簿記の勉強を始めてみたものの、想像していた以上に覚えることが多く難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
簿記検定の問題は1問つまずいてしまうと、後の問題を解くことが難しくなってしまうので、苦手意識を持ってしまいやすいものです。
しかし簿記はクロスワードパズルに似ているという特徴があります。
そのため一般的には良くないと考えられるような勉強方法、つまり分からない問題を後回しにして進めていくとことで、答えを見つけることが出来る問題も多くあるのです。
ここでは簿記の勉強の進め方について詳しく説明していきます。
正しい勉強方法を知ることによって、わかりにくかった簿記から、解ける簿記へと変わっていくでしょう。
1. 半分理解できていればOKと考える
2. 人に教えてみる(問題を作成してみる)
3. とりあえず暗記してみる
4. 手を動かし勉強してみる
5. 予備校を利用してみる
6. 図にしてみる
7. 気分転換をしてみる
8. 分からない箇所が分かっている時に行うべき勉強法!
9. 分からない箇所が分からない時に行う勉強法!
10. 終わりに
11. まとめ
1. 半分理解できていればOKと考える
簿記を勉強していく上で1番大切なこととも言えるのが、完璧主義をやめることです。
簿記は会社の業績や資産状況を把握するために行うものです。
一般的な簿記の問題集を開くと、ずらっと勘定科目が一覧で並んでいて、それらすべてを暗記していくことを求められます。
次に、その勘定科目ごとの仕訳方法を暗記していくことになるのですが、実際に会社で経理をしている簿記のプロでも、すべての勘定科目と仕訳方法を暗記しているかと言ったら、暗記していない人の方が多いか、あるいは簿記検定を取得する際に暗記したけれど、今は覚えていないという方がほとんどです。
簿記はすべてを暗記してから問題に挑む必要はありません。
必要に応じて、問題を解くのに必要な勘定科目や仕訳方法を学んでいくだけで十分なのです。
そのため勘定科目や仕訳方法を1つずつ完璧にしていくよりも、次々と問題を解いていくことが大切です。
ただし、問題が解き終わったら必ず、次の問題へ移る前に答え合わせを行うようにしましょう。
簿記は完璧に覚える必要はありませんが、間違ったまま覚えてしまうことが何より危険です。
2. 人に教えてみる(問題を作成してみる)
人に簿記を教えたり、簿記の問題を作成してみることは自分自身の理解に繋がります。
X(旧Twitter)やInstagramなどSNSを利用して、自分自身が苦手としている箇所を説明することが出来るかどうかチェックしてみると良いでしょう。
1) 簿記を教える際の注意点
簿記は1問1問が他の問題の解き方へと繋がっていきます。
例えば、貸借対照表の作り方を間違えると損益計算書を正しく作ることが難しくなってしまいます。
もっと基礎的な部分、仕訳1つ間違ってしまうと後の計算がすべて間違いになる可能性すらあります。
簿記は分からないことよりも間違って覚えてしまうことの方が危険です。
そのためはじめて簿記を教える際などには参考書に沿って説明するところから始めるようにしてください。
2) 問題を作成する際の注意点
X(旧Twitter)などで試験問題を作成し公開している方は複数います。
公開する際には参考書の問題をそのまま公開してしまわないよう注意しましょう。
簿記で問題を作成するのは、練習問題を多く解いている人にとっては難しくないと感じるかもしれません。
おすすめの問題の作成方法として、定額法による減価償却を定率法で行ってみるというものや、先入れ先出し法から先入れ後出し法に切り替えた計算問題を作るというものなど、既存の問題の一部を変更してみる方法です。
3. とりあえず暗記してみる
小学生の時に1+1=2の計算の意味を考えず足し算を勉強していったのと同じように、簿記はとりあえず仕組みを理解し暗記していくという勉強方法が効率的です。
仕組みをしっかりと理解していないのに勉強していくと、途中から計算できなくなってしまうのではないか?と不安に感じてしまいがちですが、簿記は全体像を理解してからの方が、その仕組みを理解しやすくなっているので、とりあえず暗記が必要です。
たとえば現金の勘定科目だけでも「現金」「当座預金」「普通預金」「定期預金」「現金過不足」など、いくつもの種類があり、これを簿記全体で考えると全部理解するのに時間が掛かりすぎてしまいます。
現金の勘定科目であればお小遣い帳感覚で理解していきやすいものの、「流動資産」や「流動負債」となると想像しにくいため覚えにくくなります。
まずは言葉として暗記してしまう方が簡単です。
仕訳の基本は現金のキャッチボール
とりあえず暗記は簿記の勉強を進めていく上でおすすめの方法です。
しかし、ただ闇雲にとりあえず暗記をしていては、なかなか仕訳問題には対応できません。
とりあえず暗記にとって1番重要なのは仕訳の基本である「現金のキャッチボール」です。
お金の流れをキャッチボールに当てはめて考えていくという方法です。
