大学生が公認会計士を目指す6つのメリット・デメリット

posted in: 公認会計士 | 0

公認会計士試験の主な受験者は、学生または社会人、あるいは受験専念層のいずれでしょうか?

2023年度試験の職業別合格者の割合を見ると、「願書提出者の44%」「合格者の56%」が学生となっており、公認会計士を目指す大学生が、一番多い割合であることがわかります。

 

2023年公認会計士試験職業別合格者調(大学生の割合)

 

それでは、公認会計士を目指すのであれば、大学生から目指した方が良いのでしょうか?

それとも、受験者の人数が多いだけで、大学生から公認会計士を目指すのはリスクがあり、やめた方がよいのでしょうか?

そこで今回は、大学生の時に公認会計士の勉強を開始した筆者が、大学生が公認会計士を目指すことのメリット・デメリットについて、お伝えしていきます。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・前職で公認会計士講座の責任者を担当
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 大学生が公認会計士を目指す6つのメリット

大学生が公認会計士を目指す6つのメリット

1) 勉強時間を確保しやすい

大学生が公認会計士を目指す1つ目のメリットとしては、「勉強時間を確保しやすい」ことが考えられます。

公認会計士試験合格に、何時間の勉強時間が必要となるのでしょうか?

一般的に言われている、3,000時間程度でしょうか?

確かに、3,000時間程度で合格する人も、実際に存在するのは事実です。

しかし多くの人は、3,000時間より多くの勉強時間が必要となると考えられます。

実際に私の場合は、公認会計士試験合格までに、9,000時間の勉強時間がかかりました。

(詳細については、「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」をご参照ください。)

この点、大学生の場合は社会人と比べて、勉強時間を確保しやすいため、有利な立場にいると言えます。

例えば、社会人であれば、基本的に日中はずっと仕事があり、勉強時間をとることができませんが、大学生の場合は、大学の講義以外の時間は、自由に勉強をすることが可能となります。

また、夕方以降の過ごし方についても、社会人であれば急な残業などで、勉強時間がなかなかとれないですが、大学生の場合は、集中して勉強することができます。

以上より、「勉強時間を確保しやすい」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

★スキマ時間の使い方が合否を分ける?
社会人と比べて時間があるからといって、大学生も余裕があるわけではありません。
普通に勉強しているだけでは、圧倒的に時間が足りません。

そこでおすすめしたいのが、スキマ時間の有効活用です。
講義の合間・通学時間・アルバイトの休憩時間といった、ちょっとしたスキマ時間に勉強できるものを用意しておきましょう。

塵も積もれば山となると言いますが、スキマ時間の積み重ねが、最終的に合否を分けることになります。

 

2) 監査法人に就職しやすい

大学生が公認会計士を目指す2つ目のメリットとしては、「監査法人に就職しやすい」ことが考えられます。

公認会計士試験合格後の就職先について、どのような候補があるかご存知でしょうか?

基本的には、以下の4大監査法人のうち、いずれかに就職することとなります。

・EY新日本有限責任監査法人
・有限責任監査法人トーマツ
・有限責任あずさ監査法人
・PwCあらた有限責任監査法人

ほとんどの人が4大監査法人に就職する理由の1つとして、公認会計士として登録するために必要となる、「実務要件」や「実務補修所・修了考査」について、有利に事を進めることができる点が挙げられます。

つまり、4大監査法人に就職できなければ、公認会計士試験に合格しても、公認会計士として登録するにあたり、かなり不利な状況となります。

そして、4大監査法人の就職において、年齢がある程度考慮されることは、言うまでもありません。

そのため、大学生が公認会計士を目指すことで、より年齢が若い時に合格することができ、4大監査法人に就職しやすいことは、大きなメリットとなります。

例えば、2023年度合格者の平均年齢は「24.5歳」であり、大学生のうちから勉強すれば、平均年齢までに合格できる可能性は、十分あります。

以上より、「監査法人に就職しやすい」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

 

3) 就活と同時並行できる

大学生が公認会計士を目指す3つ目のメリットとしては、「就活と同時並行できる」ことが考えられます。

「公認会計士を目指したいけど、普通に就職する道も残しておきたい。」

公認会計士を目指す大学生であれば、多くの人がこのように考えるのではないでしょうか?

