経理として現在働いている皆様は、10年後の自分がどのように働いているか、想像できますでしょうか?
今と同じように働いているのでしょうか?
それとも環境が変わり、全く別の業務をやっているのでしょうか?
自分の将来がわからず、漠然とした不安を感じているのなら、まずは10年後の経理像について、ある程度予測しておくのも1つの方法です。
そこで今回は、まず10年後の経理はどうなっているのかといった点についてお伝えした上で、後半では10年後も経理として活躍するために必要なことについて解説していきます。
本記事でお伝えする内容を取り入れて、10年後も経理として活躍していきましょう。
1. 10年後の経理はどうなっている?
2. 経理がやる仕事は10年後なくなるの?
3. 10年後も活躍するために必要な6つのこと
1) 会計の専門的知識を身に付ける
2) 財務分析力を身に付ける
3) M&Aなどの専門性を身に付ける
4) ITリテラシーを高める
5) 他の職種を経験する
6) 複数の会社を経験する
4. 終わりに
5. まとめ
1. 10年後の経理はどうなっている?
1) 入力作業がなくなる
1つ目の10年後の経理像としては、「入力作業がなくなる」ことが挙げられます。
経理は会社や各従業員が行う1つ1つの取引を、勘定科目と数値に置き換えて、仕訳として会計システムに入力します。
従来は1つ1つの取引に対して各部署から経理部に報告がいき、各部署の連絡をもとに経理部が入力作業を1つ1つ行っていました。
しかし近年では、各取引を行うと自動で仕訳が入力される環境が、少しずつ整いつつあります。
例えば、仕入れ先に対する支払いにクレジットカードを使用した場合、クレジットカードと会計システムを連携させることで、相手先や金額・支払い内容に応じて自動で仕入れの仕訳が入力されるようになっております。
また、交通系の電子マネーと会計システムを連携させることで、従業員の交通費についても自動で仕訳が入力されます。
今後はIOT(モノのインターネット化)がさらに加速して、ビジネス上発生するあらゆる取引についても、リアルタイムで会計システムと連携することができるようになり、10年も経てば会計システムへの基本的な入力作業はなくなっている可能性があります。
以上より、「入力作業がなくなる」ことは、10年後の経理像と言えます。
2) ペーパーレス
2つ目の10年後の経理像としては、「ペーパーレス」が挙げられます。
一昔前であれば、経理と言えば請求書や経費の紙が山積みにされており、それを1つ1つ処理するといったイメージがありました。
しかし近年では、先述の通り各種経費についてシステムと連携することで、紙による申請をなくしたり、あるいは請求書や契約書についても電子サインを導入することで、ペーパーレス化を推進している企業も多くなってきました。
ペーパーレス化には以下のようなメリットがあるため、今後もこの流れはさらに加速すると考えられます。
・電子であれば検索すればいいだけなので、探す時間を短縮できる。
・電子データとして残しておくことで、AIなどによるビックデータの解析に使える。
特に大企業においては、今までの慣習を変えるのに多くの時間が必要となりますが、10年も経てば紙を使っている企業はほとんどいない社会になるかもしれません。
以上より、「ペーパーレス」は、10年後の経理像と言えます。
3) 提出書類や申告書の数が減っている
3つ目の10年後の経理像としては、「提出書類や申告書の数が減っている」ことが挙げられます。
ここで言う提出書類とは、例えば有価証券報告書などのことを、申告書とは税務申告書などのことを指します。
そもそもこれらの書類は、なぜ必要になるのでしょうか?
有価証券報告書であれば、上場企業の経営成績や財務状況などを市場に公開することで、投資家が投資判断を誤らないようにするためです。
税務申告書であれば、各企業が稼いだ金額に基づいて、適正に税金を支払っているか確認するために必要となります。
しかし、これから10年の間に、投資に必要な情報や税額計算に必要な情報など、あらゆる情報が電子化されていくことで、AIなどにより自動で投資判断に資する情報収集や各企業の税金額の計算が行われるようになる可能性があります。
こうなると、そもそも書類として形式を整えて提出する必要がなくなります。
以上より、「提出書類や申告書の数が減っている」ことは、10年後の経理像と言えます。
4) 過去情報の収集&単純な未来予測はAIが代替
4つ目の10年後の経理像としては、「過去情報の収集&単純な未来予測はAIが代替」することが挙げられます。
経理が作成している損益計算書や貸借対照表といった財務諸表は、過去の情報となります。
(損益計算書や貸借対照表については「損益計算書と貸借対照表の違いは??」をご参照ください。)
過去の情報をまとめる目的としては、投資家が投資を行う際の参考材料とすることに加えて、経営者が事業の将来性を予測して、事業戦略を考える際に利用することが挙げられます。
つまり経理には、ただ単に過去の情報を収集するだけでなく、過去のデータから将来を予測して、経営判断に資する情報を提供することが求められています。
しかし、過去の情報収集や、予め分析手法が決まっている単純な将来予測に関しては、AIが好む定型作業であり、今後10年の間にAIに代替されることが予想されます。
定型作業については入力情報(インプット)と出力情報(アウトプット)の対応関係が明確であるため、AIに毎月・毎年必要な情報を読み込ませれば、自動で処理されることとなります。
以上より、「過去情報の集積&単純な未来予測はAIが代替」することは、10年後の経理像と言えます。
2. 経理がやる仕事は10年後なくなるの?
