ビジネス会計検定について少し調べ始めた皆様が、まず知りたいのはやはり「難易度」ではないでしょうか?
ここでは、似て非なる試験である簿記検定との対比も踏まえながら、ビジネス会計検定の難易度について解説していきます。
1. ビジネス会計検定とは?
ビジネス会計検定試験は、会計に関する知識を得るだけでなく、財務諸表に対する分析力を身につけることで、ビジネスに役立てることに重点を置いた検定試験となります。
会計は多くの社会人に必須の知識となりますが、ただ知識を得ただけでは意味がありません。
実際のビジネスの中で使うことができて、初めて会計は意味のあるものとなります。
知識としての「会計」と実際の「ビジネス」を結びつけるのが、ビジネス会計検定試験となります。
ビジネス会計検定試験はその目的に従って、以下の3つの級から構成されております。
◆3級:財務諸表を理解するための基礎的な力の習得。
◆2級:財務諸表を分析する力の習得。
◆1級:財務諸表を含む会計情報を総合的かつ詳細に分析し企業評価できる力の習得。
2. ビジネス会計検定の難易度は?
それでは、ビジネス会計検定の難易度について、みていきましょう。
1) 3級&2級の難易度
3級の合格率は70%、2級は50%となっており、決して難易度が高い試験ではありません。
受験資格がないためお試しで受けている受験生もおり、実質的な合格率はさらに高いことが予想され、しっかりと勉強すれば短期で合格することも十分可能な資格となります。
難易度の割に実務に直結した力がつくため、非常に費用対効果が高い検定試験と言えます。
【3級】
試験 回数 |
申込 者数 |
受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
34回 | 4,163 | 3,361 | 2,383 | 71% |
33回 | 4,158 | 3,459 | 2,429 | 70% |
32回 | 4,373 | 3,495 | 2,158 | 62% |
31回 | 4,588 | 3,793 | 2,550 | 67% |
30回 | 4,376 | 3,484 | 2,213 | 64% |
29回 | 4,920 | 4,160 | 2,866 | 69% |
28回 | 5,216 | 4,321 | 2,927 | 68% |
27回 | 4,606 | 3,937 | 2,774 | 71% |
26回 | 6,075 | 2,886 | 1,804 | 63% |
25回 | 5,556 | 4,502 | 2,666 | 59% |
24回 | 4,895 | 3,859 | 2,408 | 62% |
23回 | 4,749 | 3,847 | 2,378 | 62% |
22回 | 4,308 | 3,438 | 2,012 | 59% |
21回 | 4,439 | 3,581 | 2,505 | 70% |
20回 | 4,253 | 3,422 | 2,235 | 65% |
【2級】
試験 回数 |
申込 者数 |
受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
34回 | 2,496 | 1,862 | 831 | 45% |
33回 | 2,113 | 1,617 | 755 | 47% |
32回 | 2,568 | 1,927 | 1,138 | 59% |
31回 | 2,271 | 1,798 | 959 | 53% |
30回 | 2,587 | 1,910 | 1,035 | 54% |
29回 | 2,156 | 1,948 | 1,014 | 52% |
28回 | 2,860 | 2,124 | 1,093 | 52% |
27回 | 2,340 | 1,774 | 822 | 46% |
26回 | 2,836 | 1,568 | 852 | 54% |
25回 | 2,682 | 1,850 | 898 | 49% |
24回 | 2,736 | 1,858 | 892 | 48% |
23回 | 2,369 | 1,671 | 607 | 36% |
22回 | 2,502 | 1,731 | 704 | 41% |
21回 | 2,188 | 1,494 | 449 | 30% |
20回 | 2,084 | 1,498 | 747 | 50% |
また、ビジネス会計検定試験はその実用性から、申込者数・受験者数が年々増加傾向にあり、試験の認知度も上がってきております。
特にビジネス会計検定3級は、第10回の申込者数が1,988人に対して第34回が4,163人と2倍以上に推移しており、着実に評価されている検定試験と言えます。
