簿記は何に役立つの?経理以外も勉強した方がいい理由

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簿記は、資格の中でも人気が高く、多くの人が取得を目指しています。

しかし、何の役に立つか知らずに、学習を始める人も多いです。

この記事では、経理以外でも簿記が役立つ理由や、簿記を活用できる業種を紹介します。

簿記が何の役に立つかを知り、将来の選択肢を広げましょう。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 経理以外で簿記が役立つ理由

経理以外でも簿記が役立つ理由

簿記は、就職活動や株式投資など、さまざまなシーンで役に立ちます。

ここでは、経理以外でも簿記が役立つ理由を紹介します。

簿記の活用方法を知れば、学習する意欲がアップするでしょう。

 

1) 就職活動の資格欄に記載できる

簿記の資格を取得していると、就職活動の履歴書に記載できます。

基本的なビジネスの仕組みを理解している人物だと証明できて、評価がアップするでしょう。

入社後に簿記の知識をどのように活かせるかアピールすれば、さらに内定を得られる確率が上がります。

例えば、メーカーの工場で働くのであれば、「簿記で培った数字の分析力を活かして、無駄な経費の削減に取り組みたい」とアピール可能です。

また、営業として働くのであれば、「お客さまに対して、数字で裏打ちされた提案をして説得力を出せる」と提案力の高さを示せます。

簿記はビジネスパーソンに必須の資格として紹介されることも多く、どの業界で就職活動をするのにも役に立つでしょう。

 

2) 株式投資の財務分析に役立つ

簿記の知識があると、企業の決算書などから財務状況の分析をして、投資の判断材料にできます。

簿記は損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)などの構造や記入の仕方を学びます。

また、多くの勘定科目を覚えるため、自然と企業の財務諸表の内容を理解できるようになるでしょう。

財務諸表の分析ができると、以下の4つのポイントを把握できます。

・収益性
・安全性
・成長性
・生産性

これらの情報は、株式投資をする際の判断に役立ちます。

例えば、収益性を分析すれば、企業がなぜ利益を上げていて、どの事業が強いのか判断可能です。

成長性を分析すれば、今後も成長していくのか判断でき、株価の伸びも予想できます。

これまでの日本人は投資よりも貯蓄をする人が多く、リスクを取らない傾向でした。

しかし、政府が投資を推進して減税政策も実施しているため、投資をする人は増えていくでしょう。

他の人よりも企業を深く分析できれば、株式投資で利益を上げられる可能性が上がります。

(財務分析にはビジネス会計検定もおすすめです。「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」)

 

3) 副業での資金管理に役に立つ

簿記は、副業での資金管理にも役立ちます。

その月の収入や支出を把握して、安全なキャッシュフローを構築できるためです。

例えば、商品を掛けで仕入れて、1か月後に30万円の支払いがあるとします。

その商品を50万円で売却して、代金の受け取りが2か月後の場合、利益は出ても1か月間はキャッシュフローが‐30万円となってしまいます。

キャッシュフローがマイナスになると、次の商品を仕入れられない、貯金を切り崩すなどの弊害が発生するでしょう。

このように副業では、資金管理が重要です。

また、副業では確定申告をするために、自分で経理作業をする必要があります。

簿記の知識があると、会計ソフトへの入力が苦にならず、スムーズに作業を進められるでしょう。

例えば、現金で500円の文房具を購入した場合、すぐに以下の仕訳が頭に浮かびます。

〇月×日 消耗品費 500 / 現金 500

簿記の経験がない人は、どのように処理したらいいか分からず、作業が進まない可能性が高いです。

経理作業に時間を取られて、副業の時間が減ると売上も減ってしまいます。

簿記の知識があれば、副業のさまざまな場面で役立つでしょう。

 

4) 大学入試で有利になる

簿記の資格を保有していると、大学入試で役に立ちます。

多くの大学が簿記資格の保有者に対して、入試での優遇措置があるためです。

以下は入試の際に簿記を優遇している大学の一部です。

【国公立大学】
・福島大学
・一橋大学
・滋賀大学
・大阪公立大学
・広島大学
【私立大学】
・札幌大学
・明治大学
・立教大学
・成蹊大学
・専修大学
・中央大学
・中京大学

