簿記2級を活かせる仕事とは?3級や1級よりもコスパが高い?

posted in: 簿記検定 | 0

簿記2級は、さまざまな仕事に活かせる資格です。

多くの業種に役立つため、どこの企業でも生き残れる人材になれるでしょう。

しかし、具体的にどの仕事で役立つか知っていないと、簿記の知識が必要ない職に就いてしまう可能性があります。

この記事では、簿記2級を活かせる仕事や、簿記3級や簿記1級は仕事で活かせるのかを解説します。

簿記2級の取得後に最適な仕事を選べるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・ビジネス会計検定講座講師
・前職で簿記講座の運営責任者を担当

 

 

1. 簿記2級を活かせる仕事

簿記2級を活かせる仕事

簿記2級を持っていると、経理部や税理士事務所・銀行などで活躍できます。

ここでは、簿記2級を活かせる仕事を紹介します。

 

1) 経理部

企業のお金の流れを記録する経理部は、簿記の知識が必須の部署です。

入出金伝票の作成や帳簿への記帳など、簿記の知識を活用する作業が多いためです。

商社や小売り店などでは商業簿記の知識が求められ、製造業では工業簿記の知識が求められます。

簿記2級では商業簿記と工業簿記を実践レベルまで学べるため、多くの企業の経理部で活躍できるでしょう。

(参考「経理は簿記を持ってないとダメ!?」)

 

2) 税理士(会計)事務所

税理士事務所の補助スタッフとして入社すると、担当する顧問先の会計業務をおこないます。

具体的には、以下のような作業です。

・預かった領収書を会計ソフトへ入力
・売上や経費を会計ソフトへ入力
・月別の貸借対照表や損益計算書を作成
・決算処理

上記の作業に対応するには、簿記の知識が必須です。

ただし、それほど高度な知識を要求されるわけでなく、日常作業は簿記2級の知識があれば十分です。

簿記2級を取得していれば、即戦力として活躍できるでしょう。

 

3) 銀行

銀行のメイン業務である融資をする際には、融資先の財務諸表を分析して、信用のある企業か審査します。

財務諸表を分析するには、数字の意味を把握する必要があり、簿記の知識が必要です。

簿記2級を取得すると、財務諸表の数字から経営内容を把握できるレベルになるため、銀行での業務に役立てるでしょう。

また、銀行員として渉外をしていると、取引先から経営についてアドバイスを求められることがあります。

その際に財務諸表を見て「昨年より〇〇の経費が増えている分、利益が減ってしまっている」など、数字を元にしたアドバイスをすれば説得力を持たせられます。

得意先からの信頼を得られると、投資信託や保険を勧める際に購入してもらいやすくなり、よい営業成績を残せるはずです。

 

4) 監査アシスタント

監査アシスタントとは、監査法人で公認会計士のサポートをする人のことを指します。

監査業務そのものは公認会計士の独占業務となりますが、データ入力や文章作成、ファイリングや日程調整など、サポート業務は多岐にわたります。

監査アシスタントには会計知識よりもExcelなどの能力が求められますが、扱う内容は当然に会計に関するものであるため、簿記の知識がある方が理解が早いです。

また、一定以上の会計知識があれば任せられる業務も増え、さらに現場の会計士とのやりとりもスムーズとなるため、簿記2級を持っていることが採用にあたってプラスに働きやすいです。

 

5) 法人営業

法人営業で簿記の知識を持っていると、得意先のさまざまな情報を把握できます。

例えば、法人営業の重要な業務の一つに、取引先の与信管理があります。

与信管理とは、得意先の経営状態をチェックすることで、倒産の兆候を早い段階で把握可能です。

与信管理をするには、決算書から経営状態を分析する必要があります。

中小企業では与信管理の専門部署はないことが多く、営業員が自分で得意先の与信管理をしなくてはなりません。

簿記2級を取得していれば、決算書から得意先の状態を読み取れるため、他の営業員に比べて貸倒損失を抑えられるでしょう。

また、決算書の分析は、営業活動にも役立ちます。

決算書は、企業が何に力を入れているか判断する材料になるためです。

例えば、研究開発費が多額に計上されていれば、分析機器や新技術を売り込みやすいでしょう。

経費の節約に力を入れているのであれば、省エネグッズやSDGs関連の商品に興味を持つかもしれません。

決算書は情報の宝庫なので、簿記2級の知識で分析すれば、営業活動の幅を広げられるはずです。

(参考「営業に簿記は必要ない?」)

