中小企業診断士の勉強時間は1,000時間?半年合格は無理?

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税理士:6,000時間
社労士:1,000時間
行政書士:700時間
宅建士:300時間

上記は、資格取得のために必要とされる勉強時間です。

中小企業診断士の場合は1,000時間と言われていますが、どのくらいの期間をかけて1,000時間勉強するのか、どういった勉強法を取るのかによって、結果は大きく変わってきます。

今回は中小企業診断士試験への取り組みについて、勉強時間の配分や科目ごとの考え方、半年程度の短期での合格の可能性などについて、まとめていきます。

【監修者の情報】
・公認会計士のマツタロウ
・中小企業診断士講座の元運営責任者
・大手監査法人→経理部に出向
 →教育×ITベンチャー→自営業

 

 

1. 中小企業診断士試験の勉強時間

中小企業診断士試験の勉強時間

1) 試験概要

(試験概要について既に理解されている人は、「2)1,000時間が一つの目安」にお進みください。)

中小企業診断士の資格試験には1次試験と2次試験があり、2次試験はさらに筆記試験と口述試験とに分かれます。

 

① 1次試験(マークシート)

・試験時期:8月

・合格発表:9月

・試験科目:「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」

 

② 2次試験(記述+口述)

・筆記試験:11月

・筆記合格発表:翌年1月

・口述試験:翌年1月

・最終合格発表:翌年2月

・筆記試験科目:「事例 I(組織・人事)」「事例 II(マーケティング)」「事例III(生産・管理)」「事例 IV(財務・会計)」

 

③ 合格基準について

1次試験、2次試験とも6割以上の得点、かつ1科目も4割未満でないこと、となっています。

なお、1次試験のみ科目ごとに合否を判定する「科目合格制度」があります。

6割以上の得点で科目合格となり、翌年と翌々年の2年間、事前申請により受験免除してもらえます。

(科目合格制度については、「中小企業診断士:1次試験の科目合格戦略メリット・デメリット」も合わせてご確認ください。)

 

④ 実務補習・実務従事について

2次試験合格者は、3年以内に実務補習・実務従事を完了しないと、中小企業診断士として登録されません。

実務従事が可能な仕事に就いている人は15日間の実務従事、実務従事ができない人は15日間の実務補修を受講する必要があります。

 

2) 1,000時間が一つの目安

どんな資格にも、勉強し始めてから取得するまでの、平均的な時間があります。

中小企業診断士の場合は、1,000時間が一つの目安となります。

多くの合格実績を持つ資格予備校や通信講座も、1,000時間前後の勉強時間を掲げています。

 

《有名予備校が示す勉強時間目安》

TAC 1,000時間
スタディング 1,000時間
LEC 800~1,000時間
クレアール 1,000~1,500時間
フォーサイト 1,000時間
アガルート 800~1,000時間

 

① 1次試験の勉強時間

全体の勉強時間がわかったら、次は科目ごとに勉強時間の目安を把握しておきましょう。

1次試験科目には、「1次試験のみ出題される科目」と、「2次試験でも深く関連してくる科目」があります。

当然、2次試験との関連性が深い科目には、多めの勉強時間を確保します。

さらに、2次試験との関連はなくても難易度が高い(科目合格率が低い)科目にも、多めの勉強時間を割り振ります。

 

《1次試験勉強時間の目安》

経済学・経済政策 150~200時間
財務・会計 200時間
企業経営理論 150~200時間
運営管理 130~150時間
経営情報システム 70~100時間
経営法務 70~100時間
中小企業経営・政策 50~100時間

 

Ⅰ. 経済学・経済政策

「経済学・経済政策」の科目合格率は、25%前後です。

1次試験のみで2次試験にはあまり関係してきません。

しかし出題範囲は広く、また暗記力よりも理解力がものを言う科目です。

勉強時間は多めに確保し、基本的な知識の蓄積を図りつつ、過去問を中心とした頻出問題対策を、しっかりとおさえておく必要があります。

 

Ⅱ. 財務・会計

「財務・会計」は、中小企業診断士試験の中で最重要の科目です。

科目合格率は6%台~20%台で、年によるばらつきが大きい傾向があります。

出題範囲が広範で、なおかつ2次試験の問題にもしっかりと出題されます。

初学者の場合、特に一番時間をかけるべき科目であり、最初のうちは内容が理解できるまで、何度も繰り返し基礎を学習する必要があります。

 