10年後の経理像についてお伝えしてきましたが、ここまでの話を踏まえると、
「10年後経理がやることって何かあるの?仕事がなくなるの?」
と思われた方も多いかもしれません。
しかし、10年後も経理の仕事はあり続けます。
そもそもITシステムやAIは人間が開発するものであり、世間で言われているほど万能なものではありません。
経理の仕事についても、世間で言われているほど単純な業務ではなく、簡単に代替できる部分とできない部分があります。
また、仮に先ほどお伝えした10年後の経理像が全て実現したとしても、経理にとっては歓迎すべきことです。
といいますのも、会計システムへの入力作業やペーパーの利用、各種申告書の作成や単純な情報収集などは、本来楽しいものではなく、経理というエキスパートでなくてもできる仕事であり、その部分をやらなくて済むことは歓迎すべきです。
その代わりに、本来経理として取り組むべき、以下のような業務に集中することができます。
・M&Aなど個別性の強い専門業務に取り組む。
・財務会計面から企業の将来を予測して、経営課題をあぶりだす。
・業務を効率化するために、どこにITシステムやAIを導入するか判断する。
単純な作業をやらなくて済み、より創造性を必要とする作業に取り組めるため、経理という仕事のやりがいがむしろ上がるとも言えます。
それでは、上述のような環境変化の中で、10年後も活躍するために必要なこととは何なのでしょうか?
次項で順に6つ解説していきます。
3. 10年後も活躍するために必要な6つのこと
1) 会計の専門的知識を身に付ける
1つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「会計の専門的知識を身に付ける」ことが挙げられます。
どれだけシステム化されようが、AIに業務を代替されようが、経理として業務を行う上で、会計の専門的知識は不可欠となります。
途中過程が自動化されても、最終的な成果物に対して経理が責任を持って判断することは変わりません。
成果物の正誤を判断するためには、当然にその作成過程を理解している必要があります。
そのため、作成過程に使われる簿記などの会計知識について深く学ぶ必要があります。
会計知識を磨く方法については、「経理の勉強方法とは?おすすめ4選をご紹介!」をご参照ください。
以上より、「会計の専門的知識を身に付ける」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
2) 経営戦略に役立つ財務分析力を身に付ける
2つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「経営戦略に役立つ財務分析力を身に付ける」ことが挙げられます。
先述のように、10年後はより経営者に近い業務、つまり経営戦略を立てるための財務面の将来予測などが、経理に求められます。
こういうと何か特殊な能力のようにも思えますが、身に付けるための方法論はシンプルです。
まずは財務分析についての基礎を学び、後は毎月・毎年実際に自社の状況を分析して経営のボトルネックとなっている事項をあぶりだし、上司や経営層に提案することを繰り返すだけです。
提案するのはプレッシャーがかかり嫌かもしれませんが、成長するためには適度なプレッシャーが必要となります。
初めはダメだしばかり言われるかもしれませんが、それを繰り返していけば実践的な財務分析力が身に付いていきます。
以上より、「経営戦略に役立つ財務分析力を身に付ける」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
実践的な財務分析の前に基礎を学ぶなら、ビジネス会計検定がおすすめです。
基本的な財務諸表の知識から、収益性・安全性・成長性といった基礎的な財務分析手法について学ぶことができます。
会計ショップのビジネス会計検定講座では、総講義時間を少なくして、頻出論点に絞ることで、効率的に最短時間で学習することが可能です。
まずはガイダンス動画をチェックしてみてください!
