簿記試験で売掛金・買掛金とよく混同しやすい未収入金・未払金。
皆様も一度はどちらを使用すればよいか、迷ったことがあるのではないでしょうか?
そこで今回は、未収入金と未払金について解説していきます。
科目の特徴をしっかりと押さえることで、試験でケアレスミスを防げるようになります。
(勘定科目の一覧については「簿記の勘定科目一覧&覚え方のポイント!」をご参照ください。)
1. 未払金・未収入金とは?
『「簿記:売掛金と買掛金のポイント3選!」の「2. 未収入金・未払金との違いは?:ポイント①」』で紹介した通り、「営業取引」に関するものか否かで、未収入金・未払金と売掛金・買掛金は使用方法が区分されます。
営業取引以外により生じた債権債務。
「商品以外」(土地・車両・備品や有価証券など)の売買の際に使用される。
・売掛金/買掛金
営業取引により生じた債権債務。
「商品」の売買の際に使用される。
つまり、「商品以外」を売り上げた際にあとから代金を回収できる権利(資産)を「未収入金」、「商品以外」を仕入れた際にあとから代金を支払う義務(負債)を「未払金」といいます。
2. 建物・土地の売買は必ず未払金・未収入金になる?
それでは、一般的に「商品以外」に区分される建物や土地を売買した場合の代金回収の権利、代金支払いの義務は必ず未収入金・未払金を使用するのでしょうか?
実は必ずしも未収入金・未払金を使用するとは限らず、場合によっては売掛金・買掛金を使用する場合があります。
先ほど一般的には商品以外に区分されるとお伝えしましたが、建物や土地が「商品」に区分される場合があります。
わかりますでしょうか?
例えば不動産会社の場合は建物や土地それ自体が主たる商品となるため、不動産会社における代金回収・支払いの権利・義務は売掛金・買掛金が使用されます。
そのため、会社の業態・業種によって主たる商品は異なりますので、注意が必要です。
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3. 仕訳の具体例
それでは具体的な仕訳例を見ていきましょう。
① 小売業を営むA社は所有している建物を2,000万円で売却し、代金は月末に受け取ることとした。
借方 | 貸方 |
未収入金(資産↑) 20,000,000 |
建物(資産↓) 20,000,000 |
② A社は月末に建物の未収分を現金で受け取った。
借方 | 貸方 |
現金(資産↑) 20,000,000 |
未収入金(資産↓) 20,000,000 |
③ 卸売業を営むB社は土地を5,000万円で購入し、代金は月末に支払うこととした。
借方 | 貸方 |
土地(資産↑) 50,000,000 |
未払金(負債↑) 50,000,000 |
④ B社は月末に土地の未払分を現金で支払った。
借方 | 貸方 |
未払金(負債↓) 50,000,000 |
現金(資産↓) 50,000,000 |
⑤ 中古自動車販売業を営むC社は車両を200万円で購入し、代金は月末に支払うこととした。
借方 | 貸方 |
仕入(費用↑) 2,000,000 |
買掛金(負債↑) 2,000,000 |
* 中古自動車販売業にとって車両は「商品」となるため、未払金ではなく買掛金を使用する。
⑥ C社は月末に車両の未払分を現金で支払った。
借方 | 貸方 |
買掛金(負債↓) 2,000,000 |
現金(資産↓) 2,000,000 |
⑦ 不動産業を営むD社は所有している建物を3,000万円で売却し、代金は月末に受け取ることとした。
借方 | 貸方 |
売掛金(資産↑) 30,000,000 |
建物(資産↓) 30,000,000 |
* 不動産業にとって建物は「商品」となるため、未収入金ではなく売掛金を使用する。
⑧ D社は月末に建物の未収分を現金で受け取った。
借方 | 貸方 |
現金(資産↑) 30,000,000 |
売掛金(資産↓) 30,000,000 |
4. なぜ科目を分けているの?
未収入金・未払金と売掛金・買掛金は営業活動に関連するか否かで区分すると説明させていただきましたが、そもそもなぜ区分する必要があるのでしょうか?
1つの科目にした方が経理担当者も迷わずに良いのではないでしょうか?
簿記全般に言えることですが、より細かい区分が設定されている場合は、原因調査を詳細に行いために設定してあります。
例えば、短期の支払い義務である流動負債が増加し流動資産に対してかなり過大となった場合、それが毎期継続的に発生する営業取引によるものであれば来期も発生するため何か対策を講じる必要がありますし、営業取引以外の建物の購入などであればその支払い単発に対応できれば問題ないと考えられます。
このように、営業取引か否かで勘定科目を使い分けることで、後から原因分析が行いやすくなります。
5. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
簿記試験で未収入金・未払金に関する出題があった場合は商品の売買なのか否かをしっかり見極めてください。
また、その際に自社にとって何が商品となるのかといった点も注意してください。
不動産業における建物・土地、自動車販売業における車両などは商品となります。
勘定科目の使い分けには十分に注意して試験に臨んでください。
6. まとめ
◆不動産業にとって土地・建物は「商品」に該当する。
◆自動車販売業にとって車両は「商品」に該当する。
◆後から原因調査ができるように未払金と買掛金などの科目の区分が必要となる。