中小企業診断士:1次試験の科目合格戦略メリット・デメリット

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中小企業診断士は、最終合格率が3%~7%程度という難関資格です。

1次試験(7科目)と2次試験(4科目+口述)があり、共に全体の平均点が60点以上で、なおかつ40点未満の科目がないこと、というのが合格の基準になります。

また、1次試験には科目合格制度という特徴的な制度が、平成18年より導入されています。

この制度は全体での合否判定の他に、科目ごとの合否判定も行うというもので、税理士試験などでも導入されています。

取り組み方次第で有利にも不利にもなる制度ですので、その内容とメリット・デメリット、活用する上での注意点などを本記事で解説していきます。

監修者の情報
・前職で中小企業診断士講座を運営
・公認会計士
・監査法人➡経理に出向➡ベンチャー➡自営業

 

 

1. 科目合格制度とは?

科目合格制度とは?

中小企業診断士試験の科目合格制度とは、1次試験が不合格だった人を対象に、それぞれの科目で基準点以上の得点をした人に対し、その科目についての合格資格を与えるという制度です。

基準点は満点の60%で、有効期間は「受験した年を含めて3年間」。

つまり、3年のうちに1次試験の7科目すべてに合格すれば、OKという制度です。

例えば、全体の点数では不合格であっても、「財務・会計」が基準点となる60%以上の点を得ていたのなら、「財務・会計」は科目合格となります。

有効期間は合格年を含めて3年間ですから、翌年と翌々年は試験を受けなくても合格扱いでカウントしてもらえます。

なお、科目合格したら必ず免除扱いになるわけではなく、申請が必要です。

また、得意科目であれば点数稼ぎのために、あえて免除申請せずに受験するパターンもあります。

 

【科目免除の通常パターン例】

合格した翌年と翌々年を免除申請して合格扱いにする。

令和5年 科目合格
令和6年 受験免除
令和7年 受験免除

 

【科目免除の変則パターン例】

科目合格した翌年もあえて受験したが失敗。

翌々年は令和5年の合格を使って免除申請。

令和5年 科目合格
令和6年 免除申請せずに受験
結果不合格
令和7年 受験免除
(令和5年分が有効)

 

ちなみに1次試験に合格すると、それまでの科目合格の実績はリセットされます。

つまり、もしその後の2次試験で不合格が確定し、1次試験から受け直すことになった場合は、またゼロから受験しなくてはなりません。

 

2. 科目合格戦略のメリット

科目合格戦略のメリット

ここでは、科目合格狙いで1次試験に臨む場合の、メリットを3つご紹介します。

 

1) 特定の科目に集中できる

科目合格は3年間有効ですから、「段階的に科目合格を積み上げていく」という戦略を取ることができます。

例えば、1年目は「経済学・経済政策」「経営法務」「中小企業経営・中小企業政策」、2年目は「財務・会計」「企業経営理論」、3年目は「運営管理」「経営情報システム」、という風に、1年ごとに強化科目を決めて取り組めます。

もしくは、得意科目をより強化して不得手な科目をカバーしたり、逆に苦手な科目を集中的に勉強して底上げを狙ったりと、全体をまんべんなく勉強するよりも、濃淡をつけた取り組み方ができるのです。

1年で7科目全部に合格しようと思うと、昼も夜も勉強漬けになってしまいます。

しかし、年ごとに狙いの科目を絞り、2年や3年計画で勉強するのであれば、多少は時間的にも精神的にも余裕ができ、ライフスタイルに合わせた勉強が可能となってきます。

つまり、ストレスを少なくして、集中的に取り組むことができるのです。

 

2) 難化リスクを避けられる

中小企業診断士の1次試験は7科目あり、公表されている科目ごとの受験者数と合格者数から、合格率を計算することができます。

 

【科目別直近5年間の合格率】

《経済学・経済政策》

平成30年 26.4%
令和元年 25.8%
令和2年 23.5%
令和3年 21.1%
令和4年 10.5%

 

《財務・会計》

平成30年 7.3%
令和元年 16.3%
令和2年 10.8%
令和3年 22.4%
令和4年 13.3%

 

《企業経営理論》

平成30年 7.1%
令和元年 10.8%
令和2年 19.4%
令和3年 34.7%
令和4年 17.3%

 