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頻出論点を短時間で講義するので、効率的に合格を目指すことができます。
・3級講義時間:約15分×20回
・2級講義時間:約20分×20回
・確認テスト、予想問題つき
2) 3級&2級の具体的な例題
ここで、3級と2級の具体的な例題を掲載しますので、実際にどの程度の難易度なのか、確認してみてください。
3級 【 知識問題 】
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
(ア) キャッシュフロー計算書は、会社法上の計算書類に含まれる。
(イ) 金融商品取引法は、株主・債権者の保護を目的としている。
① (ア) 正 (イ) 正
② (ア) 正 (イ) 誤
③ (ア) 誤 (イ) 正
④ (ア) 誤 (イ) 誤
3級【分析問題】
次の文章の空欄( ア )と( イ )に当てはまる語句の適切な組み合わせを選びなさい。
総資本回転率からみると、( ア )のほうが資金や投資の効率が悪い。( ア )が総資本回転率をもう一方と同じにするには、総資本を( イ )なければならない。
① (ア) X社 (イ) 減らさ
② (ア) X社 (イ) 増やさ
③ (ア) Y社 (イ) 減らさ
④ (ア) Y社 (イ) 増やさ
2級 【 知識問題 】
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
(ア) 親会社は原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めて連結財務諸表を作成するが、非連結子会社は連結の範囲には含まれない。
(イ) 中間財務諸表は6か月の中間会計期間を対象として、年2回作成される。
① (ア) 正 (イ) 正
② (ア) 正 (イ) 誤
③ (ア) 誤 (イ) 正
④ (ア) 誤 (イ) 誤
2級【分析問題】
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
(ア) 仕入債務回転期間からみると、X社の方が資金繰りの観点で有利であると判断できる。
(イ) 売上債権回転期間からみると、Y社の方が債権管理が効率的であると判断できる。
① (ア) 正 (イ) 正
② (ア) 正 (イ) 誤
③ (ア) 誤 (イ) 正
④ (ア) 誤 (イ) 誤
各級の詳細については、以下をご参照ください。
・3級:「ビジネス会計検定3級が必要ない人とは?受験要項や難易度は?」
・2級:「ビジネス会計検定2級とは?3級との違いは?挑戦すべき5つの理由」
3) 1級の難易度
参考までに、1級の合格率は20%前後となっており、非常に難易度が高い試験となっております。
一般的なビジネスパーソンが必要な知識としては2級まででも十分ですが、より実用的な知識を得たい方は、ぜひ1級にも挑戦してみてください。
【1級】
試験 回数 |
申込 者数 |
受験 者数 |
合格 者数 | 合格率 |
34回 | 301 | 231 | 61 | 26% |
32回 | 277 | 211 | 45 | 21% |
30回 | 278 | 223 | 24 | 11% |
28回 | 281 | 217 | 53 | 24% |
26回 | 306 | 188 | 37 | 20% |
24回 | 302 | 211 | 62 | 29% |
22回 | 299 | 224 | 50 | 22% |
20回 | 294 | 205 | 33 | 16% |
*2・3級は年2回開催されるのに対して、1級は年1回のみの開催。
★財務数値を分析する力
ビジネス会計検定で学ぶことのできる「財務数値を分析する力」は、例えば以下のような場面で役に立ちます。
【経理】
自社の財務状況を分析して、事業のボトルネックを把握し、社内に情報提供する。
【営業】
取引先の財務状況を分析して、交渉を有利に進める材料を揃える。
【マーケティング】
他社の広告宣伝活動を分析して、自社のプロモーション活動の参考にする。
【人事】
自社の財務状況を分析することで、応募者に対してより詳しい情報提供が可能となる。
【経営企画】
市場や競合の財務状況を分析して、次に取るべき経営戦略を決定する。
【副業】
株式投資の際に投資対象企業の財務状況を分析して、株価予測の参考とする。
私自身もベンチャー企業に勤めていた時に、経理・営業・マーケティング・人事・経営企画などの多くの役割を経験しましたが、財務数値を分析する力は全ての職種で活かすことができました。
どの立場にいる人でも活かすことができる、非常におすすめの資格がビジネス会計検定となります。
3. 簿記検定試験との違いは?