3) M&Aなどの高度な専門性を身に付ける
3つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「M&Aなどの高度な専門性を身に付ける」ことが挙げられます。
M&Aなどは案件ごとに状況が大きく異なり、個別性が強いため、定型化しにくい領域となります。
つまり、システムやAIに代替されにくい領域と言えます。
そのため、経理の立場としては、M&Aなどの高度な専門知識を身に付けておいて損はありません。
M&Aは案件自体が多いわけではないため、M&Aを専門とする会社に転職ないし出向でもしない限り、場数を踏むのは難しいです。
そのため、書籍などで勉強するのがおすすめの方法となります。
ネットやSNSなどから過去の事例を引っ張ってきて、書籍で学んだ知識と比較してみることも大切となります。
以上より、「M&Aなどの高度な専門性を身に付ける」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
4) ITリテラシーを高める
4つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「ITリテラシーを高める」ことが挙げられます。
会計システムやAIについては、内容を知っているだけでよりよい選択ができるケースが多々あります。
特に今後「どこにシステムやAIを導入するのか?」といった判断をする際に、最低限のITリテラシーが必要となります。
ITについては、とりあえず何か1つ勉強して、ITに詳しい人との共通言語を作るのがおすすめです。
例えばプログラミングを少し勉強することで、エンジニアとの共通言語ができて、定期的に会話をするだけで、自分の知らないIT知識を入手できるかもしれません。
(経理とプログラミングについては「経理こそプログラミングを学習すべき4つの理由!」も合わせてご確認ください。)
また、会計システムについて少し勉強することで、会計システムに詳しい経理の人との共通言語ができて、会計システムについて有益な情報交換ができるかもしれません。
以上より、「ITリテラシーを高める」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
5) 他の職種を経験する
5つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「他の職種を経験する」ことが挙げられます。
経営戦略を経理の人が立案できるようになろうと思った場合、まず苦労するのがビジネスの理解です。
経理は自分で営業してモノを売っているわけではなく、マーケティング戦略を立てて広告宣伝を行っているわけでもありません。
ビジネスの現場で実際に何が起こっているのか経験しないと、経営戦略は机上の空論となってしまいます。
そのため、今後経理にも経営戦略の立案が求められるのであれば、まずは経理もビジネスを経験する必要があります。
つまり、営業やマーケティングなど、他の職種を経験することが大切となります。
他職種への転職や転属はかなりハードルが高いかもしれませんが、経理として差別化するためにも、キャリアプランに組み込んでみてはいかがでしょうか?
以上より、「他の職種を経験する」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
私自身も、もとは監査法人や経理畑出身でしたが、ベンチャーでは営業・マーケ・経営戦略・人事など、幅広い業務を経験しました。
幅広い業務を経験する以前は、「売上1億円」と言われても、そのままの意味でしか受け取っていませんでした。
しかし、経理以外の職種を経験した後は、「自分が売っていた10万円のあの商品を1,000個売ったら売上1億円になるのか。そのためには広告宣伝費を○○万円かけて、営業人員を確保して、、、」といったように、同じ1億円という数字を見ても、その後のストーリーが描けるようになりました。
経理以外を経験したからこそ見えてくるものがあります。
少し勇気がいるかもしれませんが、他の職種にチャレンジしてみるのも1つの方向性です。
6) 複数の会社を経験する
6つ目の10年後も経理として活躍するために必要なこととしては、「複数の会社を経験する」ことが挙げられます。
経理に限らず、10年後は働き方が現状よりさらに流動的になり、転職や独立がかなり身近なものとなることが予想されます。
そのような社会情勢になると、環境変化に適応するスキルが必要となってきます。
このスキルを今から磨くにはどうすれば良いのか?というと、強制的に環境を変える、つまり他社に転職するのが一番早く、効果的です。
もちろん1社で長く勤めあげることも立派であり、大切なことですが、今後の社会情勢を考えると、複数社で経理としての経験を積んでおいた方が得策です。
経理の転職については、「経理が転職しやすい7つの理由」をご確認ください。
以上より、「複数の会社を経験する」ことは、10年後も経理として活躍するために必要なことと言えます。
転職エージェントを利用するなら、管理部門特化型の中規模エージェントである、以下の3つがおすすめです。
・MS-Japan
・Hupro(ヒュープロ)
・WARCエージェント
ただし、地方求人がないため、地方での転職の場合は大手エージェントのdoda(デューダ)がおすすめです。
詳細は「経理の転職エージェントの選び方とおすすめ4選!」をご確認ください。
4. 終わりに
10年後の経理像と、10年後に経理として活躍するために必要なことについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
経理に限らず言えることですが、今の当たり前がずっと続くとは限りません。
絶え間なく変化し続けるビジネス環境に適応するためにも、必要な知識を今のうちから身に付けておきましょう。
5. まとめ
◆財務分析力。
◆M&Aなどの高度な専門知識。
◆ITリテラシー。
◆経理以外の職種の経験。
◆複数社での経験。