経理の人であれば、一度はUSCPA(米国公認会計士)に興味を持ったことがあるのではないでしょうか?
「でも難しそうだし、英語苦手だし、、」といった理由で諦めていく人が多いのも、USCPAの特徴です。
そこで今回は、経理の人がUSCPAを目指すことの、メリット・デメリットについて、それぞれ4つずつお伝えしていきます。
・本当に恐れるほどの難易度なのか?
・むしろ英語を学ぶ良い機会になるのではないか?
といった点についても解説しておりますので、ぜひご一読ください。
1. USCPA(米国公認会計士)とは?
2. 経理がUSCPAを目指す4つのメリット
1) キャリアプランの幅が広がる
2) 日本の公認会計士ほど難しくない
3) 英語を勉強するきっかけになる
4) 他の経理部員との差別化を図れる
3. 経理がUSCPAを目指す4つのデメリット
1) 日系企業だと評価されにくい
2) お金や時間を費やす必要がある
3) 日本の公認会計士と比べられる
4) 実務が疎かになりやすい
4. 終わりに
5. まとめ
1. USCPA(米国公認会計士)とは?
まずは、そもそもUSCPAとはどのような資格なのか?といった点について、解説していきます。
1) USCPAとは?
USCPA(U.S.Certified Public Accountant)とは、米国(アメリカ)の公認会計士資格のことを指します。
「US」となっているため、アメリカ国内でしか使えない資格と思われがちですが、以下の国とMRAという相互承認協定を結んでおり、国際的な公認会計士資格として位置づけられております。
・カナダ
・アイルランド
・ニュージーランド
・メキシコ
・香港
登録会員数は全世界で33万人以上となっており、各分野でUSCPAの資格が活用されております。
2) 試験概要
① 試験科目
試験科目 | 出題範囲 |
FAR (財務会計) | ・企業会計 ・政府と非営利組織会計 |
REG (諸法規) | ・連邦税法 ・ビジネス法 |
BEC (ビジネス環境及び諸概念) | ・コーポレートガバナンス ・経済学概論 ・IT概論 ・管理会計等 |
AUD (監査及び証明業務) | ・監査と証明業務 ・職業倫理 |
② 試験形式
CBT(Computer Based Testing)方式
*受験者ごとに出題内容が異なる。
③ 受験資格
州ごとに異なるが、概ね以下の通り。
・4年制大学卒。
・大学で「会計単位」「ビジネス単位」を一定数以上取得。
2. 経理がUSCPAを目指す4つのメリット
1) キャリアプランの幅が広がる
経理がUSCPAを目指す1つ目のメリットとしては、「キャリアプランの幅が広がる」ことが考えられます。
USCPAを取得することで、「英語×会計」分野の実力を証明することができます。
その結果、キャリアプランの幅を、大きく広げることができます。
例えば、以下のようなキャリアプランが考えられます。
① 日系企業の海外事業部
日系企業の海外事業部は、英語力重視で人材が選抜されやすいです。
そのため、英語以外の得意分野を持っている人は、希少価値が高い傾向にあります。
この点、USCPAを取得しておけば、会計分野の専門家として重宝されるのは、間違いないです。
② 海外子会社の経理部に出向
グローバルに事業を展開している日系企業の場合、日本の決算にあたり、主要な海外子会社の決算数値を集計して、連結財務諸表を作成する必要があります。
この際に、現地スタッフの管理や、本国との密なコミュニケーションを目的として、本国の経理部員を現地に派遣することが多いです。
この点、USCPA保有者であれば、英語・日本語双方の財務諸表に対応でき、現地・本国双方のスタッフとコミュニケーションがとれるため、重宝されやすいです。
③ 外資系企業の経理部
外資系企業、特に米国の企業の場合、先ほどとは反対に、本国である米国に対して、米国基準用の財務数値を提供する必要があります。
この点、USCPAであれば、試験自体が米国基準であるため、問題なく対応できます。
④ 大手監査法人
Big4と呼ばれる大手監査法人のうち、特に外資系企業・グローバル企業を担当する部署では、USCPAの需要が高いです。
私が大手監査法人時代に所属していた、10名程度の外資系投資銀行の監査チームの中にも、2名USCPAの人が所属していました。
1名はマネージャー、1名はパートナーでしたので、USCPAだからといって、監査法人内で出世できないというわけではありません。