キャッチボールは左手にグローブをはめてボールをキャッチし、右手で相手にボールを投げ返します。
野球に親しみのない方や、たとえ左利きの方でもキャッチボールをイメージするのはそれほど難しくはないでしょう。
このキャッチボールのボールこそ仕訳上の「現金」となります。
ボールを左手でキャッチするのと同様、現金を受け取る際には仕訳帳の左側である「借方科目」に記入し、現金を支払う際には仕訳帳の右側である「貸方科目」に現金を記入することとなります。
仕訳の方法が分からなくなったらまずは「現金のキャッチボール」を思い出しましょう。
仕訳で混乱する1番のポイントは勘定科目が分からなくなることではなく、「現金のキャッチボール」の仕組みを忘れてしまうことです。
この仕組みさえ覚えてしまえば、とりあえず暗記していくことにより仕訳の問題が解きやすくなるでしょう。
4. 手を動かし勉強してみる
簿記は多くの解説書を読むよりも、実際に自分の手で問題を解いた方がより理解していきやすくなります。
簿記検定は時間との勝負になりますので、問題パターンを体に染み込ませてしまう方法がベストです。
簿記は「習うより慣れろ」ということです。
とりあえず10分机に向かって問題を解く
簿記検定は計算に電卓やそろばんの使用が認められているため、計算はするものの暗記科目と言われることが多く、解説書を読むという勉強方法を選択する方が多いです。
確かに簿記は電卓やそろばんを使用することが認められており、つまずきを感じやすい「減価償却」の計算や工業簿記の「損益分岐点」、「退職給付」なども計算式だけ提示されれば小学生でも出来る問題になっています。
しかし、大切なのは計算式を組み立てる力になりますので、公式を暗記しているだけでは表から計算式を産み出せないことが多いです。
簿記の問題にひらめきは必要ありません。
どこからどの情報を持ってきて計算式を作るのかを理解するために問題を解くことが何よりも大切です。
実際に問題を解いて、問題を解くために必要な情報がどこにあるのかを見つけられるようになることが重要です。
そのためとりあえず10分机に向かって問題を解くことは、移動中に参考書を何時間も読むよりも効果的だと言えるでしょう。
手を動かして勉強すると、脳内物質のドーパミンがやる気を引き出してくれることも分かっていますので、勉強したくないと感じた日もとりあえず10分、それが本当に10分で終わったとしても、机に向かうことは大切です。
5. 予備校を利用してみる
簿記は全体的な流れを理解し、問題を解くことが何よりも大切だと説明してきました。
この全体的な流れを理解するのに学習内容が体系的にまとまっている予備校を利用してみるのも良い勉強方法の1つです。
簿記は会社を経営している方や個人事業主のための勉強会も開催されていますので、簿記資格取得のための予備校であることを確認してから参加するようにしましょう。
1) 予備校に行くメリット
予備校ではテキストに合わせた授業が行われますので、検定試験での傾向など自宅で勉強しているだけでは得ることができない知識も得られます。
次の試験に向けた予想問題集なども充実しているため、対策をしっかりと行うことが出来るのが大きなメリットです。
それだけではなく、ただの暗記で覚えた箇所もより具体的な説明により仕組みを実感することが出来たと感じている方も多いです。
現在では予備校に通う時間が取れない人向けに講義を視聴できるようになっていたり、予備校に通っている方向けた解説記事を配信している予備校などもあるようですので、社会人の方でも安心して利用できます。
2) 予備校に行くデメリット
予備校ではテキストに沿った授業が開かれます。
簿記は数学の問題とは違い、1問目は分からなかったので2問目から解いていくということが難しいです。
そのため自分自身のスピードで学習することが向いている部分も多く、予備校以外で勉強する時間を確保することが出来ないと、有意義に時間を使えないと感じてしまいやすいです。
もちろん自分自身に合った予備校を見つけることが出来れば、こうしたデメリットは解決できる問題でしょう。
公認会計士や税理士などを輩出している予備校もありますので、実際に試験に合格できた方の口コミを参考にすると良いでしょう。
なお、簿記の勉強方法には通信講座・通学講座・独学がありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。
各方法のメリット&デメリットについては「簿記3級・2級の勉強時間は?一ヶ月・二ヶ月での合格は可能?」で解説しておりますので、合わせてご確認ください。
簿記講座の元運営責任者が、「講座代金(安さ)」と「講座との相性(わかりやすさ)」の観点から、おすすめ通信講座を以下の5つに絞り、メリット・デメリットについて解説してみました。
・クレアール
・フォーサイト
・ネットスクール
・CPA会計学院
・スタディング
詳細は「簿記の通信講座おすすめ5選!安さとわかりやすさで比較すると..」をご確認ください。
6. 図にしてみる
簿記は図にすることで計算が理解しやすくなります。
