簿記3級の勉強を開始する際に考えることの一つに、「簿記3級は独学で合格可能なのか?」があります。
予備校に通いながら合格する人、自宅やカフェで通信制の講座を利用して合格する人、独学で合格する人など、人それぞれの合格パターンがあります。
ただ、できれば費用的に一番お得である独学で合格したいと、皆様思われているのではないでしょうか?
そこで今回は、簿記3級は独学で合格可能な理由や、独学で合格するためのポイントについてお伝えしていきます。
独学を考えている人は本記事を読むことで、自信をもって独学で勉強を進めることができるようになります。
1. 簿記3級の概要
1) 試験日程
簿記3級の試験は年3回(6月・11月・2月)実施され、試験時間は1時間となります。
ネット試験も開催されており、随時受験が可能となります。
日程の詳細については「簿記の試験日・日程は?3級と2級で異なる??」をご参照ください。
2) 難易度
簿記3級の合格率は40%前後となります。
ただ、記念受験などの層もいるため、しっかりと勉強すれば実質的には60%程度は合格できる試験となります。
詳細については「簿記の難易度・真の合格率とは?他資格と徹底比較!」をご確認ください。
3) 出題形式
簿記3級の出題形式は、以下の通りとなっております。
・第2問(20点):帳簿記入/穴埋め理論問題
・第3問(35点):決算整理後試算表・財務諸表作成
2. 独学での合格は可能?
簿記3級の独学での合格は可能です。
その理由を以下に3つ解説していきます。
1) 合格率が高い
1つ目の簿記3級が独学で合格可能な理由としては、「合格率が高い」ことが挙げられます。
独学で一番問題となるのが「本当に合格できるのか?」といった点です。
この点、簿記3級の場合は前述のように、実質的には6割程度が合格できる試験となっておりますので、十分独学で合格が可能と言えます。
10回受ければ6回は合格できる試験と考えれば、独学で十分対応可能な範囲です。
逆に、合格率が10%程度の公認会計士試験などであれば、独学での合格は難しく、予備校に通う必要があります。
以上より、「合格率が高い」ことは、簿記3級が独学で合格可能な理由と言えます。
2) 市販の教材が豊富
2つ目の簿記3級が独学で合格可能な理由としては、「市販の教材が豊富」なことが挙げられます。
独学で勉強するのが限りなく難しい試験とは、市販の教材がほとんど出回っていない試験です。
公認会計士試験などがまさにこれにあたり、市販の教材はほとんど出版されておらず、各予備校の講座についている教材を使用することとなります。
これに対して、簿記3級の場合は数ある資格試験の中でも一番と言っていいほど、市販の教材が出版されております。
市販教材にも合う・合わないがあるため、種類が少なく自分に合わなかった場合は独学を断念することになりますが、簿記3級の市販教材の種類を考えれば、この点も心配ありません。
以上より、「市販の教材が豊富」なことは、簿記3級が独学で合格可能な理由と言えます。
簿記3級の市販教材はなぜ多いのでしょうか?
いたってシンプルな答えなのですが、受験者数が多い、つまり利用する人が多いためです。
簿記3級は30万人程度が毎年受験しており、これは資格試験の中でも相当多い数字となります。
また、簿記3級の上位級である簿記2級も、年間18万人程度が受験する大きな試験であり、出版する側としては3級と2級である程度の売上が見込めるので、多くの種類が出版されていると言えます。
3) 満点をとる必要がない
3つ目の簿記3級が独学で合格可能な理由としては、「満点をとる必要がない」ことが挙げられます。
簿記3級は、100点満点のうち70点以上をとれれば合格となります。
近年の試験範囲の改正により、一部従来の簿記3級と比べると難易度の高い問題も出題されておりますが、その場合でも得点すべき問題をしっかりと得点すれば、70点以上をとれるようになっております。
満点、あるいは90点以上をとろうとした場合は、予備校の講義を聞いて、端から端まで論点をしっかり押さえる必要があります。
しかし、70点以上、つまり30点落としていいのであれば、皆が正解できるレベルの問題を一問も落とさないようにすればよく、独学でも十分合格が可能となります。
以上より、「満点をとる必要がない」ことは、簿記3級が独学で合格可能な理由と言えます。
「皆が正解できる問題」を把握するためには、どうすれば良いのでしょうか?
その答えは、一番多くの人が使用している教材や勉強方法を採用することです。
正確な数値はありませんが、各予備校ごとの簿記3級講座の受講者数に比べて、独学をする人の人数の方が圧倒的に多いと考えられます。
つまり、独学の人達が使用するであろう市販の教材を完璧にマスターすれば、「皆が正解できる問題」を学習したことになります。
独学は実は、一番多い母集団に属することができるといった点も、おすすめのポイントとなります。
3. 独学合格のポイント5選!
