経理が理解できない5つの理由と対応策

posted in: 経理 | 0

経理をやっていると、経理の仕事について理解できない部分が、必ずでてくるかと思います。

特に経理にまだ慣れていないころは、自分の理解できなさに落ち込むことも多いです。

そこで今回は、経理の仕事を理解できていない5つの理由とその対応策について、解説させていただきます。

自分に当てはまる理由がないか確認して、当てはまった場合はしっかりと対策を練りましょう。

【筆者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. そもそも簿記を理解していない

そもそも簿記を理解していない

1) そもそも簿記を理解していない

経理の仕事を理解できない1つ目の理由としては、「そもそも簿記を理解していない」ことが挙げられます。

簿記は、経理に欠かすことができないものです。

しかし、社会人になるまで簿記に触れる機会はとても少ないです。

義務教育で簿記はやりませんし、商業高校や大学の経営系の学部に行かなければ縁がありません。

そのため、簿記を勉強したことがない人が、社会人になっていきなり経理をやろうとしても、なかなか難しいものがあります。

また、勉強や検定試験そのものに対して拒否反応を示す人も多く、「実務で必要なことを学べば問題ない」といって、簿記の勉強をおろそかにする人も一定数います。

簿記を理解せずに経理をやることは、英語を理解せずに海外の人とコミュニケーションをとろうとするのと同義です。

不可能ではないですが、できることが限られ、結果としてそれが「経理の仕事が理解できない」という思いに繋がります。

 

2) 対応策

対応策としては、「簿記2級まで勉強することが挙げられます。

簿記は必要な知識が体系的に日商簿記検定として整理されているため、これを利用しない手はありません。

一般的に簿記3級と2級合わせて、250時間~500時間程度の勉強時間が必要となり、時間がかかります。

(簿記に必要な勉強時間については「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」をご参照ください。)

しかし、しっかりとした簿記の知識をつけて経理の土台を築いておけば、経理に対する理解が深まるばかりでなく、今後の経理のキャリアにも繋がります。

飛躍のための準備だと思って、簿記3級と2級に取り組んでみてください。

★簿記のおすすめ通信講座
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。

・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング

詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。

 

2. 事業内容を理解していない

事業内容を理解していない

1) 事業内容を理解していない

経理の仕事を理解できない2つ目の理由としては、「事業内容を理解していない」ことが挙げられます。

会社が行う取引1つ1つを数字で表して仕訳を切り、最終的に財務諸表を作成するのが経理の仕事となります。

経理が仕訳を切る際に、1つ1つの取引に対する理解が必要となりますが、事業全体として何をやっているのか理解していないと、1つ1つの取引だけを見ても木を見て森を見ずとなり、理解できません。

社長であれば、自社の事業内容についてわからない人はいないと思いますし、営業の方であれば少しはわかると思います。

ただ、経理で事業内容を理解している人は、比較的少ないのではないでしょうか。

経理の場合どうしても形式的・機械的に書類を作成して、業務を進めることが多く、ビジネスの内容そのものになかなか関心がいきません。

結果として、関心がないので事業内容が理解できず、経理が理解できないということになりかねません。

 

2) 対応策

対応策としては、「IRの資料や営業の資料を見て勉強する」ことが挙げられます。

IR(Investor Relations)活動を行っている企業であれば、外部に公表しているIRの資料を読み込むことで、ビジネス内容の大枠を把握することができます。

IRの資料がない場合は、営業にいる同期などに相談して、営業がお客さんにプレゼンする際の資料を入手して勉強するのも1つの方法です。

内部にいる人間が外部向けの資料で勉強するというのは、何か矛盾を感じるかもしれませんが、ビジネスの大枠を把握するには外部向けの資料の方がきれいにまとまっていて、勉強しやすいです。

ポイントとしては、IRや営業の資料だけで勉強を終えるのではなく、経理として日頃見ている内部資料と照らし合わせて勉強することです。

例えば、外部向けには「主力商品△△の売上○○億円」としか記載がなかったとしても、経理の内部資料を活用すれば、さらに得意先ごとの売上に分解することができるかと思います。

外部公表用のまとまった資料と、内部の細分化された資料とを組み合わせて事業内容を理解することで、経理が理解できないという状態を脱することができるかもしれません。

 

3. 経理システムを理解していない

経理システムを理解していない

1) 経理システムを理解していない

経理の仕事を理解できない3つ目の理由としては、「経理システムを理解していない」ことが挙げられます。

そもそも、なぜ経理システムを導入するのでしょうか?

結論を言ってしまうと、財務諸表などの決算書を作るためです。

中小企業においても、決算書は税務申告に必要なので、作成しなければなりません。

エクセルだけで決算書を作成できなくもないですが、経理システムなしでは非常に効率が悪いです。

経理において経理システムは、避けては通れないものです。

そのため、経理システムを理解していないことが原因で、経理の仕事が理解できなくなることは、十分あり得ることとなります。

ただここで注意したいのは、単に簿記の仕組みが分かっていないから、経理システムを理解できないパターンもあることです。

各仕訳がどの帳簿に転記されるべきなのか?決算仕訳にはどういったものがあるのか?など、基本的な簿記の理解が足りないと、経理システム内で自動処理されても、出来上がったものが正しいかどうか判断できません。

結果として、経理システムが理解できないということになってしまいます。

 

2) 対応策

対応策としては、原因別に以下の2つに大別できます。

 