⑤ コンサルティングファーム
コンサルティングファームも、USCPAの所有者のキャリアプランとして考えられます。
財務会計に特化したコンサルティング会社、あるいは、コンサルティング会社内の財務会計を専門とした部署が、主な所属先となります。
専門分野を活かしたコンサルティングを行うことができ、給与水準は高めですが、その分ハイレベルな実力が求められるのも特徴です。
⑥ 海外進出を目論むベンチャーCFO
ベンチャー企業やスタートアップ企業の中には、早くからグローバルの市場を視野に入れて、事業を展開している企業もあります。
このような企業のCFOには、グローバルで通用する財務会計の知識が求められるため、USCPA所有者が適任と言えます。
また、CFOには、財務戦略の立案力・金融機関との交渉力・予算管理能力など、多面的な能力が要求され、USCPAの中でも他者と差別化できるスキルを身に付けるのに、おすすめのキャリアとなります。
以上より、「キャリアプランの幅が広がる」ことは、経理がUSCPAを目指すメリットと言えます。
(経理のキャリアプランについては、「経理のキャリアプラン5選!働き方から見えるメリット・デメリット」も合わせてご確認ください。)
2) 日本の公認会計士ほど難しくない
経理がUSCPAを目指す2つ目のメリットとしては、「日本の公認会計士ほど難しくない」ことが考えられます。
一般的にUSCPA試験は、日本の公認会計士試験よりも、簡単な試験と言われております。
難易度に関する両資格の主な違いについては、下表を参考にしてみてください。
公認会計士 | USCPA | |
試験範囲 | 広くて深い | 広いが浅い |
試験形式 | 一問一答だけでなく、財務諸表を作成させる大問形式、 理由を説明させる論述形式などもある | 一問一答 |
合格率 | 10%前後 | 30%前後 |
勉強時間 | 約3,000時間 | 約1,500時間 |
受験可能 回数 | 年1回 (短答:5・12月) (論文:8月) | 年複数回受験可能 (同一科目は四半期に1回まで) (毎月複数回受験日がある) |
このような違いから、日本の公認会計士試験の方が、USCPA試験よりも難しいと考えられます。
なお、日本の公認会計士試験の難易度の詳細については、「公認会計士試験の難易度とは?難しいと言われる5つの理由」をご確認ください。
以上より、「日本の公認会計士ほど難しくない」ことは、経理がUSCPAを目指すメリットと言えます。
3) 英語を勉強するきっかけになる
経理がUSCPAを目指す3つ目のメリットとしては、「英語を勉強するきっかけになる」ことが考えられます。
「グローバルに活躍したいから、まずは英語を勉強しよう!」
と意気込んで、挫折した経験はないでしょうか?
漠然と英語を勉強しようとしても、勉強する範囲が広すぎて、モチベーションが維持できません。
この点USCPA試験であれば、「米国基準の財務諸表を理解する」ために必要な英語力に勉強範囲が絞られますので、モチベーションを保ちやすいです。
英語を身に付けたい場合、まずは特定の分野・シチュエーションにおいて要求される英語を身に付けて、そこから徐々に範囲を広げていくのがおすすめとなります。
余談ですが、USCPA試験用にまずTOEICなどの受験を検討する人が一定数いますが、中学英語程度の英語力が現時点であるのであれば、すぐにUSCPAの勉強を始めた方が良いかと思います。
USCPA合格に必要な英語力は、究極的にはUSCPAの勉強の中でしか身に付かないためです。
以上より、「英語を勉強するきっかけになる」ことは、経理がUSCPAを目指すメリットと言えます。
4) 他の経理部員との差別化を図れる
経理がUSCPAを目指す4つ目のメリットとしては、「他の経理部員との差別化を図れる」ことが考えられます。
営業職の場合は、販売件数や売上実績などで、他者との差別化を図ることができます。
一方で経理職の場合は、経理としての明確な実績を示すことは難しく、他者との差別化を図ろうと考えても、経理としての経験年数ぐらいしか、評価項目がありません。
また、差別化のために日本の公認会計士資格を取得することも考えられますが、前述の通り日本の公認会計士試験は非常に難しく、経理として働きながら合格することは、現実的ではありません。
この点USCPAであれば、手ごろな難易度で、他の経理部員との差別化を図ることができます。