《運営管理》

平成30年 25.8%
令和元年 22.8%
令和2年 9.4%
令和3年 18.5%
令和4年 16.1%

 

《経営法務》

平成30年 5.1%
令和元年 10.1%
令和2年 12.0%
令和3年 12.8%
令和4年 26.9%

 

《経営情報システム》

平成30年 22.9%
令和元年 26.6%
令和2年 28.1%
令和3年 10.6%
令和4年 18.5%

 

《中小企業経営・中小企業政策》

平成30年 23.0%
令和元年 5.6%
令和2年 16.4%
令和3年 7.1%
令和4年 10.9%

 

科目別の合格率推移をみたらわかるように、科目により、あるいは年度によって、その難易度には差があります。

例えば令和3年の財務・会計は、令和2年の合格率が10.8%に対し、令和3年では22.4%に大きく伸びています。

一般的に、合格率が上がった科目は翌年に難しくなると言われていますから、令和3年で財務・会計が科目合格となった人は、令和4年は免除申請して難化リスクを回避する、という選択肢を取ることができます。

もし財務・会計が不得意科目だった人が、令和3年に科目合格できたのなら、令和4年は科目免除することで、存分に科目合格制度の恩恵を受けることができます。

 

3) 一気にお金をかけずに済む

科目合格制度が導入される前は、一発で7科目すべてに合格しなければなりませんでした。

当然、勉強にかかる費用も7科目分発生し、もし合格できなければ、翌年もまた7科目分の受験対策を取らなければなりません。

しかし科目合格制度が導入された現在は、複数年かけて個別に科目合格を狙うことができます。

毎年7科目分の、テキストや問題集を買う必要はありません。

 

3. 科目合格戦略のデメリット

科目合格戦略のデメリット

メリットがあれば、デメリットもあります。

ここでは、科目合格戦略のデメリットについて、順に3つ解説していきます。

 

1) どのみち2次試験用に勉強が必要

例えば、昨年の1次試験で「運営管理」が科目合格となり、今年の「運営管理」は免除申請したとします。

この場合「運営管理」については1次試験を受けなくていいので、勉強しなくてもいいのかというと、実はそんなことはありません。

なぜなら「運営管理」の知識は、2次試験でも高確率で必要となってくるからです。

つまり免除申請してもしなくても、2次試験用に勉強をしなくてはならないということです。

2次試験との関連性は、科目によって違います。

財務・会計」「運営管理」「経営情報システム」「企業経営理論」の4科目については、2次試験の内容と関連性が特に深いため、科目免除しても2次試験用に勉強しておく必要があります。

 

2) 得意科目を捨てるリスク

科目合格できるのは、その科目で「満点の60%以上」を取れた場合です。

客観的に考えて、満点の60%以上を取れるということは、得意科目である可能性が少なからずあります。

試験において得意科目とは、得点を稼いで全体の平均点を上げる武器でもあります。

その科目を免除するということは、得点を稼げる武器を放棄するということです。

その結果、それほど得意ではない科目ばかりで、60%以上の得点を目指さなければならない状況になってしまいます。

これはそれなりに高リスクです。

 

3) 複数年は心身ともにきつい

大人になってからの試験勉強は、負担も相応に大きくなります。

仕事や家事、育児。

それらと両立させながら、最終合格率が数パーセントという、難関資格に挑まなければなりません。

モチベーションを維持し続ける工夫、趣味や遊びを我慢する忍耐力、ストレスとうまく付き合う柔軟さ、こういったものをコントロールしながら、苦手科目を勉強し続けるのはきついものです。

2年、3年と続ける覚悟が必要になってきます。

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4. 注意点

科目合格制度の注意点

科目合格を積み上げて1次試験を突破するには、注意しておくべきことが2つあります。

 

1) 科目ごとの難易度を把握する

科目別合格率のところで見た通り、1次試験の科目の中には、比較的合格率が高い科目と、毎年のように合格率が低い科目があります。

特に合格率が低い科目については、「二次試験との関連性」が、科目免除すべきか否かの判断材料になってきます。

 

