公認会計士について、
「聞いたことはあるけど、具体的に何をする仕事なの?」
と思われている人も多いかと思います。
あるいは、公認会計士を目指そうかどうか迷っている人は、
「公認会計士はどんなキャリアがあるの?」
と思われているかもしれません。
そこで今回は、公認会計士として監査法人に勤務したのち、ベンチャー企業に転職して、今は自営業として活動している筆者が、「公認会計士とは何なのか?」「公認会計士のキャリアプランとは?」の2点について、解説していきます。
1. 公認会計士とは?
1) 会計資格の最高峰
2) 財務諸表監査
3) 安定した年収
4) 多様なキャリア
2. 公認会計士のキャリアプラン
1) 監査業務
2) コンサルティング業務
3) 税理士業務
4) 経理
5) ベンチャーCFO
6) 自営業・起業
3. 終わりに
4. まとめ
1. 公認会計士とは?
1) 会計資格の最高峰
公認会計士とは、医師・弁護士と並び、三大国家資格と言われる資格のうちの1つとなります。
医師が医療分野、弁護士が法務分野の専門家であるのに対して、公認会計士は会計分野の最高峰資格となります。
また、医業(医療行為)は医者にしかできず、弁護士業(裁判所への出廷、刑事事件の弁護人など)は弁護士にしかできないように、公認会計士にも監査業務という独占業務があります。
まず、公認会計士という職業のポイントとしては、以下2点を押さえてください。
・監査業務という独占業務を持つ。
2) 財務諸表監査
公認会計士しかできない独占業務である監査業務とは、具体的には「財務諸表監査」のことを指します。
財務諸表監査について説明するために、
「財務諸表とは何なのか?」
「財務諸表はなぜ必要なのか?」
「監査とはなんなのか?」
「なぜ監査が必要なのか?」
の3点について、順に解説していきます。
① 財務諸表とは何なのか?
財務諸表とは、「売上・費用・利益」といった企業の経営成績や、「資産・負債・純資産」といった企業の財産の状況をまとめた書類又は電子データとなります。
財務諸表にはいくつか種類があり、例えば経営成績は「損益計算書」、財産の状況は「貸借対照表」と呼ばれる書類にまとめられます。
(損益計算書や貸借対照表については、「損益計算書と貸借対照表の違いは??」をご参照ください。)
② 財務諸表はなぜ必要なのか?
財務諸表の作成が要求されている一番の目的は、投資家を保護することにあります。
株式投資の経験がある人であればわかるかと思うのですが、投資家はある企業の株を買うか否かを判断する際に、その企業の「売上がいくらか?」「利益がいくらか?」などの情報を集めます。
つまり、財務諸表で会社が状況を公開しないと、外部者である投資家は情報収集することができず、誰も株を買わなくなります。
これは投資家にとっても不利益ですが、会社にとっても株を使用した資金調達ができないため、非常に都合が悪い状況となります。
このような状況を発生させないためにも、財務諸表の作成が求められています。
③ 監査とはなんなのか?
財務諸表監査とは、企業が作成した財務諸表を公認会計士がチェックして、「企業が公開している情報に間違いはない。」と保証を与えることを言います。
具体的には、例えば企業が「売上100億円」と財務諸表に記載している場合、「契約書や請求書など取引の実態を示すものはあるか?その内容に違和感はないか?」「取引先からの入金は本当にあるか?」「売上を過大計上するために、自社に有利な会計処理をしていないか?」などを確認します。
企業に必要な資料を請求したり、取引先や銀行に確認をとったりすることで、公認会計士は確認作業を進めていきます。
④ なぜ監査が必要なのか?
それではなぜ、財務諸表監査は必要となるのでしょうか?