 

6) 財務部

財務部とは、企業の中で予算管理や資産運用・資金調達など、お金の管理を担当する部署です。

経理部が作成したデータを読み取り、どのように資金を使っていくか考える必要があります。

また、融資の際に金融機関との交渉もおこなうため、数字に基づいた説明をする能力が必要です。

簿記の知識を持っていれば、自社の経営状態を論理的に説明できて、交渉を有利に進められるでしょう。

 

7) 経営コンサルタント

経営コンサルタントとして仕事をするには、簿記の知識が必要です。

クライアントにアドバイスをするには、まず財務諸表から経営状態を判断することが大切なためです。

財務諸表には、会社の強みや経営課題など、さまざまな情報が詰まっています。

現状を把握せずにアドバイスをしても、机上の空論となり、経営状態は上向かないでしょう。

経営コンサルタントにおいて唯一の国家資格である「中小企業診断士」では、1次試験の財務・会計と、2次試験の事例Ⅳで簿記の知識が求められます。

簿記2級程度の知識があれば合格レベルに達するため、中小企業診断士の取得にも役立ちます。

★簿記のおすすめ通信講座
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。

・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング

詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。

 

2. 簿記3級はあまり仕事に活かせない?

簿記3級はあまり仕事に活かせない?

簿記3級は、他の人と比べて優位性が少なく、実践で使える分析力が身に付かない資格です。

ここでは、「簿記3級は仕事に活かせるのか」について解説します。

 

1) 優位性が少ない

簿記3級の知識は重要ですが、他の人と比べて優位性は少ないです。

経理部や税理士事務所で働く場合、簿記2級を取得している人が多く、簿記3級では見劣りしてしまうためです。

例えば、経理部が求人募集をすると、多くの簿記2級の取得者が応募します。

その中で勝負する必要があるため、簿記3級を取得していても有利にはならないでしょう。

簿記の知識を身に付けたいだけであれば、3級はとても有意義です。

しかし、簿記や会計の業界でメリットを得たいのであれば、簿記2級を取得するのがおすすめです。

 

2) 分析力が十分に身に付かない

簿記3級に合格しただけでは、分析力が十分に身に付かず、仕事で活かしきれません。

簿記の分析力が必要な業界である銀行や法人営業・コンサルタントなどは、簿記3級の知識があれば最低限の分析が可能です。

しかし、簿記3級の学習範囲では連結決算や工業簿記をカバーできないため、分析できない企業も多くあります。

簿記2級では連結決算や工業簿記を学習するため、子会社を持っている大企業や製造業の分析もできるようになります。

また、業務上の分析だけでなく、プライベートでも分析力を活用可能です。

簿記の分析力は、株式投資にも役立つためです。

長期投資をする場合は、四季報などで会社の業績を確認して、安全性を確かめる必要があります。

簿記2級の分析力があれば、業績の細かなところまで把握でき、有望な企業を発見できるでしょう。

(分析力を身につけたいならビジネス会計検定もおすすめです。「ビジネス会計検定と簿記検定の共通点、相違点は?」)

 

3) 即戦力になれない

簿記3級を取得すると基礎は身に付きますが、即戦力となれるレベルではありません。

簿記3級は、経理部や税理士事務所で働く際に必要な知識の、前提となる部分しか学べないためです。

簿記3級を取得していても実務経験がなければ、即戦力とはみなされず、一から育てる必要があると判断されます。

経理部などの求人に応募する場合、アピールポイントとして通用する簿記2級を取得するのがおすすめです。

 

3. 簿記1級は難易度が格段に上がる?

簿記1級は長時間の学習が必要であり、簡単に手を出してはいけない資格です。

ここでは、簿記1級の難易度について解説します。

 

1) 長期間の学習が必要

簿記1級を取得するには1,000時間前後の学習が必要です。

多くの受験生は社会人なので、仕事終わりに毎日2時間勉強すると500日かかる計算です。

疲れ切ってやる気が出ない日や、病気の日もあるため、実際はもっと日数が必要でしょう。

簿記2級を取得するには250時間前後の学習が必要だといわれています。

毎日2時間学習すると、125日で取得できる計算です。

簡単な資格ではありませんが、簿記1級と比べると格段に取得しやすいです。

簿記1級を取得しようと考えているのであれば、1年以上の学習を継続できるか検討してください。

 

