企業内診断士のメリット・デメリット

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中小企業診断士は一般的な知名度は低いものの、企業勤めのビジネスパーソンにはとても人気のある資格です。

100人受験して合格者は7人~8人という難関国家資格ですが、会社勤めをしながらでも取得が可能ということもあり、会社員を中心に受験者数、合格者数ともに増加傾向にあります。

合格者のうち、独立することなく企業にとどまっている人は「企業内診断士」と呼ばれ、現在は中小企業診断士全体の約半数を占めています。

会社員としての立場を維持しながらの活動にはメリットもありますが、注意しておきたいデメリットもいくつかあります。

そこで今回は、企業内診断士になることのメリット、デメリットについて、まとめていきたいと思います。

 

 

1. 企業内診断士とは?

企業内診断士とは?

企業内診断士とは、中小企業診断士として登録されていながら、会社勤めをしている人のことを指します。

会社員であることが企業内診断士かどうかを判断するポイントになりますが、業界団体である中小企業診断協会によると、会社勤めであってもコンサルティング会社に勤務している社員は、企業内診断士にはカウントされません。

あくまで本業がコンサルティング以外の会社や団体に勤務している人が対象となります。

 

1) 約半数が企業内診断士

税理士、社会保険労務士、行政書士など、難関といわれる国家資格の場合、合格者は独立開業するケースが少なくありませんが、中小企業診断士の場合は独立志向の人が多いとはいえません。

むしろ最初から企業内にとどまることを前提にした受験者が多く、スキルアップ目的で資格取得を目指す人が大勢います。

 

2) 企業内診断士は「埋もれた資産」

中小企業診断士は企業経営に関して広範な知識を有しているにもかかわらず、企業では自社に在籍する診断士の把握すらしていないケースも多く、企業経営における「埋もれた資産」と揶揄されることもあります。

しかし、国が進める中小企業支援策を強力に推進していくためには、企業内診断士の活用が不可欠であり、今後ますます活躍の場が増えると予想されています。

 

2. 企業内診断士のメリット

企業内診断士のメリット

まずは、企業内診断士のメリットからみていきます。

経済的な側面を筆頭に、企業内診断士にはいくつかのメリットがあります。

 

1) 会社に対する理解が深い

企業内診断士のメリットの1つ目は「会社に対する理解が深い」ことです。

試験勉強で身につけた知識やスキルは勤務先の業務に大いに活かすことができますが、特にメリットが大きいのが、勤務先と顧問契約を結んでコンサルを行なうケースです。

コンサルの実務はなかなか教科書通りには進まないものです。

しっかり分析して提案したつもりでも、相手からは

「非現実的」
「机上の空論」
「押しつけがましい」

といった反応が返ってくることもあります。

こういった反応のベースには「実務経験もないのに何がわかるのか」といった感情があり、診断士としては、そこをクリアするところから始めなければコンサルは上手くいきません。

しかし、自社に対するコンサルであれば、現状を踏まえたうえでの一歩先の提案をすることができます。

また、なじみがないであろうコンサルの専門用語も、お互いの共通語を使いながら、かみ砕いて説明することもできます。

社員としての実務経験をベースに改善案を考えることができるので、自社の強みや弱み、社内の空気感などもしっかり把握したうえでの施策を提案できるのです。

勤務先ゆえに、成果に対する甘えが出やすい点は注意しなければなりませんが、相手と同じ目線に立ちやすいのは、大きなメリットだと言えます。

 