以上より、「他の経理部員との差別化を図れる」ことは、経理がUSCPAを目指すメリットと言えます。
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3. 経理がUSCPAを目指す4つのデメリット
1) 日系企業だと評価されにくい
経理がUSCPAを目指す1つ目のデメリットとしては、「日系企業だと評価されにくい」ことが考えられます。
前述の通り、日系企業でも海外事業部がある会社であれば、USCPAは評価されやすいです。
一方で、国内だけで事業を展開している日系企業の場合は、いくら経理部と言えども、USCPAの資格が評価される可能性は低いです。
USCPAの価値を上長が理解していないケースが考えられ、そもそもUSCPAの存在すら知らないこともあり得ます。
米国基準と日本基準の差はあれど、大部分の考えは共通しており、本来的にはUSCPAの資格取得は会計力が一定以上あることの証明になるはずなのですが、日系企業の場合は理解されないことが多々あります。
以上より、「日系企業だと評価されにくい」ことは、経理がUSCPAを目指すデメリットと言えます。
2) お金や時間を費やす必要がある
経理がUSCPAを目指す2つ目のデメリットとしては、「お金や時間を費やす必要がある」ことが考えられます。
USCPAに合格するためには、少なくとも1,500時間程度の勉強時間が必要となります。
1,500時間と聞いても、あまりイメージできないかもしれませんが、「平日2時間・休日10時間」の勉強を1年間継続したら、達成できる勉強時間となります。
経理としての通常業務をこなしながら、仕事終わりにこれだけの勉強時間をこなすのは、言うまでもなく非常に大変なことです。
また、費用面でも、予備校のUSCPA講座代金・受験資格を取得するための費用・受験費用など、50万~100万円近い費用を先行投資する必要があります。
結果的に合格できればまだいいのですが、これだけの時間と費用をかけても、不合格に終わる可能性も当然にあります。
以上より、「お金や時間を費やす必要がある」ことは、経理がUSCPAを目指すデメリットと言えます。
3) 日本の公認会計士と比べられる
経理がUSCPAを目指す3つ目のデメリットとしては、「日本の公認会計士と比べられる」ことが考えられます。
類は友を呼ぶと言いますが、USCPAが所属する職場には、日本の公認会計士も所属しているケースが多いです。
同じ財務会計を専門とする両資格であるため、当然といえば当然のことかと思います。
そして、同じような資格であるがゆえに、両資格は必ずと言っていいほど比較されます。
難易度の関係から、どうしてもUSCPAの方が下に見られがちであり、USCPA所有者としては、あまり心地よい環境ではないです。
また、周りの人は大して気にしていなくても、USCPA所有者本人が気にしているケースも多々あります。
以上より、「日本の公認会計士と比べられる」ことは、経理がUSCPAを目指すデメリットと言えます。
4) 実務が疎かになりやすい
経理がUSCPAを目指す4つ目のデメリットとしては、「実務が疎かになりやすい」ことが考えられます。
前述の通り、USCPAに合格するためには、非常に長期間の勉強が必要となります。
そして、この期間を少しでも短くしようと、勉強時間確保のために、あらゆる時間を削ろうとします。
この考え自体は間違っていないのですが、本来経理の本業にあてるべき時間まで削ろうとすることも考えられます。
資格取得を通じて、経理として必要な知識を体系的に学ぶことは重要ですが、それ以上に、経理にとって実務での経験の方が大切となるため、本業が疎かになるのは良いことではありません。
以上より、「実務が疎かになりやすい」ことは、経理がUSCPAを目指すデメリットと言えます。
4. 終わりに
経理がUSCPAを取得することのメリット・デメリットについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
USCPAの取得は、経理としてのキャリアに、大きなプラスの影響を与えます。
もし少しでも興味が出てきたのなら、勉強を開始してみてください。
5. まとめ
◆日本の公認会計士より簡単。
◆英語学習のきっかけになる。
◆経理として差別化を図れる。
◆国内企業だと評価されにくい。
◆費用・時間の負担が大きい。
◆日本の公認会計士と比べられやすい。
◆実務より勉強を重視してしまう。