1) 難易度の違い
前述の通りビジネス会計検定試験の合格率は、3級70%、2級50%、1級20%となります。
一方で簿記検定試験の合格率は、以下の通り3級40%、2級20%、1級10%となります。
(ネット試験では2級の合格率が40%前後となっており、3級と変わらない合格率となっております。)
【3級】
・統一試験
回数 | 受験 者数 |
実受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
166 | 28,565 | 23,977 | 8,706 | 36% |
165 | 30,387 | 25,727 | 8,653 | 34% |
164 | 31,818 | 26,757 | 9,107 | 34% |
163 | 37,493 | 31,556 | 11,516 | 37% |
162 | 39,055 | 32,422 | 9,786 | 30% |
161 | 43,723 | 36,654 | 16,770 | 46% |
160 | 52,649 | 44,218 | 22,512 | 51% |
159 | 58,025 | 49,095 | 13,296 | 27% |
158 | 58,070 | 49,313 | 14,252 | 29% |
157 | 70,748 | 59,747 | 40,129 | 67% |
156 | 77,064 | 64,655 | 30,654 | 47% |
155 | 中止 | |||
154 | 100,690 | 76,896 | 37,744 | 49% |
153 | 99,820 | 80,130 | 34,519 | 43% |
152 | 91,662 | 72,435 | 40,624 | 56% |
・ネット試験
期間 | 受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
2023/4 ~2024/3 |
238,155 | 88,264 | 37% |
2022/4 ~2023/3 |
207,423 | 85,378 | 42% |
2021/4 ~2022/3 |
206,149 | 84,564 | 41% |
2020/12 ~2021/3 |
58,700 | 24,043 | 41% |
【2級】
・統一試験
回数 | 受験 者数 |
実受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
166 | 10,814 | 8,728 | 1,356 | 16% |
165 | 11,572 | 9,511 | 1,133 | 12% |
164 | 10,618 | 8,454 | 1,788 | 21% |
163 | 15,103 | 12,033 | 2,983 | 25% |
162 | 19,141 | 15,570 | 3,257 | 21% |
161 | 16,856 | 13,118 | 3,524 | 27% |
160 | 21,974 | 17,448 | 3,057 | 18% |
159 | 27,854 | 22,626 | 6,932 | 31% |
158 | 28,572 | 22,711 | 5,440 | 24% |
157 | 45,173 | 35,898 | 3,091 | 9% |
156 | 51,727 | 39,830 | 7,255 | 18% |
155 | 中止 | |||
154 | 63,981 | 46,939 | 13,409 | 29% |
153 | 62,206 | 48,744 | 13,195 | 27% |
152 | 55,702 | 41,995 | 10,666 | 25% |
・ネット試験
期間 | 受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
2023/4 ~2024/3 |
119,036 | 41,912 | 35% |
2022/4 ~2023/3 |
105,289 | 39,076 | 37% |
2021/4 ~2022/3 |
106,833 | 40,713 | 38% |
2020/12 ~2021/3 |
29,043 | 13,525 | 47% |
【1級】
回数 | 受験 者数 |
実受験 者数 |
合格 者数 |
合格率 |
165 | 12,886 | 10,251 | 1,722 | 17% |
164 | 11,468 | 9,295 | 1,164 | 13% |
162 | 12,286 | 9,828 | 1,027 | 10% |
161 | 11,002 | 8,918 | 902 | 10% |
159 | 11,389 | 9,194 | 935 | 10% |
158 | 9,310 | 7,594 | 746 | 10% |
157 | 7,785 | 6,351 | 502 | 8% |
156 | 10,078 | 8,553 | 1,158 | 14% |
155 | 中止 | |||
153 | 9,481 | 7,520 | 735 | 10% |
152 | 8,438 | 6,788 | 575 | 9% |
単純に比較することはできませんが、合格率だけで判断すると、簿記検定の方が難しい試験となっております。
また、以下の点からも、簿記検定の方がビジネス会計検定よりも、難易度が高い試験と言えます。