① 合格率が低い科目その1:経営法務

「経営法務」は、起業から倒産までの幅広い知識が問われる科目で、勉強の方向性としては”暗記型”に分類されます。

科目合格率が10%前後と、中小企業診断士試験の中では最も難易度が高い科目ですが、内容的には二次試験との関連性がほぼない科目です。

そのため、もし科目合格できたなら、基本的に免除を検討すべき科目になります。

 

② 合格率が低い科目その2:中小企業経営・中小企業政策

「中小企業経営・中小企業政策」は、中小企業白書からの出題が大半を占めています。

毎年数値が変動するので一から覚え直す必要があり、それが難易度を上げる要因となっています。

ただ、この科目も二次試験にはそれほど関連しておらず、科目合格できたなら免除を検討すべき科目といえます。

 

③ 合格率が低い科目その3:企業経営理論

「企業経営理論」は、中小企業診断士の業務にも深く関わる科目です。

難易度は近年下がっていますが、過去に似たような推移で急に難しくなったこともあり、油断は禁物です。

また、この科目は二次試験にも深く関わってくるため、科目合格しても免除せずに、知識をブラッシュアップし続ける必要があります。

 

④ 合格率が低い科目その4:運営管理

「運営管理」は、現場経験の有無で難易度が変わってきます。

合格率はおおむね20%前後で推移していますが、時々3%や9%という風に、強烈に難易度が上がる年があります。

二次試験との関連性も深いため、免除せずに二次試験対策として、勉強し続けるのが得策です。

 

2) 得意科目か見極めて科目免除する

前述の通り、科目の難易度で科目免除の申請判断をすることも大事ですが、合格した科目が得意科目かどうかも大事な判断材料になります。

というのも先に述べた通り、得意科目は全体の平均点を底上げする、武器になりうるからです。

安定的に高得点が出せるのであれば、免除ではなく毎回受験した方が得策です。

しかし、残すかどうかの判断がとても難しく、見極めを誤れば底上げどころか足を引っ張る結果にもなりかねません。

そこで、得意科目かどうかを見極める判断材料を、ご紹介します。

 

① 絶対的な自信が持てるかどうか

「なんとなくとっつきやすい」「勉強するのは初めてだけど模試で高得点が出た」といった理由では、得意科目とするには不十分です。

資格の勉強で得た知識というのは、何年も勉強したものでなければ、絶対的に得意とは言い切れません。

特に、膨大かつ最新の知識が問われる「経営法務」や「中小企業経営・中小企業政策」は、問いの切り口が少し変わっただけで「得意」が「まずい!」に早変わりしてしまいます。

「この科目はどんな問題がきても大丈夫」と思えるだけの自信が持てるか、自問自答してみる必要があります。

 

② 日常的に扱っている内容なら安心

一方で、本業で日常的に扱っている内容であれば、それは安心してよいでしょう。

例えば、銀行員にとっての財務会計、法務部勤務者にとっての経営法務、ITエンジニアにとっての経営情報システムなどです。

こういう場合は科目免除せずに残して、平均点の底上げを狙えば武器になります。

 

5. 終わりに

多くの人にとって、3年間も合格実績が持ち越せる科目合格制度は、試験に取り組みやすくなる制度だと感じるのではないでしょうか?

しかし、闇雲に科目免除を利用していると、苦手科目ばかりが残ってしまい、得意科目での平均点の底上げができません。

合格に近づくと思った科目合格制度が、実は合格を遠ざけてしまう、といったことが十分考えられるのです。

科目合格狙いで1次試験を突破していくには、「直近の科目別合格率の推移や難易度」「本当に得点源となるくらいに得意科目なのか」「2次試験の出題範囲と被ってないか」といったことについて見極めが必要です。

合格した科目を翌年以降免除するか否かは、慎重に検討しましょう。

 

6. まとめ

Point! ◆科目合格制度は科目の合格実績を3年間持ち越せる制度。
◆合格した科目は翌年免除しても良いし再受験してもよい。
◆2年目以降は不合格科目のみに集中することも可能。
◆得意科目を免除した場合は平均点の底上げができないリスクがある。
◆2次試験で知識が必要となる科目は勉強し続ける必要がある。
◆科目免除は「難易度動向」「得意不得意」「二次試験との関連性」で検討する。
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