Ⅲ. 企業経営理論

多くの中小企業診断士講座で、最初に教えるのがこの企業経営理論です。

重要科目の一つで、科目合格率は15%前後となっています。

こちらも1次・2次の両方で出題されるため、最初から2次試験を意識した勉強が必要になってきますが、得点を取るための勉強法はある程度確立されており、テキストと過去問の反復学習で克服が可能です。

 

Ⅳ. 運営管理

運営管理も重要科目です。

科目合格率は20%前後ですが、たまに10%以下に難易度が上がることもある、要注意科目でもあります。

2次試験でも出題されるため、2次試験を意識した学習が必須です。

基本的には暗記科目に分類されるため、やればやるだけ得点は伸びていく傾向があります。

 

Ⅴ. 経営情報システム

IT系の知識が問われる科目です。

こちらも暗記科目であり、科目合格率は20%台後半で推移しています。

2次試験との関連は多少あるものの、あまり深追いせず、効率的な勉強を心がけることが重要です。

 

Ⅵ. 経営法務

こちらは2次試験とはほぼ関連がなく、1次試験のみになります。

暗記科目に分類されますが、科目合格率は10%前後と最難関レベルの難しさです。

難易度が高いのは、暗記対象が難解な法律用語を含む条文だからです。

独特の言い回しがとっつきにくいうえに、内容の理解もすんなりとはいかないため、多くの人が苦戦を強いられています。

ただし頻出論点はある程度限られており、力を入れるべきところとそうでないところが、はっきりとしています。

 

Ⅶ. 中小企業経営・政策

基本的にあまり難しい科目とはされておらず、勉強方法も暗記中心であるため、試験前の数か月間で腰を据えて取り組むのが有効です。

2次試験にもほぼ関連がありません。

中小企業白書や小規模事業白書などからの出題となります。

 

② 2次試験の勉強時間

事例Ⅰ(組織・人事) 50時間
事例Ⅱ(マーケティング) 50時間
事例Ⅲ(生産・管理) 50時間
事例Ⅳ(財務・会計) 100時間

2次試験では、事例Ⅰ~事例Ⅳの4科目を、記述式で解答していくことになります。

知識としては、1次試験対策で勉強した内容を使うことになりますが、設問の事例に対して適切に知識を使っていかないと、的外れな解答として扱われ点数がもらえません。

例えば、事例Ⅰで聞かれるのは組織・人事の側面からみた改善方法なのに、マーケティングの知識を使って解答しても点数には結びつきません。

また、事例Ⅳは財務・会計分野の知識を使うことになり、計算問題も入ってきます。

勉強量がそのまま点数に結び付きやすい科目といえますので、多くの受験生は事例Ⅳに一番多くの時間をかけて対策を行います。

2次試験の勉強方法としては過去問をどんどんこなし、出題パターンや解答パターンに慣れることが最重要です。

また、記述式であるため、採点者に主張が伝わりやすい文章で解答することも、重要なポイントになってきます。

文章表現に自信のない方は、過去問で解いた自分の解答を、家族に読んでもらうなどの対策も有効です。

 

③ 合格体験談の500~2,000時間の個人差

中小企業診断士試験に合格した人達の体験談を見ると、勉強時間に関してはとても大きな個人差があることがわかります。

「500時間で合格できた」という人もいれば、「2,000時間以上勉強してようやく合格」という人もいるのが実情です。

実に3倍4倍もの個人差があるわけですが、これは受験する人の経験とスキル、そして独学か否かという点が、勉強時間に大きく影響を与えるためです。

例えば、勤務先で経理や財務を長年担当してきた人であれば、「財務・会計」の勉強にそれほど時間を割く必要はないかもしれません。

管理職や会社全体のマネジメントをする立場の人であれば、「企業経営理論」で学ぶ知識の何割かを、実務で習得できている可能性があります。

また、中小企業診断士の関連資格を取得している場合も基礎知識が身についていますから、他の人と比べてより少ない勉強時間での合格が目指せます。

 

《中小企業診断士の関連資格》

試験科目 関連資格
経済学・
経済政策
ERE(経済学検定試験)
財務・会計 日商簿記検定2級
ビジネス会計検定2級
経営学検定中級:経営財務
企業経営理論 経営学検定中級
運営管理 販売士検定2級
経営法務 ビジネス実務法務検定2級
経営情報
システム
ITパスポート
中小企業経営
中小企業政策

(関連資格の詳細については、「中小企業診断士試験の関連資格7選」をご確認ください。)

 

では全くの初学者の場合は、どうでしょうか?

