「自分の目的を達成するためには、公認会計士を目指すしかない!」
そう思い込んでいませんでしょうか?
実は私も受験生時代、そう思っていました。
先に断っておくと、公認会計士しかないと思い込むことは、合格を勝ち取るためには必要なことです。
また、公認会計士という資格は、非常に魅力的な資格です。
(公認会計士の魅力については、「公認会計士は魅力的な仕事ではないと言われる5つの理由」をご参照ください。)
ただ、本記事ではあえて、「その目的・理由で公認会計士を目指すのであれば、他の道もあるのではないか?」という点について、お伝えしたいと思います。
公認会計士以外の他の選択肢についても理解しておくことで、自分の将来のキャリアプランが広がりますので、この機会にしっかり頭に入れておいてください。
1. 何か専門分野を持ちたい
もし公認会計士を目指す理由が「何か専門分野を持ちたい」であるならば、少し待ってください。
確かに自分の専門分野を持つことで、ビジネスの世界で活躍することができ、また、公認会計士になることで、会計・財務面について自分の専門分野を持つことができます。
しかし、必ずしも長い勉強時間をかけて公認会計士を目指さなくても、その他にも自分の専門分野を持てる職業はたくさんあります。
例えば、以下のような職種の場合、それぞれに固有のスキルを実務の中で学んでいくことができ、自分の専門領域を持つことができます。
・デザイナー
・マーケター
・動画編集
これらの職種の場合は、段階的にスキルを積み上げることができます。
一方で、公認会計士の場合は、まず公認会計士試験を受験する必要があり、試験である以上、合格 or 不合格の2パターンしかなく、段階的にスキルを積み上げていけるものではありません。
しかも、合格するまでには数千時間の勉強時間が必要となります。
ちなみに、「公認会計士試験の勉強時間は3,000時間?私は3倍必要でした」で紹介している通り、私の場合は9,000時間の勉強時間が必要となりました。
そのため、先に紹介したような、手に職を持つことができ、かつ、段階的にスキルを積み上げていくことのできる職種を選択するのも、1つの道です。
各職種の大まかな内容や特徴については、以下をご参照ください。
1) エンジニア
ITシステムやAIの需要拡大により、今では手に職をつける職種の花形と言えるのが、エンジニアです。
低額でプログラミングの基礎を学べるサービスがいくつも出ており、誰でも気軽に基礎スキルを身に付けることができます。
ただ、それがゆえに、基礎を身に付けただけではエンジニアとして差別化要素がなく、安く買いたたかれる可能性もあるため、注意が必要です。
また、いくつもあるプログラミング言語のうち、流行りの言語は毎年変化するため、時代の変化に合わせて最新の言語を学び続ける必要があり、努力は欠かせません。
2) デザイナー
一口にデザイナーと言っても、例えば、以下のような種類があります。
・Webデザイナー
・グラフィックデザイナー
・CGデザイナー
・ファッションデザイナー
・ゲームデザイナー
・インテリアデザイナー
・イラストレータ
このうち、近年需要が高まっているのがWebデザイナーです。
多くの企業はWeb上のページで集客を行っており、デザインの違い1つが売上に大きな影響を与えるため、Webデザイナーが重宝されております。
3) マーケター
デザイナー同様に、Webマーケター領域は近年需要が高まっています。
Webサイトの分析&修正、SEOやWeb上の広告、アフィリエイトやSNSマーケティングなど、最新のマーケティング施策についてアンテナをはり、日々取り組んでいく必要がある職種となります。
4) 動画編集
Youtubeなどの動画配信サービスの台頭により、動画編集の需要も拡大しています。
単純なテロップを追加する程度の作業から始まり、背景や部分的な画像の処理、音響の調整など、細かい作業の積み上げが要求される職種となります。
以上より、「何か専門分野を持ちたい」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
2. 起業したい
もし公認会計士を目指す理由が「起業したい」であるならば、少し待ってください。
確かに公認会計士になれば、若い年次で社長やそれなりの役職の方と話す機会があり、経営に触れるチャンスがあります。
また、会計・財務数値面から会社のビジネスを理解することができ、起業の際に役立つスキルを身に付けることができるとも言えます。
ただ、もし起業することを決意しているのであれば、公認会計士を経由せずに、すぐに起業してしまうのも1つの道です。
起業のために必要なスキルというのは、究極的には実際に起業してみないと身に付きません。
