経理で働いている人、あるいは経理に興味がある人であれば、「大手と中小の経理って、どっちがいいんだろ?」と考えたことが、一度はあるのではないでしょうか?
結論としては、大手と中小というよりは、各会社ごとに経理部の良し悪しは異なるため、一概に「大手だから○○」「中小だから○○」と言うことはできません。
ただ、大枠の傾向として、大手に向いている人・向いていない人の特徴はあります。
そこで今回は、そもそも大手の魅力とは何なのか?といった点について解説した上で、大手に向いていない人の特徴を解説していきます。
大手に興味がある人は、本記事でお伝えする特徴に自分が当てはまっていないか、チェックしてみましょう。
(中小企業の経理については、「中小企業の経理をおすすめする5つの理由」をご参照ください。)
1. 大手経理の魅力とは?
2. 大手経理に向いていない人の特徴4選!
1) 協調性がない
2) 成長意欲が強い
3) 言われたことを素直にできない
4) 社内政治が大嫌い
3. 終わりに
4. まとめ
1. 大手経理の魅力とは?
1) 給料がいい
1つ目の大手経理の魅力としては、「給料がいい」ことが挙げられます。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、従業員の賃金は大企業と中小企業で大きく差があります。
年齢・性別の違いにより、大企業と中小企業の賃金格差の開きが異なりますが、総じて言えることは、大企業の方が給料が良いということです。
例えば、大企業の給料のピークである50~54歳を比較してみると、以下のような差があります。
大企業485万円>中企業408万円>小企業347万円
【女性】
大企業285万円>中企業282万円>小企業252万円
男性では約80~140万円も、大企業と中小企業の間で給料に差が出ております。(一方で女性では、大企業と中企業の間に大きな差はなく、小企業が約30万円低い状況となっております。)
もちろん本人の力量次第で、給料や賞与が変わりますが、総論としては大手の方が給料は高いです。
以上より、「給料がいい」ことは、大手経理の魅力と言えます。
2) 労働環境が充実している
2つ目の大手経理の魅力としては、「労働環境が充実している」ことが挙げられます。
大手の充実した労働環境とは、例えば以下のようなものを指します。
・福利厚生
・在宅勤務、時短勤務
・業務負担
順に見ていきましょう。
① 福利厚生
大手には、以下のような多くの福利厚生が存在します。
・社宅
・ランチ補助
・産休、育休支援
・病児保育支援
・財形貯蓄
・自己啓発補助
・独自の休暇制度
・カフェテリア制度
その他、そもそも普段働くオフィスがきれいで広く、開放感があるなど、働く上での福利厚生が整っています。
② 在宅勤務、時短勤務
昨今の情勢や働き方改革が推進される中、多くの大手企業では、在宅勤務(リモートワーク)や時短勤務が以前よりも気軽に行える環境が整ってきました。
大手は物理的に人数が多いため、例えば対面での密なコミュニケーションが必要な業務があったとしても、出社可能な社員に任せればいいため、在宅勤務が行いやすいです。
また、時短勤務で業務量が減った社員がいても、チーム全体で補えばいいため、大手の場合は大きな問題にならないケースも多く、時短勤務も比較的行いやすい環境と言えます。
③ 業務負担
大手の場合は人数が多い分、一人当たりの業務負担も軽減されます。
極端な話、一人の社員が急にいなくなっても、業務自体は回るように設計されており、一人一人の社員が負担する責任も、中小企業に比べると軽いです。
そのため、繁忙期を除けば、毎日残業に追われるようなこともなく、快適な職場環境となります。
以上より、「労働環境が充実している」ことは、大手経理の魅力と言えます。
3) 他の大手経理に転職しやすい
3つ目の大手経理の魅力としては、「他の大手経理に転職しやすい」ことが挙げられます。
大手の経理部での勤務経験は、それだけで他の大手経理に転職する時の市場価値を高めます。
その証拠に大手の場合、同じ業界の経理部を転々と渡り歩いて、キャリアアップしている人も多いです。
中小企業の経理と比べて、大手経理の方がブランド価値を評価する傾向があるため、大手に在籍していたということ自体が、市場価値を高めます。
また、後述の通り大手に向いている人・いない人が存在し、大手での勤務経験が一定年数ある人は、大手経理でやっていく耐性があると見なされて、評価されることも考えられます。
そのため、中小企業から大手に転職しようと思った場合は、始めからかなり不利な状態となり、転職の際に苦労することが予想されます。
以上より、「他の大手経理に転職しやすい」ことは、大手経理の魅力と言えます。
ベンチャー勤務時代に、経理の採用活動も担当していたのですが、社員20名程度の会社であり、経理にも即戦力を求めていたため、必ずしも大手経理出身だからということで評価することはありませんでした。
むしろ大手経理の人は、経理業務全体を一通り経験したことがなく、一人で経理を任せるのは難しかったです。
結局採用した人は、小規模のベンチャーの経理に勤めていた人でした。
企業規模によって求められるものも異なるため、大手の人は大手を、ベンチャーの人はベンチャーを渡り歩く傾向があると言えます。
4) 一人当たりの責任が重くない
4つ目の大手経理の魅力としては、「一人当たりの責任が重くない」ことが挙げられます。
先ほど大手の場合は一人当たりの業務負担が少ないとお伝えしましたが、これと同様に、人数が多い分責任も分散されており、一人当たりの責任は中小と比べると重くないです。
これは想像しやすいかと思うのですが、中小企業で2人で経理業務をやっていた場合と、大手で20人で経理業務をやっていた場合とでは、何かミスが起こった際の責任割合が異なります。
また、大手の場合はそもそも企業体力あるため、何かミスが発覚しても、基本的に事業存続が危ぶまれることはありません。
大手で社員の意図的な不正が発覚した、といったニュースを目にされたことはないでしょうか?