① 経理システムの使い方がわからない場合

経理システムの使い方が分からない場合は、「経理システムのベンダーに問い合わせてみる」のも1つの対応策です。

そもそもバグである可能性もあり得ますので、ベンダーに問い合わせてみてください。

あるいは、経理部内でシステムを使いこなしている同僚がいるのであれば、使い方を聞いてみるのも手っ取り早い方法です。

いずれにしろ、始めはわからなくて当たり前ですので、積極的に周りに聞いてみてください。

 

② 簿記の内容を理解していない場合

そもそも簿記の内容を理解していないため経理システムが理解できていない場合は、前述のようにまずは簿記2級までを勉強してください。

★筆者の経験談
監査法人時代に経理部に1年間ほど出向していたのですが、その際に出向先の経理作業の一部を切り離して、受託する事業の橋渡しをしていました。

出向先の経理部では「勘定奉行」という経理システムを使用しており、日次・月次の経理作業でこのシステムをどう使っているのか?といった点をマニュアル化しておりました。

自分が理解していることをマニュアル化しても、自分としては何も得しない気分になるかもしれません。

しかし、マニュアル化して他の経理部員の「経理システムが理解できない」という機会をなくすことで、結果的に自分の手が空き、他の作業をしたり、その分早く帰ったりすることができます。

長い目で見れば自分のためになるので、積極的に経理システムの使用方法をマニュアル化してください。

 

4. 経理業務の全体像を理解していない

経理業務の全体像を理解していない

1) 経理業務の全体像を理解していない

経理の仕事を理解できない4つ目の理由としては、「経理業務の全体像を理解していない」ことが挙げられます。

そもそも前任者からの引継ぎが不十分で、自身が引き継ぐべき経理業務の全体像を理解できていないといったパターンもあるかと思います。

あるいは、前任者がメチャクチャで、仕訳の内容が意味不明だったり、さらにその資料がなくなっていたりすることもあります。

そうなると、何をやっていいかわからず、とりあえず、請求書がきたから振込して、集金にきたからお金を払って、現金が足りなくなったから銀行から下ろして、とその場限りのピンポイント対応ということになってしまうでしょう。

とりあえずこれだけでも会社は回りますが、財務面から戦略的に資金管理・資金運用を行ったり、会計的な論点を洗い出したり、経理プロセスの無駄をなくしたりといった、本来の経理に求められている作業ができません。

 

2) 対応策

対応策としては、事後の対応というよりは、事前の対応が重要となってきます。

普段から、自分の業務だけでなく、他の人の業務にも目を向けながら、経理全体の流れを追ってみてください。

最終的に財務諸表が作成されるまでに、どのような帳簿が必要となり、その帳簿を作成するためにはどのようなプロセスが必要となるのか?について、日頃から意識して作業に取り組む必要があります。

一定規模以上の会社であれば、内部統制用に業務フローチャートが用意されているかと思いますので、業務フローチャートを確認するのもおすすめです。

業務フローチャートがない場合は、少し時間がかかってもいいので自身で作成してみると理解が深まります。

 

5. 理解できていることを理解できていない

理解できていることを理解できていない

1) 理解できていることを理解できていない

経理の仕事を理解できない5つ目の理由としては、「理解できていることを理解できていない」ことが挙げられます。

、、、、??と思われたかもしれませんが、要は経理の業務を十分理解できているのに、自分では理解できていないと思い込んでいるということです。

経理には職業柄か完璧主義の人が多く、経理業務に対してあまりにも高い目標をかかげていることが多いです。

目標が高い分、自分の現状に対して厳しくなり、「自分は経理を理解できていない」と結論付けてしまうことがあります。

また、単純に疲れにより悲観的になり、「自分は経理を理解できていない」と感じることもあります。

 

2) 対応策

対応策としては、「適切な目標を持つ」ことと、「しっかりとした休息をとる」ことが考えられます。

目標設定については、自分の現状を正しく把握して、イメージですが現状より20%程度上を目指す目標で十分かと思います。

目標設定の詳細については「経理の目標設定とは?人事面談の前に押さえておきたい目標例7選!」をご確認ください。

休息については、読んで字のごとく、休んでください。

有休を使ってもいいですし、あるいは土日でもいいので、一切何もせず休むか、趣味など気分転換できることで一日中過ごしてみてください。

気分が休まれば、あるいは気分が変われば、経理という仕事に対する考え方・モチベーションが変わるかもしれません。

★経理は大雑把な人の方が向いている?
先ほど経理は完璧主義の人が多いとお伝えしました。
これは一般的なイメージと、割と合っているのではないでしょうか?

ただ実は、経理はある程度大雑把な人の方が向いております。
経理の業務は突き詰めていくときりがなく、どこかで自分で見切りをつけなければなりません。

そのため、ある程度のところで「もうこの辺でいっか」と割り切れる人の方が、経理に向いていると言えます。

経理の向き・不向きについては「経理に向いていない人、向いている人の特徴10選!」も合わせてご参照ください。

 

6. 終わりに

経理が理解できていない原因と対策について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

経理について理解できなくなることは、誰でも起こりえることです。

一喜一憂せずに、冷静に原因を見極めて、対策を練っていきましょう。

 

7. まとめ

Point! ◆簿記を理解できていない場合は簿記2級まで勉強してみる。
◆事業内容を理解していない場合はIRや営業資料で勉強してみる。
◆経理システムを理解していない場合はわかる人に聞く。
◆業務の全体像を理解していない場合は業務フローチャートを見る。
◆理解できていないと思い込んでいる場合は目標を修正する。

経理の転職エージェント4選 >>