さらに言えば、起業には気力と体力が必要であり、また失敗する可能性もあるため、背負うものが少ない、できるだけ若い時の方が望ましいです。
そのため、わざわざ何千時間も勉強して公認会計士になってから、起業する必要はありません。
もちろん、将来起業したいけど、いざという時のリスクヘッジとして何か資格がほしいと思い、公認会計士を目指すのも1つの考えです。
いずれにしろ大切となるのは、公認会計士という資格や起業は「手段」であって「目的」ではありませんので、あなたが本当にやりたいことは何なのかをまず明確にして、その目的にあった手段を選択することです。
以上より、「起業したい」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
3. CFOになりたい
もし公認会計士を目指す理由が「CFOになりたい」であるならば、少し待ってください。
確かに公認会計士の中には、CFOになっている人が一定数います。
ただ逆に、CFOになるためには、必ずしも公認会計士である必要はありません。
そもそも論ですが、CFOとは「最高財務責任者」のことを指し、会計・財務戦略を立案して執行する立場の人を指します。
よくCFOは経理・財務のトップであり、経理・財務のエキスパートと思っている人がいますが、CFOに求められるのは経理や財務の知識だけではありません。
「営業」「マーケティング」「システム」「管理全般」など、幅広い知識をもとに、会計・財務戦略を練り、それを経営戦略に盛り込むスキルが求められます。
そのため、CFOになりたいのであれば、まずは営業やマーケティングで働いて、その後経理に転職するというのも1つの道です。
また、経理実務の中でCFOとなるために必要な知識を得ることに専念し、その傍ら営業やマーケティングなどの勉強をすることも考えられます。
CFOとしてマストな会計知識は、経理実務の中で学んでいく必要があります。
さらに、小規模なベンチャー企業に行き、複数の業務を経験しておくことも1つの方法です。
あるいは、公認会計士の勉強をする時間があるのであれば、例えば簿記1級を勉強して会計面の知識を磨くことも考えられます。
簿記1級であれば、公認会計士試験の数分の一の勉強時間で合格できます。
(簿記1級については「簿記1級は無駄?勉強時間や合格率を踏まえて徹底解説!」をご参照ください。)
いずれにしろ、公認会計士となることだけがCFOの道ではないので、自分に合った道を探してみましょう。
以上より、「CFOになりたい」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
4. 稼ぎたい
もし公認会計士を目指す理由が「稼ぎたい」であるならば、少し待ってください。
確かに公認会計士は、資格さえとれば、ある程度安定的に稼ぐことができます。
あくまで一例ですが、監査法人で働く際は、以下のような給与テーブルが想定されます。
⇒年収600万円
・シニアスタッフ(4~8年目)
⇒年収800万円
・マネージャー(8~12年目)
⇒年収1,100万円
・シニアマネージャー(12~20年目)
⇒年収1,300万円
・パートナー(20年目~)
⇒年収1,500万円~
*営業力次第で数千万円
(公認会計士の年収については、「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は○○○万円でした!」も合わせてご確認ください。)
ただ、「稼ぎたい」の程度にもよりますが、稼ぎたいと思っている人の中には、勉強時間も加味すると、このくらいの給料では物足りないと思う人もいるかもしれません。
そんな人は、以下の2つも視野に入れてみてください。
1) 外資系投資銀行
高給取りの定番と言えば、外資系投資銀行のフロントです。
フロントとはこの場合、トレーダーや営業などのことを指します。
外資系投資銀行のフロントであれば、20代にして数千万円という人もめずらしくありません。
ただ、注意していただきたいのは、首を切られるのもフロントからの方が多いという点です。
監査法人時代に外資系投資銀行を担当しており、また、外資系投資銀行に出向していたのですが、その際にフロントの人のハイリスク・ハイリターンの光景を目の当たりにしてきました。
リターンも大きいですがリスクも大きく、また、そもそも就職・転職するのが難しいので、あくまで候補の1つとして検討してみてください。
2) 弁護士
会計士と同様に、試験に合格する必要はありますが、会計士以上に稼げる可能性があるのが弁護士です。
弁護士は飽和状態にあると言われており、確かに個人事務所や小さな事務所に所属する場合は、必ずしも稼げるとは限りません。
一方で、大手の法律事務所に勤務できれば、大手監査法人の1.5倍以上の給料を稼げる可能性があります。
