手に職を持つために、会計士の資格を検討している人も、多いかと思います。
ただ、一口に会計士と言っても、「公認会計士」と「USCPA(米国公認会計士)」の2つの選択肢があるのを、ご存知でしょうか?
両資格にはそれぞれの特徴があり、いずれも非常に価値の高い資格です。
そこで今回は、公認会計士とUSCPAの相違点・共通点についてまず説明した上で、それぞれの資格がおすすめな人の特徴について、解説していきます。
両資格の特徴を押さえながら、自分がどちらを目指すべきか、冷静に判断してください。
1. 公認会計士とUSCPAの相違点
1) 難易度
2) 活動地域の違い
3) 勉強時間
4) 受験資格
2. 公認会計士とUSCPAの共通点
1) 難関資格である
2) 試験範囲
3) 業務内容
4) 数十万円のお金がかかる
3. 公認会計士がおすすめな人
1) 国内で活躍したい人
2) 大学生
4. USCPAがおすすめな人
1) 海外で活躍したい人
2) 社会人
5. 終わりに
6. まとめ
1. 公認会計士とUSCPAの相違点
1) 難易度
公認会計士とUSCPAの1つ目の相違点としては、「難易度」が考えられます。
両資格を比較した場合、一般的には公認会計士試験方が難易度が高いと言われております。
その主な理由としては、以下が挙げられます。
公認会計士 | USCPA | |
試験形式 | 一問一答 簿記総合問題 理論論述問題 |
一問一答 |
合格率 | 10%前後 | 30%前後 |
試験範囲 | 広くて深い | 広いが浅い |
受験日 | 年1回 ・短答:5・12月 ・論文:8月 |
複数回受験可 |
勉強時間 | 約3,000時間 | 約1,500時間 |
① 試験形式
公認会計士試験の方が、単純な一問一答形式だけでなく、「簿記(計算)の総合問題」や「理論の論述問題」が出題されるため、試験形式の観点から、公認会計士試験の方が難易度が高いと考えられます。
② 合格率
単純に合格率だけを比較すると、公認会計士試験の方が圧倒的に低いです。
もちろん、受験者層なども考慮する必要がありますが、後述する通り両資格とも受験者層のレベルは高いと考えられるため、合格率の低い公認会計士試験方が、難易度が高いと言えます。
③ 試験範囲
後述する通り、基本的には両資格の試験範囲は同じですが、公認会計士試験の方がより深い知識が問われるため、難易度が高くなっております。
④ 受験日
USCPAが年に複数回受験できるのに対して、公認会計士試験は年1回しかチャンスがないため、この点でも公認会計士試験の方が難易度が高いと考えられます。
⑤ 勉強時間
詳細は後述しますが、一般的に公認会計士試験に合格するために必要な勉強時間は、少なくともUSCPAの倍程度となるため、公認会計士試験の方が難易度が高いと考えられます。
なお、公認会計士試験の難易度については、「公認会計士試験の難易度とは?難しいと言われる5つの理由」も合わせてご確認ください。
以上より、「難易度」は、公認会計士とUSCPAの相違点と言えます。
2) 活動地域の違い
公認会計士とUSCPAの2つ目の相違点としては、「活動地域の違い」が考えられます。
両資格の一番の違いと言えるのが、各資格を所持していた場合に活動できる、地域の違いとなります。
公認会計士は「日本」の公認会計士資格であり、海外で会計士として登録して、活動できるわけではありません。
(日本の公認会計士として、海外駐在や出向などで、海外で活動することは可能です。)
一方でUSCPAは、「米国」の公認会計士資格であり、MRA(相互承認協定*)を結んでいる国では、会計士として登録して活動することができます。
*アメリカ・オーストラリア・カナダ・アイルランド・ニュージーランド・メキシコ・香港の間の協定。
整理すると、公認会計士とUSCPAの活動地域には、以下の違いがあります。
・USCPA:MRA協定国
以上より、「活動地域の違い」は、公認会計士とUSCPAの相違点と言えます。
3) 勉強時間
公認会計士とUSCPAの3つ目の相違点としては、「勉強時間」が考えられます。
前述の通り、一般的に言われている各資格合格に必要な勉強時間は、以下の通りとなります。
・USCPA:1,500時間
「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」でお伝えしている通り、実際はもっと時間がかかることが想定されますが、いずれにしろ、公認会計士試験の方が多くの時間を費やす必要があることに、変わりはありません。
勉強時間の総時間だけ聞いても、実感がわかない人も多いかと思いますので、勉強期間も考慮してより具体的に見ていきましょう。
前提条件として、「平日3時間・休日7時間」の勉強を、毎日継続するとします。
この場合に、上記の3,000時間と1,500時間の勉強時間に達するためには、以下の期間が必要となります。