2) リスクを抑えながら活動できる

企業内診断士のメリットの2つ目は「リスクを抑えながら活動できる」ことです。

診断士試験に合格した後も独立をしない人が多いのは、仕事を安定して確保できるかわからないからです。

実際、中小企業診断協会が令和3年に発表したアンケート結果では、独立する意思がないと答えた企業内診断士の多くが

「受注機会が確保できない」
「収入が安定しない」
「収入が低下する」

といった理由を挙げています。

中小企業診断士は、経営層相手にコンサルティングという、無形の価値を売る商売です。

製品のように事前に価値判断をすることができないので、「コンサルさせてください」と営業をかけても、おいそれとは契約してくれません。

何かコネでもあれば別ですが、そうでない人にとって、独立はとてつもなくリスキーに感じることでしょう。

しかし、企業内診断士であれば、収入を確保しながら診断士としての経験を積むことができ、経済的リスクはほぼ皆無です。

単価の安い、雑用に毛の生えた程度の仕事ばかりをこなしたとしても、あるいはまったく仕事がなかったとしても、経済面での不安はありません。

小さな仕事をこまめに拾って力を蓄えつつ、コンサル系の大きな仕事を受注する機会をうかがう、という立ち回りも可能になってきます。

 

3) 人脈を利用できる

企業内診断士のメリットの3つ目は、「人脈を利用できる」ことです。

中小企業診断士は、診断士同士の「横のつながり」ができやすい資格として有名です。

実際、中小企業診断協会が「資格の取得前の期待値」と「取得後の満足度」をアンケート調査したところ、「人脈形成」で期待値以上の満足感が得られたという結果が出ています。

これは、診断協会や先輩診断士たちが、人脈形成をしやすい環境を作っていることが、大きな要因として挙げられるでしょう。

各都道府県にある診断協会では、所属の中小企業診断士に向けた様々な情報提供を行うほか、有志による研究会や勉強会などが立ち上げられています。

診断協会に入ることで、中小企業診断士として活動するための環境整備ができ、研究会や勉強会に所属すれば、専門性を磨くこともできます。

また、多くの診断協会には企業内診断士のコミュニティがあり、本業を持つ者同士の情報共有が可能です。

このように、中小企業診断士にはその気になれば、横のつながりを一気に増やせる環境があるので、そこを起点として新たな人脈が形成されることも少なくありません。

自身の経験を基に人脈を広げていけば、必然的に本業に活かせる情報に触れることになりますし、情報が集まる過程では、業界内での人脈はより強固なものになっていくでしょう。

 

4) 出世につながりやすい

企業内診断士のメリットの4つ目は、「出世につながりやすい」ことです。

中小企業診断士の試験に合格しているということは、企業経営に関する勉強を一通り網羅しているということなので、将来、会社員としてどんなポジションについたとしても「全く知識がない」という分野はなくなっているはずです。

また、自社で抱える諸問題についても、中小企業診断士としての知識とスキルがあれば、改善策を考えることもできるでしょう。

さらに、診断協会を通じて人脈が形成されていけば、自社だけでなく地域産業や、業界内の情勢についての情報に触れる機会も増えていきます。

どんな業務でもこなせる下地が備わっている上に、社内の個別の問題に対して全体を俯瞰しながら改善するアイデアを持っている、さらに人脈を通じて社外の様々な情報も引っ張ってこれるということになれば、これはもう会社のリーダー層に入る資質を十二分に備えていると評価されても、不思議ではありません。

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・診断士ゼミナール
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3. 企業内診断士のデメリット

企業内診断士のデメリット

企業内診断士には多くのメリットがある反面、無視できないデメリットもあります。

 

1) 社内政治がめんどくさい

企業内診断士のデメリットの1つ目は、「社内政治がめんどくさい」ことです。

企業内診断士として勤務先で活動をする場合、会社の実情に合わせた具体的な提案ができる反面、その実行には様々な段取りや根回しが必要になる場合があります。

改善案を実行するために説得するのは、経営層だけではありません。

担当部署の長や現場の従業員、場合によっては銀行や取引先の理解が必要になることもあります。

企業内診断士は自社の従業員という側面もあるため、大なり小なりしがらみがありますから、それぞれの立場から出される意見に振り回される可能性もあります。

一社員としての立場と権限の範囲内で利害関係を調整するには、想像以上に時間も労力もかかると思っておいた方が良いでしょう。

 