それは、財務諸表はあくまで企業側が自己採点で「うちの企業は○○点です!」と言っているに過ぎず、投資家が企業の成績を評価するためには、第三者である公認会計士の採点が必要となるためです。
公認会計士による客観的な採点があることで、投資家は安心して「あの企業は○○点だな。であれば投資しよう。」と判断できます。
3) 安定した年収
公認会計士という職業のその他の特徴としては、年収が安定していることが挙げられます。
私は監査法人1年目・2年目で「600~700万円」程度の年収でした。
また、3年目にシニアスタッフに上がった際は、月収ベースで約1.5倍給料がアップしました。
基本的に余程のことがない限りこの程度は稼げる職業であり、一般的な企業の給料と比べて、悪くはないかと思います。
また、大手企業であれば同じくらいの年収の企業もありますが、大手企業の場合は就職・転職するのが難しいのに対して、公認会計士は勉強して試験に受かれば基本的に働くことができます。
少なくとも監査法人に入る限りは、安定した年収を確保できるのは、公認会計士の特徴の1つと言えます。
公認会計士の年収については、「公認会計士の年収の現実とは?トーマツの場合は○○○万円でした!」も合わせてご確認ください。
4) 多様なキャリア
もう1点公認会計士という職業の大きな特徴として、多様なキャリアが考えられる点が挙げられます。
ほんの一例ですが、例えば以下のようなキャリアが考えられます。
・コンサルティング業務
・税理士業務
・経理
・ベンチャーCFO
・自営業・起業
各キャリアについて、次項で具体的に見ていきましょう。
公認会計士講座の元運営責任者が、費用と合格者数の観点から、以下の5つの公認会計士スクールを比較してみました。
・CPA会計学院
・TAC
・大原
・LEC
・クレアール
詳細については「公認会計士スクールを費用と合格者数で比較!元講座運営者のおすすめは?」をご参照ください。
2. 公認会計士のキャリアプラン
1) 監査業務
公認会計士の1つ目のキャリプランとしては、「監査業務」が挙げられます。
監査業務は公認会計士として、一番王道のキャリアプランとなります。
監査業務を極める場合は、監査法人内でキャリアを積むこととなります。
年次が上がっていくごとに任される勘定科目が増えていき、一通り経験すると、主査としてチームを取りまとめて、1つの会社をまとめて監査する機会が与えられます。
そこからは、そのまま複数の会社の監査チームをまとめたり、自分の得意な会計分野を作り、その分野の相談窓口としての役割を担うことも考えられます。
また、一番上の役職であるパートナーになると、監査報酬の交渉や、営業をして新しい監査案件を獲得してくるなどの業務も考えられます。
仕事面でも、給料面でも安定したキャリアプランとなります。
以上より、「監査業務」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
2) コンサルティング業務
公認会計士の2つ目のキャリプランとしては、「コンサルティング業務」が挙げられます。
公認会計士としてコンサルティング業務を仕事とする場合、以下のようなキャリアが考えられます。
・一般のコンサルティング会社に所属する。
・個人でコンサルティング業務を行う。
一般的に、3~4年程度監査法人内でキャリアを積んだ後に、公認会計士として登録します。(修了考査という最後の試験が3年目にあるためです。)
そのため、コンサルティング業務を考えている人は、4年目あたりでグループ企業のコンサルティングファームに転職するか、一般のコンサルティング会社に転職するケースが多いです。
コンサルティング会社は多様なバックグラウンドの人がおり、皆それぞれの強みを活かしながら、基本的なコンサルタントとしての思考方法・提案方法を学んでいきます。
公認会計士の場合も、会計面での強みを活かしながら、コンサルタントとして力をつけていき、他のコンサルティング会社に転職してキャリアアップしたり、個人でコンサルティング業務を始めたりといったキャリアを歩みます。
会社によって当然異なりますが、一般的には監査法人よりも給料面が良いケースが多いです。
ただ、監査法人と比べると、安定して働ける環境とは言い難いため、ミドルリスク・ミドルリターンのキャリアと言えます。
以上より、「コンサルティング業務」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
3) 税理士業務
公認会計士の3つ目のキャリプランとしては、「税理士業務」が挙げられます。
公認会計士は登録すると、税理士となることができます。
つまり、税務相談や税務申告書の作成などの業務を行うことができます。
先ほどと同様に、公認会計士として登録したあとの監査法人4年目あたりで税理士事務所などに転職して、数年勤めて税務業務を学んだあとに、独立することが考えられます。
税理士事務所に行く必要があるのか?と思われるかもしれませんが、公認会計士試験で学ぶ税務知識は税理士試験に比べると浅い内容であり、また、実務で必要となる知識は実務で学ぶ必要があるため、税理士事務所に行く必要があります。
ただ、クラウド会計ソフトなど会計システムの発達により、個人事業主や中小企業の税務相談のニーズは今後少なくると考えられているため、単に税務申告書を作成するなどの業務を仕事とするだけでは、パイの奪い合いとなってしまうので注意が必要です。
以上より、「税理士業務」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
4) 経理
公認会計士の4つ目のキャリプランとしては、「経理」が挙げられます。
会計分野のその他の職業として、真っ先に思いつくのは経理ではないでしょうか?