大手であるがゆえに大々的に報道され、世間的な影響は大きいですが、それで会社が潰れるといったケースはかなり稀です。
一方で中小企業の場合は、一経理社員のミスが大々的に報道されることはありませんが、それによって事業戦略が崩れ、あるいは取引先の評判が下がり、企業が倒産に追い込まれるケースもあります。
経理部員一人一人が背負っている責任範囲が、中小と大手では大きく異なるのです。
以上より、「一人当たりの責任が重くない」ことは、大手経理の魅力と言えます。
(経理部の人数については、「経理の人数は多い方がいい?メリット・デメリットをご紹介!」も合わせてご確認ください。)
5) 連結などの高度な論点を扱える
5つ目の大手の経理の魅力としては、「連結などの高度な論点を扱える」ことが挙げられます。
大手だからこそ発生する、高度な会計論点が存在します。
例えば、以下のような論点があります。
⇒「連結会計」「企業買収」の論点が発生。
・国際取引が多い。
⇒「移転価格税制」の論点が発生。
・従業員が多い。
⇒「退職給付会計」の論点が発生。
・余ったお金を金融資産に投資しがち。
⇒「金融商品会計」の論点が発生。
このように、中小企業ではなかなか出会う機会の少ない論点を扱うことができ、経理としてのキャリアアップにつながります。
高度な論点になればなるほど、専門性が求められます。
つまり、一度身に付けてしまえば、単なる経理ではなく、「○○に詳しい経理」となることができ、経理として差別化することが可能となります。
以上より、「連結などの高度な論点を扱える」ことは、大手経理の魅力と言えます。
2. 大手経理に向いていない人の特徴4選!
1) 協調性がない
大手経理に向いない人の1つ目の特徴として考えられるのが、「協調性がない」ことです。
大手経理には多くの同僚がいます。
また、経理は各部署からの情報を集める必要があり、多くの各部署の人と関わる必要があります。
つまり、経理にはチームプレーが要求され、協調性がなく個人プレーばかりやる人には向きません。
協調性がないことは、一つの個性であり、それ自体は問題ではないので、その場合は中小企業の経理など、自分により合った環境に飛び込むことを選択しましょう。
以上より、「協調性がない」ことは、大手経理に向いていない人の特徴となります。
2) 成長意欲が強い
大手経理に向いていない人の2つ目の特徴として考えられるのが、「成長意欲が強い」ことです。
大手経理の場合、特に低年次に言えることですが、1年目はこの業務を、2年目はこの業務をやるといった、ある程度経理としての成長ペースが決められています。
また、年次が上がってくると、社内の出世競争も激しく、出る杭は打たれる傾向が強いです。
そのため、成長意欲が強く、頭一つ周りより飛び出ようとする人には、働きづらい環境となります。
会社としても、個人があまり力を持ちすぎることは、組織運営上望ましくなく、特定の個人のあまりに早い成長は、歓迎されないこともあります。
以上より、「成長意欲が強い」ことは、大手経理に向いていない人の特徴となります。
3) 言われたことを素直にできない
大手経理に向いない人の3つ目の特徴として考えられるのが、「言われたことを素直にできない」ことです。
大手の経理という場所は、オリジナリティが求められる場所ではありません。
言われたことを、いかに素早くこなすかが大切となります。
そのため、そもそも言われたことに対して反論したり、違う方法を勝手に選択したりする人は好まれません。
頼まれたことの意図を聞き返すのは必要なことですが、言われたこと以上の成果は必ずしも期待されていません。
己が道を行くタイプの人は、大手には合わないかもしれません。
以上より、「言われたことを素直にできない」ことは、大手経理に向いていない人の特徴となります。
4) 社内政治が大嫌い
大手経理に向いていない人の4つ目の特徴として考えられるのが、「社内政治が大嫌い」なことです。
経理に限らず、人数が一定以上になって組織化されると、社内政治は一定数発生します。
そのため、どこの大手でも、少なからず社内政治はあります。
上司にゴマをすり、自分の立ち位置が有利になるようにしたりといった、社内政治が好きな人は少ないかと思います。
多くの人はめんどくさく感じるはずですので、単にめんどくさいと思う程度であれば、大手に向いていないとまでは言えません。
一方で、社内政治が「大嫌い」な人は、大手に向いていないと言えます。
自分にとって社内政治が「めんどくさい」という程度なのか、「大嫌い」というほどなのか、一度考えてみてください。
以上より、「社内政治が大嫌い」なことは、大手経理に向いていない人の特徴となります。
転職エージェントを利用するなら、管理部門特化型の中規模エージェントである、以下の3つがおすすめです。
・MS-Japan
・Hupro(ヒュープロ)
・WARCエージェント
ただし、地方求人がないため、地方での転職の場合は大手エージェントのdoda(デューダ)がおすすめです。
詳細は「経理の転職エージェントの選び方とおすすめ4選!」をご確認ください。
3. 終わりに
大手経理の魅力と、大手経理に向いていない人の特徴についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
向き・不向きはその人その人の個性なので、あえて向いていないところに行こうとはせず、向いているところに行った方が、活躍の機会は広がるかもしれません。
自分の適性をしっかり見極めて行動しましょう。
4. まとめ
◆自己成長意欲が強い。
◆言われたことを単にやるのが苦手。
◆社内政治が大嫌い。