・特に簿記検定2級において、近年難問が出題されている。
・財務諸表を「分析する」よりも「作る」方が、必要な知識の幅が広い。
・簿記検定の方が昇給などの条件となりやすく、受験生が必死。
2) 「作る側」と「使う側」の違い
◆簿記検定試験:財務諸表を作成するまでの手続を中心にして出題
◆ビジネス会計検定試験:財務諸表を分析・利用する手続を中心にして出題
会社・事業運営だけでなく、株式投資や就職・転職においても、企業の財政状態・経営成績を把握することは重要であり、財務諸表を「分析・利用」するために、ビジネス会計検定試験の知識が必要となります。
また、そのためには、分析対象となる財務諸表の「作成」が必須となり、簿記検定試験の知識も求められます。
財務諸表が「作成」されなければ分析・利用ができず、また、財務諸表が作成されても「分析・利用」できなければ作成した意味がありません。
つまり、簿記検定試験・ビジネス会計検定試験双方を習得することで、はじめて生きた会計知識を得ることができます。
3) 主催者の違い
◆簿記検定試験:日本商工会議所
◆ビジネス会計検定試験:大阪商工会議所
簿記検定との違いや共通点の詳細につきましては、「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」をご参照ください。
4. 使用教材
ビジネス会計検定試験の勉強をするにあたり利用する必須教材が、「公式テキスト」と「公式過去問題集」となります。
内容的にはこの2つをしっかりやりこめば、合格は十分可能です。
使用教材の詳細につきましては、「ビジネス会計検定の過去問・テキストは公式一択で決まり!」をご参照ください 。
◆3級:公式テキスト&過去問題集
・公式テキスト3級 第5版・公式過去問題集3級 第6版
◆2級: 公式テキスト&過去問題集
・公式テキスト2級 第6版・公式過去問題集2級 第6版
◆1級: 公式テキスト&過去問題集
・公式テキスト1級 第3版・公式過去問題集1級 第4版
5. 受験者数が増えている3つの理由
ビジネス会計検定の受験者数は、毎年着実に増加しております。
以下ではその主な理由として、「手頃な難易度」「会計ニーズの高まり」「株式投資に興味を持つ人の増加」の3点について、順に解説していきます。
1) 手頃な難易度
ビジネス会計検定の受験者数が伸びている1つ目の理由としては、「手頃な難易度」が考えられます。
前述の通り、簿記検定の合格率と比べると、ビジネス会計検定の合格率は、20%程度高くなります。
一方で、ビジネス会計検定で学ぶ内容は、多くの職種で活かすことができ、簿記検定に劣らない価値を持っています。
つまり、ビジネス会計検定は、非常にコストパフォーマンスが高い資格であるため、受験者数が増えているのです。
以上より、「手頃な難易度」は、ビジネス会計検定の受験者数が伸びている理由と言えます。
合格率だけを見ると、「ビジネス会計検定は簡単すぎて、やる気が起きないな。。」と思った人もいるかもしれません。
ただ、実際に勉強してみればわかるのですが、今まで会計を勉強してこなかった初学者の人にとっては、それなりに難しい内容となっております。
合格率はあくまで受験申込をした人を対象に計算されており、その背後には難しくて諦めていった人も少なからずいるため、油断は禁物です。
2) 会計ニーズの高まり
ビジネス会計検定の受験者数が伸びている2つ目の理由としては、「会計ニーズの高まり」が考えられます。
ビジネスの共通言語と聞くと、何を思い浮かべますでしょうか?
ビジネスパーソンとして世界で活躍するために必要な、「英語」が真っ先に思い浮かんだ人も多いかと思います。
確かに英語も大切なのですが、実は「会計」もビジネスの共通言語として、注目を集めています。
会計的なものの見方や専門用語を理解している前提で、ビジネス上の会話は進んでいくため、会計を理解していないと話になりません。
英語は国際的な舞台で活躍するために必要となる一方で、会計は国内でも使えるため、英語よりも汎用性が高いと言えます。
そしてその中でも、特に財務分析の分野は実用性が高いです。
そのため、簿記検定と合わせて、ビジネス会計検定にも注目が集まっているのです。
以上より、「会計ニーズの高まり」は、ビジネス会計検定の受験者数が伸びている理由と言えます。
3) 株式投資に興味を持つ人の増加
ビジネス会計検定の受験者数が伸びている3つ目の理由としては、「株式投資に興味を持つ人の増加」が考えられます。
NISAの影響や、将来に対する金銭的な不安から、今後も株式投資に興味を持つ人が増加していくことが想定されます。
株式投資はその会社の業績が将来上がるか・下がるかといった、将来予測が必須となります。
そして、会社の将来を予測するためには、現在・過去の会社の状況を分析する必要があります。
つまりは、会社の決算情報から会社の現状を分析して、それをもとに将来の株価の推移を予測することとなります。
この点、決算書分析におすすめの資格として、ビジネス会計検定が考えられるため、株式投資に興味を持つ人の増加に合わせて、ビジネス会計検定の受験者数も増加していると考えられるのです。
6. 終わりに
いかがでしたでしょうか?
簿記検定試験とは似て非なるビジネス会計検定の内容・難易度を理解した上で、しっかりと試験対策をして合格を勝ち取りましょう。
7. まとめ
◆合格率:3級70%、2級50%、1級20%前後。
◆財務諸表を「作成」するまでが簿記検定試験、「分析・利用」するのがビジネス会計検定試験。