「公認会計士になったら、バラ色の未来が待っている!」
このように考える人も、多いのではないでしょうか?
ですが、ちょっと待ってください。
公認会計士は楽しいこともありますが、つまらないことも多いです。
もし今から公認会計士を目指すのであれば、公認会計士のつまらない面も知っておいて、損はありません。
そこで今回は、公認会計士である筆者が、公認会計士になって大手監査法人で働いた際に、実際につまらなかったことについて、お伝えしていきます。
また後半では、つまらなかったことを踏まえて、それでも公認会計士は目指すべき価値のある資格なのか?といった点についても解説しておりますので、ぜひご一読ください。
・公認会計士
・前職で公認会計士講座の責任者を担当
・大手監査法人→経理部に出向
→教育×ITベンチャー→自営業
1. 会計士になってつまらなかったこと
1) 事務作業
2) 上司の武勇伝
3) 残業規制
4) 出世レース
5) 社内研修
6) 転職に対する不寛容さ
2. つまらないから目指す価値なし?
3. 終わりに
4. まとめ
1. 会計士になってつまらなかったこと

1) 事務作業
1つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「事務作業」です。
「公認会計士になったら、経営者や経理に対して適切なアドバイスをしたい。」
「会計のプロとして、専門性を磨いていきたい。」
「不正をバシバシ見つけて、社会に貢献したい。」
このような高い志を持って、公認会計士を目指す人も多いかと思います。
確かにどれも立派な目標であり、何か問題があるわけではありません。
ただ、「アドバイスをする」「専門性を磨く」「不正を見つける」といったものは、公認会計士の仕事のほんの一部であり、その背後には多くの事務作業が存在しています。
必要なものだとわかっていても、やはり事務作業はつまらないものです。
実際に私が監査法人時代にやっていた、以下のような仕事も事務作業に分類されますが、どれも公認会計士である必要性は全くなかったです。
・開示資料の誤字脱字チェック
・パートナーの日程調整
・調書やパワポの形式整え
・過去データの集計
誰かがやらねばならないことだったので、特に文句を言うこともなくたんたんと作業していましたが、つまらない作業と感じていたのは事実でした。
以上より、「事務作業」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
昨今では監査法人側も、公認会計士の事務負担軽減に向けて、大きく動き出しています。
例えば、以下のような活動が挙げられます。
・事務作業用の補助スタッフを雇い、会計士は事務作業以外に専念させる。
・確認状の作業負担を大幅に軽減するために、大手4大監査法人が共同で「会計監査確認センター」を設立。
2) 上司の武勇伝
2つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「上司の武勇伝」です。
上司の武勇伝というのは、公認会計士に限らず、どこの会社でもあるものかと思います。
ただ、公認会計士の場合は、ひと昔前までと今でかなり待遇が異なっているため、「昔は○○だった。」「俺の頃は○○でよかったよ。」といった言葉を、上司から聞くことが多かったです。
また、プライドが高い人も比較的多いため、昔の激務ぶりや自分の活躍などを語る人もいました。
例えば、実際に私が聞いた武勇伝としては、以下のようなものがあります。
・「昔は今と同じ仕事量を、今の半分の人数でこなしていたよ。」
・「ニューヨークの監査チームよりも、俺のチームの方が優秀だよ。」
監査法人内でのキャリアを考えた場合、自分の先を行く上司の情報は貴重であり、聞いた方良いことも多いと思います。
ただ、私の場合は初めから転職する予定だったので、上司の武勇伝はつまらなく感じてしまうことが多かったです。
以上より、「上司の武勇伝」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
3) 残業規制
3つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「残業規制」です。
これもどこの会社でもあることかもしれませんが、働いた分だけ残業をつけられるわけではなく、残業に関して暗黙の了解で一定の規制がありました。
毎月同期とどの程度残業をつけるか確認し合うことも多く、本当に無駄な作業でした。
また、インターネットにつながっている状態であれば、オンライン・オフラインを上司が管理できるようになっており、離席時間も把握できるようになっていたため、働きづらい点も多く、つまらなさを助長していました。
(働き方改革が監査法人にも導入され、今はだいぶ改善されているはずです。)
さらに、残業があまりつけられず、働きに対して給料が少ないと感じて、文句を言う人も一定数いました。
(「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は・・・万円でした!」でお伝えしている通り、私自身は給料面に不満は特になかったです。)
監査法人はある種のサービス業であり、人件費の占める割合が非常に高いため、無制限に残業を認めるわけにはいかない事情も理解できるので、当時は複雑な心境だったと記憶しています。
以上より、「残業規制」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
4) 出世レース
4つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「出世レース」です。
公認会計士にとっての出世レースとは、主に以下の階層を上がっていくスピードを指します。
② シニアスタッフ
③ マネージャー
④ シニアマネージャー
⑤ パートナー
⑥ シニアパートナー
マネージャーまでは、基本的に年次通りに皆一律に上がっていくのですが、それ以降は人によって差が大きかったです。
出世レースは実力で決まるのか?というと、必ずしもそうではなく、むしろ出世する上司に気に入られるかどうかが、大きな要因だったと思います。
これ自体はどこの会社にもあることであり、別に問題ないと言えば問題なかったのですが、公認会計士という専門家となってまで、出世レースに巻き込まれるのは、正直めんどくさかったです。
特に実力がある人達は、もっと自分を評価してくれる場所に転職していく傾向がありました。
実際に私が所属していた監査チームでは、上の世代がほとんど転職しており、直属の上司が5年上ということも、ざらにありました。
(裏を返せば、実は出世しやすい環境でもあったと言えます。)
以上より、「出世レース」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
5) 社内研修
5つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「社内研修」です。
監査法人内では定期的に社内研修が行われ、年次ごとに必要な単位数を取得する必要がありました。
ただ、講師の方には大変申し訳ないのですが、つまらない研修が多かったです。
一定の年次以上になれば講師の依頼がくるといった仕組みとなっており、別に講師側も教えるプロではないので、つまらなくなるのは当然かと思います。
また、e-learningも用意されており、定期的に受講していましたが、流して聞いている人も多く、一部形骸化しているといった実態もありました。
普段の監査業務で忙しいので、どうしても社内研修やe-learningには時間を割きたくなく、そもそも受講する側のモチベーションが非常に低い状況なので、余計につまらなくなりやすかったです。
以上より、「社内研修」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
6) 転職に対する不寛容さ
6つ目の公認会計士になってつまらなかったことは、「転職に対する不寛容さ」です。
当たり前のことですが、監査法人内には、監査法人から他社に転職した経験がある人は、ほとんどいません。(一部出戻りの人もいますが。)
つまり、かなり閉鎖的な環境であり、監査法人から外に出ることに対して、理解できないといった風潮がありました。
特に、マネージャー以上の人達に多かったと記憶しています。
「公認会計士の転職体験談!「バカじゃないの?」と言われた転職」でお伝えしている通り、私が転職する時も、当時のパートナーから「バカじゃないのか?考え直せ!」と言われたほどです。
確かに、監査法人には監査法人の待遇の良さがあり、転職することが必ずしも正しいとは思えません。
ただ一方で、公認会計士というプロフェッショナルの仕事の幅を考えた場合、必ずしも監査法人内での仕事が全てではありません。
そのため当時は、転職に対する不寛容さについて、つまらないと感じていました。
以上より、「転職に対する不寛容さ」は、公認会計士になってつまらなかったことと言えます。
2. つまらないから目指す価値なし?

