公認会計士のAIによる代替可能性は8割!?今から勉強しても…

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「公認会計士はAIに仕事を奪われるから、今後なくなるよ。」

公認会計士に興味を持った人であれば、一度はこのような情報を見聞きしたことが、あるのではないでしょうか?

実際に、「AIに代替される仕事30選」などのタイトルで、公認会計士はよく取り上げられています。

であれば、今から公認会計士試験の勉強をしても、無駄に終わるのかな。。と思われる人も多いことでしょう。

ただ、公認会計士でもある筆者の見解としては、AIにより代替される仕事もありますが、公認会計士という職業自体が、AIに代替される可能性は極めて低いと考えています。

そこで今回は、まず現状のAIと公認会計士の業務の関係性について紹介した上で、公認会計士がAIに代替されない理由について、6つ順に解説していきます。

また、後半では、AIに代替されないために、身に付けておくべきスキルについてもお伝えしますので、ぜひご一読ください。

筆者の情報
・公認会計士
・監査法人➡経理に出向➡ベンチャー➡自営業

 

 

1. 公認会計士はAIに代替される?

公認会計士はAIに代替される?

1) 8割以上の可能性で代替される?

各士業とAIの代替可能性について、2015年に野村総研と英オックスフォード大学の共同研究結果が発表されました。

この研究結果によると、各士業がAIに代替される可能性は、以下の通りとなります。

 

資格名AIによる代替可能性
弁護士1.4%
司法書士78.0%
弁理士92.1%
行政書士93.1%
公認会計士85.9%
税理士92.5%
社会保険労務士79.7%
中小企業診断士0.2%

 

あくまで1つの研究結果であり、また、2015年時点の状況を勘案したものですが、公認会計士のAI代替可能性が85.9%というのは、驚きを隠せない人も多いかと思います。

このような研究結果などをもとに、一般的に「公認会計士はAIに代替される」といったイメージが広がったと考えられます。

 

2) AIに代替されやすい業務

それでは具体的に、公認会計士の業務のうち、どの業務がAIに代替されやすいのでしょうか?

例えば、以下のような業務が該当します。

・預金や売掛金の残高確認。(銀行や取引先の残高と一致するかの確認作業。)
・証憑突合。(売上高などの金額と外部証憑との一致を確認する作業。)
・棚卸資産の実査やテストカウント。
・有価証券報告書の開示チェック。
・仕訳テスト。(不正が発生しやすいと考えられる仕訳をサンプル抽出して検証する作業。)
・ビッグデータの解析。

上記の中には、既に監査業務内で実用化されているものもあります。

それでは、大手監査法人の具体的な取り組み事例について、次項で見ていきましょう。

 

3) 大手監査法人のAI取り組み事例

① EY新日本有限責任監査法人

・仕訳テストにおいて、異常検知を行うアルゴリズムを開発し、特許を取得。

AIによる会計仕訳の異常検知技術の特許取得

 

② 有限責任監査法人トーマツ

・公認会計士×AI人材の育成。

Audit × AI」

 

・監査人の経験則に頼らない、独自のデータ分析手法の開発。(AIというよりは、統計を利用した手法。)

Audit Analytics

 

③ 有限責任あずさ監査法人

・過去データを解析して不正リスクをスコア化し、不正リスクが高い領域に適切な監査手続を実施。

AI・機械学習を用いた不正リスク検知SUNモデル

 

④ PwCあらた有限責任監査法人

・現金および預金の監査手続を自動化したCash.aiの開発。被監査会社の財務文書を読み込み、理解して、自動でテストするAI。(日本法人ではなくPwC本体が開発。)

先駆的なAI技術でオーディット・イノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞

 

2. AIに代替されない6つの理由

AIに代替されない6つの理由

前述の通り、現在の監査業務のうち、AIに代替される可能性の高い業務はいくつもあります。

ただ、この点を踏まえても、公認会計士はAIに代替されないと考えられます。

以下で順に、その理由を6つ解説していきます。

 

1) 既得権益は強い

1つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「既得権益は強い」ことが挙げられます。

日本の監査法人は以下の通り、グローバルの4大会計事務所の傘下に、それぞれ属しております。

・EY新日本有限責任監査法人
⇒アーンスト&ヤング (Ernst & Young)

・有限責任監査法人トーマツ
⇒デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu)

・有限責任あずさ監査法人
⇒KPMG (KPMG)

