公認会計士を目指している人の中には、自分にとって都合の良い情報ばかり集めている人も、いるのではないでしょうか?
自分が目指す公認会計士という職業は、きっと魅力的な職業に違いないと、盲目的に信じているのかもしれません。
実は、私も公認会計士の試験勉強をしていた時は、公認会計士は勝手に魅力的な職業だと決めつけていたところがありました。
ただ、一般的には、公認会計士は魅力的ではないと言われることも多いです。
そこで今回は、公認会計士が魅力的ではないと言われる理由についてお伝えした上で、実際に公認会計士として働く私の経験を踏まえ、その実態に迫りたいと思います。
1. 監査は事務作業?
公認会計士が魅力的でないと言われる1つ目の理由としては、「監査は事務作業」であることが挙げられます。
公認会計士の独占業務である、財務諸表監査。
財務諸表監査は、クライアント企業が作成した財務諸表に、誤りがないか監査法人がチェックして、重要な点について誤りがないと保証する作業となります。
(財務諸表監査の詳細については、「公認会計士とは?わかりやすく簡単に解説します!」をご確認ください。)
こう聞くと、何か大層な作業に聞こえますが、実際の仕事内容としては、事務作業がかなりの部分を占めます。
クライアントに依頼する資料や実際に実施する監査手法は、基本的に前年ベースのものが多く、前年と同じ流れを踏襲するだけの事務作業となることも多いです。
以上より、「監査は事務作業」であることは、公認会計士が魅力的でないと言われる理由となります。
低年次のころは、前述のような事務作業がメインとなるのは、1つの事実です。
ただ、シニアスタッフ⇒マネージャー⇒パートナーと年次や役職が上がっていくにつれて、次第に監査の本当の魅力を経験できるようになります。
財務諸表監査は、クライアントのビジネスを理解して、どこにリスクが潜んでいるのかを理解し、リスクの多い点について効果的な監査手法や人員配置を行うことに、醍醐味があります。
一つ一つの枝葉の作業は事務作業となり、その作業だけを任されているうちはなかなか気づけないですが、経営者と同じ視点でクライアント企業を俯瞰して見ることができる実力がつけば、公認会計士という仕事の魅力がわかるはずです。
2. 難易度の割に給料が高くない?
公認会計士が魅力的でないと言われる2つ目の理由としては、「難易度の割に給料が高くない」ことが挙げられます。
公認会計士は、医師・弁護士と並んで三大国家資格と言われるほど、難しい試験となります。
「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」でお伝えした通り、私の場合は9,000時間もの勉強時間を必要としました。(効率的に勉強すれば、本来はここまでの勉強時間は必要ないです。)
それでは、その結果として、どれほどの給料がもらえるのでしょうか?
1つの目安として、以下をご参照ください。
・600万円前後
【4~8年目:シニアスタッフ】
・800万円前後
【8~12年目:マネージャー】
・1,100万円前後
【12~20年目:シニアマネージャー】
・1,300万円前後
【20年目~:パートナー】
・1,500万円~(営業力次第では数千万円)
どう思われましたでしょうか?
一般的に見ればそれなりに高い給料だと思いますが、大手企業であれば、同程度の給料をもらっている人もいるかと思いますし、大手の弁護士事務所であれば、この何倍もの給料をもらっている人も珍しくありません。
また、一攫千金を狙って公認会計士を目指すという人も中にはいますが、基本的にパートナーになるまでは青天井で稼げるということはありません。
合格できるどうかわからない公認会計士試験に、人生の何年かをささげるには、少し物足りないと感じる方も多いかと思います。
以上より、「難易度の割に給料が高くない」ことは、公認会計士が魅力的でないと言われる理由となります。
先ほど、大手企業でも同程度の給料はあり得ると、お伝えしました。
しかし、大手企業であれば、そもそも就職活動でライバルよりも上に行く必要があります。
大手企業の内定率は、公認会計士試験の合格率の比ではありません。(受験者層が異なるため、一概に比較できるものでもないですが。)
就職活動に比べれば、公認会計士試験の方が合格への道は体系化されております。
誤解を恐れずに言えば、公認会計士試験は勉強さえすればとれる資格です。
また、青天井では稼げないとお伝えしましたが、一方で、公認会計士は安定して稼げる職業であるとも言えます。
手に職を持つことができますので、余程のことがない限り職を失うことはありません。
勉強すれば安定した職を得ることができるという意味では、公認会計士は魅力的な資格であると言えます。
3. 残業が多い?