・USCPA:1年間
「平日3時間・休日7時間」の勉強を1日も欠かさずに、2年ないし1年の間継続することで合格できるのが、公認会計士とUSCPAとなります。
以上より、「勉強時間」は、公認会計士とUSCPAの相違点と言えます。
4) 受験資格
公認会計士とUSCPAの4つ目の相違点としては、「受験資格」が考えられます。
「公認会計士の受験資格とは?他資格と徹底比較!」でお伝えしている通り、公認会計士試験の場合は受験資格に制限はなく、誰でも受験することが可能となります。
一方でUSCPAの場合は、実施される州ごとに受験資格が異なりますが、概ね以下の通りとなります。
・大学で「会計単位」「ビジネス単位」を一定数以上取得。
2つ目の単位要件に関しては、米国の大学と提携している日本の予備校の講座を受講すれば、不足単位を取得することが可能となります。
誰でも受験できる公認会計士試験と異なり、USCPAの場合はまず受験資格の有無について、確認する必要があります。
以上より、「受験資格」は、公認会計士とUSCPAの相違点と言えます。
2. 公認会計士とUSCPAの共通点
1) 難関資格である
公認会計士とUSCPAの1つ目の共通点としては、「難関資格である」ことが考えられます。
先ほど相違点として、両資格の難易度が異なる点を挙げました。
ただ、前述の相違点はあくまで「公認会計士とUSCPAを比較した場合の難易度」であり、他の資格と比べれば、公認会計士・USCPAどちらも難関資格であることに、変わりはありません。
よくある勘違いの1つに、
「USCPAは公認会計士よりも難易度が低いということは、『簡単な』資格なんだな。」
といった勘違いがあります。
公認会計士と比べると簡単なだけであり、USCPAも相当難易度が高く、本気で長期間勉強しないとまず合格することはできません。
それでは、公認会計士やUSCPAは、どうして難易度が高いのでしょうか?
その主な理由の1つとして、共に「受験者層のレベルが高い」ことが考えられます。
例えば公認会計士試験の場合は、前述の通り受験資格の制限がないため誰でも受験することができ、若くて頭の回転が速い、あるいは、若くて暗記が得意な層が多数受験します。
また、USCPAの場合は、会計や財務の実務経験者が多数受験しており、試験問題も実務に近い問題が多いため、受験者層のレベルが高くなっています。
以上より、「難関資格である」ことは、公認会計士とUSCPAの共通点と言えます。
2) 試験範囲
公認会計士とUSCPAの2つ目の共通点としては、「試験範囲」が考えられます。
公認会計士試験の試験範囲は、以下の通りとなります。
・財務会計論(簿記)
・財務会計論(財務諸表論)
・管理会計論
・監査論
・企業法
・租税法
【選択科目】
・経営学、経済学、民法、統計学から1科目。
また、USCPAの試験範囲は、以下の通りとなります。
・REG(諸法規)
・BEC(ビジネス環境及び諸概念)
・AUD(監査及び証明業務)
同じ会計士の試験であるため、基本的な試験範囲に大きな差はありません。
厳密に言うと、公認会計士の方がより「深く」、USCPAの方がより「広い」という差はありますが、大枠として同じ試験範囲と言って問題ないかと思います。
もちろん、公認会計士であれば日本の会計・監査基準や法律について学び、USCPAの場合は米国の会計・監査基準や法律について学ぶ点は異なります。
以上より、「試験範囲」は、公認会計士とUSCPAの共通点と言えます。
3) 業務内容
公認会計士とUSCPAの3つ目の共通点としては、「業務内容」が考えられます。
公認会計士・USCPAは共に「会計士」であるため、基本的な業務内容・業務範囲は同じとなります。
具体的には、以下の業務が考えられます。
・税務業務。
・会計帳簿の作成。
・会計、財務、税務コンサル。
公認会計士もUSCPAも、会計・財務・税務の専門家であるため、基本的な業務内容は変わらないと考えられます。
以上より、「業務内容」は、公認会計士とUSCPAの共通点と言えます。
余談ですが、米国には日本の税理士にあたる資格がなく、日本では税理士の独占業務とされている「税務代理業務」は、基本的に誰でも行うことができます。
ただ、当然税務に関するプロフェッショナルも求められており、その役割を米国弁護士や米国公認会計士が担っていると考えられます。
一方で日本の場合は、税理士と公認会計士に業務範囲が分かれております。
ではなぜ、上記の公認会計士とUSCPAの業務内容の共通点に「税務」を含めたのか?というと、公認会計士であれば登録するだけで、税理士となることができるためです。
そのため、公認会計士はUSCPAと同様に、非常に業務範囲の広い仕事と言えます。
4) 数十万円のお金がかかる