上記以外にも、全国のさまざまな大学が簿記を優遇しています。

会計の名門と呼ばれる大学や、偏差値の高い大学もあり、将来に渡りメリットを得られるでしょう。

高校生のうちから大学進学を視野に入れて、簿記を学習するのがおすすめです。

 

5) 昇進する可能性が上がる

簿記は、会社で昇進するのに役に立ちます。

企業の社内規則に昇進の要件として、「簿記〇級を取得していること」と記載されていることがあるためです。

経理部や会計事務所など、簿記が直結する仕事以外でも、昇進の要件となっているケースは多いです。

課長や部長などの管理職クラスになると、部署内の資金や収益性を管理する必要があります。

そのため、簿記の知識を活用して、部署をマネジメントすることが求められるのです。

 

6) 高難易度の資格に挑戦できる

簿記の知識があると、高難易度の資格を受験する際に役に立ちます。

会計資格の最高峰とされる公認会計士は、試験科目に簿記・財務諸表論・管理会計論があります。

高度な簿記の知識が必要となるため、学習を始める前に簿記の知識があれば、苦手意識を持たずに取り組めるでしょう。

税理士試験に合格するには、簿記論と財務諸表論の2科目が必修です。

簿記論は、簿記1級と学習範囲の大部分が重なっています。

簿記の学習がそのまま税理士試験の学習に繋がり、合格の可能性を高められます。

その他にも、簿記の知識はさまざまな資格に役立ちます。

取得したい資格が定まっていない方は、まずは簿記から学習を始めると、その後の応用が効くでしょう。

(公認会計士や税理士については「公認会計士と税理士の違い・共通点とは?どっちがおすすめ?」も合わせてご確認ください。)

 

7) 家計のお金管理に役に立つ

簿記は、家計のお金管理に役立ち、貯蓄を増やすことが可能です。

家計管理に欠かせない家計簿は、企業の財務諸表の簡易版だからです。

家計簿には、家賃や通信費・水道光熱費などの支出したお金と、給与や賞与などの収入を記載します。

支出と収入を比べると、家計が黒字になっているか判断できます。

つまり、家計簿は企業が作成する損益計算書と同じ構造です。

簿記の知識があれば、正確に家計簿を作成でき、どの支出が多いかなど分析も可能です。

簿記の知識を活用して家計を改善すれば、貯蓄が増えて余裕のある暮らしになるでしょう。

 

8) 融資申込の書類作成に役立つ

融資の申し込みでは、簿記の知識で説得力のある申し込み書類の作成に役立ちます。

融資の審査で重要となる事業(創業)計画書には、売上高や仕入高・人件費・利益などを記載する欄があるためです。

以下の画像は、政府系金融機関である日本政策金融公庫に、融資申込をする際に必要になる創業計画書の一部です。

 

創業計画書(日本政策金融公庫)
出典:日本政策金融公庫「創業計画書」

 

売上高や利益の数字に説得力を持たせれば、融資審査に通過する可能性が上がります。

融資担当者との面談で、数字の根拠を示しながら説明できれば、さらに確率は上がるでしょう。

また、簿記の知識があれば、正確な会計帳簿を作成できます。

事業の業績を示す資料が整っていれば、融資担当者に好印象を与えられます。

融資の申し込みに通らないと悩んでいる方は、簿記の学習をして事業計画書に説得力を持たせるといいでしょう。

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2. 経理だと簿記は当然役立つ?

経理だと簿記は当然に役立つ?

簿記は経理として働くのに役立ちます。

ただし、級によっては、即戦力となれないケースもあります。

経理として働くのであれば、実務に応用できる知識を身に付けましょう。

 

1) 経理で簿記が役に立つのは何級?

経理で即戦力となれるのは、簿記2級からです。

簿記2級で学習する内容は、実務に即していて、実務経験がなくても比較的すぐに仕事をこなせるためです。

簿記2級では、以下のような内容を学習します。

・固定資産の減価償却
・リース取引の判定や取得価格の計算
・外貨取引
・決算整理仕訳
・損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の作成

このように簿記2級では、日常経理業務から決算業務まで、経理の一連の流れを学べます。

つまり、簿記2級の内容を理解していれば、年間を通して経理業務をこなせます。

ただし、簿記3級が経理で役に立たないわけではありません。

簿記3級では簿記の基礎を学習するため、経理として働く場合に、スムーズに知識を吸収できるでしょう。

簿記の知識がない人と比べると、雲泥の差があります。

まずは簿記3級を取得して、経理として働きながら、簿記2級を学習するのもおすすめです。

 