1) 何の仕事でもつまらない部分はある
ここまで、公認会計士として監査法人で働いていた際に、つまらなかった点を述べてきました。
これだけを聞くと、「公認会計士ってつまらないんだ、、」と不安になるかもしれません。
ただ、大前提としてまず押さえてほしいのは、何の仕事でもつまらない側面はあるということです。
公認会計士だからつまらない仕事はない、といったことは当然にありません。
また、「つまらない=必要ない」というわけではなく、私がつまらないと感じたことの多くは、必要なことでもあるのです。
2) 楽しいこともたくさんある
さらに言うと、今回はつまらないことにフォーカスしてお伝えしてきましたが、公認会計士になると、楽しいこともたくさんあります。
例えば私の場合、以下のような点が楽しかったです。
・多様なキャリアの経験
・おもしろい同僚との出会い
・表には出ない内部数値の分析
・監査以外での活躍
*詳細につきましては、「公認会計士になって楽しかったこと5選!」をご参照ください。
3) 公認会計士は価値の高い資格
公認会計士は、他の仕事と同様につまらない部分もありますが、楽しい部分もある職業です。
また、監査という独占業務があり、財務会計の専門家となることもできます。
さらに、将来的には独立したり、CFOや経理として活躍できるなど、幅広いキャリアの選択肢もあります。
つまり、公認会計士とは、非常に価値の高い資格と言えるのです。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
3. 終わりに

公認会計士になってつまらなかったことについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
公認会計士を目指すのであれば、一定程度のつまらない仕事も覚悟しておくべきです。
ただ、それ以上にやりがいを感じることができる資格なので、興味を持ったのであれば、ぜひ勉強を開始してみてください。
4. まとめ
◆上司の自慢話。
◆残業に対する規制。
◆出世競争。
◆社内研修。
◆転職に対する不寛容さ。