公認会計士とUSCPAの4つ目の共通点としては、「数十万円のお金がかかる」ことが考えられます。
資格試験において、試験の難易度が上がるほど、難易度に比例してかかる費用も上がっていきます。
公認会計士の場合であれば、例えば以下の費用が必要となります。
・受験費用
また、USCPAの場合であれば、例えば以下の費用が必要となります。
・単位取得のための費用
・受験費用
公認会計士・USCPAいずれの場合でも、数十万円程度のお金が発生します。
合格するまでに複数年かかる場合は、講座の代金が倍以上発生するため、トータルで数百万円の費用が必要となるケースもあります。
さらに、受験に専念する場合は、これに合わせて無収入で生活費を賄わなければならなくなります。
両資格共、大金を先行投資する必要があるため、慎重な判断が求められます。
以上より、「数十万円のお金がかかる」ことは、公認会計士とUSCPAの共通点と言えます。
3. 公認会計士がおすすめな人
ここでは、USCPAよりも公認会計士を目指した方が良い人の特徴について、2つお伝えします。
1) 国内で会計士として活躍したい人
公認会計士をおすすめしたい人の1つ目の特徴は、「国内で会計士として活躍したい人」です。
国内で活動する場合は、公認会計士の方が肩書として評価されやすいです。
特に、国内の監査法人で働く場合は、年次の低い段階では大して差はありませんが、パートナーとなった際にUSCPAは監査報告書にサインできない点が、大きな違いとなります。
(米国基準の監査報告書にはサインできます。)
また、監査法人以外の国内の経理やコンサルなどの職場でも、一般的な認知度はUSCPAよりも公認会計士の方が高く、評価されやすいです。
さらに、国内で独立する場合は、税理士登録も可能な公認会計士の方が、圧倒的に活動しやすいです。
以上より、「国内で会計士として活躍したい人」には、公認会計士がおすすめと言えます。
2) 大学生
公認会計士をおすすめしたい人の2つ目の特徴は、「大学生」です。
前述の通り、公認会計士試験に合格するためには、USCPAの倍以上の時間がかかることが想定されます。
社会人となってからこの勉強時間を確保するのは、至難の業です。
そのため、社会人と比べて勉強時間を確保しやすい大学生のうちに、公認会計士試験に挑戦するのはおすすめです。
また、公認会計士の場合はまず監査法人に就職することとなり、監査法人への就職には年齢の要素も大きく関わってくるため、より若い大学生の方がおすすめとなります。
以上より、「大学生」には、公認会計士がおすすめと言えます。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
4. USCPAがおすすめな人
ここでは反対に、公認会計士よりもUSCPAを目指した方が良い人の特徴について、2つお伝えします。
1) 海外で会計士として活躍したい人
USCPAをおすすめしたい人の1つ目の特徴は、「海外で会計士として活躍したい人」です。
単に「海外で仕事をしてみたい」程度の気持ちであれば、公認会計士を取得して、海外駐在などを狙った方が良いかもしれません。
しかし、初めから海外を主戦場として活躍したいと考えているのであれば、USCPAの方がおすすめと言えます。
先程とは反対に、公認会計士が米国等の監査法人でサインすることはできず、また、米国等で独立しても会計士として登録できるわけではなく、不利な状況となります。
以上より、「海外で会計士として活躍したい人」には、USCPAがおすすめと言えます。
2) 社会人
USCPAをおすすめしたい人の2つ目の特徴は、「社会人」です。
USCPAの試験は、公認会計士試験と比べて、より実践的な問題が多く、実務を経験した社会人の方が内容面では有利と考えられます。
また、公認会計士よりも少ない勉強時間で、会計のスペシャリストとなれるため、非常にコストパフォーマンスが高く、時間が限られている社会人におすすめの資格となります。
以上より、「社会人」には、USCPAがおすすめと言えます。
USCPAの勉強をするなら、アビタスがおすすめです。
【アビタスのここがすごい!】
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5. 終わりに
公認会計士とUSCPAの共通点・相違点や、それぞれの資格をおすすめしたい人についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
どちらも非常に価値の高い資格ですが、取得するまでにはかなりの努力が必要となります。
自分が本当に必要としているのは、どちらの資格なのかしっかりと見極めて、勉強を開始しましょう。
6. まとめ
・難易度。
・活動領域。
・必要な勉強時間。
・受験資格。
◆共通点
・難関資格である点。
・試験範囲。
・業務内容。
・数十万円の出費が必要。