損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を理解し分析できる能力は、ますます重要になってきています。
このような財務諸表分析の能力を測る試験として、2007年から実施されているのが、ビジネス会計検定試験。
同じく財務諸表を取り扱う簿記検定と比べて、認知度はまだ低い試験ですが、回を重ねるごとに受験者が増加している注目の資格です。
また、財務諸表分析のみならず、広く財務会計を学ぶことができる経営コンサルの国家資格として、中小企業診断士があります。
中小企業診断士は経営コンサルタントの唯一の国家資格とも言われ、非常に多岐にわたる分野が出題される難関資格です。
そして、中小企業診断士とビジネス会計検定には共通点があるため、両資格を同時並行で勉強している人も一定数います。
そこで今回は、それぞれの資格の概要を紹介し、意外な共通点について解説していきます。
1. ビジネス会計検定とは?
ビジネス会計検定は、財務諸表を理解し分析できる能力を測る試験です。
試験は、3級から1級まで実施されています。
3級と2級はマークシート方式、1級はマークシートと論述式を組み合わせた解答方式を採用しています。
3級と2級は毎年3月と10月に試験が実施され、1級は毎年3月のみ実施されます。
簿記検定が財務諸表を「作る」能力を測る試験だとすると、ビジネス会計検定は財務諸表を「分析」する能力が問われる試験です。
財務諸表分析の能力は経理だけでなく、あらゆる職種の社会人にとって基本的な知識です。
ビジネス会計検定に合格することで、企業状況について数字を使って分析できる能力を保有していることが証明できるのです。
ビジネス会計検定の詳細については、「ビジネス会計検定とは?試験の内容をご紹介!」もご参照ください。
2. 中小企業診断士とは?
中小企業診断士は、経営コンサルタントの唯一の国家資格であり、経営戦略、人事、マーケティング、財務会計、生産管理、店舗運営、経済学、IT、法務、中小企業政策など、ビジネスに関する幅広い分野の知識が問われる試験です。
中小企業診断士は、社会人が欲しい資格ランキングなどでも上位にランクされる人気資格ですが、難易度は非常に高く、合格率は1次試験と2次試験ともに20%ほどです。
1次試験は科目合格制度が設けられていますが、1次試験と2次試験のストレート合格率は毎年6%にすぎません。
1次試験では 、以下の7科目がマークシート方式で出題されます。
②「財務・会計」
③「運営管理」
④「経済学・経済政策」
⑤「経営情報システム」
⑥「経営法務」
⑦「中小企業経営・中小企業政策」
2次試験は、以下の4つの事例から構成される、論述式の試験となります。
②「事例Ⅱ(マーケティング・流通)」
③「事例Ⅲ(生産・技術)」
④「事例Ⅳ(財務・会計)」
中小企業診断士については、「中小企業診断士のメリット・デメリット4選!」も合わせてご確認ください。
3. 意外な共通点は?
ビジネス会計検定の試験と、中小企業診断士の1次試験「財務会計」及び2次試験「事例Ⅳ」では、どちらも財務諸表分析が試験範囲として出題されます。
そのため、ビジネス会計検定と中小企業診断士の両方を勉強することで、より深く財務諸表分析について学べます。
1) 中小企業診断士試験対策
財務諸表分析に特化しているビジネス会計検定よりも、財務諸表だけでなく、ファイナンスや意思決定なども含まれている中小企業診断士試験の財務会計の方が、より広い範囲の問題が出題されます。
一方で、ビジネス会計検定で出題される問題は財務諸表分析に絞られていますが、財務諸表分析の知識は中小企業診断士試験の財務会計の中でも、重要な論点として扱われています。
つまり、ビジネス会計検定の試験対策を通じて、中小企業診断士試験の1次試験「財務会計」や2次試験「事例Ⅳ」の対策を兼ねることが、可能となるのです。
ビジネス会計検定で学べる財務諸表分析の内容としては、例えば以下のようなものがありますので、参考にしてみてください。
(例題:PER 株価収益率)
【問題】
【解答】
2) ビジネス会計検定からステップアップ
もしあなたが、ビジネス会計検定試験に合格したとしましょう。
しかし、ビジネス会計検定試験の合格だけでは、財務諸表分析の能力しかアピールできません。
そこで、ビジネス会計検定試験の合格で得たスキルを活かして、さらなるステップアップとして、中小企業診断士試験の合格を目標にしても良いでしょう。
中小企業診断士に合格することで、財務諸表分析だけでなく、様々な視点で経営分析ができるようになるためです。
短期間でビジネス会計検定に合格したいなら、会計ショップのビジネス会計検定講座がおすすめです。
頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
3) 何級まで勉強すればいい?
それでは、中小企業診断士試験を考えた場合に、ビジネス会計検定試験は何級まで勉強すればいいのでしょうか?
この点、中小企業診断士試験で出題される「損益分岐点分析」などは、ビジネス会計検定2級の範囲であるため、2級まで受験することをおすすめいたします。
とは言っても、まずは3級からですので、とりあえず3級の勉強をしてみて、判断するのが良いかと思います。
3級の詳細については、「ビジネス会計検定3級が必要ない人とは?受験要項や難易度は?」をご参照ください。
4. 「会計」分野を得意とする中小企業診断士に!
中小企業診断士はいわゆる「士業」の資格ですが、独占業務があるわけではありません。
会計の分野では「公認会計士」が、法務の分野では「弁護士」が、人事労務の分野では「社会保険労務士」、そしてITの分野では専門のエンジニアがいます。
誤解を恐れずに言えば、中小企業診断士はこれらとは異なる、「ゼネラリストの資格」であり、言ってみれば「何でも屋」ということになります。
それでは、中小企業診断士は価値のない資格なのでしょうか?
いいえ、決してそんなことはありません。
中小企業診断士の強みは、ビジネスに関する幅広い範囲の知識を保有しており、発生した課題に対して、特定の分野に捕らわれず、幅広い視点から問題解決ができることです。
ビジネスの現場においても、十分評価される人材であると言えるでしょう。
そして、中小企業診断士として横断的な幅広い知識を持つだけでなく、特定の分野で強みを発揮できれば、ビジネスでさらに強く求められる人材になれます。
つまり、中小企業診断士がビジネス会計検定にチャレンジして合格することで、「会計に強い中小企業診断士」というポジションが確立できます。
このように専門分野を持つ中小企業診断士は、他の中小企業診断士と差別化された、非常に価値の高い人材として評価されるのです。
5. 終わりに
ビジネス会計検定と中小企業診断士の関連について、紹介してきました。
この2つの資格はともに「会計」分野が出題内容とされており、密接な関係があることがおわかりいただけたかと思います。
インターネットを検索すると、中小企業診断士の合格を目指して勉強している人のブログやホームページが多数公開されていることがわかります。
その中には、ビジネス会計検定の資格保有者もいるようです。
ビジネス会計検定の資格を、中小企業診断士へのステップアップとして活用するか、それとも会計に強い中小企業診断士として活かすかは、資格を保有している人が自由に選択できます。
どちらにしても、財務諸表分析を始めとした「会計」の知識は、ビジネスパーソンにとって必要であることは間違いありません。
6. まとめ
◆中小企業診断士の1次試験「財務会計」と2次試験「事例Ⅳ」がビジネス会計検定と重複する部分がある。
◆中小企業診断士がビジネス会計検定試験に合格することで、「会計に強い診断士」として活躍できる。