公認会計士に対するイメージの一つに、「繁忙期が大変そう」といったものがあります。
諸先輩方が自らの体験をもとに、繁忙期の壮絶さを語られているため、このようなイメージが定着したのかもしれません。
では、公認会計士の繁忙期とは、具体的にいつのことを指すのでしょうか?
結論からお伝えすると、担当する会社やチームの方針により異なるため、「人ごとに異なる」こととなります。
そのため、繁忙期の大変さを知りたい方は、極論を言えば実際に自分で経験するしかありません。
、、ですが、事前にある程度は知っておきたいですよね?
そこで今回は、私が監査法人で働いていた時の1年間のスケジュールをもとに、月別の激務度合について紹介していきます。
あくまで1つの事例ですが、リアルな事例であることも事実ですので、参考にしてみてください。
1. 会計士の繁忙期とは?月別激務度合
4月:★★★★★
5月:★★★★☆
6月:★★★☆☆
7月:★★★☆☆
8月:★☆☆☆☆
9月:★★☆☆☆
10月:★★★☆☆
11月:★★★☆☆
12月:★★☆☆☆
1月:★★★★★
2月:★★★★★
3月:★★★★☆
2. 終わりに
3. まとめ
1. 会計士の繁忙期とは?月別激務度合
前提として、当時私が所属していたチームの状況を、以下に列挙しておきます。
・外資系投資銀行が監査対象
・日本基準は3月決算
・US基準は12月決算
・複数の子会社、関連会社あり
・10名程度の監査チーム
具体的な月別の激務度について、星5段階評価で判定していきます。
それでは、4月から順に見ていきましょう。
4月:★★★★★
・年度監査(会社法)
・年度監査(金商法)
いきなり星5つの激務度となる、4月。
年度を通しても、一二を争う繁忙期となります。
繁忙期となる原因は、日本基準の年度の財務諸表監査です。
4月いっぱいで会社法の財務諸表監査の手続きを終了させる必要があったため、まさに激務でした。
さらに大変なのが、実質的に金商法(金融商品取引法)ベースの監査手続きも、大きな問題点は会社法監査手続きが終了するまでに、洗い出しておく必要がある点でした。
「金商法監査は5月から本格的にやればいいや。」
というわけにはいきません。
会社法と金商法で監査結果に差を出すわけにはいかないため、当然と言えば当然なのですが…
後述する通り、私の監査チームの場合は1月~6月が非常に激務となっており、後半戦の4月ともなると良くも悪くも皆激務に慣れている状態でした。
ですが、あくまで慣れているだけで、精神的にも肉体的にも相当疲弊がたまっておりました。
監査室のごみ箱に、レッドブルーや見たことのない眠気覚ましのドリンクが、山のように捨ててあった光景は、悲惨なものでした。。。
5月:★★★★☆
・年度監査(金商法)
5月は4月ほど忙しくありませんが、あくまで4月が異常であるため5月も忙しいことに変わりはありませんでした。
5月は金商法の年度監査を中心に作業をしていました。
ただ、前述の通り、4月末時点で完了している会社法監査と異なる監査意見を出すわけにもいかないため、大まかな点は4月末時点で完了していました。
そのため、イメージとしては会社法監査で浮き彫りになった各論点について、より細かく見ていく作業をしていました。
ちなみに、会社法監査の手続きは4月で完了するとお伝えしましたが、厳密に言えば5月初めのゴールデンウイーク明けあたりに会計監査報告を提出していたため、ゴールデンウイーク中も作業に追われていたことも。。。
表上はゴールデンウイークに休日出勤をするわけにはいかなかったため、こっそり監査室に行って作業するつもりが、同期や先輩も監査室にきていたのが、今ではいい(?)思い出です。
6月:★★★☆☆
・年度監査(金商法)
6月の前半までは、5月と同じくらい忙しく働いていました。
主に金商法の年度監査のうち、有価証券報告書の開示チェックを行っていた時期となります。
どんなに監査の過程を頑張り、誤謬や不正を見逃さなかったとしても、最後の開示の段階で桁を1つ間違えてしまうと、意味がありません。
監査を経験したことがない人から見れば、「そんなこと起きないでしょ?」と思うかもしれませんが、有価証券報告書のファーストドラフトの段階では、桁間違いや数値間違いは普通に発生します。
また、数値だけでなく、文書も過不足や矛盾がないか、チェックする必要があります。
「これだけ見たらもう大丈夫だろう!」と思っても、翌日再度チェックすると新たなミスが発覚するなど、開示チェックでは経理担当者の人と何往復もやりとりしていました。
このあたりは早く、AIによる自動化を導入してほしいところです。。。
7月:★★★☆☆
・四半期レビュー(金商法)
・四半期レビュー(US基準)
・小ジョブ
1月から始まった繁忙期が6月に終わりを迎え、7月は閑散期に、、、と言いたいところですが、今度は四半期レビューに追われます。
外資系企業の日本法人だったので、金商法とUS基準双方の四半期レビューを行う必要がありました。
ただ、2倍大変ということもなく、基本的には同じ手続きでした。
さらに、6月までの繁忙期を経験した後なので、7月の作業はだいぶ楽に感じたものです。
四半期レビューとは別に、他の小さなジョブ(仕事)を割り振られることもありましたが、英文チェックや自己査定のヘルプなど、そこまで重い内容ではなかったです。
8月:★☆☆☆☆
・ほぼなし
8月は、仕事がほぼなかったです。
、、、えっ?と思われるかもしれませんが、文字通りほとんどなく、お盆休みや有休を使って、旅行に行く人も多かったです。
