簿記3級を独学で合格した場合、簿記2級も独学でいけるかな?と思いがちですが、本当に大丈夫でしょうか?
簿記3級と比べて格段に難易度が上がる簿記2級。
簿記3級と同じ気持ちで独学に臨むと痛い目に会うかもしれません。
そこで今回は、簿記2級は独学で合格可能なのか?について解説させていただきます。
後半では独学・予備校利用に関わらず利用できる、簿記2級合格のための勉強のポイントについてもお伝えしておりますので、ぜひご一読ください。
1. 簿記2級の概要
1) 試験日程
簿記2級の試験日程は6月・11月・2月の年3回実施され、試験時間は1.5時間となります。
ネット試験も開催されており、随時受験が可能となります。
詳細については「簿記の試験日・日程は?3級と2級で異なる??」をご参照ください。
2) 難易度
簿記2級の合格率は20%前後ですが、離脱者(申し込みはしたが受験しなかった層)を除いた実質的な合格率は25~30%となっております。
(詳細については「簿記の難易度・真の合格率とは?他資格と徹底比較!」をご確認ください。)
3) 出題形式
簿記2級の出題形式は、以下の通りとなっております。
・第1問(20点):仕訳問題
・第2問(20点):個別論点
・第3問(20点):財務諸表作成・精算表作成
・第4問(20点):費目別計算(部門別計算・単純個別原価計算・本社工場会計など)
・第5問(20点):総合原価計算・標準原価計算・直接原価計算
2. 簿記2級は独学での合格が可能?
1) 独学での合格は可能
簿記2級は独学での合格が可能な試験です。
「簿記3級は独学で合格可能?」でお伝えした理由と同様ですが、以下順に解説していきます。
① 市販教材が豊富
簿記2級が合格可能な1つ目の理由としては、「市販教材が豊富」なことが挙げられます。
厳密に言うと、合格に必要な内容が詰まった市販教材が豊富にあることが重要となります。
近年かなり難易度の高い問題も出題されておりますが、その場合でもその他の基本的な問題をしっかりと得点すれば、合格点に届くようになっております。
そのため、基本的な簿記2級の内容が網羅されている教材があれば、簿記2級は十分合格できます。
実際に本屋に行ってみればわかるのですが、簿記2級のテキストや問題集はかなりの数があるため、実際に手に取ってご自身に合うものを選べば問題ありません。
以上より、「市販教材が豊富」なことは、簿記2級が独学で合格可能な理由と言えます。
② 満点をとる必要がない
簿記2級が合格可能な2つ目の理由としては、「満点をとる必要がない」ことが挙げられます。
簿記2級は70点とれば合格することができ、難しい大問が仮に1問(20点)出ても、その他の問題をしっかりと得点すれば合格できます。
例えば、第153回の簿記2級試験では、第3問(20点)でかなり難易度の高い連結の問題が出題されました。
そのため、一見難易度の高い試験に思えてしまいますが、実はその他の80点分の問題については基本的な問題であり、しっかりと勉強していれば70点以上は十分とれる試験となっておりました。
試験本番でのポイントとしては、満点をとる必要がないので、明らかに難しい問題が出題された場合は、思い切って飛ばして他の問題にしっかりと時間を使うことです。
試験本番で難易度を判定できるようにするためにも、普段から基本的な問題をしっかりとやり込んでおく必要があります。
以上より、「満点をとる必要がない」ことは、簿記2級が独学で合格可能な理由と言えます。
2) 3級と比べて独学の費用対効果が悪い
簿記2級は独学が可能な一方で、簿記3級と比べると独学の費用対効果が悪いです。
簿記3級にはない簿記2級の論点が、独学の費用対効果を悪くしている主な原因となります。