実は初学者であっても、1,000時間で合格することは、不可能ではありません。

しかしその場合、勉強する環境は慎重に選ぶ必要があります。

独学でチャレンジする人も大勢いますが、広範多岐にわたる試験科目を初学者がうまく強弱をつけながら勉強し、1,000時間程度で合格するのは至難の業です。

確かに最近はSNSやオンラインサロンなど、独学であっても数多の情報を入手できる環境が整っていますが、大切なのは巡り合った情報の取捨選択です。

自分が最短で合格するために、どの情報が有益なのかを見極められないと右往左往してしまい、2,000時間かけても合格は難しいかもしれません。

短期合格を目指すのであれば、通信講座や資格予備校などのスクールで学ぶことをおすすめします。

 

3) 半年合格は可能?

中小企業診断士になるための勉強時間を1,000時間とした場合、「どのくらいの期間をかけて1,000時間勉強するのか」といったことも重要です。

例えば、勉強期間を1年として考えると、1,000時間÷365日=2.7時間。

つまり、毎日2時間40~50分ずつ勉強していけば、1年で合格にたどり着ける可能性が出てきます。

勤務をしながら毎日3時間近くも勉強に充て続けるのは少し厳しいかもしれませんが、平日2時間、土日で5時間といったように勉強時間の工夫をすれば十分可能です。

(2時間×平日5日)+(5時間×土日2日)=20時間
20時間×年間52週=1,040時間

では「半年で1,000時間」はどうでしょうか?

半年を182日として、1,000時間を確保するとなると、1,000時間÷182日=5.5時間。

つまり、毎日5時間30分ずつ勉強することになります。

平日と土日の強弱をつけたとしても、「平日4時間・土日10時間」、あるいは「平日3時間・土日12時間30分」ということになります。

不可能ではありませんが、働きながらとなると、多くの人にとっては少し現実離れした話ではないでしょうか。

しかも1,000時間というのは、ただやればよいというわけではありません。

科目ごとに強弱をつけつつ、理解度も確認しながら、知識をため込む必要があります。

そういった点を考慮すると、初学者が半年で合格するのは、難しいと言わざるを得ません。

前項で挙げたように、「中小企業診断士の関連資格を複数持っている」とか、「実務で試験科目の関連分野に携わっている」とかでなければ、半年合格は厳しいでしょう。

そもそも、初学者に半年合格を目指すことはおすすめしません。

無理に半年合格を狙うと、計画も勉強も中途半端に終わってしまう可能性が少なくないからです。

結果的に、半年どころか何年もの時間を使うことにもなりかねません。

そのため、できるだけ「1年以上で無理のない勉強期間」を設定することをおすすめします。

★おすすめ通信講座
中小企業診断士講座の元運営責任者が、以下の7つの通信講座のコストパフォーマンスを比較して、おすすめ2つのメリット・デメリットについて解説してみました。

・TAC
・スタディング
・診断士ゼミナール
・クレアール
・LEC
・アガルート
・フォーサイト

詳細は「中小企業診断士の通信講座おすすめ2選!元講座運営者が比較します」をご確認ください。

 

2. 勉強時間短縮のコツ

勉強時間短縮のコツ

1,000時間の勉強で合格を勝ち取るためには、無駄に右往左往する時間を潰して、効率的に勉強することが重要です。

それには濃密な学習を継続していく環境作りが不可欠ですが、最初のうちは「急がば回れ」の精神も必要になってきます。

 

1) まずは無理のない計画を立てる

試験勉強を継続していくためには、全体を俯瞰して具体的な計画に落とし込んでいく作業が不可欠ではあります。

しかし、あまりに細かな計画にしてしまうのも考え物です。

例えば、試験日から逆算して「今日はここからここまで」といった風に日々の勉強計画を綿密に立ててしまうと、計画通りに進まなかった場合にいちいち計画の見直しをする羽目になり、余計な時間をとられてしまいます。

しかも、その時点から間に合わせようとするので、さらに無理な計画を立てる、という負のループに陥りかねません。

まずは大まかな計画で構わないので、無理のない計画を立てていくことが大切です。

 

2) 勉強習慣を確立する

無理なく勉強を継続するために絶対に欠かせないのが、習慣化です。

一般に、習慣化するにはいくつかの方法が知られています。

「目的をより具体的にしたうえで宣誓する」「生活の中のルーティンにしてしまう」「進捗状況を可視化する」「第三者と進捗を共有する」などが有名ですが、その一歩前の段階では「確実にこなせる勉強時間から始める」ということがとても大事です。