・PwCあらた有限責任監査法人
プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers)

4大会計事務所には、世界中から人・モノ・金・情報が集まっており、その影響力は非常に大きいです。

また、日本の公認会計士協会は、金融庁の傘下に入っており、国内における影響力も大きいです。

AIがどんなに発達しようが、AIの導入や利用を担うのは、結局のところ「人」です。

この点、良いか悪いかは別として、公認会計士は非常に強い既得権益に属しているため、簡単に公認会計士の職を奪うことは難しいと考えられます。

以上より、「既得権益は強い」ことは、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

 

2) 会計処理の選択には人の判断が入る

2つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「会計処理の選択には人の判断が入る」ことが挙げられます。

会計というのは、現実に起こるビジネス上の取引を、勘定科目と数字に使って表し、利害関係者に報告する手段です。

現実のビジネスが日進月歩で変化している中で、「この場合はこの会計処理を適用する。」といったように、1つ1つのビジネス上の取引と会計処理との対応関係を、全て定義することは不可能です。

そのため、ある程度大枠の原理原則を会計基準で定義しておき、個別のケースに関しては原理原則や前例を加味しながら、各現場の担当者が会計処理を判断することとなります。

AIは原理原則に基づいた画一的な処理に対する監査を得意としますが、現場の担当者ごとに異なる、人の判断が多分に入った処理に対する監査は、苦手な領域となります。

現場担当者の判断の余地が大きい、新たなビジネスや領域や、細かい会計上の取引については、公認会計士が現場担当者にヒアリングして、会計基準の原理原則論だけでなく、自身の経験に基づいた監査上の判断が必要となってきます。

以上より、「会計処理の選択には人の判断が入る」ことは、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

 

3) 顧客とのリレーション構築が必要

3つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「顧客とのリレーション構築が必要」であることが挙げられます。

公認会計士の独占業務である監査業務は、クライアントのコミュニケーションなしに、行うことはできません。

と言いますのも、クライアントが自ら進んで、必要な資料を全て提出してくれるわけではなく、監査において必要な資料を監査人から依頼する必要があるためです。

「ただ資料を請求するだけでしょ?」と思うかもしれませんが、クライアントの経理担当者からしてみれば、資料を出せば出すほど自分達が追い込まれる可能性があるため、なかなか資料を提出してくれないことは多々あります。

また、クライアントがどのような点に悩んでいるのか?課題を持っているのか?といった点も、コミュニケーションの中で引き出す必要があります。

クライアントの反応を見ながら臨機応変に対応する必要があり、顧客とのリレーション構築は、AIには難しい業務であると考えられます。

以上より、「顧客とのリレーション構築が必要」であることは、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

 

4) 会計士の多様なキャリアプラン

4つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「会計士の多様なキャリアプラン」が挙げられます。

公認会計士試験に合格した人のほとんどが、まず監査法人に就職して、独占業務である監査業務に従事します。

ただ、公認会計士は財務会計の専門家として、多くの市場でニーズがあり、監査法人の後のキャリアプランは、多様なものとなっております。

つまり、公認会計士の活動領域は無数にあり、その全てがAIに代替されるというのは、かなり可能性が低いと考えられます。

公認会計士のキャリアプランとしては、例えば以下のようなものがあります。

 

① コンサルティング会社

前述の野村総研と英オックスフォード大学研究結果において、経営コンサルの国家資格である中小企業診断士のAI代替可能性が「0.2%」であることからもわかるように、コンサルティングはAIに代替されにくい業務の1つです。

そして、財務会計のコンサルティングや、M&A・事業再生のコンサルティングなどを専門として、コンサルティング会社でのキャリアを歩む公認会計士も多いです。

また、公認会計士は税理士として登録することもできるため、税務面のコンサルティングを専門に扱うこともあります。

 

② 一般事業会社の経理

公認会計士の監査法人以外のキャリアとして、多くの人が想像するのが経理ではないでしょうか?