以下で順に解説していきます。
① 工業簿記
1つ目の簿記2級の独学が費用対効果が悪い理由としては、「工業簿記」の存在が挙げられます。
簿記2級は商業簿記(60点)と工業簿記(40点)から構成されております。
工業簿記とは、製造業において製品の原価を計算するために行われる簿記のことを言います。
工業簿記は商業簿記と区分されていることから分かる通り、商業簿記とは計算方法や概念が異なる試験分野となります。
簿記3級で商業簿記をやっていても、工業簿記に関しては簿記2級で一から勉強する必要があります。
そのため、独学でやる際はそもそも工業簿記とは何なのか?といった、とっかかりの部分で苦戦します。
この点、予備校を利用すれば、講師が工業簿記についてわかりやすく解説するため、スムーズに工業簿記の勉強を開始することができます。
予備校代にもよりますが、それなりの時間を短縮できるため、予備校利用の方が費用対効果が高いと言えるかもしれません。
以上より、「工業簿記」があることは、簿記2級の独学が費用対効果が悪い理由となります。
② 連結会計
2つ目の簿記2級の独学が費用対効果が悪い理由としては、「連結会計」の存在が挙げられます。
連結会計は商業簿記の範囲ですが、工業簿記と同様に簿記2級から追加されている論点となります。
連結会計とは、複数の企業集団を1つの企業であるかのように見立てた際に適用される、会計の手法となります。
○○グループなどの言葉を聞いたことがあるかと思いますが、そのようなグループ企業では、1つ1つの会社での個別の決算もありますが、グループ全体で行う1つの決算もあり、この際に連結会計が使用されます。
(連結会計の詳細については「連結の範囲の決め方は?そもそも連結とは何?なぜ必要??」をご参照ください。)
この連結会計は、工業簿記以上に始めの理解が難しい論点となるため、独学で勉強した場合はかなり苦戦することが予想されます。
単純に複数の会社の数値を合算するだけであれば簡単なのですが、実際は合算した後にグループ内取引を消去するなどの、複数の処理が必要となり、複雑な問題にしようと思えばどこまでも難しくできる論点となります。
連結会計については、予備校を利用して基本的な内容をしっかりと押さえる方が、費用対効果が高いと考えられます。
以上より、「連結会計」があることは、簿記2級の独学が費用対効果が悪い理由となります。
私が受験した公認会計士試験でも、連結会計は試験範囲でした。
初めは理解に苦しんだ記憶があります。
連結会計のポイントとしては、とりあえず型(パターン)を覚えることです。
基本的な型であれば、ある程度種類は限られております。
簿記2級の範囲であれば、基本的な型で答えられる問題だけ答えて、それ以上の内容はいっそのこと捨ててしまうのも一つの方法です。
③ 勉強が苦手なら予備校を利用した方がいい!?
独学でも簿記2級の合格は可能とお伝えしましたが、簿記2級レベルの難易度の資格を独学で合格しようと思った場合、そもそも勉強が苦手な人は挫折する可能性が高いです。
独学の場合、まだ勉強したことがない未知の内容に対して、自分自身で計画を立てて、勉強を進めていく必要があります。
つまり、ある程度の勉強経験がモノを言うところがあります。
勉強が苦手な人は、勉強経験が圧倒的に足りない傾向があるので、独学で挫折して時間を無駄に使ってしまうくらいであれば、始めから予備校を利用するのも1つの考えです。
自身の過去の勉強経験を踏まえて、独学の可否については冷静に判断してください。
3) 通学?通信?
それでは、予備校を利用する場合は、通学型の予備校と通信型の予備校であれば、どちらが良いのでしょうか?
