必要かどうかわからないけど、とりあえず資料請求しておこう。」といったスタンスになりやすいです。

経理の側としては、「なぜその資料が必要なのか?」といった聞き返しや、以前に提出したことのある資料であれば「既に提出済みですので貴社内でご解決ください。」といった毅然とした態度で臨むことも必要となります。

 

3) 決算短信提出(5月)

「決算短信」とは、証券取引所が上場企業に対して開示することを要求している書類であり、決算の速報値としての役割を持っています。

正式な決算発表ではありませんが、1年間の成績を外部に初めて公表するタイミングであり、投資家からの注目も高く、経理の側としては「誤った情報を載せるわけにはいかない。。」とプレッシャーのかかる作業となります。

「決算日から45日以内の開示が適当」となっており、3月決算の場合はゴールデンウイークあたりに各社の決算短信が発表されることが多いです。

本決算である有価証券報告書と比較すると、決算短信は詳細が省かれており、売上高や各種利益、総資産や純資産、自己資本比率、各活動別のキャッシュフローなど、大枠の数値のみが記載されます。

 

4) 法人税等、消費税の確定申告/納付(5月)

法人は事業年度終了日の翌日から2か月以内に、法人税の申告書を税務署に提出し、かつ、法人税を納付する義務があります。

つまり、3月決算の場合は5月末までが期限となります。

この期限を遅れると、無申告加算税や延滞税が課されるので注意が必要です。

また、法人税の申告書で計算した所得金額・法人税額をもとに、以下の税金についても申告書を作成する必要があります。

・地方法人税。
・法人事業税。
・地方法人特別税。
・法人住民税。

さらに、消費税についても事業年度終了日の翌日から2か月以内に、申告・納付する義務があります。

 

5) 有価証券報告書の提出(6月)

上場企業などについては、事業年度終了後3か月以内に、自社の企業状況や経営状況をまとめた有価証券報告書(「有報(ゆうほう)とも呼ばれます。」)を提出する必要があります。

先ほどの決算短信が外部に公表する速報値であるのに対して、有価証券報告書は正式な公表資料となります。

期中の処理を正しく行い、決算短信も問題なく終わっても、最後の有価証券報告書で1桁間違えてしまったら、全てが水の泡となってしまいます。

そのため、経理としても細部までの気の抜けない作業となります。

 

6) 定時株主総会(6月)

有価証券報告書を作成したら、一般的には提出前に定時株主総会が開かれます。(まれに定時株主総会前に有価証券報告書を提出する会社もあります。)

定時株主総会では、株主に対して会社の状況を説明するために、要点がまとめられた株主総会用の決算資料を作成する必要があります。

この段階では当然おおもとの決算数値は既に完成しており、具材はある状態なので、後はそれをどう料理するか、つまりいかに端的に要点をまとめて、いかにうまく見せるかといった作業が必要となります。

経理に必要なITスキルとは?」でもお伝えした通り、Power Pointの操作スキルが経理にも必要となる理由の1つが、まさにこの株主総会用の決算資料作成となります。

 

7) 健康保険、厚生年金保険の定時決定(7月)

従業員の健康保険、厚生年金保険を計算する基礎となる標準報酬月額は、毎年1回見直され、これを「定時決定」と言います。

定時決定の結果提出する算定基礎届は、原則として毎年7月1日から7月10日の間に提出する必要があります。

毎年4月から6月に実際に支払われた報酬をもとに、経理は標準報酬月額を計算する必要があります。

 

8) 賞与支払い(7・12月)

会社の裁量で自由に設定できる賞与。

ボーナスとも呼ばれ、従業員にとっては1年の中でもかなり嬉しいイベントかと思います。

ただ、経理としては、賞与支払届の提出など、必要な対応を遅滞なくとる必要があります。

賞与支払届は支給日より5日以内に、年金事務所または事務センターに提出する義務があります。

賞与についても当然に健康保険料や厚生年金保険料を納付する必要があり、これを怠ると従業員にも不利益となるため、経理担当者としては注意が必要です。

 

9) 四半期決算業務(7・10・1月)

上場企業などは、年度の決算報告とは別に、四半期に一度株主に対して四半期財務諸表を作成して開示する必要があります。

年度決算と比較すると簡素化されている部分もあり、年度よりは負担が少ないものの、外部に公表する資料であるため経理に課される作業量やプレッシャーは、それなりに重いです。

年度決算の場合と同様に、月次決算をしっかりと積み重ねることが大切となります。

 

10) 年末調整(12月)

一般的な会社員の所得税は、会社が毎月の給料から源泉徴収して、従業員の代わりに納付します。

1月~12月の1年間の従業員の所得税について、12月末時点で再計算して過不足額を調整する手続のことを「年末調整」と言います。

12月末時点で改めて社員の家族構成や保険・医療費の支払状況などを調べる必要があり、また、従業員の個人情報を預かるという観点からも、経理にとって非常に負担の重い作業となります。

 

11) 支払調書の作成/提出(1月)

弁護士・税理士などの報酬、原稿料やデザイン料、不動産の賃料、印税などについて、その報酬額が一定額以上だった場合に、税務署への提出が義務づけられるのが「支払調書」となります。

必ずしもすべての取引に対して作成が必要なものではないため、期中に支払調書の作成が必要取引についてその都度把握し記録していれば、作成作業自体はそれほど難しいものではありません。

 

12) 実施棚卸(3月)

3月は4月の年次決算のための準備が必要となります。

年次決算の準備の1つとして3月に行われるのが「実施棚卸」です。

貸借対照表に記載される資産の残高は、決算期末時点の残高となります。

つまり、決算期末である3月末時点での商品などの資産の残高(個数)を、実際に見て確認する必要があります。

監査人の立会などもあり、それなりに大変なこともありますが、基本的には「個数を数える」業務ですので、難しい業務ではありません。

 

13) 経過勘定・仮勘定の処理(3月)

年次決算の準備として3月に行っておきたいその他の業務としては、経過勘定・仮勘定の処理があります。

仮勘定とは、本来は別の正しい勘定科目で処理すべきところを、内容がわからないため一時的につなぎとして処理する勘定科目であり、仮払金や仮受金などがあります。

仮勘定はあくまで一時的な勘定であるため、決算までにその内容を明らかにして、正しい勘定に振り替える必要があります。

また、前払費用・前受収益・未払費用・未収収益のような経過勘定も同様に、決算までに正しい期間に割り当てる必要があります。

 

2. 終わりに

経理の年間スケジュールについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

日々の業務に追われて、なかなか年間のスケジュールを考える機会は少ないかもしれません。

ただ、年間のスケジュールをしっかりと把握しておけば、事前に対策を打つことができ、結果として日々の業務が楽になる可能性があります。

この機会にぜひ年間のスケジュールを頭に入れておきましょう。

 

3. まとめ

Point! ◆4月:年次決算業務、財務諸表作成、会計監査対応。
◆5月:決算短信提出、法人税等・消費税の確定申告・納付。
◆6月:有価証券報告書の提出、定時株主総会。
◆7月:健康保険・厚生年金保険の定時決定、賞与支払い、四半期決算業務。
◆10月:四半期決算業務。
◆12月:年末調整、賞与支払い。
◆1月:支払調書の作成・提出、四半期決算業務。
◆3月:実施棚卸、経過勘定・仮勘定の処理。

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