実際に公認会計士のキャリアプランとして、一般事業会社の経理の道を歩む人は、それなりに多いです。

経理はAIに代替されるのでは?と思われるかもしれませんが、経理という職は今後も存在し続けると考えられます。

詳細につきましては、「経理はAIでなくなる!?人工知能に負けないためには??」をご参照ください。

 

③ 中小、ベンチャー企業のCFO

公認会計士のキャリアプランとして、中小・ベンチャー企業のCFOという選択肢もあります。

CFOには単に財務会計の知識が求められるだけでなく、会社のビジネスを理解し、財務会計の視点から、事業拡大や事業効率化のための提案をする必要があります。

また、IPOを目指している会社であれば、上場のために管理部門を整えるのも、CFOの仕事となります。

共に決まった定型の答えが存在する業務ではなく、さらに、人とのコミュニケーションが必須となる業務であるため、CFOはAIに代替されにくいポジションと言えます。

 

④ 独立開業

最終的な公認会計士のキャリアとして、独立開業を選択する人も多いです。

単に会計帳簿の代理作成や、税理士登録をして税務申告の代理を行うだけの業務を専門として独立開業するのであれば、今後AIに代替される可能性が高いです。

一方で、財務会計、あるいは税務の専門家として、主に中小企業や個人事業主を相手にコンサルティング業務を行う、経理業務の一部を引き受ける、あるいはセミナー講師をするなど、独立の道は多種多様です。

さらに最近では、Youtuberとして活躍する公認会計士もいます。

専門的知識を活かしながら、AIに代替されにくい業務を選択すれば、独立開業という道は、今後も公認会計士のキャリアプランの1つとなります。

 

以上より、「会計士の多様なキャリアプラン」は、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

★筆者の体験談
私自身、公認会計士という資格を活かしながら、以下のように多様なキャリアを歩んでいます。

・大手監査法人
  ↓
・外資系投資銀行の経理部に出向
  ↓
・社員20名のベンチャー企業
  ↓
・自営業

ベンチャー企業時代には、営業・マーケティング・経営戦略・人事など、幅広い職種を経験し、キャリアを積んできました。

詳細につきましては、「公認会計士のキャリア:監査法人⇒ベンチャー⇒自営業の私の経験談!」も合わせてご確認ください。

 

5) AI導入支援業務に会計士が必要

5つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「AI導入支援業務に会計士が必要」であることが挙げられます。

公認会計士の業務の中にAIを取り入れようと考えた場合、AIの専門家の知見とは別に、公認会計士の知見も当然に必要となります。

そもそも公認会計士の業務を理解していないと、どこにAIを利用できるのか?といった点がわかりません。

そのため、AIの導入支援をする役割が、新たに公認会計士の業務として加わり、公認会計士の業務は減るどころか、むしろ増える可能性すらあります。

これからの公認会計士は、AIとライバル関係にあるのではなく、AIと共存していく必要があるので、単純な事務作業などは得意なAIに任せて、会計士自身はAIの導入支援や新たな会計論点への対応等に、専念することが考えられます。

以上より、「AI導入支援業務に会計士が必要」であることは、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

 

6) AIを導入しても不正はなくならない

6つ目の公認会計士がAIに代替されない理由としては、「AIを導入しても不正はなくならない」ことが挙げられます。

AIによる新しい監査技術が導入されても、それに応じて不正の手法も進化していきます。

そのため、常に新しい不正に対して、対応方法を考えていくことが求められます。

過去の不正事例から予想がつく範囲であれば、AIの方が不正を予防・発見できる能力は高いかもしれませんが、今まで起きたことがない不正事例に対しては、人である公認会計士の方が得意な分野となります。

将来的にはAIを使用した不正行為も行われるかもしれませんが、その場合も結局のところAIを使用しているのは人であるため、最終的に対処するのも人である公認会計士の役目となります。

以上より、「AIを導入しても不正はなくならない」ことは、公認会計士がAIに代替されない理由と言えます。

★おすすめ公認会計士予備校
公認会計士である筆者が、コストパフォーマンスの観点から、以下の5つの公認会計士予備校を比較してみました。

・大原
・TAC
・東京CPA
・LEC
・クレアール

詳細については「公認会計士の予備校比較ベスト5!会計士がコスパ重視で選んでみた」をご参照ください。

 

3. 身に付けておくべき4つのスキル

身に付けておくべき4つのスキル

前述の通り、基本的に公認会計士はAIに代替されないと考えられますが、一方で、今のままで良いというわけでもありません。

AIの台頭に合わせて、公認会計士に求められるスキルも、今後変化していくことが考えられます。

ここでは、今後公認会計士が身に付けておくべき4つのスキルについて、順に解説していきます。

 