簿記の参考書は図を用いていないものは1冊もないと言い切ってしまえるほど、図を用いて仕組みや計算方法を理解するという方法は一般的です。
また図を用いることで、その計算方法が正しいものであるかどうかも分かりやすくなっています。
1) 図にして勉強することがおすすめ【減価償却の定率法と定額法】
練習問題の際に図を用いることがおすすめなのが商業簿記の減価償却における定率法と定額法についてです。
減価償却における定率法の計算式は、【未償却残高×償却率 ×(使用月数÷当期の月数)】となっており、定額法では【減価償却費=(取得原価-残存価額)÷ 耐用年数】となります。
この図を作成できるようになると、最初につまずきやすい減価償却の計算方法はしっかり理解していると言えるでしょう。
2) オリジナルな図を作成する必要はない
簿記の問題を図にしてみることは難しいことと感じる方が多いでしょう。
難なく図に出来てしまう方もいるでしょうが、そういう方は一握りですので安心してください。
簿記の参考書や問題集の解説書には図が用いられているものがほとんどです。
その図を書き写し、次の問題を解く際に自分自身で図を作り上げてみてください。
最初は戸惑うかもしれませんが、間違いやすい【日数】や【時間】を正確に把握できるようになります。
7. 気分転換をしてみる
簿記の問題は経理で働いている方や個人事業主、これから起業したいという方以外にとっては分かりにくい世界観だと言えるでしょう。
そのため勉強していると、どっと疲れてしまうことがあります。
自分の体験に当てはめられない問題は、考える際にすごく大きなエネルギーを使うためです。
そんな時は気分転換してみることをおすすめします。
1) 試験まで時間がある時の気分転換
試験まで時間があるのであれば、思い切って勉強から離れてしまうのも手です。
毎日コツコツと勉強することは簿記の勉強にとって大切ですが、ただの暗記ではなくしっかり理解している箇所とそうではなかった箇所を知る機会にもなりますし、1日たっぷり休息を取ることも大切です。
2) 試験まで時間がない時の気分転換
試験まで時間がないけれど、簿記の勉強に行き詰っていると感じている方は、問題集の1ページ目に立ち返りましょう。
簿記の試験問題は後半にかけて徐々に計算も複雑になり、試験問題の範囲内でも最初と最後ではレベルが異なる問題が多いです。
そのため問題集の1ページ目に立ち返ると、自分自身はつまずきを感じていた箇所が簡単に解けるようになっているものです。
簡単な問題を解いて気分転換を行いましょう。
しかし、この簡単な問題も試験に直結する内容となりますので、実はスラスラ解ける快感で気分転換しながらも、しっかりとした勉強になっているというわけです。
8. 分からない箇所が分かっている時に行うべき勉強法!
分からない箇所が分かっている場合、問題文に線を引いて繰り返し類似の問題を解くようにすると良いでしょう。
これは仕訳に限らず決算整理や退職給付、キャッシュフロー計算書の作成など計算が長くなりがちな箇所にも当てはまります。
類似の問題文に線を引くことで、計算式の求め方を理解しやすくなりますし、また近年では試験問題が複雑化していると言われていますが、パターンを理解することで取り組みやすくなるためです。
9. 分からない箇所が分からない時に行う勉強法!
正答率が上がらないけれども、自分自身でも分からない箇所が分からないと言うことがあるでしょう。
この場合は、間違えてしまった問題を問題の種類ごとにマーカーで色分けし、自分自身で分からない箇所を理解することが重要となります。
分からない箇所が分からない方に多いのが、初見の問題につまずいてしまうことですが、簿記検定の初見の問題はひらめきを必要とするわけではありません。
類似問題の語順が変わり求め方が変わっていることが多いですので、分からない問題の問題文に線を引き、計算式への流れをしっかりと把握することが大切です。
特に日商簿記検定1級の会計学は、問題文を最後まで読むことが辛いと感じ問題が解けない方も多いと言われています。
簿記はある程度パターン化した内容となっているため、少し異なると不安に感じてしまいやすいのです。
そのため、問題文に線を引き、類似問題を徹底することは重要です。
10. 終わりに
簿記検定を合格するために必要なのは、繰り返し問題を解くことに他なりません。
そもそも簿記は業績や資産状況を確認するために必要なものですので、検定問題は言わば完成した表からの穴あき問題、クロスワードパズルに似た性質があるものです。
そのため完璧主義を捨て、とりあえず暗記して先に進んでいく学習を行うことが大切となります。
一般的な検定試験の勉強では、基礎を固め分かるまで先に進まないのが鉄則とも言われていますが、簿記の場合は検定範囲内の問題集を1冊終えてみることこそが大切です。
そこから半分理解した箇所を徐々にしっかりと固めていくことで、検定に挑みましょう。
全体像を把握することで、振り返るとスラスラ解けるようになっている問題も多く出てくることでしょう。
11. まとめ
◆複雑な計算は図にすることができればクリアできる。
◆半分理解していればOK!全体像を掴むことが何よりも大切。