確かに、公認会計士1本に絞って勉強した結果、合格できなかった場合のリスクは、誰しも頭をよぎります。

私も大学生から勉強を開始して、資格浪人してしまった時は、「このまま受からなかったらどうしよう。。。」といった不安がありました。

この点、大学生であれば就活と同時並行で、試験勉強を進めることができます。

例えば、3年生の秋~冬ごろから各社の説明会への参加・エントリーを行いつつ、4年生の5月の短答式試験に向けて勉強して、短答に合格すればそのまま試験勉強を続け、落ちた場合は就職活動の選考結果を踏まえながら判断する、といった方法が考えられます。

あるいは、3年生の夏ごろにインターンに参加しつつ、公認会計士の試験勉強を進めるのも1つの方法です。

ただ、言うまでもなく公認会計士試験のことだけを考えた場合は、試験勉強に専念した方が良い点は、注意が必要となります。

以上より、「就活と同時並行できる」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

 

4) 記憶力が高いうちに勉強できる

大学生が公認会計士を目指す4つ目のメリットとしては、「記憶力が高いうちに勉強できる」ことが考えられます。

年齢と共に記憶力が低下していくのは、残念ながら1つの事実として受け入れなければなりません。

公認会計士の試験勉強においても、若い人の方が有利と言えます。

実際に、2023年の公認会計士試験の年齢別合格者のデータ(下表参照)を見てみると、年齢が若い方が合格率が高いことがわかります。

 

2023年公認会計士試験年齢別合格者調

 

この点、大学生のうちから公認会計士試験の勉強を始めることで、記憶力が高い有利な状態で試験勉強を進めることが可能となります。

さらに、記憶力にプラスして、以下のような暗記のコツを押さえておけば、より勉強がはかどります。

・講義で言及した箇所だけを暗記
・マーカーはキーワードに引く
・暗記するもの、時間を作る
・5感のフル活用
・忘れることを受け入れる
・愚直に繰り返す

(詳細につきましては、「公認会計士試験の暗記のコツ6選!」をご確認ください。)

以上より、「記憶力が高いうちに勉強できる」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

 

5) 勉強仲間ができやすい

大学生が公認会計士を目指す5つ目のメリットとしては、「勉強仲間ができやすい」ことが考えられます。

「自分一人で何年間も勉強できる気がしない。」
「誰かと一緒に励まし合いながら頑張りたい。」

孤独となりがちな試験勉強において、誰しも一度は一緒に切磋琢磨し合える仲間がほしいと、考えたことがあるのではないでしょうか?

確かに一人で勉強している場合は、勉強をさぼっても誰から何を言われるわけでもないため、挫折しやすいかもしれません。

私も公認会計士試験受験時代は、基本的に一人で勉強しており、勉強仲間がいる人をうらやましく思ったこともありました。

この点大学生であれば、同じ大学に公認会計士試験に挑戦している人がいる場合が多く、勉強仲間ができやすいです。

他大学の人でも、同じ大学生という共通項があるため、仲良くなりやすいです。

しかも、一度グループに入ってしまえば、毎年新しい人が勝手に増えていくため、受験仲間が切れることはそうそうありません。

以上より、「勉強仲間ができやすい」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

 

6) 周りに応援してもらいやすい

大学生が公認会計士を目指す6つ目のメリットとしては、「周りに応援してもらいやすい」ことが考えられます。

社会人が公認会計士を目指す場合は、

「なぜ目指すのか?」
「働きながら合格できるのか?」
「その間の生活費はどうするのか?」
「今の仕事のままではなぜダメなのか?」

といった点をしっかりと説明しないと、周りからの理解は得られにくいです。

特に、家庭を持っている人であれば、パートナーや子供のことも考える必要があり、試験勉強を応援してもらえるのは稀なケースと言えます。

この点大学生であれば、周りから反対されるケースが比較的少なく、むしろ「とりあえず頑張ってみたら」と言われることが多いかと思います。

周りから反対される中で勉強するというのは、想像の10倍は大変です。

逆に言えば、周りから応援してもらいながら勉強できる環境は、非常に有利な環境となります。

以上より、「周りに応援してもらいやすい」ことは、大学生が公認会計士を目指すメリットと言えます。

★費用と合格者数を比較!
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。

・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール

詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。

 