実際、経理で働く公認会計士はそれなりの数いると考えられます。
私が過去に所属した会社や見聞きした会社でも、経理の中に公認会計士がいるケースは一定数ありました。
注意点としては、あくまで公認会計士は財務諸表を監査する専門家であり、財務諸表を作成する専門家である経理の業務は、少し毛色が異なるということが挙げられます。
会計論点などについては公認会計士の方が詳しいですが、日々の帳簿作成に関しては、一から学んでいく必要があります。
とは言え、土台となる会計知識は公認会計士であれば十分に有しておりますので、他職種への転職の中では一番相性のいい職種と言えるでしょう。
経理のキャリアプランについては、「経理のキャリアプラン5選!働き方から見えるメリット・デメリット」をご確認ください。
以上より、「経理」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
5) ベンチャーCFO
公認会計士の5つ目のキャリプランとしては、「ベンチャーCFO」が挙げられます。
ベンチャーに勤めていた際に、実際にCFOを探していた経験があるのですが、その際にやはり公認会計士は候補に入りやすかったです。
ベンチャーと言うとリスクが高そうと思われるかもしれませんが、私の経験からすると、皆様が想像されるほどリスクの高いものではないと思います。
CFOになれるかどうかは別としても、ベンチャーの経理で経験を積めば、他のベンチャー経理への転職は比較的容易であり、むしろ職に困ることが少ないとも言えます。
また、ベンチャーでのキャリアを積めば、CFOとなることも夢ではありません。
ポイントとしては、できるだけ若いうちにベンチャーに飛び込むことが挙げられます。
一般的に言われているように、ベンチャーは企業文化が若く、柔軟な対応が求められるため、自分自身もできるだけ若い方が適応しやすいためです。
以上より、「ベンチャーCFO」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
6) 自営業・起業
公認会計士の6つ目のキャリプランとしては、「自営業・起業」が挙げられます。
公認会計士として活動するというよりは、公認会計士をあくまで1つの武器として考え、全く異なる分野で自営業や起業家として活躍するケースです。
まさに今の私がそうなのですが、公認会計士というキャリアをあくまで1つの武器と捉えて、ビジネス会計検定という資格の講座をオンラインで販売しております。
(詳細については「公認会計士のキャリア:監査法人⇒ベンチャー⇒自営業の私の経験談!」をご参照ください。)
この場合、もはや公認会計士である意味がないのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、何の分野でビジネスをするにせよ、自分の中で1つの矜持(プライド)となる分野を持っておくことは大切です。
矜持があるかないかで、自信の度合が変わり、また、周りからの見られ方も変わります。
ハイリスクですが、公認会計士としての既存のキャリアに囚われることなく、一番自由なキャリアとも言えます。
以上より、「自営業・起業」は公認会計士のキャリアプランの1つとなります。
3. 終わりに
公認会計士とは何なのか?あるいは公認会計士の具体的なキャリアプランについてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
まずは、そもそも公認会計士とはどのような職業なのか、しっかりと理解してください。
そして、キャリアプランについては、あくまで私一人の実体験をもとにお伝えしたに過ぎませんが、公認会計士のある程度リアルなキャリアプランはお伝えできたかと思うので、ぜひ参考にしてみてください。
皆様のキャリアに本記事が、少しでも良い影響を与えられればと思います。
4. まとめ
◆財務諸表監査という独占業務を持つ。
◆給料が安定している。
◆多様なキャリアプランがある。