世間的にも夏休み期間でありどこも込み合うため、私はこの時期にはあまり旅行はしませんでしたが、プライベートの予定を充実させていました。
必須となっているe-learningの研修などを、この時期に受講する人も多かったと記憶しています。
9月:★★☆☆☆
・内部統制監査
9月はUS基準の12月の年度監査と日本基準の3月の年度監査に向けて、内部統制監査に力を入れ始める時期でした。
内部統制監査は特定の時期というよりは、期中を通じて手続きを実施していましたが、9月あたりを区切りとして、内部統制監査を本格的に実施し始めることが多かったです。
ただ、計画自体はもっと早い時期に立てているため、計画に沿って担当部署のヒアリングや業務フローの理解、運用評価手続きなどを実施していきました。
この時期もまだそこまで忙しくはなく、かつ、世間の夏休みがひと段落しているため、9月あたりを狙って旅行の計画を練ることもありました。
10月:★★★☆☆
・四半期レビュー(金商法)
・四半期レビュー(US基準)
・内部統制監査
10月も引き続き内部統制監査の作業を行うと同時に、四半期レビューもあったため、それなりに忙しい時期でした。
7月の四半期レビューの際は1月~6月の繁忙期を乗り切った、いわばかなり鍛えられた状態で臨んだため比較的楽に感じましたが、10月は反対に8・9月の閑散期で気持ちが緩んでおり、体感的には7月よりも忙しく感じたものです。(作業内容に対して差はありませんが。)
ちなみに余談ですが、私は10月に転職活動を行い、ベンチャー企業に転職しました。
私が所属していた監査チームは1~6月が繁忙期であり、繁忙期中の転職は現実的ではなかったため、この時期となりました。
(転職体験談の詳細につきましては、「公認会計士の転職体験談!「バカじゃないの?」と言われた転職」をご参照ください。)
11月:★★★☆☆
・内部統制監査
11月は主だったイベントもなく、ぱっと見は閑散期に見えるのですが、実はそれなりに忙しかったです。
と言いますのも、1月からのUS基準の年度監査に向けて実施していた内部統制監査について、
「サンプル数が足りないかも、、」
「想定していたのと結果が違う、、」
「想定していたのと結果が違う、、」
といったことが多々あり、年度末まで時間がない中で、対応に追われることが多かったためです。
何事もそうですが、当初の計画通りにうまく進むことの方が稀であり、必ずイレギュラーな対応に迫られます。
私にとって11月は、繁忙期前のイレギュラー対応に追われる時期でもありました。
12月:★★☆☆☆
・年度監査の準備(US基準)
12月は、1月から始まる年度監査に向けての準備や、12月末の実査などがありましたが、11月と比べると少し余裕のある時期でした。
しかし、1月からの半年間に及ぶ繁忙期前の最後の月でもあり、プライベートでやり残したことをやって、体を休めて英気を養う時期でもありました。
まさに、嵐の前の静けさを感じていました。
1月:★★★★★
・年度監査(US基準)
・子会社監査(会社法)
年明けからは怒涛の忙しさが始まります。
US基準の年度監査だけでなく、子会社の日本基準での監査もあったため、毎日終電かつ終わりの見通しが立たず、肉体的にも精神的にも追い込まれる時期でした。
通常通りの監査手続きを終わらせるだけでも時間が足りない中で、1つでも大きな会計上の問題点が見つかったら、「本当に終わるの?」といった状況に陥っていました。
追い込まれていたこの時期に、2日徹夜して電車の中で寝落ちしそうになったこともありました。(本来徹夜しても生産性は落ちるだけなので、絶対にマネしないでください。)
2月:★★★★★
・年度監査(US基準)
・子会社監査(会社法)
引き続きUS基準の年度監査と日本基準の子会社監査に追われていたのが、2月。
さすがに2月になると終わりが見えてきて、、、と思いきや、2月でも全く終わりが見えないことが多々ありました。
ただ、当たり前ですが、期限があるので必ず終わりは来ます。
監査というのはどこまでも手続きを深くすることができるため、重要性や期限を考慮しながら、ある程度のところで自分達で線引きをする必要があるのです。
US基準の年度監査については、2月末あたりに本国に対して監査結果を連絡する必要があったため、2月末で一応の終わりを向かえます。
3月:★★★★☆
・子会社監査(会社法)
・年度監査の準備(会社法)
・年度監査の準備(金商法)
US基準の年度監査の残務と、引き続き子会社の監査を行っていたのが、3月。
これに加えて、4月から始まる日本基準の年度監査の準備も必要な時期でした。
また、当時3月は新人配属の時期でもあり、1・2月の忙しさで殺伐としたチーム内に、新しいフレッシュな仲間が増えるといった、ちょっとした楽しみもありました。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
2. 終わりに
公認会計士の繁忙期について、私の事例を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
今は働き方改革により、働き方もだいぶ柔軟になりましたが、やはり繁忙期は忙しいことが想定されます。
ただ、公認会計士は繁忙期もあれば閑散期もあり、メリハリのある働き方ができる職業と言えます。
非常にやりがいのある職業ですので、興味のある方はぜひ目指してみてください。
3. まとめ
◆個人的な体験では、1・2・4・5月が最繁忙期だった。