2) 資格の認知度が高くない

企業内診断士のデメリットの2つ目は、「認知度が高くない」ことです。

難関の国家資格であればどんな資格もそれなりに認知されているものですが、中小企業診断士の場合、社会的な認知度はさほど高くありません。

知らない資格は評価されませんから、社内で診断士資格を活かした活動をしようと思ってもなかなか相手にしてもらえない、というケースがあります。

特に人的資源の乏しい中小企業、それも地方企業の場合、中小企業診断士という資格を知っている人がかなり少数です。

独立診断士のように経営層にどんどんプレゼンできるポジションにいるならともかく、実務従事ポイントの獲得にも四苦八苦している状況だとしたら、診断士としてのスキルを社内で発揮する環境整備に時間がかかるかもしれません。

その点、大企業は既に何人もの企業内診断士がコミュニティを作って活動しているケースが珍しくなく、先輩診断士が作った環境に入るだけで、スキルを磨くチャンスに恵まれています。

 

3) 片手間になってしまう

企業内診断士のデメリットの3つめは「片手間になってしまう」ことです。

中小企業診断士という資格は、資格取得後が本当の勝負です。

資格の更新には実務経験が必須なので「資格さえ取ったら後はなんとかなる」というわけにはいきません。

とにかく実務経験を積むことが、何より重要なのです。

ところが、企業内診断士の場合は本業を抱えているので、時間的な制約がある中で活動していかなくてはなりません。

会社から求められる社員としての働きと、自分が目指す診断士としての活動、この2つのバランスを取るには、受験勉強時と同様に、時間のやりくりが必要になってきます。

また、独立診断士なら1日で終わる仕事が、企業内診断士だと2日3日以上かかるわけですから、根気も必要です。

企業内診断士の立場で経営者相手のコンサルティングを行うようになるには、相当の実力を蓄える必要があります。

 

4) ただ働きになる可能性がある

企業内診断士のデメリットの4つ目は「ただ働きになる可能性がある」ことです。

本業がある状態で中小企業診断士としての業務を有償で行えば、それは副業に該当します。

もし、勤務先の企業が副業を禁止している場合は就業規則違反になるので、診断士業務は無償、つまりただ働きにせざるを得ません。

自社に対してコンサルを行う場合も、副業が禁止されている会社なら、報酬は支払われないことが条件となってきます。

コロナ渦や厚労省の副業容認を促すガイドラインの影響もあり、副業を全面禁止する企業は減ってきてはいますが、それでも2021年時点で約半分の企業が副業や兼業を禁止しています(リクルートキャリアの調査による)。

こうした状況に対しては

「会社に直談判して許可をもらう」
「NPO法人を立ち上げて法人名義で報酬を受け取る」

といった方法がネット上では紹介されていますが、いずれも一長一短があります。

中小企業診断士は更新費用もかかってくるので、会社の副業解禁が待たれるところです。

 

4. 終わりに

以上、企業内診断士について、メリットやデメリットをまとめました。

やはり、企業内診断士は経済的なメリットが大きい分、スキルアップの面で時間的なデメリットを許容する必要が出てきます。

資格取得のためにプライベートな時間を割いて勉強をしてきた人の中には、同じような生活が続くことに抵抗感が出てしまう人もいるでしょう。

ここを乗り切るにはやはり仲間の存在が不可欠で、診断士仲間がいれば、会うたびに気持ちも新たにできますし、知見を吸収することもできます。

各地の診断協会は、そういった仲間づくりの場としても最適ですから、ただ入会するだけでなく、研究会や勉強会などへの参加も積極的に検討することをおすすめします。

 

5. まとめ

Point! ◆企業内診断士とは会社勤めをしている診断士のことである。
◆自社コンサルをする場合は社内事情に合わせた提案ができる。
◆経済的なリスクを回避しながら経験を積むことができる。
◆中小企業診断士としての人脈を本業に活用できる。
◆出世できる可能性が広がる。
◆社内のしがらみに振り回される可能性がある。
◆認知度が低い資格なのでコンサル時に社内の協力が得られにくいケースもある。
◆本業との掛け持ちになるので片手間になりやすい。
◆勤務先が副業禁止の場合はタダ働きになるリスクがある。
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