2. 大学生が公認会計士を目指す6つのデメリット

大学生が公認会計士を目指す6つのデメリット

1) 大学生活が犠牲になる

大学生が公認会計士を目指す1つ目のデメリットとしては、「大学生活が犠牲になる」ことが考えられます。

いろいろなことに挑戦しておくというのも、大学生活の1つの過ごし方です。

友達と遊んだり、アルバイトをしたり、留学したり、海外旅行したり。

社会人になると、学生ほどまとまった時間をとれないため、学生時代というのは本当に貴重な時代となります。

この点、公認会計士を目指すのであれば、大学生活の多くのことを犠牲にする必要があります。

試験勉強と並行して大学生活を楽しむことも可能ですが、結果として合格するまでの期間が長期化したり、そもそも合格できなくなることもあるため、余程勉強に自信がある人以外は、多くの時間を犠牲にする必要があります。

私も受験生時代は、週数回コンビニのアルバイトがありましたが、それ以外は基本的に予備校と自宅の往復であり、味気ない大学生活でした。

もちろん公認会計士という資格にはそれだけの価値があるため、全く後悔はしていませんが、大学生活でしか経験できないこと、得られないつながりがあることも事実ですので、どの道を選択するかは慎重な判断が必要となります。

以上より、「大学生活が犠牲になる」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

2) 資格浪人する可能性がある

大学生が公認会計士を目指す2つ目のデメリットとしては、「資格浪人する可能性がある」ことが考えられます。

先程メリットとして、就活と同時並行できる点を挙げましたが、就活も試験勉強もどちらも中途半端となり、結果として資格浪人してしまうことも、当然考えられます。

資格浪人は以下のようなデメリットがあるため、極力避けた方が賢明です。

・金銭的負担の増大
予備校代金や生活費が追加で必要となる一方で、働き始めるわけではないため収入はなく、金銭的負担が増大すると言えます。
・社会的立場が弱い
大学生でもなくなり、かといって、フルでアルバイトをしているわけでもなく、「あなたは何者ですか?」と問われて答えに困る、社会的に弱い立場となります。
・新卒のカードがなくなる
資格浪人をすることで新卒枠ではなくなる可能性があり、会計士試験に受からなくて就活をする際に、不利な状況となります。

資格浪人しないためには、

①早い時期から勉強を始める。
②全ての時間を勉強に捧げる。

の2点が重要となります。

そこまでしなければならないのか。。。と思われるかもしれませんが、資格浪人とならないための先行投資と考えて、取り組んでいく必要があります。

以上より、「資格浪人する可能性がある」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

3) 金銭的負担が大きい

大学生が公認会計士を目指す3つ目のデメリットとしては、「金銭的負担が大きい」ことが考えられます。

今まで自分のために買ったもので、一番高額な買い物は何でしょうか?

一般的な大学生であれば、高くても10万円程度なのではないかと思います。

この点、公認会計士試験に合格するためには予備校の講座が必須となり、数十万円のお金が必要となります。

例えば、大手予備校の公認会計士講座の料金は、以下の通りとなります。

 

スクール 講座費用
(2024年11月)
LEC 258,000円
クレアール 383,400円
TAC 720,000円
CPA会計学院 740,000円
大原 750,000円

*初学者向けの主な通信講座の価格を掲載しております。

 

収入のある社会人であればまだしも、大学生にとって上記の金額は、過去最大の金銭的負担と言えるでしょう。

しかも、複数回受験することを考えると、この何倍もの費用が必要となります。

もちろん、アルバイトをして自分で貯めることも考えられますが、非常に時間がかかりその分勉強開始が遅れて資格浪人となり、結果として余計に多くのお金が必要となるケースも考えられます。