1) 会計の専門家としての知識

1つ目の公認会計士が身に付けておくべきスキルとしては、「会計の専門家としての知識」が考えられます。

「AIに対応するために、何か新しいスキルを身に付けなければ。。」

と焦る気持ちはわかりますが、土台となる会計の専門家としての知識が疎かになってしまっては、元も子もありません。

公認会計士とは、会計という自身の専門領域を軸にして、監査やコンサルティング、経理などの分野でも活躍する士業であり、軸をなくしてしまったら、もはや公認会計士である必要性がなくなってしまいます。

そのため、当たり前のことですが、会計知識の積み重ねを疎かにしないことが、今後も必要となってきます。

以上より、「会計の専門家としての知識」は、公認会計士が身に付けておくべきスキルとなります。

 

2) AIの知識

2つ目の公認会計士が身に付けておくべきスキルとしては、「AIの知識」が考えられます。

AIを利用するためには、最低限のAIに関する知識について、勉強しておく必要があります。

ただ、あくまで最低限の基礎知識を学習すれば問題なく、AIの専門家やエンジニア並みの知識を必要としているわけではありません。

では、最低限の知識とは、いったいどうやって身に付ければよいのでしょうか?

いくつか例示を列挙しますので、参考にしてみてください。

・「G検定(*)」などのAI関連資格試験で、全般的なAIに関する基礎知識を学ぶ。
 *G検定:日本ディープラーニング協会が主催する、非エンジニア向けのAI検定試験。
・最新のAI導入事例について、ニュースや記事から情報収集する。
・プログラミングの勉強をしてみる。(プログラミングは公認会計士の実務でも活きてくるスキルです。詳細につきましては、「公認会計士はプログラミングを学んだ方がいい5つの理由」をご参照ください。)

以上より、「AIの知識」は、公認会計士が身に付けておくべきスキルとなります。

 

3) コミュニケーションスキル

3つ目の公認会計士が身に付けておくべきスキルとしては、「コミュニケーションスキル」が考えられます。

コミュニケーションスキルは、人間にあってAIにない、最たるものかと思います。

何となく重要性については理解していても、具体的にどうやって磨けばいいの?という人は、以下の方法を参考にしてみてください。

・毎月〇人の新しい人と話すという目標を立てる。(〇は現実的に可能な人数を設定。)
・コミュニケーション関連の読書。
・自己紹介のテンプレート作成。
・メタ認知能力を磨く。
・普段から笑顔を心掛ける。
・Twitterやブログなどで、自分の考えを端的にまとめる練習をする。
・相手に何かを伝える時は、理由を3つ以内にして伝える。
・相手の話を途中で遮らない。

以上より、「コミュニケーションスキル」は、公認会計士が身に付けておくべきスキルとなります。

 

4) 独自の経験

4つ目の公認会計士が身に付けておくべきスキルとしては、「独自の経験」が考えられます。

公認会計士としてのキャリアは、最終的には所属している会社のブランド力ではなく、あなたという個人のブランド力が大切となります。

仮にAIに一部の業務を奪われたとしても、世間から見たあなたという公認会計士の価値が高ければ、どの分野でも活躍できます。

では、今後世間から評価されるために何が重要になってくるのか?というと、あなた固有の経験を積んでいくことが大切となります。

例えば、以下の2人の公認会計士から、会計コンサルの提案を受けた場合、クライアントの立場であれば、どちらにお願いしたいと考えるでしょうか?

・Aさん
大手監査法人に所属。
・Bさん
大手監査法人からベンチャー企業に転職して、バックオフィス業務だけでなくフロント業務も経験し、ビジネス面にも精通している。

上記はあくまで一例ですが、公認会計士に限らずこれからの時代は、いかに自分のオリジナルの経験をして、それを発信していくか?といった、AIには決してマネできない「個人の体験」が重視されると考えられます。

以上より、「独自の経験」は、公認会計士が身に付けておくべきスキルとなります。

 

4. 終わりに

公認会計士がAIに代替されない理由について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

AIについては今後もいろいろな議論が行われるかと思いますが、公認会計士が魅力的な資格であるという事実は変わりありません。

もし少しでも公認会計士に興味を持っているのであれば、まずは勉強を開始してみましょう。

 

5. まとめ

Point!

◆公認会計士のAIによる代替可能性は「85.9%」という研究結果がある。
◆代替可能性が低い理由。
・既得権益は強い。
・会計処理の選択には人の判断を伴う。
・クライアントとのリレーション構築が必要。
・多様なキャリアプランがある。
・AIの導入支援に会計士の知見が必要。
・監査にAIを導入しても不正はなくならない。

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