中小企業診断士の勉強は普通に生活してきた人にとっては、とっつきにくい内容が少なくありません。

初学の方はおそらく最初何日間も「”何がわからないのか”すらわからない」という状態で勉強を進めていくことになります。

当然、そのような状態で日に2時間3時間勉強をしても定着しませんし、理解が追い付かなければ勉強がただの作業になり、挫折しやすくなります。

そうならないために、最初はあえて勉強時間を少なく設定することをおすすめします。

「1,000時間で合格するためには効率的に勉強することが重要」などといっておきながら「勉強は少しずつ」というのは一見矛盾していますが、まずは日々の生活の中で当たり前のように勉強をする「クセ付け」が必要です。

少しずつ理解が伴う範囲で勉強を進め、勉強習慣が確立してきたら、徐々に時間を増やしていきましょう。

 

3) 通信講座の利用

試験勉強をするには、主に3つのアプローチがあります。

独学、通学、通信の3つです。

どれでも合格は目指せますが、より短い勉強時間で合格を目指すとなれば、独学以外の2つが選択肢となってきます。

とりわけ、昨今は通信講座が一番メリットの大きい選択肢といえます。

以下にそのメリットをピックアップしてみましょう。

 

① スキマ時間を活用した勉強ができる

動画による学習がウリの通信講座は、学ぶ場所を選びません。

スマホ一台あれば、講義動画から過去問までカバーすることができますから、通勤時間や休憩時など、ちょっとした空き時間も勉強に充てることができて、時間短縮につながります。

 

② 通学しなくてもよい

通学講座だと、実際に授業を受けるために教室まで通う必要がありますが、教室に通うことにそこまでのメリットがあるかといえば微妙なところです。

通信講座の場合、そういった時間はすべて学習に充てることもできます。

 

③ 最新の情勢に合わせたテキスト

これは通学講座も同じことですが、中小企業診断士試験のプロが最新のテキストを用意したうえで、それに合わせた講義が展開されます。

科目別に近年の難易度なども考慮された上での講座が展開されますので、独学では決してマネのできない濃密な学習が可能です。

 

④ 分からないところは繰り返し学習できる

通学講義の場合、自分の理解が今一つでも、講師はどんどん授業を進めてしまいます。

しかし動画の講義であれば、繰り返し視聴できます。

2度、3度視聴したり、日をおいて視聴したりして、理解を深めることが可能です。

 

⑤ 学習サポートも充実している

昔の通信講座では、テキストと演習問題一式を最初に送って、後は質問票でやり取りするのみ、ということも珍しくありませんでした。

しかし最近では、講師にオンラインで質問できたり、添削指導してもらったりと、学習サポートが充実している講座も多くなってきています。

 

⑥ 通学講座と比べると費用が安い

校舎の維持費用や講師の人件費などが常時発生している通学講座と比べると、通信講座は比較的固定費を抑えた運営が可能です。

そのため、その分受講費用も安く抑えられています。

 

4) 完璧を目指さない

試験勉強をする際に、ついつい陥りがちなのが完璧主義です。

分からないこと、理解できないことがあった場合に、そこにばかり時間を取られてしまい、全体の勉強の足を引っ張ってしまいます。

中には中小企業診断士の資格を取得するために、簿記検定や情報処理技術者試験の勉強を始める人までいます。

そうした努力が無駄になるわけではありませんが、中小企業診断士の資格を取ることが目的であるなら、少し遠回りになってしまうかもしれません。

現在の中小企業診断士の試験は、1次も2次も6割を得点すれば合格です。

逆に言えば「4割間違っても合格できる試験」だということです。

勉強していて躓いたところを理解しようと努力するのは当然としても、固執するのは良くありません。

大切なのは満点を狙うことではなく、合格点をとりにいく姿勢です。

「テキストのすべてを理解できなくても全く問題ない」というくらいの心構えが必要です。

 

3. 終わりに

いかがでしたでしょうか?

中小企業診断士になるには1,000時間の勉強が必要とはいうものの、実際のところは関連業務の経験や関連資格の有無など、受験する人の過去の経歴によって大きな差が出てきます。

とはいえ、いまさら過去の経験を変えることはできません。

これから中小企業診断士の資格取得を目指すのであれば、勉強をより濃密な内容にすべく環境整備をしたうえで、1,000時間の学習を積み上げていくべきです。

自分にはどんな学習環境が必要かを、ぜひ意識してみてください。

 

4. まとめ

Point! ◆試験合格に必要な勉強時間の目安は1,000時間。
◆合格までの期間は経歴によって個人差がある。
◆初学者が半年で合格するのは難しい。
◆最初のうちは勉強習慣の確立を意識する。
◆1,000時間での合格を目指すなら通信講座が最善。
◆満点ではなく6割合格を意識する。

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