公認会計士が魅力的でないと言われる3つ目の理由としては、「残業が多い」ことが挙げられます。
昔からあるイメージなのですが、会計士と言えば、夜な夜な遅くまで数字を追いかけまわしていると、思っている人も多いかと思います。
私も監査法人時代に「会計士って残業多いんでしょ?」と、周りの人から言われることがありました。
実際に、監査法人の1・2年目時代は、当時の法定残業時間すれすれで働いていた記憶があります。
深夜にクライアントの経理部の人と、やりとりをしたこともありました。
先述の通り、いくら給料が安定していても、残業が多ければワークライフバランスが崩れるため、あまり魅力的な仕事ではないと考える人も多くいます。
以上より、「残業が多い」ことは、公認会計士が魅力的でないと言われる理由となります。
先ほど1・2年目は法定残業時間すれすれとお伝えしましたが、実は3年目あたりから、世間的な働き方改革の影響もあり、残業に関して徐々に規制が厳しくなりました。
「○○時以降は作業禁止」となり、○○時を過ぎてもパソコンがアクティブになっていると、すぐに本部にばれるという仕組みまで構築されていました。
今であれば、残業についてさらに厳しくなっていることが予想されますので、一昔前のイメージである残業過多の状況は、解消されているかと思います。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
4. AIに代替される?
公認会計士が魅力的でないと言われる4つ目の理由としては、「AIに代替される」ことが挙げられます。
「AIに代替される職業ランキング!」
このような見出しを見かけたことがある人も、多いのではないでしょうか?
そして、その中に必ずと言っていいほど入っているのが、公認会計士です。
財務諸表を作成する経理の仕事は定型作業が多く、AIに代替されやすいと言われております。
公認会計士の監査対象である、財務諸表を作成する経理の作業がAIに代替されるのであれば、監査自体もAIに代替できるのでは?といった論調があり、その結果として、公認会計士はAIに代替されると言われております。
また、独立している個人の公認会計士は、税理士登録をして税理士業務を行うことも多いのですが、この税理士業務もAIに代替されると言われていることも、公認会計士がAIに代替されると考えられる理由となります。
以上より、「AIに代替される」ことは、公認会計士が魅力的でないと言われる理由となります。
結論として、公認会計士がAIに完全に代替される可能性は低いと思います。
まず言えることは、元も子もない話ですが、既得権益は強いということです。
監査法人は、監査という独占業務もあり、良くも悪くも既得権益を持っています。
そしてやっかいなことに、公認会計士はそれなりに賢い人が多いため、本気で既得権益を守ろうと彼ら・彼女らが動くと、ちょっとやそっとでは既得権益を放棄させることはできません。
また、AIにも得意とする業務・苦手とする業務があります。
得意とする定型業務やビッグデータを処理する業務をAIに任せることで、公認会計士は事務作業から解放されて、本来取り組むべきである会計論点についての議論や、リスク管理、クライアントとのリレーション構築や会計・財務面でのコンサルティングなどに専念できます。
つまり、公認会計士でなくてもできる業務を今やっている人は、AIに代替される可能性はありますが、そうでない人にとっては、専門家としての業務に専念できるため、AIを歓迎すべきとも言えます。
(公認会計士とAIの詳細については、「公認会計士のAIによる代替可能性は8割!?今から勉強しても…」をご参照ください。)
5. 誰からも感謝されない?
公認会計士が魅力的でないと言われる5つ目の理由としては、「誰からも感謝されない」ことが挙げられます。
公認会計士にとっての価値提供は、一義的には企業の不正があればそれを発見して、投資家を保護することにあります。
ただ、不正を事前に発見したからといって、投資家から感謝されることはありません。
むしろ、見抜けなかった時に、投資家や世間から叩かれることの方が、はるかに多いです。
また、監査報酬を頂いているクライアント企業の不正やミスを発見する役割を担うため、クライアント企業から良く思われることも少ないです。
特に、普段やりとりをするクライアント企業の経理担当者からしてみれば、監査対応は余計な業務であり、極力労力を割きたくないというのが本音かと思います。
以上より、「誰からも感謝されない」ことは、公認会計士が魅力的でないと言われる理由となります。
公認会計士の仕事は、社会的に必要とされる役割を担うものであり、誰かの感謝を求めるものではありません。
「公認会計士に向いている人とは?細かい人はむしろ向いてない!?」でもお伝えしている通り、公認会計士には正義感が求められます。
そのため、誰に何と言われようが、正しいと思うことを突き通す覚悟が必要となります。
、、、とは言っても、時々は誰かに感謝されたいですよね?
安心してください。
まず、監査チーム内で互いに感謝し合うことは当然あります。
また、クライアントから会計面について相談されることもあり、その相談にしっかりと対応することで、クライアントから感謝されることもあります。
感謝される機会が全くないということはありません。
6. 終わりに
公認会計士が魅力的ではないと言われる理由と、必ずしも魅力がないとは言えない理由について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
どんな仕事でもそうですが、考え方・取り組み方次第で、その仕事の魅力は変わります。
私自身の実体験としても、公認会計士は魅力的な仕事と言えますので、興味のある方はぜひチャンレンジしてみてください。
7. まとめ
◆難易度の割に給料が良くない?
◆残業がたくさんある?
◆AIによってなくなる?
◆周りから感謝されにくい?