フリーキャッシュフローとは何なのか?フリーキャッシュフローのマイナスが意味するものは?と質問されたら即答できますでしょうか?
フリーキャッシュフローの詳細について、あまり理解されていない方も多いかと思います。
そこで今回は、フリーキャッシュフローについて解説していきます。
また、後半では、営業活動・投資活動・財務活動の各キャッシュフローの区分がプラス又はマイナスの場合、会社はどのような状態にあるのか?について8パターンに分けてお伝えしております。
本記事でお伝えする内容は、「ビジネス会計検定」で学習することができるため、興味のある方はぜひ受験を検討してみてください。
1. フリーキャッシュフローとは?
1) 計算方法
フリーキャッシュフローの計算式は以下となります。
=営業活動によるキャッシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー
2) フリーキャッシュフローとは?
フリーキャッシュフローは、将来に対する投資を営業活動のキャッシュの範囲内で賄えれば、資金の状況が安定するといった考え方を反映した指標となります。
投資活動によるキャッシュフローは通常の状態であればマイナスとなるため、営業活動によるキャッシュフローを上回る投資を行っている場合は、フリーキャッシュフローはマイナスとなります。
フリーキャッシュフローは、会社が本業で稼いだお金のうち必要な投資額を引いた金額であるため、会社が自由に使えるお金がどの程度あるかを表している指標とも言えます。
フリーキャッシュフローが絶対額の指標であるのに対して、キャッシュフローの比率を計算する指標も存在します。
詳細については「キャッシュフロー比率の指標一覧!」をご参照ください。
2. マイナスの場合は危険?
1) 基本はプラスの方が望ましい
フリーキャッシュフローは基本的にプラスの方が望ましいと言えます。
フリーキャッシュフローがプラスと言うことは、追加で投資できる余地がまだあり、また、借入金などの返済に資金を回し自己資本比率を高めることができるため、安全性の観点から望ましい状態と言えます。
2) マイナスの場合は危険?
では、ある年のフリーキャッシュフローがマイナスの場合は、会社は危険な状態にあると言えるのでしょうか?
自由に使えるお金がなく、銀行などの金融機関からの借り入れや投資家からの出資に頼ることとなり、財務的に健全でない状態であることは事実です。
一方で、会社が成長していくために特定の時期に多額の投資をすることは、企業経営上不可欠であり、特定の年のフリーキャッシュフローがマイナスだからと言って、必ずしも問題であるとは言えません。
特にベンチャー企業などであれば、まだ本業で稼げていなくても、事業を拡大するために積極的な投資を行う必要があり、フリーキャッシュフローがマイナスとなる可能性は十分にあります。
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3. 実務上の注意点
1) 数期間分を観察する
上述のように特定の年のフリーキャッシュフローがマイナスだからと言って、それ自体が必ずしも問題だと言うことはできません。
数年間分のフリーキャッシュフローを確認することが大事です。
数年間フリーキャッシュフローのマイナスが継続していれば、財務活動によるキャッシュフローで毎年マイナス分を補えていたとしても、かなり危険な状態と言えます。
2) 3つの区分のバランスを意識する
フリーキャッシュフローだけでなく、財務活動によるキャッシュフローも含めた3つの区分のバランスを実務上は意識する必要があります。
会社全体のキャッシュフローは、あくまで営業・投資・財務の3つの活動の結果であり、特定の活動だけを切り離し判断できるものではありません。
この点については、次項のキャッシュフローの循環パターンで確認していきましょう。
4. キャッシュフローの循環パターン
ここでは、営業・投資・財務のそれぞれの活動区分のキャッシュフローを、それぞれプラス(+)かマイナス(-)で区分けした以下の8パターンのそれぞれにおいて、会社がどのような状態と言えるのか?というキャッシュフローの循環パターンについて解説していきます。
# | 営業 | 投資 | 財務 |
① | + | + | + |
② | + | - | - |
③ | + | + | - |
④ | + | - | + |
⑤ | - | + | + |
⑥ | - | - | + |
⑦ | - | + | - |
⑧ | - | - | - |
1) 営業+:投資+:財務+
まず、①については事業の転換を図っている企業となります。
全てプラスですので、キャッシュを企業内にため込み、何か大きな挑戦をする前の状態ということができます。
2) 営業+:投資-:財務-
次に、②については健全な資金繰りのパターンとなります。
ここで1点注意していただきたいのは、財務活動によるキャッシュフローがマイナスだからといって、決して悪い意味ではないという点です。
財務活動がマイナスということは、過去の負債を返済しているため、むしろ健全な状態ということができます。
3) 営業+:投資+:財務-
次に、③については、負債を減らして財務体質の改善に取り組んでいるパターンとなります。
②のパターンと比較すると、積極的な投資活動は控えてより負債の返済に取り組んでいる状態といえます。
4) 営業+:投資-:財務+
次に、④についても②と同様に、健全な資金繰りのパターンと言えますが、財務活動で資金調達をしており、それを投資活動にあてているため、より積極的な投資を行っている状態といえます。
5) 営業-:投資+:財務+
次に、⑤については資金繰りの観点から注意が必要なパターンと言えます。
本業でのキャッシュフローがマイナスであり、それを他の2つの活動で賄っている状態と言えます。
6) 営業-:投資-:財務+
次に、⑥についてはベンチャー企業などに多く見られるパターンとなります。
本業ではまだキャッシュフローがマイナスですが、将来に対して投資をしており、その資金を財務活動で賄っている状態と言えます。
7) 営業-:投資+:財務-
次に、⑦については、この状態が続くと資金繰りが厳しいパターンとなります。
本業でのキャッシュフローがマイナスであり、財務活動についても銀行などからの借入が難しく、それを投資活動用の固定資産などの売却で何とか賄っている状態と言えます。
8) 営業-:投資-:財務-
最後に、⑧についても、この状態が続くと資金繰りが厳しいパターンとなります。キャッシュフローが全てマイナスであり、過去のキャッシュを食いつぶしながら投資を行っている状態と言えます。
実務上は機械的に今回のパターンをあてはめることはやめてください。
といいますのも、今回はあくまでプラスかマイナスかで判断しただけであり、実際は各項目の金額の大小によって意味が変わるためです。
例えば、②については健全な資金繰りとお伝えしましたが、営業キャッシュフローがプラス1億円に対して、投資キャッシュフローがマイナス1,000億円だった場合、投資額が大きすぎて健全な資金繰りということはできないです。
5. 終わりに
フリーキャッシュフローやキャッシュフローの循環パターンについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
キャッシュフローについての基本的な理解を深めたら、次は実際のキャッシュフロー計算書をみて、その会社の状態を考えてみてください。
勉強のための知識ではなく、実務で活きる知識をぜひ身に付けてください。
6. まとめ
◆積極的な投資を行った結果、特定の年のフリーキャッシュフローがマイナスになることはある。
◆特定の年だけでなく複数年の値を観察する。
◆財務活動によるキャッシュフローも含めたキャッシュフロー全体のバランスを意識する。