結論としては、通信型の予備校をおすすめいたします。
その理由として以下で、通学型のデメリットと通信型のメリットについてお伝えしていきます。
① 通学のデメリット
Ⅰ. 通学時間がかかる
通学型の1つ目のデメリットとしては、「通学時間がかかる」ことが挙げられます。
通学時間に勉強できれば良いのですが、例えば電車やバスであれば、必ずしも座れるとは限りません。
むしろ通学する時間帯は、退社後や学校終了後のラッシュの時間となるため、座れることはまれとなります。
また、仮に座れて勉強できたとしても、家やカフェで行う集中した勉強には及びません。
以上より、「通学時間がかかる」ことは、通学型予備校のデメリットと言えます。
Ⅱ. 通うことが目的となってしまう
通学型の2つ目のデメリットとしては、「通うことが目的となってしまう」ことが挙げられます。
試験合格のために重要となるのは、何時間予備校にいたのか?ではなく、何時間勉強したのか?です。
しかし、通学型の予備校の場合は、とりあえず予備校に行くことが目的になってしまいやすいです。
前述のように移動時間がかかる分、予備校に着くだけでも達成感を感じられてしまうのが、理由の1つと考えられます。
以上より、「通うことが目的となってしまう」ことは、通学型予備校のデメリットと言えます。
② 通信のメリット
Ⅰ. どこでも勉強できる
通信型の1つ目のメリットとしては、「どこでも勉強できる」ことが挙げられます。
パソコン(あるいはスマートフォンなど)とインターネット環境があれば、自宅だろうが、カフェだろうが、どこでも勉強することができます。
場所に縛られずに勉強できるというのは、勉強環境を定期的に変えることができるため、大きなメリットとなります。
同じ場所でずっと勉強をしていると行き詰るため、時には環境を変えることも大切です。
以上より、「どこでも勉強できる」ことは、通信型予備校のメリットと言えます。
カフェで勉強する時は、毎回使った金額をアプリなどに記録しておくと良いです。
お金がかかるからカフェを使用するな!という意味ではないです。
家ですれば無料なのにあえてお金を払ってカフェを使用している、という緊張感を持ってほしいためです。
その緊張感が、きっと集中力を上げてくれます。
Ⅱ. 勉強することが目的となる
通信型の2つ目のメリットとしては、「勉強することが目的となる」ことが挙げられます。
通学型と異なり、勉強場所に「通う」という行為がないため、通うことが目的となることはありません。
通信型の場合はあくまで「勉強したかどうか?」が大事となってきます。
つまり、勉強していなければ、今日は勉強できなかったという罪悪感が積もり、次への原動力に繋がります。
以上より、「勉強することが目的となる」ことは、通信型予備校のメリットと言えます。
Ⅲ. 通学に比べて費用を抑えられる
通信型の3つ目のメリットとしては、「通学型と比べて費用が抑えられる」ことが挙げられます。
通学型の予備校の場合、店舗の家賃やスタッフ代が、そのまま講座の価格に反映されます。
また、通信型であれば一度収録したものを何人もの人に使用してもらうことができ、講師に対する支払いも1回で済みますが、通学型であれば講義ごとに講師代を支払うこととなり、この部分も講座の価格に反映されてしまいます。
そのため、通信型の講座の方が、通学型の講座よりも料金が安くなります。
以上より、「通学に比べて費用を抑えられる」ことは、通信型予備校のメリットと言えます。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
3. 簿記2級合格のポイント6選!
1) 工業簿記に半分の勉強時間を割く
1つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「工業簿記に半分の勉強時間を割く」ことが挙げられます。
単純な得点比率だけを比べれば、「商業簿記:工業簿記=6:4」となり、それぞれをマスターするのに必要な時間はある程度この割合に比例すると考えられます。
一方で、工業簿記はかけた時間に対して点数が伸びやすく、また、試験範囲が商業簿記と比べて狭いです。
そのため、簿記2級に合格することを考えた場合、戦略的に工業簿記に半分程度の時間を割くのは1つの方法です。
工業簿記で満点(40点)をとれば、商業簿記は半分の得点比率でも合格できます。
また、工業簿記を勉強する際は、とにかく問題演習を重視した方がいいです。
始めて勉強する内容でとまどうかもしれませんが、工業簿記は問題をたくさんこなせば、自然と共通する解法が見えてくる分野です。
ぜひ工業簿記を得点源にしてください。
以上より、「工業簿記に半分の勉強時間を割く」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
2) 連結は基本的な論点を覚える
2つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「連結は基本的な論点を覚える」ことが挙げられます。