特に弁護士の場合は、抱える案件の金額に応じて報酬が青天井に大きくなるため、稼いでいる人の報酬は会計士の比ではありません。
以上より、「稼ぎたい」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
5. 学生時代を無駄にしたくない
もし公認会計士を目指す理由が「学生時代を無駄にしたくない」であるならば、少し待ってください。
確かに、学生時代を無駄に過ごさないためにも、勉学にあてるというのはとても立派なことです。
私自身も学生時代は、公認会計士試験の勉強に専念しており、そのこと自体に後悔はありません。
ただ、学生時代を無駄にしたくないのであれば、他にも以下のような選択肢があります。
1) 海外留学
社会人になると、まとまって数か月、あるいは数年休むといったことは、基本的にできません。
つまり、海外留学できる機会は、学生の特権です。
ビジネスのグローバル化に伴い、海外での経験は武器というよりは、だんだん必須になってくると思われます。
また、留学に向けて語学の勉強をすることとなり、結果として語学習得にもつながります。
学生時代の海外留学で得られるものは、計り知れません。
2) サークル活動
大学のサークル活動は楽しいけど、キャリアにとっては無駄と思っている人も多いかと思います。
確かに短期的には、時間を無駄に潰してしまうだけの可能性もあります。
ただ、サークル活動を通じて人脈を作っておけば、長期的にはあなたのキャリアに活きてくるかもしれません。
特に30代あたりから、大学時代の知り合いが各社のそれなりの役職に就き始めると、その効果を実感できます。
3) インターン
どうせ卒業したら働くのであれば、大学生のうちからインターンをしておくことに意味はないのでは?と思われるかもしれません。
ただ、インターンを利用して、自分の気になる会社の内情を事前に知ることは、将来のキャリアにとって決してマイナスではありません。
また、インターンでビジネススキルを身に付けることで、社会人1年目から同期に差をつけることもできます。
1年目でできた差は、後々縮めようと思っても、縮まらないことが多いです。
以上より、「学生時代を無駄にしたくない」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
6. 何か資格がほしい
もし公認会計士を目指す理由が「何か資格がほしい」であるならば、少し待ってください。
あまりそんな人はいないかもしれませんが、何か資格が欲しくて、たまたま目に入った公認会計士を目指してみようと思っているのであれば、とりあえず別の資格を受験することをおすすめします。
同じ会計系のより簡単な資格を受験することで、会計の適性があるかどうか判断することができ、もし適正がありそうれであれば、改めて公認会計士試験を目指してみてください。
会計系の入門資格としては、以下の2つがおすすめです。
1) 簿記
会計資格と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、簿記ではないでしょうか?
簿記検定では、財務諸表を「作成」するスキルを磨くことができ、ビジネスの構造を理解するのに役立ちます。
また、公認会計試験の会計学の中にも簿記があるため、簿記を勉強することは、公認会計士試験にもつながります。
詳細につきましては、「簿記取得は公認会計士試験には意味がない?メリット・デメリットとは??」をご確認ください。
2) ビジネス会計検定
財務諸表を「分析」するスキルを磨き、企業の状態を診断するのに役立つのが、ビジネス会計検定となります。
収益性・安全性・成長性といった側面から企業の財務諸表を分析して、どこに問題があるのか明らかにしていきます。
また、公認会計試験の管理会計論・経営学で勉強する範囲もあり、ビジネス会計検定を勉強することで、公認会計試験に役立つ側面もあります。
詳細につきましては、「ビジネス会計検定から公認会計士・uscpaへのステップアップ!?」をご参照ください。
以上より、「何か資格がほしい」という理由で公認会計士を目指すのなら、一度他の道も検討してみるべきと言えます。
7. 終わりに
公認会計士を目指す理由次第では、他の道も検討した方が良いのではないか?といった内容でお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
公認会計士試験は長丁場であり、なかなか途中で引き返せません。
そのため、他の選択肢もしっかりと考慮してから、受験の可否を判断してください。
8. まとめ
◆起業したい。⇒遠回りせず起業してみるのは?
◆CFOになりたい。⇒実務から学んでみるのは?
◆稼ぎたい。⇒外銀や弁護士はどう?
◆学生時代を有意義に過ごしたい。⇒留学はどう?
◆何か資格がほしい。⇒簿記はどう?