起業して経営者になるのに中小企業診断士の資格は役立つ?

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商品の販促はどうしたらいいの?
資金は全部でどれだけかかるの?
税金や法律は誰に聞いたらいいの?

これらはすべて、起業する人がよく抱く不安です。

「起業したいが経営の知識がなくて不安」という人は多く、知識の習得方法として中小企業診断士の資格を検討する人もおられます。

中小企業診断士は経営の専門家であるため、資格があった方が良いのは間違いありませんが、起業前に取得するほどの必要性はあるでしょうか?

今回は、起業するにあたって中小企業診断士の知識はあった方が良いのか?をテーマに解説します。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・中小企業診断士講座の元運営責任者
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 起業に診断士の資格は不要?

起業に診断士の資格は不要?

まずは、起業時の診断士資格の必要性についてまとめます。

 

1) 基本的には不要

中小企業診断士には独占業務が認められていないため、起業にあたってこの資格が必要になる仕事はありません。

コンサル以外での起業となると、さらに必要性は低下するでしょう。

ちなみに、中小企業診断協会が実施した「中小企業診断士活動状況アンケート調査(令和2年11月)」における職業調査を見ると、「コンサル以外の業種で独立した人」が含まれていると思われるセグメントの割合はわずか5%です。

(中小企業診断士の職業)
・コンサルタントとして独立46%
・企業勤務48.7%
その他5% ←ここ
・無回答0.2%

アンケートの特徴もあるので一概に結論は出せませんが、このアンケート結果を見る限りでは、コンサル業以外での起業となると、必要性を感じている人はかなり少ないと見ることができます。

全く不要というわけではありませんが、少なくとも起業プランが具体的になりつつあるフェーズでは、資格取得を考えるのではなく、起業の準備に全力を傾けるべきです。

 

2) 資格が役立つこともある?

前項でも述べた通り、起業にあたって診断士資格は不要です。

しかし、全く意味がないのかといえばそんなことはなく、診断士資格があれば、起業時に有利に立ち回ることができます。

例えば、起業する際には市場の調査、製品やサービスの供給体制の構築、資金の確保など、性格の異なるさまざまなハードルが待ち構えています。

知識がなければ行き当たりばったりになってしまうところですが、中小企業診断士の勉強をしておけば、その知識が羅針盤となり、無駄な動きをしなくてすみます。

起業したての頃の時間のロスは大きな負担となるため、目的に応じた動き方ができるかどうかは大変重要になってきます。

 

3) 取得タイミングはよく見極める

あれば役立つ診断士資格ですが、取得するタイミングは良く考えなくてはいけません。

この資格は取得するだけで、1,000時間程度の勉強時間が必要と言われています。(「中小企業診断士の勉強時間は1,000時間?半年合格は無理?」)

1,000時間というと、毎日3時間ずつ勉強したとしても1年かかりますし、普通は数年かかります。

さらに2次試験に合格した後は、一定期間、実務研修を受ける必要があります。

起業までにそれだけの時間的な余裕があるのかどうか、よく検討する必要があります。

具体的な起業プランもまだ定まってない状態で、なおかつ試験勉強に費やせる時間があるのであれば、中小企業診断士の勉強をすることは、むしろおすすめです。

★おすすめ通信講座
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。

・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト

詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。

 

2. 起業・経営に診断士資格が役立つ理由

起業・経営に診断士が役立つ理由

ここでは、診断士資格を取得することで、起業やその後の経営にどのように役立つのかを解説します。

 

1) 資金確保に役立つ

診断士資格があれば、資金調達にその知識を活かすことができます。

例えば、開業資金の融資を受けたい場合や、補助金を申請したい場合は、事業計画書を作成しなければなりません。

当然ですが、事業計画書は適当に作って何とかなるものではなく、内容に整合性があり、資金の必要性が認められなければ審査には通りません。

中小企業診断士の中には補助金申請をメインの業務にしている人もいるくらいですから、この分野の専門知識も豊富です。

中小企業診断士の知識は、多いに役立つはずです。

 

2) 人脈が得られる

中小企業診断士は、人脈が広がりやすい資格として有名です。

独占業務が認められていないため、人脈と仕事量が比例する傾向にあるからです。

また、この資格は業務範囲が幅広く、専門分野・得意分野を持たなければ差別化ができません。

「自分の専門はこれですよ」という分野を作っておき、それ以外のことは他の診断士や専門家と連携を取ることで、お互い「頼り・頼られ」の関係を築くことができます。

人脈の起点となるのは、以下のような場で知り合った人たちです。

・試験合格後の実務講習
・地域の診断士協会
・オンラインサロン
・企業内診断士会
・公的業務
・異業種交流会

このような場で人とのつながりを作っておけば、やがてはそのつながりが起点となって、新たな人脈が広がっていきます。

「人脈は金脈」という言葉があるように、起業して成功するには、人脈形成は欠かせない要素です。

その点において、中小企業診断士は人脈を作りやすいという大きなメリットがあります。

 