前述の内容となりますが、連結は難しい論点はいったん捨てて、基本的な論点の理解や問題演習に力を注いでください。
その際に、まず理屈ではなく暗記することが大切です。
理屈が理解できないと暗記できないと思われるかもしれませんが、暗記することで理屈の理解が進むこともあります。
連結会計はまさにこの典型例で、とりあえず基本的な解き方を暗記してください。
もしかしたら理屈が理解できるのは試験直前、あるいは試験後になることもありますが、簿記2級合格を考えると、まずは暗記するのが得策です。
以上より、「連結は基本的な論点を覚える」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
(暗記については「ビジネス会計検定で使える暗記法6選をご紹介!!」も合わせてご確認ください。)
3) テキスト・問題集は最新版を用意する
3つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「テキスト・問題集は最新版を用意する」ことが挙げられます。
と言いますのも、近年簿記3級・2級の試験範囲の改訂が頻繁に行われており、1年前のテキストでも当年の範囲に対応していないことが多いです。
例えば、連結会計については従来は簿記1級の範囲でしたが、2018年より簿記2級の範囲となりました。
このような重要な論点の改訂があるので、最新版のテキスト・問題集を用意する必要があります。
大抵のテキスト・問題集には、「○○年度(第○○回)試験対応」と書いてありますので、年度の確認はちゃんとしましょう。
以上より、「テキスト・問題集は最新版を用意する」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
4) 直前期に勉強時間を確保する
4つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「直前期に勉強時間を確保する」ことが挙げられます。
一番重要なのは毎日の勉強の積み重ねですが、直前期の最後の詰め込みも簿記2級合格のためには必要となります。
簿記2級は試験範囲が広いので、試験直前期にあまり勉強できないと、必ず内容を忘れる論点が出てきます。
試験日は6月・11月・2月と事前に分かっておりますので、試験直前の1ヶ月はしっかりと勉強期間が確保できるように、あらかじめ仕事やプライベート、学校行事を調整しておく必要があります。
以上より、「直前期に勉強時間を確保する」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
5) 直前期以外はとにかく毎日勉強する
5つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「直前期以外はとにかく毎日勉強する」ことが挙げられます。
ポイントは「毎日」勉強することです。
勉強は習慣化することで、後々大きな効果を発揮します。
そして習慣化のためには、1日1日の勉強の強度は低くてもいいので、必ず毎日勉強を続けることが大切です。
毎日勉強するのが当たり前になれば、後は勉強量を少しずつ増やしていけばいいだけです。
どんなに疲れていても、どんなに忙しくても、毎日1分でもいいので勉強してください。
その積み重ねが、成果を生み出す土台となります。
以上より、「直前期以外はとにかく毎日勉強する」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
6) 過去問は基本的な問題を100%解けるようにする
6つ目の簿記2級合格のポイントとしては、「過去問は基本的な問題を100%解けるようにする」ことが挙げられます。
繰り返しになりますが、簿記2級は解くべき問題を取りこぼさなければ、合格できる試験です。
逆に言えば、難解な問題は飛ばしてOKです。
つまり、過去問を勉強する際も、難しい問題は無視してOKなので、その他の基本的な問題、勉強した受験生であればしっかり得点してくるであろう問題については、100%できるまで過去問をやり込んでください。
試験範囲の改訂があるので過去問は無意味では?と思うかもしれませんが、そうはいっても改訂されていない範囲の方が大部分を占めておりますので、過去問をやることは無駄ではありません。
むしろ、本試験レベルの問題を体感する上で、過去問を解くことは非常に大切なこととなります。
以上より、「過去問は基本的な問題を100%解けるようにする」ことは、簿記2級合格のポイントと言えます。
4. 終わりに
簿記2級は独学で合格可能なのか?や合格のポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
近年難易度の高い論点も一部試験範囲に追加されておりますが、逆に言えば、簿記2級で学べる内容は増えており、より価値のある試験になっていると言えます。
本記事で紹介した内容をもとに、簿記2級合格をぜひ目指してみてください。
5. まとめ
◆工業簿記や連結会計など、2級特有の論点がポイントとなる。