2) 学習内容が専門的過ぎる

簿記1級は、先ほど挙げた職種のすべてで活かせるわけではありません。

学習内容が専門的すぎて、必要以上の知識を身に付けてしまうためです。

経理部や税理士事務所で働くのであれば、簿記1級の知識は役に立ちます。

しかし、法人営業では簿記1級のような深い知識までは必要なく、過剰な能力となってしまうでしょう。

例えば、簿記1級では「資産除去債務の調整」や「固定資産の減損」など、マニアックな問題が出題されます。

法人営業ではまったく必要ない知識であり、活用するのは難しいです。

簿記1級を受験するのであれば、「自分の仕事に必要な知識か」を考えてください。

 

3) コストパフォーマンスが高くない

簿記1級のコストパフォーマンスは、低いといわれています。

取得難易度の割に、以下のようにメリットが少ないためです。

・使わない知識が多い
・知名度が低い
・挫折する人が多い
・独占業務がない

簿記1級は、簿記のスペシャリストと呼ばれるほどの知識を取得できます。

しかし、知名度の低さから、同難易度の資格と比べると評価が低いです。

コストパフォーマンスを重視するのであれば、難易度とメリットのバランスが良い簿記2級がおすすめです。

(参考「簿記1級は意味ないと言われる4つの理由」)

 

4. 簿記2級を取得するメリット

簿記2級は仕事に活かせる以外にも、さまざまなメリットがあります。

ここでは、簿記2級を取得するメリットを解説します。

 

1) ステップアップできる

簿記2級を取得すると、その先の選択肢が大幅に広がります。

例えば、そのまま簿記1級に挑戦したり、税理士や公認会計士を受験したりする人も多いです。

簿記の科目がある中小企業診断士の取得を目指すのもいいでしょう。

経理部で働いている場合は、ファイナンシャルプランナー2級を取得すると、税金や生命保険の知識がついてオールラウンダーになれます。

簿記2級と組み合わせることで仕事の幅が広がる資格も多いので、相乗効果を期待できる資格を選んでください。

 

2) 起業時に役立つ

起業時に簿記の知識があると、事業をスムーズに運営できます。

一般的に起業時は社員が少なく、経営者が自ら経理作業をするケースが多いです。

立ち上げたばかりの本業で忙しい中、簿記の学習をしながら経理をおこなうのは、時間的に難しいでしょう。

簿記2級を取得していれば、起業したばかりの会社の経理は簡単に処理できます。

スムーズに経理作業をおこない、浮いた時間は本業に打ち込めます。

また、会社が成長して経理部ができたり、税理士に任せるようになったりしても、経営者は自社の数字を把握することが大切です。

簿記の知識があると、数字に詳しい経営者として合理的な経営ができます。

 

3) 年収が上がる

簿記2級を取得している人は、無資格の人よりも年収が上がる傾向にあります。

簿記に関する知識が認められて、昇給や転職をしやすいためです。

また、資格手当として5,000円~10,000円ほどを毎月支給する企業も多いです。

派遣社員で働いていた人が、簿記2級の取得をきっかけに正社員に登用された例もあります。

簿記2級を取得すれば、さまざまなシーンで評価されて、年収が上がりやすくなるでしょう。

(簿記2級のメリットについては「簿記を勉強するメリットとは?3級より2級がおすすめ?」も合わせてご確認ください。)

 

4) 進学に有利になる

簿記2級を取得していると、多くの大学の入試で有利になります。

具体的には、以下の大学で応募時や選考時に加点が与えられます。

・福島大学
・滋賀大学
・大阪公立大学
・大分大学
・札幌大学
・明治大学
・専修大学

上記以外にも、簿記2級取得者を優遇している大学は多くあります。

また、優遇措置を公表していなくても、推薦の面接時に、しっかりと勉強してきたことを証明して、アピールできるでしょう。

 

5. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

簿記2級は、経理部や税理士事務所で働く際に活かせる資格です。

簿記に直接関わる仕事でなくても、財務諸表の分析力を活かして銀行や法人営業で活躍できます。

また、簿記2級を取得すると仕事以外にも、他の資格取得へのステップアップや、年収も上がりやすくなります。

簿記2級を取得して、あなたの人生の幅を広げてみませんか?

 

6. まとめ

Point! ◆簿記2級はさまざまな仕事で活かせる資格。
◆簿記3級では即戦力になるのは難しい。
◆簿記2級は他資格へのステップアップや起業時に有利になるメリットもある。

簿記の通信講座おすすめ5選 >>