1) 苦手分野を作らない
1つ目の独学合格のポイントは、「苦手分野を作らない」ことです。
簿記3級は試験の性質上、得意分野を作ってそこで得点を稼ぐような試験ではありません。
つまり、苦手分野を作らずに、まんべんなく得点できるようにしておく必要があります。
例えば、伝票会計が苦手だからといって、勉強を後回しにして、結局苦手なまま本番を迎えた場合、第4問の8~10点をみすみす捨てることになり、実質90点満点の試験で70点以上をとる必要があります。
以上より、「苦手分野を作らない」ことは、独学合格のポイントと言えます。
気が重くなるような苦手分野から、まず取り組むことは大切です。
今既に気が重いということは、先延ばしにすればするほど、この先ずっとその気の重さを抱えながら他の作業をすることになります。
であれば、まず始めに苦手分野を片づけた方が、全体的なパフォーマンスは上がります。
まずは苦手分野から取りかかりましょう。
2) 簿記に興味を持つ
2つ目の独学合格のポイントは、「簿記に興味を持つ」ことです。
簿記だけを見ると、無味乾燥な勘定科目と数字の羅列に思え、やる気がなくなるかもしれません。
ただ、本来簿記はあらゆるビジネスの取引を勘定科目と数字で表したものであり、とてもおもしろいものです。
予備校の講義が人気な理由も、簿記を教える際に背景にあるビジネスについて説明しながら、講義を進めているためです。
例えば、自社の商品を掛取引で得意先に販売した場合、売掛金と売上の仕訳を切りますが、そもそもなぜ掛けなのか?現金ではだめなのか?といった点に興味を持つとおもしろいです。
また、自分が勤めている会社に当てはめて、そもそも自社が売っている商品とはどのようなもので、どんな相手にいくらで売っているのか?といった点も注目してみると良いかもしれません。
簿記に対して興味を持つきっかけとして、「簿記が面白いと思える5つのポイント!」も合わせてご一読ください。
以上より、「簿記に興味を持つ」ことは、独学合格のポイントと言えます。
簿記に興味を持つためには、実際に簿記の知識を使ってみるのが一番です。
例えば、株式投資をして投資対象企業の財務諸表を分析してみたり、経済ニュースを見て簿記の知識を利用して内容をかみ砕いてみたりすることが考えられます。
株式投資の力をさらに身に付けたいと思えば、簿記に加えて「ビジネス会計検定」の勉強をするのもおすすめです。(ビジネス会計検定については「決算書分析の資格と言えばビジネス会計検定!」をご確認ください。)
3) テキスト・問題集は1冊を使い切る
3つ目の独学合格のポイントは、「テキスト・問題集は1冊を使い切る」ことです。
隣の芝生は青く見えるではないですが、簿記3級の勉強を独学で進めていくうちに、必ず他の教材に目移りしそうになる時がきます。
予備校の場合は専門講師が太鼓判を押す教材を使用することができるため、教材に迷うことはありませんが、独学の場合はまだ勉強したことがない自分自身で教材を選択するため、自信を持つことができません。
そのため、「この教材で本当に合格できるんだろうか…」と不安になり、他の教材を検討し始めてしまいます。
ただ、何の試験でもそうですが、あれこれ手を出して全部が中途半端になってしまうよりは、1つのものを徹底的にやり込んだ方が成果は出やすいです。
市販されている大抵の教材であれば、簿記3級を合格するのに十分な内容となっておりますので、その教材を信じて勉強を進めてください。
以上より、「テキスト・問題集は1冊を使い切る」ことは、独学合格のポイントと言えます。
4) とりあえず一通り勉強してみる
4つ目の独学合格のポイントは、「とりあえず一通り勉強してみる」ことです。
予備校の場合は毎回とりあえず講義を消化していくことで、少しずつ前に進んでいきますが、独学の場合は自分のペースで進めていくため、途中で「このペースでいいのだろうか…」「前にやった内容を忘れそうだから戻ろうかな…」と不安になってしまいます。
ただ、例え50%程度の理解でも、とりあえず一通り最後までやり切ってください。
全体を一通りやることで、前にやった内容の理解が深まることもあります。
また、あまり理解できなかった内容でも、時間をおくことで無意識のうちに脳内で整理されて、理解が深まることもあります。
そのため、まずは最後まで教材を一通りやり切ることを目標に、頑張ってください。
特に、テキストの例題や問題集などのアウトプットは、一通り全てやり切ってください。
アウトプットを一通りやることで、自分が何を理解していないのかが明確になり、2回転目にやるべき内容が見えてきます。
以上より、「とりあえず一通り勉強してみる」ことは、独学合格のポイントと言えます。
5) 簿記2級を視野に入れて勉強する
5つ目の独学合格のポイントは、「簿記2級を視野に入れて勉強する」ことです。
目標の先により高い目標を設定することで、始めの目標が現実的な目標に見えてきます。
つまり、簿記3級合格の先に簿記2級合格という目標があることで、簿記3級の合格はあくまで通過点となります。
時間がある人は簿記2級の教材にも軽く目を通すことで、簿記3級の内容を簡単に感じることができます。
また、経理などの実務で使用することを考えても、簿記2級までの知識が必要となりますので、その意味でも簿記2級までの取得を目標とすることには意味があります。(参考:経理は簿記を持ってないとダメ!?)
以上より、「簿記2級を視野に入れて勉強する」ことは、独学合格のポイントと言えます。
4. 終わりに
簿記3級が独学で合格可能な理由や、独学合格のためのポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
簿記3級でつかんだ独学のコツは、その他の勉強や仕事にも応用できます。
この機会に一度、独学で簿記3級に挑戦してみてはいかがでしょうか?
5. まとめ
◆苦手分野を作らない、簿記自体に興味を持つといった独学のポイントを押さえる必要がある。