簿記のコストパフォーマンスについて皆様は考えたことはありますでしょうか?
何となく周りがやっているから、、、
とりあえず簿記くらいは取っとかないと、、、
など、明確な根拠がないまま勉強を始めようとしている方も多いかと思います。
そこで今回は、簿記取得にかかる費用について解説したのちに、簿記取得の費用対効果についてお伝えしていきます。
簿記のコストパフォーマンスを理解することで、自分が進もうとしている道がいかに意味のあることなのか、あるいは意味のないことなのかがわかります。
1. 簿記取得にかかる費用の相場は?
まず初めに簿記取得にかかる各種費用の相場を見ていきましょう。
1) 予備校費用
2級:8万円
ここでは通信講座を前提とした予備校の費用相場を解説していきます。
「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」で解説している通り、通学講座や独学に比べて通信講座の方が勉強時間数やその他の点でメリットが多いためです。
まず3級についてですが、各社によりバラツキがありますが、おおよそ3万円程度が相場となります。
3万円程度の金額を支払えば、
・講義
・テキスト
・問題集
・テスト
・模試
・質問対応
など、受験に必要なものが全て入った講座を受講することが可能です。
また、2級については8万円程度が相場となり、3級同様に受験に必要な一通りのものが揃う講座を受講することが可能です。
2) テキスト・問題集
2級:8,500円
テキスト・問題集の費用相場については代表的な例として「よくわかる簿記シリーズ」の費用を参考にします。
①3級
・合格テキスト 日商簿記3級:2,160円
・合格トレーニング 日商簿記3級:1,620円
② 2級
・合格テキスト 日商簿記2級 商業簿記:2,592円
・合格トレーニング 日商簿記2級 商業簿記:1,944円
・合格テキスト 日商簿記2級 工業簿記:2,160円
・合格トレーニング 日商簿記2級 工業簿記:1,620円
上記を合計すると、おおよそですが3級については4,000円程度、2級については8,500円程度の教材代金を見込んでおく必要があります。
独学の場合は上記費用が発生しますが、予備校を利用する場合は予備校によっては講座代金にテキスト代金が含まれているところがあるので注意が必要です。
3) 受験費用
2級:4,720円
受験費用については、消費税の10%への増税を受けて、従来より少し金額が上昇して、3級2,850円、2級4,720円となっております。
4) 勉強時間に対する機会費用
2級:26万円
簿記を取得するということは、簿記の勉強に対して「時間」というコストを支払うこととなります。
もし簿記の勉強時間を他のことにあてていれば得られるであろう収益は、簿記を勉強することで得られないので「○○円収益を得られない=○○円費用が発生している」と考えます。
このことを「機会費用」といい、ここでは機会費用も計算してみます。
具体的には、簿記の勉強にかける時間の代わりにその時間もし働いていたら、どのくらいお金を稼ぐことができたかを計算します。
正社員として会社にお勤めの方を想定して、簿記の勉強時間をアルバイトに充てると仮定します。
ここで、東京都の時間当たりの最低賃金は958円であり、今回の計算では少し高めの1,300円をアルバイトの時給とみなして計算します。
1,300円
また、簿記に必要な勉強時間は3級100時間、2級200時間と仮定します。
(詳細につきましては「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご参照ください。)
3級 100時間
2級 200時間
以上の前提より、簿記取得の機会費用を計算すると、
2級:26万円(=1,300円×200時間)
となります。
5) まとめ
以上の1)~4)の費用を合計すると、3級と2級に必要な費用の相場は以下となります。
2級:353,220円
2. 簿記取得の費用対効果
簿記にかかる費用の相場がわかったところで、簿記はその費用をかけてまで取得するメリットがあるのでしょうか?
簿記取得のメリットについては「簿記の必要性とは?3級、2級、1級それぞれに分けて解説!」を参照いただきたいのですが、メリットを具体的な金額に落とし込むのは変数が多すぎて難しいです。
そこで今回は先ほど計算した費用をもとに考えていきます。
簿記は幅広い年齢層の方が受けていますが、多くの方が簿記取得後20年はまだ働く期間があると仮定します。
そうすると、先ほどの簿記にかかる費用を今後20年で割ることで、簿記取得により1年あたり何円以上の効果があれば、かけたお金が回収できるかがわかります。
具体的に計算すると以下となります。
2級:17,661円(=353,220円÷20年)
つまり、簿記3級を取得することで年間8,343円以上のメリットがあれば取得する意味がありますし、簿記2級を取得することで年間17,661円以上のメリットがあれば取得する意味があることになります。
一般の会社員であれば簿記取得による昇進・転職・給料アップなどがあり得ますし、起業家やフリーランスの方であれば本来外注していた作業を自分でやることができるため外注費を節約できるかもしれません。
ご自身の現状にあてはめて、取得するメリットをできるだけ数値化して、しっかりと判断してみてください。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
3. 他資格との比較
最後に、同様に計算した他の資格取得にかかる費用と比較してみましょう。
1) ビジネス会計検定との比較
簿記が財務諸表の「作成」方法を学べるのに対して、ビジネス会計検定は財務諸表の「分析」方法を学ぶことができます。
そんなビジネス会計検定の費用を簿記と同様に計算すると、以下となります。
合計:158,450円
・予備校費用:20,000円
・テキスト、問題集:3,500円
・受験費用:4,950円
・機会費用:13万円(=1,300円×100時間)
合計:311,660円
・予備校費用:40,000円
・テキスト、問題集:4,180円
・受験費用:7,480円
・機会費用:26万円(=1,300円×200時間)
3級、2級共に簿記検定よりも合計金額が安い割に、簿記検定同様に評価が高い資格ですので、コストパフォーマンスは高いと言えます。
ビジネス会計検定については「国家資格並みに評価・評判が高い?!ビジネス会計検定」も合わせてご確認ください。
2) FPとの比較
個人の「お金」に関する専門家であるFP(ファイナンシャル・プランナー)についても同様に計算してみましょう。
合計:145,500円
・予備校費用:6,000円
・テキスト、問題集:3,500円
・受験費用:6,000円
・機会費用:13万円(=1,300円×100時間)
合計:287,700円
・予備校費用:15,000円
・テキスト、問題集:4,000円
・受験費用:8,700円
・機会費用:26万円(=1,300円×200時間)
こちらも簿記より総費用が安くなりますが、職種にもよりますが総合的な実用性は簿記の方が高いため、そのあたりも加味して比較してみてください。
3) 公認会計士との比較
最後に会計資格の最高峰である公認会計士試験について見ていきましょう。
・予備校費用:70万円
・テキスト、問題集:講座代金に含む
・受験費用:19,500円
・機会費用:390万円(=1,300円×3,000時間)
難易度から想像がつく方もいるかと思いますが、簿記の10倍程度の費用がかかります。
もちろんその分取得すれば監査という独占業務(公認会計士しかできない業務)を得ることができ、給料面なども含めてメリットも多いですが、難易度が格段に上がるため、受験を検討する場合は慎重な判断が必要です。
4. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
簿記のコストパフォーマンスは皆様にとって高かったでしょうか?
それとも低かったでしょうか?
一般論は参考程度に聞いておいて、自身の置かれている環境を冷静に分析して、簿記を受験するか否かを判断してください。
5. まとめ
◆簿記2級にかかる費用:約35万。
◆簿記3級の取得により毎年8千円のメリットがあるなら受験を検討する。
◆簿記2級の取得により毎年1万8千円のメリットがあるなら受験を検討する。