2) 他人と差別化したいなら簿記1級

簿記2級は一人で会計の業務をこなせるレベルですが、経理としては最低限の知識といえます。

経理で働く人の多くは簿記2級を取得しているか、同等の知識を持っています。

他人と差別化するのであれば、簿記1級がおすすめです。

簿記1級の合格率は、平均で8~10%です。

学習時間は500~1,000時間が必要とされ、生半可な学習では合格できません。

経理として働いている人でも、簿記1級を取得している人は少なく、大きな差別化要素となるでしょう。

また、簿記1級を取得すれば、税理士試験の受験資格を得られます。

税理士や公認会計士など、さらに上の資格を取得すれば、大企業の経理として働ける実力が身に付くでしょう。

さらに、簿記1級の資格を取得できなかったとしても、学習した内容は実務に必ず役立ちます。

自分で学んだ内容が、日々の経理実務で活用できれば、学習が楽しくなり継続できるでしょう。

(参考「簿記1級のメリット7選!どれくらいすごい?何ができる?」)

 

3. 経理以外で簿記が役立つ業界

経理以外で簿記が役に立つ業界

簿記は、会計事務所や財務などでも役に立ちます。

ここでは、経理以外で簿記が役に立つ業界を紹介します。

簿記がどの業界で役に立つか把握して、自分の目指す方向性を考えましょう。

 

1) 会計事務所

会計事務所は、クライアントの経理や税務申告などを代行する仕事です。

会計事務所に勤務すると、20件前後のクライアントを担当するケースが多く、常に経理作業をしています。

例えば、クライアントから売上や経費の資料が送られてきたら、月別に会計ソフトへ入力します。

資料の入力が完了すると、クライアントへの報告が必要です。

クライアントへの報告は、前月と比べての変化や、資金繰りなどを報告します。

この一連の作業は、簿記の知識が不可欠です。

ただ、仕事に慣れてしまえば、簿記2級レベルの知識で対応できます。

会社に所属して経理部で働くと自社の数字しか見られませんが、会計事務所では多くの会社の数字を見られます。

会計事務所で仕事をすれば、見識を広げられて、会計のエキスパートになれるでしょう。

 

2) 財務

財務とは、企業の中で予算案の策定や余剰資金の活用方法・財務戦略の立案をする仕事です。

財務戦略とは、企業の運営に必要な資金をどこから集めて、どのように使うかの計画です。

財務戦略が安定していない企業は信用を得られず、融資や投資を受けられないなど、資金繰りがスムーズに進みません。

企業にとって重要な財務戦略は、経理が作成した財務諸表を元に立案します。

つまり、簿記は財務戦略を作成するのに必須の知識です。

日々の経理作業よりも、会社を俯瞰して見て、大きな計画の立案に関わりたいなら、財務がおすすめです。

 

3) 経営コンサルティング

経営コンサルティングとは、豊富なノウハウで経営者に対して、企業の改善点や経営戦略を提示する仕事です。

経営戦略を提示するには、企業の経営状態を把握する必要があるため、簿記の知識が必須です。

経営コンサルティングは、最初に貸借対照表や損益計算書を確認して、企業の経営状態を数字で理解します。

企業の数字を把握していれば、論理的に改善策や戦略を導き出せるでしょう。

ただし、会計処理をするわけではないため、簿記2級~3級ほどの知識があれば十分です。

簿記の基本的な知識を覚えた上で、企業を分析する方法を知ることが大切です。

 

4. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

簿記は、就職活動や株式投資・大学受験など、さまざまな場面で役に立ちます。

将来の選択肢を広げたり、家計を管理して貯蓄を増やしたりすれば、豊かな人生を歩めるでしょう。

当然、企業で経理として働くのにも役に立ちます。

経理では簿記2級を取得している人が多く、差別化はできません。

より難易度の高い簿記1級や税理士への挑戦、日々の経理業務で研鑽を積み、実力を伸ばしていきましょう。

 

5. まとめ

Point! ◆簿記は就職活動や大学入試・融資の申し込みなどで役に立つ。
◆経理で即戦力になるには、簿記2級の知識が最低限必要。
◆簿記は経理以外に、会計事務所や財務・経営コンサルティングでも役に立つ。

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