3) 事業運営の基礎知識が得られる

中小企業診断士の勉強をしておけば、事業を運営していく上で必要となる基礎知識を学ぶことができます。

例えば、1次試験に合格するためには、以下の7科目を勉強しなくてはなりません。

①経済学・経済政策
②財務・会計
③企業経営理論
④運営管理
⑤経営法務
⑥経営情報システム
⑦中小企業経営・中小企業政策

起業する業種によっては不要な知識も出てきますが、企業経営を失敗させないための要点はどの業種でも同じであり、7科目の勉強をするうちにそれらの要点を学ぶことができます。

例えば、「企業経営理論」のマーケティング、「中小企業経営・政策」の補助金、「財務・会計」の資金調達や会計、税務、「運営管理」の販売管理や生産管理などは、業種を問わず重要な経営知識であり、知っているかいないかで結果に大きな差が生まれることもあります。

もちろん、これらの知識を知らなくても、売上が好調なら事業は軌道に乗りますが、実際にはそうはならないケースの方が大半です。

経営には知識があれば避けられるリスクもあるため、ないよりはあった方が良いのは間違いありません。

(1次試験については「中小企業診断士:1次試験の科目合格戦略メリット・デメリット」も合わせてご確認ください。)

 

4) 信用を得やすい

診断士資格を持っていれば、ビジネスパーソンとしての信用を得やすくなります。

企業の経営層や金融機関に勤めている人の多くは、中小企業診断士がどれだけ難しい資格かをわかっています。

合格率は5%〜8%程度で、膨大な勉強を何年もしてなお、合格できずに断念する人が大勢いる資格です。

その資格を取得しているとなれば、高いハードルに挑戦し続ける根気と、それを乗り越える能力を持っている証明となります。

仕事の取引をするのに問題がないか、融資先としてふさわしいか、といったことを検討する際に、診断士資格は加点材料となることでしょう。

 

5) リスクヘッジができる

診断士資格を持っていれば、起業が失敗した際のリスクヘッジにもなります。

起業にはさまざまなリスクが伴います。

特に倒産のリスクは企業規模が小さいほど高く、2021年を例に取ると、全倒産のうち70%以上が負債1億円未満の小規模倒産です(東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」より)。

会社が倒産すれば経営者も一から就職活動、ということになりますが、診断士資格があれば、中小企業診断士として再び独立開業することもできます。

しかも、起業から倒産まで経験した、かなり特殊な診断士です。

既述の通り、診断士資格を取得した人の多くは、コンサルタントとして独立するか、企業内診断士として会社員の地位に留まるかの2パターンがほとんどであり、その割合は9割を超えます。

つまり、多くの診断士は、コンサル以外の業種での起業や経営経験はありません。

ましてや倒産まで経験しているとなると、これは大きなアドバンテージになりえます。

コンサルを受ける経営者の立場で考えてみると、経営の教科書に載っているような定番理論だけでなく、診断士自身が経験した経営や倒産にまつわるエピソードなども交えて話してくれた方が、より腹に落ちやすいのではないでしょうか。

ただし、注意点もあります。

先の東京商工リサーチの調査によれば、企業が倒産する際は、経営者自身も自己破産するケースが過半数を占め、パーセンテージは68%(2020年度)にもなります(東京商工リサーチ「破産会社の7割で、社長個人も破産へ」より)。

つまり、「起業の失敗=自己破産」というリスクを想定しておく必要があるのですが、中小企業診断士は、自己破産をすると登録を取り消され、復権まで資格を取り直すこともできなくなります。

診断士資格を万一の備えにするためには、最悪でも自己破産は免れるようにしておく必要があります。

 

6) 自信がつく

診断士資格の取得は、自信につながります。

通常、起業前には、ほとんどの人が言い知れない不安感と戦うことになります。

中小企業庁が行った調査「日本の起業環境及び潜在的起業家に関する実態調査」によると、起業家が感じる不安には以下のようなものがあります。

・収入、生活の不安定化
・事業の成否
・借金返済
・健康と気力
・自分の能力

起業は、自分にとって未知の世界を開拓することと同じですから、どう転ぶかわからない未来に対し、不安を抱えるのは当たり前のことです。

しかし、診断士資格があれば、それらの不安はかなり軽減されます。

なぜなら、企業経営全体を俯瞰するスキルが身についているからです。

俯瞰力があれば、事業の問題点をいち早く見つけることができますし、問題にどう対処すべきかといった引き出しも試験勉強を通して備わっているはずです。

これらは圧倒的な量の知識に裏付けされたスキルですから、起業する際の大きな自信になるはずです。

 

3. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

企業経営にあたって中小企業診断士の資格は無くても問題ありませんが、あれば全体を俯瞰して見れるようになります。

俯瞰できれば現実に即した戦略を立てることができ、問題が起きた場合も早い段階で対処が可能です。

取得しておけばそれが事業にプラスに働くだけでなく、失敗した場合のリスクヘッジにもなります。

取得は簡単ではありませんが、年単位で時間を確保できるのであれば、チャレンジしてみることをおすすめします。

 

4. まとめ

Point! ◆診断士資格が無くても起業はできる。
◆診断士資格があれば有利に立ち回れる。
◆勉強時間がしっかり確保できるなら取得がおすすめ。

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