そのため、親が費用を出してくれるのであれば、素直に親の援助を受けた方が得策と言えます。

その分早く合格することが、結果的に親孝行となるはずです。

以上より、「金銭的負担が大きい」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

4) キャリアの選択肢が狭まる

大学生が公認会計士を目指す4つ目のデメリットとしては、「キャリアの選択肢が狭まる」ことが考えられます。

先程から公認会計士試験を勉強するなら、できるだけ早い方がいいとお伝えしてきましたが、早い時期から公認会計士試験の勉強を始めることで、キャリアの選択肢が狭まるといったデメリットもあります。

本来であればもっと違った道もあったかもしれないのに、公認会計士試験の勉強を始めてしまったばかりに、公認会計士以外の柔軟なキャリアが排除されてしまいがちです。

自分が達成したい目的のためには、公認会計士以外の方法もあるかもしれません。

例えば、目的次第では、以下のような選択肢も考えられます。

・手に職を持ちたい
⇒エンジニア、デザイナーetc.
・起業したい
⇒実際に起業してみる。
・CFOになりたい
⇒経理に就職する。
・お金を稼ぎたい
⇒外銀・弁護士
・学生時代を無駄に過ごしたくない
⇒留学、サークル、インターンetc.

(詳細につきましては、「公認会計士を目指すのなら待って!その理由なら他の道がいいかも」をご参照ください。)

もちろん選択と集中が大切であり、早い段階から公認会計士に絞って専門の道を深く歩むことも、間違ってはいません。

ただ、一度冷静になって、「本当に公認会計士を目指す必要があるのか?」と自問自答してみてください。

以上より、「キャリアの選択肢が狭まる」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

5) 勉強仲間と無駄に話してしまう

大学生が公認会計士を目指す5つ目のデメリットとしては、「勉強仲間と無駄に話してしまう」ことが考えられます。

メリットのところで勉強仲間ができやすい点を挙げましたが、これは裏を返せば、本来自分の勉強時間となるはずの時間を、勉強仲間に割かなければならないことを意味しております。

気付くと勉強仲間と1時間も話してしまい、そのうち50分は雑談だった、といった事態は往々にして起こりえます。

勉強仲間という他人を自分でコントロールすることはできないため、公認会計士試験の勉強をするにあたっては、極力勉強仲間を作ることは避けた方が賢明です。

以上より、「勉強仲間と無駄に話してしまう」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

6) 周りを見て焦ってしまう

大学生が公認会計士を目指す6つ目のデメリットとしては、「周りを見て焦ってしまう」ことが考えられます。

大学生の場合、就活して内定をもらった友達や、一緒に勉強して先に合格した友達を見て、自分一人だけが置いて行かれたような錯覚に陥り、焦ってしまいやすいです。

適度な焦りは必要ですが、過度に焦ってしまうと、変な勉強方法に手を出してしまったり、勉強自体をやめてしまったりしてしまいます。

私も受験生時代は、同じ時期に勉強を始めた人達が先に合格していき、焦りを感じていました。

ただ、大切なことは、周りに流されず、勉強をコツコツ積み重ねていくことです。

周りは周り、自分は自分と割り切って、勉強を継続していく姿勢が必要となります。

以上より、「周りを見て焦ってしまう」ことは、大学生が公認会計士を目指すデメリットと言えます。

 

3. 終わりに

大学生が公認会計士を目指す際のメリット・デメリットについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

一度しかない大学生活を、試験勉強に使っていいのか、判断に迷うかと思います。

ただ、もし少しでも公認会計士に興味を持っているのであれば、後から後悔しないためにも、まずは勉強を開始してみてください。

勉強してみて「自分には合わないな」と感じたのであれば、やめればいいだけです。

 

4. まとめ

Point! ◆メリット
・勉強時間を確保しやすい。
・監査法人に就職しやすい。
・就活も並行してできる。
・若い方が記憶力が高い。
・勉強仲間ができやすい。
・応援してもらいやすい。
◆デメリット
・大学生活が犠牲になる。
・資格浪人になる可能性がある。
・金銭的負担が大きい。
・キャリアの選択肢が狭まる。
・勉強仲間と無駄な時間を過ごしてしまう。
・周りを見て焦りやすい。

会計士スクールをコスパで比較 >>